ランチラッシュのサイドキックは正義の味方   作:アイン_BD’sR

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 えー……お久しぶりです。とてもお久しぶりです。
 いろいろとありまして……1年ほど投稿ができていませんでしたね……
 ですが!これからは以前のようにどんどん書いていこうと思いますのでよろしくお願いします!

 というわけで本日はプッタネスカ……娼婦風スパゲッティ!(ジョジョネタ)久しぶりの投稿なので少し長めですー!


第9話 ピリ辛プッタネスカと

 

 

 

 

 爆豪勝己は激怒した。

 ……常日頃から激怒していると言われれば否定はできないが、今回の爆豪はとても静かに……しかしすれ違う人、皆を振り向かせるほどに圧倒的な威圧感を持った怒りを表していた。

 彼の怒りの原因は職場体験中での成長の感じなさか、職場体験の後髪型が七三分けから元に戻らずクラスメイト(切島・瀬呂)にからかわれたからか、今日に限って弁当を忘れたからか、はたまたその後の救助練習でデクこと緑谷出久の成長に劣等感を……焦りを感じ、それに対する自分に怒りを感じたからか。

 

「クソが………」

 

 悪態を一言だけ漏らしガタッと乱暴に席を立つ。食べかけの料理が乗った皿を掴みドスドスと苛立った様に音を立てながら厨房へ向かうと受付をしている顔を青くした職員を見つける。

 そんな職員に顔を近づけ、皿を持っていない左手で個性の『爆破』を小規模に使いながら大きな声を上げた。

 

「オイ!!この料理を作った奴を今すぐここに連れて来いッ!!!」

 

 それはさながら銀行で金を詰めるように脅す(ヴィラン)の様であった。

 

 

 

 

 

 

 

「「「ありがとうございました!!!」」」

 

 男子学生3人が頭を下げる。周りからしてみれば何があったのかと気になる事だろう。現に頭を下げれられている衛宮自身も周囲からの視線を強く感じていた。

 目の前の頭を下げている3人……緑谷、飯田、轟と隣にいる麗日は基本的に学食だった為、度々衛宮と交流していた。ある時は勉強について、ある時は個性の訓練について、またある時は自分の抱えている悩みについて。

 そんな中ヒーロー殺し(ステイン)から助けられる事になる。病院で一応感謝と謝罪はしたものの警察との話もありしっかりと話をすることができていなかった。だからこそである。普段からお世話になっている人に命も救われ、たった一回のお礼で終わりなんてことは彼ら自身が許せなかったのだろう。

 ……尤も衛宮はそんな事を気にしてないようで「もう大丈夫だから頭を上げてくれ」と3人を諭していたが、彼らは一向に頭を上げる気配を見せない。麗日も「そろそろお昼が食べたいなぁ……」と言わんばかりのもにゃもにゃした顔をしていた。このままでは休み時間の間ずっと謝罪し続けられると感じた衛宮は少しため息を吐きながら一人ひとりに話し始める。

 

「緑谷、説教はもうグラントリノさん……だったか?職場体験先の人にしてもらっているよな。なら俺からは一言、あの状況でよく頑張った。ただ、油断はしないようにな。」

「は、はい!ありがとうございます!」

 

「轟、確かにエンデヴァーさんの制止を振り切って現場に向かったのはよくないことだ。だが、轟がいなかったら2人ともすぐに奴にやられていた。特に飯田はどうなっていたか……だからこちらこそありがとうな。」

「!……いえ。」

 

「最後に飯田。迷惑をかけた相手に謝って、感謝を伝えることはとても大切だ。でもそれが行き過ぎると失礼に当たる事を知っておいた方がいい。場合によっては信用されていないと受け止められてしまうからな。」

「し、失礼しました……っ!」

「……確かに身勝手な行動でヒーロー殺しを追いかけたのはやってはいけない事だったな。でもそのおかげで誰かを救うことができた。時間稼ぎだったとしても、偶然そうなったとしても……その事実は変わらない。だから俺からはこの言葉を送るよ。『ありがとう飯田』」

「っ………はい!」

 

「そして最後に全員に!……今回の事を忘れろなんてことは絶対に言わない。むしろこの経験はいつまでも心に残して置くように。だが、いつまでも落ち込んだ表情をするのはやめるんだ。ヒーローがいつまでもクヨクヨしてたら周りの人が不安に感じる。いつもの調子……強制はしないが、笑顔でいるように!」

「ずっと落ち込まれると相澤先生やオールマイトさんに『うちの生徒に何をした!』って怒られちまう……いや、オールマイトさんは怒らないな。むしろ『私何かしただろうか……』って相談にくるな……」

 

 最後の言葉に納得したのだろう。顔を見合わせた4人は少し間をおいて弾けるように笑い出す。「確かにオールマイトならそうなるかも」と今までのジメジメした雰囲気を破るように。

 そして彼ら自身納得がいったのかようやく頭を上げる。こころなしか3人の顔がスッキリしたように衛宮は感じた。自身仕事の時間を割いて彼らと話していたからだろう。解放して貰えた衛宮は足早に職場へ戻るのであった。

 

「…………」

「……?麗日さんどうしたの?」

「え!?いやっなんでもないよ!」

 

 立ち止まっていた麗日に緑谷が不思議そうに声をかける。全員がその場を去ろうとしていたのに彼女だけが立ち止まっていた事が不思議だったのだろうか。驚いたような彼女はバッと振り返り声を上げた……わざと明るく振る舞うかのように。

 しかし緑谷は気付いていた。その視線の先には衛宮の後ろ姿があったことを。

 

 

 

 

 

「皆さん……時間を掛け過ぎですわ!」

「ご、ごめん……」

「申し訳ない……っ!」

 

 衛宮と話終わった4人は卓へ戻る。元々お昼ご飯を食べる予定だった為同行していた八百万は衛宮の忙しさを知ってからか少し怒ったかのように声を上げる。

 ……決して卓に並んだ5つの皿に盛られた料理を目の前にしてお預けを食らっていたからではない。

 

「私が皆さんの分も取ったのに冷めてしまったら勿体ないではないですか……さあ!早く食べましょう!」

「ああ、そうだな。俺達の分まで用意してくれてありがとな。助かった。」

 

 轟が表情の無いまま感謝を告げると満足したかのように八百万は頷く。そして待ちきれなかったかのように笑顔のまま手を合わせる。

 

「それでは!いただきます。」

「「「「いただきます!」」」」

 

 各々フォークを持つと皿に盛られた赤いソースのかかったパスタをフォークで器用に巻き、口へ運ぶと……

 

「……!?かっ辛い!?おおッ辛いぞォォ!」

 

 一口食べた瞬間にクワっと目を見開き、汗をかきながら慌てたようにシュババッと手を動かす者がいた。

 そう、飯田である。

 

「飯田君!?だ、大丈夫!?」

「も、申し訳ありませんわっ飯田さん!まさか辛い物が苦手だとは……」

 

 口に入れようとパスタが巻かれたフォークを慌てて皿に置き、飯田に反応する緑谷と八百万。

 

「ん、あぁ……確かに結構辛めだな。」

「でもピリ辛程度だねぇ。辛味と酸味の加減が丁度良くてクセになる味だー!」

 

 そしてそんな飯田を横目に感想を言い合う轟と麗日。2人は辛いものは問題ないらしく、また飯田は緑谷と八百万に任せれば大丈夫だろうと考え箸を進める。……尤も側から見たら薄情だと思う人もいるかもしれないが、信頼しているからこそ静観している……はずである。

 

 「三者三様」の言葉とは少し違うが、キッチリと3パターンに分かれた反応で彼らの食卓が一気に賑やかとなる。その様子を見た他の卓の生徒も自然と声のトーンが上がる。そして、まるで波のようにどんどんと周囲に広がり……自ずと食堂は賑やかになった。

 そしてその雰囲気に気がついた緑谷も優しい笑顔になる。賑やかな空気が柔らかな風となり、自然と自分の口角を上げたように感じていた。オールマイトの笑顔の強さに改めて気がついた気がしていた。

 

「ほら飯田くん。水だよ。」

「ありがとう……助かった。」

「飯田さん、辛さを抑えるためにチーズを貰って来ましょうか?」

「いや、この辛さも絶対に食べられないというわけではない。むしろこのくらいが丁度いい!ありがとう、八百万くん!」

 

 水を被ったかのように汗をかきつつも、ようやく落ち着いた飯田を見て緑谷もパスタを一口食べる。細いがもっちりとした麺が赤いソースと絡み合い、口いっぱいにその複雑な味わいが広がる。

 

「ん……!確かに辛いけど美味しいね。酸っぱい味と辛い味って意外と合うんだ。トマトの甘味も相まって……これは麗日さんも言った通り癖になる味だね!」

「この酸味は一体どこから来ているのだ……?ぱっと見トマトとオリーブ……それくらいしか具材が見当たらないぞ?しかしトマトの酸味とは違う……」

「それはケッパーという酢漬けの酸味ですわ!レシピは………」

 そう言うと八百万は目を閉じ、衛宮に教えてもらったレシピを思い出す。

 

 先ずは鷹の爪を半分に割り種を取り出し、にんにくをみじん切りにしておく。また、今回はソースが時間がかからずにできるので、茹で時間の長いパスタであれば先に茹でておく。

 フライパンにオリーブオイルを引き、アンチョビフィレを火が通るまで炒める。炒め終わったら鷹の爪、にんにくを入れ香りがつくように弱火で炒める。先にアンチョビフィレを炒めるのはにんにくと鷹の爪が焦げないようにするためで、双方が焦げてしまうと苦味が強く出てしまい雑味になるからである。その後、ブラックオリーブとケッパーを入れ軽く炒める。パスタの茹で汁とホールトマトの缶詰を入れてトマトを軽く潰しながら塩を加えて味を調整する。トマトの潰し具合はお好みだが、一つの具材として考えられるくらいのサイズ(一口大)が好ましい。

 ソースにとろみが出てきたら、パスタを入れ絡ませる。後は皿に盛って完成!

 

「……といった感じですわね。材料は意外とどこでも売っているものらしいですので手軽に作れますわ。」

「……なんか意外だね。衛宮さんって和食をよく作っているイメージだし。」

「あぁ、それは俺も思ったな。」

 

 中でも八百万に続き食堂へよく来る衛宮と轟が顔を見合わせながら疑問を持つ。それもヒーローの時のコスチュームが和風だからだろうか。それとも今まで食べてきた料理が基本的に日本料理だったからだろうか。

 そんな2人を見て同意するかのようにうんうんと八百万が頷く。

 

「えぇ、私も料理を教わる前はそのイメージがありましたわ。ですがアーチャー様の作る料理に作る姿勢、何よりあの表情で理解しましたの。」

 

 語り始める八百万の瞳には職場体験での日々が映っていた。

 

 指示を出され仕込みを続ける彼女はふと料理を生徒に渡し終わった衛宮の姿を見る。既に受付には料理を待つ人はいない。しかし、衛宮は何をするでもなくただその場に立っていた。

 その表情に八百万は見覚えがあった。両親が自分に向けた柔らかな笑顔だった。もちろん全く同じではなく、少し違和感を感じてはいたが……それと同様な物であると確信していた。厨房からは見えにくいが、料理を渡す受付場からは遮蔽物もないので食事をしている生徒達の姿がよく見える。きっと食事をしている生徒達を見てその表情になったのだろう。そこから繋がる答えは……

 

「アーチャー様の得意料理は『家庭料理』なのですわ。食べてもらうため……喜んでもらうため……私が見たアーチャー様の姿にはそんな想いが込められていたように感じましたの!」

「…………『プッタネスカ』って家庭料理なのかなぁ?うちの家が違うだけ?」

「ううむ。俺の家でも出てはこないな。パスタといえばナポリタンやミートソースだ。」

「そ、そうなんですの!?」

 

 一般常識に疎い八百万は2人の反応に驚くと共に、的外れな事を言ってしまったのか……と考えたのか恥ずかしそうに頬を赤く染める。

 そんな八百万を見ながら緑谷は首を横に振りながら柔らかく微笑み話し始める。

 

「でもなんとなくわかる気がするんだ。衛宮さんの料理ってただ美味しいだけじゃなくて、なんて言うか……あったかいって感……『オイ!!この料理を作った奴を今すぐここに連れて来いッ!!!』………えっ!?」

 

 先程までの食堂を包む柔らかな空気は何処へやら、緑谷のよく知っている怒鳴り声が食堂中へ響くと辺りがシン……と静まりかえる。緑谷は先ほど見えていたオールマイトの笑顔がガラスのように崩れ去った気がした。

 大きな声に食堂にいた生徒や職員がその発生源へ視線を集めていた。勿論彼らも同様である。そして、集まった視線の先にはやはり見知った後ろ姿があった。色素の抜けた金髪に爆発したかのようなトゲトゲとした髪型。

 緑谷達は顔を見合わせる。そこには規則を乱した者に向ける怒りからかプルプルと小刻みに震えながらメガネを正す者、自分のクラスからこんなのが出てしまったと恥ずかしさから耳を赤く染め両手で顔を隠している者、我関せずと死んだ瞳で残っているパスタを巻く者、相変わらずの様子にたはは……と苦笑いをしている者。そして緑谷はというと……

 

「何やってるの……!?かっちゃん……」

 

 まさしく目も当てられない状況といったところか、手で目を覆いながら焦った表情で文句を言っていた。

 

 

 

 

 

 

「オイオイオイ……アイツって……」

「食堂に来んのかよ……ここで見たことなんてなかったぞ……」

「え、あの人個性使ってんだけど……私達大丈夫なの……?」

 小さな声で話をし始めその場から少しでも遠くへとコソコソと歩く生徒達を横切り、衛宮は自分の持ち場に戻る。その足はどんどんと早くなり、焦りを感じさせていた。それもそのはず。トラブルの中心が自分の上司(ランチラッシュ)と共に持ち場にいるのだから。

 

「ちょ、ちょーっと待っててね……?その料理作ったの衛宮くんだから、多分もうそろそろ……あー!あー!ここで爆発しないで下さいー!!」

「嫌だったら早くソイツを連れてこいッ!」

「ぎゃーー!!やめっカウンターが煤で汚れるーっ!」

「煤なんざ出るわけねェだろうが!第一汚すなんてヘマ俺がするかァ!!」

「……何してるんですか。」

 

 声をかけると怒気と安堵の感情の違う2つの視線が衛宮に突き刺さる。……尤も片方は顔を完全に隠しているので目は見えないのだが、勢いよく衛宮に振り向く姿からその圧はよくわかる。

 

「衛宮君〜〜〜!!!待ってたんだよ!!!さぁさぁ!彼の対応をよろしくね!」

「……やっと来やがったかアーチャー……いや、衛宮士郎……」

「待たせて悪かったな爆豪。それで、俺に何の用だ?」

 

 体育祭の一件で認知はしていたのだろう。名前を呼ばれた爆豪は気に入らなかったのか、更に眉間に皺を寄せ衛宮を睨みつける。その胸ぐらを掴むためかズンズンと衛宮との距離を詰めていくが、その歩みは彼らの間に立ち塞がる様に一人の少年によって止められた。

 

「な、何やってんだよ……かっちゃん……!」

「テメェ……どっから現れやがったクソデクッ!!」

「緑谷……?」

 

 少し震えながら手を広げ、爆豪の前に立ちはだかる緑谷。しかしその存在は爆豪の怒りを増すだけだった。『めんどくせェヤロウだったが、前はここまでしないただの木偶(デク)だったはずだ』と歯軋りをしながら爆豪は緑谷を睨みつける。その鬼の形相に緑谷は一瞬怯むが、その場を動こうとはしなかった。そんな緑谷の肩に手が置かれる。衛宮は首を横に振りながら緑谷に声をかけた。

 

「大丈夫だ、緑谷。とりあえず爆豪の話は聞くから2人とも落ち着け。それで爆豪?俺の料理に何かあったのか?」

「……『何かあったのか』だと……!?ふざけんじゃねェ!!こんな中途半端な辛さ出しやがって……俺への当てつけかァ!?ムカつくんだよ!」

 

 その答えに2人はピシッと動きが止まる。

 緑谷は理解していた。爆豪が理不尽で横暴なヤツだと確かに理解していた。しかし今回のは明らかにおかしい。ただ単純に『辛みが足りない』だけでここまで騒ぐなんて、今まででこんなに横暴な事は数えるくらいしかない。

 緑谷が衝撃から動けないままでいると衛宮が突然腕を組み頷き始めた。何か理解した様子だったが、その事を聞く前に衛宮は話を始める。

 

「……わかった。昼休みは……後25分くらいか。よし!今から辛いものを作るが問題ないか?たぶん10分もしない内に完成するが……」

「え、衛宮さん!?」

「緑谷達はまだ食べてる途中だよな?ここは俺に任せてゆっくり食べててくれ。」

「ッチ……作るんならとっとと作れや。」

 

 戸惑う緑谷を無視し、爆豪は1番近いテーブルへドカッと乱暴に腰を下ろす。その迫力に気圧されたのか同じテーブルで食事をしていた生徒達は慌ててお盆を持ち違う席へ逃げるように移動する。結果そこそこに大きいそのテーブルには爆豪1人だけが座る事となっていた。戻っていいのかとオロオロする緑谷を「本当に大丈夫だから」とこの場から無理矢理追い出し、衛宮は「よし!」と呟いた。

 

「材料的にも時間的にもあのソース一択か。……また暴れられちゃ困るからな。さっさと作るとするか。」

 

 まずはにんにくをみじん切りに、ベーコンは細切りに切っておく。そしてこれもソースが時間がかからずにできるので、茹で時間の長いパスタであれば先に茹でておく。

 フライパンにオリーブオイルを引き、ベーコンを入れて焼き色をつける。そしてにんにくと輪切の鷹の爪を入れ……入れて……………

 

「……本当にこんなに入れても大丈夫か……?」

「んー?衛宮くんどうかしたのかい?」

「あ、ランチラッシュさん。……いや、子供の頃にじいさんと中華料理店に入ったらどれもこれも激辛料理で……その時から少し……」

「あー……でも入れないとそれはそれでマズそうだね……ほら爆豪くんがすごい形相でこっち見てるし………」

「…………」

 

 オリーブオイルが引かれたフライパンににんにくと大量の鷹の爪を入れ、香りを出す。……もう既にフライパン一面が赤い。焦げないように弱火で炒め、ホールトマト缶と茹で汁を入れて崩しながら煮込む。塩で味を調整し、カサが減ったらパスタを入れて絡ませる。後は更に盛ったら完成!

 

「待たせたな。ほら『アラビアータ』だ。かなり辛めにしといたから一応チーズも持ってきておいたんだが……」

「いらねェよ!!」

 

 悪態を吐きながら衛宮の手から奪い取るかのように皿を受け取る。そんな様子にしょうがないなと言わんばかりの表情を浮かばせ、爆豪の前の席に座る。

 

「……オイ。何でテメェも座りやがる……!」

「あぁ、ランチラッシュさんから『片付けはこっちでやっておくから先に休んでて』と言われてな。緑谷達ももう居ないし、味の感想を聞かせてくれ。」

 

 爆豪のクレームに対応した衛宮への配慮だろうか、チラリとランチラッシュの方へ目を向けると明るく手を振っていた。

 

「ッチ……気に入らなかったら叩き返してやる。」

 

 文句を言いながらフォークで丁寧に巻き、大口でパスタを一口食べる。彼本人からの要望とはいえトラウマを呼び起こす程に唐辛子を入れていた衛宮はハラハラしながら様子を伺う。

 

「……まだ辛みが足りないが、まぁいい。」

 

 口をへの字にしながらそう言うと、今度は勢い良くパスタを口に運び始めた。少し目を丸くした衛宮だったが、悪態を吐きながら食べ進める姿を見て口角が上がる。片肘を突きそっぽを向きながら箸を進める食べ方、悪態を吐きなんだかんだで美味しそうに食べるその姿。似ても似つかない。だけど……

『あーでもこの卵焼きは……悪くないんじゃない。』

『卵焼きならまた食べてもいい。他はもう少し頑張れよ。』

『そりゃどうも。』

 

「……オイ。何ニヤけてやがる。キメェわ。」

「……ん、あぁすまん。友人のこと思い出してて……」

「そうかよ。」

 

 一瞬で無くなってしまったパスタの皿にフォークを置くと爆豪は席を立つ。衛宮はその後ろ姿を見送りながら食器を片付けようとしていたが、その手は足と共に止められた。

 爆豪は教室へ戻る足を突然止めると振り返り、顔を寄せ衛宮を睨みつける。……所謂眼をつけて顔を近づけると

 

「アァ……一つ言い忘れていた事があった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テメェの個性『投影』なんかじゃねェだろ?」

「…………!」

 

 衛宮はその言葉に表情を変えてしまう。その言葉から爆豪自身も予想、推測の域を出てなかったようだが、衛宮の表情からその予想は確信へ変わった。

 

「その(ツラ)……本当にそうらしいな。複数の個性持ち……テメェもあの脳無とか言うヤツと似たようなタチか?」

 

 幾つもの個性を持つ改造人間(ヴィラン)。かのUSJ襲撃事件に保須市の事件で出現したヴィラン連合が保有していると思われるのが『脳無』である。その異質な見た目が何よりだが普通ではあり得ない複数の個性持ちが特徴であり、爆豪は衛宮もそれと同じだと考えているようだった。

 

「デクの野郎を守るために爆発する矢を放ったらしいな。その話を聞いた時から大体わかった。」

「普通個性ってのは1つの事実だけだ。半分野郎みてェな親2人からそれぞれ1つずつを受け継いだ力を持つ奴も炎と氷のそれぞれ1つの事実だ。その個性を使う過程、使う方法、使う為の道具で個性の幅を広げるもんだ……なんでもできる魔法のようなものじゃあねェんだよ。」

 

 爆豪が保有しているニトロのような汗を使い爆発を行う『個性:爆破』この個性を例として挙げるならば……

 その力を使い両手から爆発させ高速移動を行い、方向によっては飛ぶこともできる『爆速ターボ』

 爆発の力を一点に集中させ貫通力を上げる『徹甲弾』

 コスチュームに汗を溜めそれを投げ飛ばし遠くを爆発させる『手榴弾』

 身体を回転し遠心力によって指の先端に大量の汗を集め、爆発しながら相手に接近し集めた汗で大爆発を起こす『榴弾砲着弾』

 そのどれもが個性の過程で発生する汗や爆発のさせかたを利用して行なっている。

 

「だからこそテメェは異常なんだよ。『物を解析する』個性と『物を作り出す』個性、昔の動画にもあるが『物質を強化』することもできるんだってな……その上『爆発』だァ!?ふざけてんじゃねェぞ!」

「聞くところによると爆破のタイミング、威力、規模全て完璧だったそうだな……単純に火薬や爆弾を取り付けただけなんざ言い訳にもならねェぞ?爆破の個性を持つ俺じゃなくてもわかるんだよ!」

「特にあんのクソナードにポニテ女は気付いているだろうな……気付いて敢えて深入りしねェようにしてやがる。クソキメェわ!」

「…………」

 

 衛宮の表情は変わることはなかったが、その頬にはじっとりと汗が垂れていた。その様子に少し仕返しができたと考えたのか爆豪は一瞬口角を上げ再び口を開く。

 

「テメェが何モンだろォが関係ねぇよ。味方(ヒーロー)だろうが(ヴィラン)だろうがな。俺が求めんのはただ一つ『圧倒的な1番』だ。テメェもクソデクもオールマイトもブチ抜いて俺が最強になってやる。」

 

 宣戦布告。その発言に満足したのか「フンッ」と鼻を鳴らし食堂から立ち去っていく。

 その後ろ姿を見送る衛宮は昼休みが終わるチャイムが鳴るまで動くことができなかった。

 

 

 

 




 最後まで読んでいただきありがとうございました!衛宮さんと例の中華料理店の話は『衛宮さんちの今日のごはん』のエビチリ回にてありましたね!ああいうちょっとした過去のシーンがとても好きです(突然の告白)

 次回は初登場となるキャラがメインです!(どのキャラかは秘密ですが……)楽しみに待っていただければ幸いです〜!
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