普通のts少女   作:まるべー

6 / 7
ゴリラになりたい


第六話

 

「そう、だよね。やっぱり、嫌だったよね。人のこと煽る人なんて関わるだけでも嫌だよね。ホントに、ごめんね」

 

…?え?煽るでも顔を赤くするでもなく謝罪?

 

「ちょちょちょい。お前ホントに違うじゃん。ただ俺が嫌な奴になっちゃうから。言い返してくれないと」

 

ちょっと予想外すぎて反応が遅れたが、さよなら、と言って部屋から出ていこうとするユウ子の肩を掴み阻止する。どこ行こうとしてるんだこいつは。ここお前の部屋だぞ。

 

いや、今はそんなことではない。ちょっと言いすぎたのだろうか?いや、確実に言いすぎたんだな。だから俺はいつも女の子にモテないって、コイツに言われるんだろうな。

 

「離してよ」

 

「離さない、離したらどっか行くだろお前」

 

「同情なんていらないもん」

 

そうやって意固地になっている幼なじみに対し俺は、少し面倒くさくなってきた。いやこんな言い方はダメか。

 

いやでも、こんな時間にこいつの勘違いでこれだけ時間取られてるんだ。少しぐらいはいいか。

 

そう考えた俺は、ユウ子の顔にぐいと手を伸ばし、こちらに向けさせる。そしてそのまま言葉を紡いだ。

 

「これは同情とかそんなんじゃない。俺がお前のことが好きでやっていることだ。大体、俺がお前のことを嫌いになるわけないだろ」

 

「で、でもボク…」

 

「いつも通り俺が何かやらかして。で、それをいつも通りお前がネタにして。それを俺は好きだからさ。だから、俺の隣で、ずっと俺のこと煽っててくれって」

 

俺はそう言って、涙の流しすぎで赤くなっている幼なじみの顔に向かって、ハンカチを投げつける。

 

ポフン、と顔に当たってそのまま床に落ちるかと思われたそれは、しかしてユウ子の手の中に収まった。

 

ポカン、と間抜けヅラを晒しているユウ子に向かって一言「じゃあな」というと、ユウ子をそのままに俺は自分の家へと向かった。

 

そろそろ補導される時間帯だ。帰らないといけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、それにしても恥ずすぎ。よくあんなこと言えたな俺」

 

家に帰って俺は1人悶絶していた。あまりにも、あまりにも小っ恥ずかしいことを言ってしまっていた。

 

あの間抜けヅラもたぶん、呆れてものも言えなかった顔なのだろう。

 

また次会った時に威勢よく俺はからかわれるんだろうな。

 

まあでも、それでもいいかもしれない。幼なじみで親友のあいつの、元気が戻ったのなら。

 

まったく、最初は友達を作るために離れようっていってたのに、結局はそれも叶いっこしなかった。

 

「俺、あいつのこと好きすぎだろ」

 

小さい頃からずっと一緒にいた一番の親友。最初は、幼稚園の隅で丸まっていたあいつを見て、心配から声をかけたが、今では立派に元気で、俺の()()

 

それはこれまでも、そしてこれからも変えたくない。




ゴリラになりたいひと高評価
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。