ランチラッシュのサイドキックは正義の味方   作:アイン_BD’sR

13 / 16
 ぬおぉぉぉぉ!!連日投稿ぅぅぅぅ!!初めてですかね連日なんて……構想はできていましたが文字起こしは全くだったので完全に1日で仕上げました!!疲れた……けど達成感エグい……
 というわけで12話です!以前の後書きに書いた通りこの回で一区切りとはなりますが、まだまだ書きたい事がたくさんあるので頑張りますよ!!

 あと特急で書いたのでどこかおかしい所があるかもしれないです……そんな時は教えていただけるととても助かります!!


第12話 始まりの終わり 終わりの始まり そして

 

 

 

 

「っ………!」

 

 ズキリと頭が痛み、視界が揺れる。ふと右腕を見るとじわじわと浅黒い肌が広がり手首辺りに到達すると色の侵食が収まる。やがて痛みが無くなり閉じかけていた瞳を開くと先程までのブレが嘘のように視界が開ける。

 その浅黒い肌に包まれた鷹のような鋭い目に映るのはエッジショットとオールマイトを先頭にヒーロー達が街中のバー前に集まっている状況だった。

 やがて突入開始の号令がイヤホン越しに聞こえるとオールマイトが壁を壊しながら突入しているところが見える。派手に大きく壊しているのは衛宮の視界を壁が遮らないようにしているからか。

 

『ここで終わりだ死柄木弔!!』

『黒霧制圧……アーチャー警戒を……!』

「了解!」

 

 他のヒーローには見えない距離ですら衛宮の瞳は捉える事ができている。誰かが報告しているがシンリンカムイの全体捕縛にグラントリノの素早い蹴り、そしてエッジショットによる黒霧の制圧が全て確認できていた。

 

『……るな…………こん……』

 

 報告をしたヒーローが通信を付けたままなのか衛宮の耳に小さく聞き取れない声が聞こえる。それは音質もあってか掠れており言葉の意味を捉える事ができずにいた。

 

『こん……あっけな………』

『失せろ……………消えろ……………』

「何を……?」

 

 しかしその声は確かに少しずつ大きく呪言のように響き、その意味をようやく捉えるほど大きくなると突然爆発したかと思うほどの爆音が衛宮の鼓膜を震わせた。

 

『奴は今どこにいる死柄木!!』

『お前が!!嫌いだ!!』

「っ!?」

 

 聞き取れない音を聞こうとした衛宮はイヤホンに注意してよく聞こえるようにしていた。手で押さえて聞き込んでしまった。その怒りが籠った爆音は確かに衛宮の耳に衝撃を与え、一瞬怯んでしまう。

 一瞬、その一瞬だった。視界のヴィラン連合のメンバーと爆豪の口から泥のような物が溢れ、同時に泥から能無と呼ばれる怪物が姿を現す。明らかなる緊急事態。衛宮は右腕に力を入れ矢のように細い剣の投影を終わらせると狙いを泥に呑まれそうになっている死柄木へと向ける。

 

 しかしその矢を放つことはなかった。

 

「がっ……こ、これは……!?」

 

 口から何かが溢れ出る。視界を埋め尽くすはさっきまで見ていたはずの泥のような何か。放とうとする矢も腕も体も泥に呑まれ自由に動かす事ができなくなり、弓すらも手から離れてしまう。

 

「っ士郎!?何があったの!?士郎!!」

 

 落ちて来た弓から何かが起きていると察知したのか下で待機していた遠坂の声が聞こえる。だが泥は既に体の全てを包み込み少しずつ小さくなると、そこには元々何もなかったかのように消えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ここは」

「来たね衛宮士郎くん。」

 

 口内に残る泥を吐き出し周囲を確認する衛宮だったが、名前を呼ばれ声の主と目が合う。地面は抉れヒーローは倒れ、それを行なったであろう者がそこに立っている。スーツに機械的なマスクを被ったアンバランスなそれは……マスク越しに見える顔がまるで骸骨のように見えるそれは……

 

「みんなが来る前に少し話したかったからね。ちょっとだけ早くワープしたんだ。」

「お前が……お前がこれをやったのか……!?」

「ここにいた人は……ここで暮らしていた人達は……っ!!」

 

「ただのモブさ。君とは違ってね。」

 

 正しく魔王と呼ばれる存在であった。

 

「君の個性……とても興味があるんだ。色々とできるらしいね。投影に強化に爆発。それに投影したものも興味がある。互いに引き合う性質を持つ双剣……いやもしかして念動力で動かしているのかな?どちらにしろ、個性一つに収まる枠では無い。」

「もしも仮に個性を与え奪う力を持つ者が…そう、そんな者がいれば……残念だけど見過ごす事はできないんだよ。」

 

 つらつらと話すその者は顎と思われる場所に当てていた手を離し、立ち尽くす衛宮の頭に腕を伸ばす。そしてガキィッと硬い物同士がぶつかり合う音がし、その腕が止まる。衛宮は右手に持っていた矢と化していた剣を振り下ろし、男は空中に六角形の半透明な盾を作りそれを止めていた。

 

「おっと危ない危ない。」

「お前が……AFO(オール・フォー・ワン)……っ!」

「僕の事を知っている……簡単には行かないか。だけど因子ぐらいは確認したいんだ、協力してくれないかな?」

 

 その問いかけに剣で返答する衛宮だったが難なく弾かれてしまい後方へ吹き飛ばされる。「話をしたかったのだけどね……」と落胆するAFOは後ろを振り向くと空中に泥が現れる。「ゲッホ!!くっせぇぇ!!」という声と共にそこには爆豪が現れ、それに続きヴィラン連合が次々と現れる。

 

「爆豪!!」

「なっんでここにテメェが……っ!!?」

 

「また失敗したね弔。でも決してめげてはいけないよ。またやり直せばいい。こうして仲間も取り戻した。」

「この子もね……君が『大切なコマ』と考え判断したからだ。いくらでもやり直せ。その為に僕がいるんだよ。」

 

「全ては君の為にある」

 

 まるで子供に言い聞かせるように。まるで自転車を乗ることに失敗して諦めないように鼓舞するように。死柄木に手を伸ばして優しい言葉を投げかける。だけども、その思想はその行動理念は何一つ理解する事ができない。チグハグな言葉にその男の威圧感に爆豪は思わず血の気が引いてしまう。

 

「…………やはり……来ているな。」

 

 AFOがポツリと呟くとガンッと大きな音と共に広げた両手に拳が収まる。そこに現れたのはNo.1ヒーロー・オールマイトの姿であった。

 

「全て返してもらうぞオール・フォー・ワン!!」

「また僕を殺すかオールマイト」

 

 オールマイトの圧力からゴッという音と共に地面が抉れ、均衡が弾けたかのようにパンと音が鳴り互いに距離を取る。

 

「ずいぶんと遅かったじゃないか。バー前からここまで5km余り……僕が脳無を送り優に30秒は経過しての到着……衰えたねオールマイト。」

「貴様こそなんだその工業地帯のようなマスクは!?だいぶ無理をしているんじゃあないか!?」

 

 互いに以前の頃からの衰えを煽り合い、そしてそれを受け流す。まるで昔からの旧友同士が冗談混じりに話す言葉。しかし明らかにそれには憎悪の感情が入り混じっていた。

 

「5年前と同じ過ちは犯さん。オール・フォー・ワン。」

「爆豪少年を取り戻す!そして貴様は今度こそ刑務所にブチ込む!貴様の操るヴィラン連合もろとも!!」

「それは……やる事が多くて大変だな。お互いに。」

 

 意気込みと共に突っ込むオールマイト。それに対しAFOは左腕を振り上げ迎撃の体制を取ろうとするが、その腕に金色の鎖が絡みつき腕が振り下ろされる事はなかった。迎撃に失敗したAFOはオールマイトの拳を右腕で咄嗟に受け止めるが、簡単には止める事ができるはずもなく殴り飛ばされてしまう。

 

「っ!今のは!?」

「この鎖……なるほど君だね?衛宮くん。」

「衛宮くん!?ここに来ているのか!?」

 

 AFOは鎖を触りその繋がれている先に目線を向ける。鎖の先は土煙に包まれその先を見る事は叶わなかったが、そこから聞こえる声は確かに衛宮の声であった。

 

「『天の鎖(エルキドゥ)』……かの英雄王が持っていた鎖だ。もっともこんな粗悪品を見たら奴は激怒する事になるだろうが。」

「英雄王……エルキドゥ……?聞いた事がないねぇ……やはり君は面白い!この鎖も簡単には壊せそうにないな。だが」

 

 禁じられた3回目の投影。それはしっかりと形を成し、AFOの動きを止める。しかし、腕に絡まった鎖を掴んだかと思うとAFOは腕をブクリと膨らませ力任せにそれを引っ張る。増強系の個性を重ねた腕は恐ろしい力を持ち、踏ん張り切る事ができなかった衛宮は煙からその姿を表しAFOの元へ引き摺り出される。

 

「……ッ離せ!」

「お陰で君を捕まえる事ができた。君に感謝しないとね?それじゃあ……」

「衛宮くんッ!!!止めろッオール・フォー・ワン!!」

 

「個性を貰うよ?」

「個性を奪うなッ!」

 

 その言葉も虚しくその掌は衛宮の頭部へ収まってしまう。その光景に間に合う事ができなかったオールマイトは拳を硬く握り締め、効くとは思えない風圧での攻撃をしようとしていた。

 

「……これは」

 

 静かに……だが確かに驚いた声色でAFOは呟く。その声がオールマイトにも聞こえたのか風圧での攻撃を止め、走りを再開した。AFOは少し思案したのか動きを止める。そして「あぁ……そうか」と納得したように声を出す。まるで新しい玩具を買ってもらった子供のように歓喜極まりない声色だった。

 

「個性因子が無い………君は無個性だね?」

「……っ!!それは……」

「衛宮くんが無個性!?そんな馬鹿な!彼は……!!」

 

 AFOは衛宮から手を離すと天を仰ぎ踊るように腕を広げ笑って見せる。今までの彼からは考えられないその高笑いにその異様な光景に衛宮もオールマイトも少し離れた場所にいる爆豪も固まってしまう。何を考えているのかわからない男の行動に理解が追い付いていない。そう……1人を除いて。

 

「あぁ……すっかり忘れていたよ。僕がドクターと出会った頃……誰かは覚えていないがあの頃に売り込みに来ていたね……」

「所詮個性の劣化だと、科学でできる事の延長線だと、あの頃は突っぱねてしまったなぁ……あぁ……とても勿体無い事をしていたなぁ……そう、確か………」

 

 

 

 

 

 

「『魔術』だったか。君は魔術師だったんだね。衛宮くん。」

 

 

 

 

 

 

 オールマイトは理解できなかった。『魔術』……幼い頃読んだ御伽噺、絵本に描かれていた。個性という物が生まれてその言葉すら非常に少なくなった。あの『魔術』が実在しているように奴は言っている。そして彼が……衛宮士郎が魔術師であると言っている。

 少し遠かった爆豪は聞き取る事ができなかった。しかしオールマイトがオウム返しのように口にした『魔術』という言葉。そして以前より抱いていた疑念。それだけで彼は正解へ辿り着く事ができた。

 

「まさかあの時のチンケな力がこんな形で目の前に現れるなんて……!僕は感動しているよ……!」

「……ごめん」

 

 縛られ黙って立ち尽くしていた衛宮がポツリと呟く。「何をだい?」とAFOは聞き返すがそんな事は聞こえていないようにもう一度小さく声を出す。

 

投影(トレース)……」

 

 4回目の投影。その力が、普段であれば腕に出る魔術回路が主の思念を無視して胸元へと集まる。やがて胸の中心が鋭く四角く光りその投影がなされる事無く衛宮は意識を深い闇へと落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………郎!士郎!!」

 

 明るい光と共に聞こえる呼びかけに反抗するかのように目を隠し、鉛のように重い身体を癒す為睡眠を続行しようとする。

 

「っ!!士郎!!!起きなさい!!」

 

 そのしつこい声が大きくなりだんだんと意識がはっきりとしてくると、その声の主を理解する。遠坂だ。薄らと瞼を開け彼女の姿を確認しようとする。眼前に広がったのは汗をかき、まるで死にかけの人を見て泣いてしまう手前の表情であった。その見た事がない表情に慌てて飛び起き声を上げる。

 

「と、遠坂!?どうしたんだ!?」

「どうしたですって………?こっちのセリフよ!!この大バカ!!」

 

 遠坂は涙目になりながら恨めしそうに衛宮を見つめる。ようやく意識を目覚めさせると衛宮は飛び起き周囲を確認する。真っ白な壁に天井、ベッドもだ。そして窓から日の光が差し込み、机に置かれていた果物や花の入った花瓶が光を反射している。ゆっくりとした時間を感じさせる病室にいる事を感じ、衛宮は血の気が一気に引き冷や汗をかいていた。

 

「遠坂っ!どのくらい経った!現場はどうなってる!?」

「………っこの!」

 

 病院にいる我が身よりも優先して他人を考えてしまう衛宮についついカッとなってしまう遠坂であったが、あの状況では仕方ないと大きく息を吸い自らの怒りを抑える。そしてゆっくりと話し始めた。

 

「……そうね。あの晩からあんた3日は眠っていたのよ。」

「3日!?それじゃあどうなったんだ!?」

「安心して。AFOと呼ばれるヴィランは捕まったわ。オールマイトのおかげでね。それと爆豪くんも無事救出できたわ。」

 

 3日という長い時間を過ごしていた衛宮であったが、解決の報を聞くと「そうか……」とようやく安心し飛び起こしていた身体をベッドに預ける。そして疑念が一つ残る。

 

「俺はどうして倒れたんだ……?」

「そう……それね。残念だけど私にもさっぱりわからない。けど、あんた3回以上の投影しようとしたでしょ。」

 

 じとーっとした目でそう言われると衛宮はビクッと体を跳ねさせ、目線を逸らす。その様子に「あーっもう!」と声を一段大きくした遠坂は安心させるように語りかける。

 

「わかってるわよ、あんな状況で何もしないって無理な話。自分を守る為にもせざるを得ないでしょ。」

「そっか……とはいえ約束破ってすまなかった……っ!」

 

 頭を下げる衛宮に優しく頭を撫でる遠坂。その場には窓から流れた暖かい風が吹いていた。その甘ったるい光景に病室に中々入る事ができない相澤は盛大にため息を吐き出すことになる。

 

 

 しかし彼女はまだ話す事ができていなかった。切り出せなかった。

 意識が途絶えたと言っていたがその足で虚ろなまま歩き、彼女の目の前で倒れたという事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間は流れ数日後の夜……雄英1-Aが寮へ案内され、各人がそれぞれ作り上げた部屋のお披露目会を提案した頃であった。

 

「お前ら朝話せなかった事を伝えに来た。ここにいない奴を連れて来い。」

「相澤先生!」

 

 大きな扉を通り共同スペースに相澤が訪れる。そこにいた生徒、そしていない生徒を確認し麗日を見て部屋にいる者を集合させるように言う。やがてゆっくりと過ごしていた者や中々顔を出せない者まで全員が共同スペースに集まる。

 

「既に家庭訪問にて説明した通り、プロヒーローを寮に配置する事となっている。」

「成程!その方達の紹介ですね!」

「あぁ、それも含めてのより詳しい説明だ。入ってくれ。」

 

 扉に向けて声がかかると重々しく扉が開く。生徒達は「誰が来るのかな?」「きっと実力派ヒーローだぜ!」「美女ッ!!」と様々な声が上がっていたが、その姿が見えた瞬間知り合いである4人が真っ先に声を上げる。

 

「「「「衛宮さんと凛さん!?」」」」

「元気だったか?みんな。」

「久しぶりね!」

 

 それほど時間は空いてない筈なのについつい久しぶりと言いそれを受け入れてしまうのは、あまりにも空いた時間に起きた出来事が大きすぎるからか。

 そして現れたその姿にピンとくる者や誰かわからない者で別れていたが、4人の反応を見て視線がそちらへ移動する。…‥一人のみ「美女ッッッ!!」と歓喜の声を上げたのち、ある一部分を見てあからさまに落ち込んでる者もいたが。

 

「静粛に。今日から寮の管理人となるプロヒーローのアーチャー、衛宮士郎とその妻である衛宮凛さんだ。」

「「管理人?」」

「「「アーチャー!?」」」

「「「「妻ッ!?!?」」」」

 

「緑谷と八百万、轟に飯田はよく知ってるだろうが彼らの力は折り紙付きだ。朝昼と晩を交代して寮内を護衛する事となった。」

「せんせー!管理人ってどういう事ですかー?」

 

 その疑問を投げかけるのは透明人間な葉隠。Tシャツの袖が片方上がっていることから手を挙げて発言しているようだ。その疑問に衛宮が答える。

 

「ああ、泊まり込みになるからな。その他の雑用も引き受けた。ゴミ回収に飯作り、それにトレーニングとか相談とかも受けるぞ。」

「私も元ではあるけどヒーローではあるからね。いくらでも頼ってちょうだい!」

 

 その言葉に生徒達がわっと喜びの声を上げる。プロヒーローを目指しているとはいえ学生である身としては頼れる大人の存在がどれだけ有難い事か。共同スペースに正しく管理人と言える受付のような小窓が壁に設置され、その奥にできた少し小さな寝室と小窓からちらっと見える各階の監視モニターが彼らの生活拠点となるそうだ。

 

「護衛とはいえ、事務作業と雑用、見回り以外は暇だろうから気楽に声をかけていいからな!」

「それではよろしく。衛宮と凛さん。」

「えぇ、相澤さん。」

 

 これ以上の説明が必要ないと判断したのか頭をかきながら寮を出る相澤。「早めに寝ろよ」という一言と共に扉がパタリと閉まるとその瞬間、生徒たちはさっきの勢いがまるで嘘のようにより強い勢いで2人に迫る。帰る時に言っていた相澤の言葉はこれから質問攻めにされるのを見越してのものだったのだろう。修学旅行の部屋から先生が出た瞬間のようにその盛り上がりを見せる彼らは1時間経っても衰える事がなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「本当に良いのか?この前は戦闘に反対していたが。」

「ええ、依頼といっても護衛でしょう?しかも長期的で襲撃が来るとは限らないものですし。」

 

 相澤は「逆に言えば来ないとも限らないがな。」とポツリと呟きベッドに横になっている衛宮を見る。その腕には以前とは違い火傷のような浅黒い肌が見えなくなっていた。顔にあるということは完治したわけではないと推測するが安心したように少し息を吐く。

 

「それにしても『魔術』か。信じがたいな。」

「えぇ、でも事実です。」

「相澤さん。情報の漏洩防止、ほんとうにありがとうございます……」

 

 その言葉に小さく頷く相澤。あの晩、嬉々として語り出したAFO。その様子をカメラが捉えていた。遠い為声も聞こえず、マスクで覆われ口元も見えない状況であったがその映像を無理矢理回収していた。万が一にでもその事実が世間に出てしまうとどうなるかわかったものではない。

 

「『魔術』を知るのはあの場にいた者と情報を共有された一握りのヒーローのみだ。そうあの場にいた者………」

 

 思い出すのは死柄木と呼ばれる男とその仲間……ヴィラン連合の面々であった。

 

「故に衛宮、お前も重要参考人として我々が保護したい。寮には外にも数人プロヒーローを待機させる予定だ。」

「逆に言ってしまえば監視……と言ったところかしら?新たな第三勢力と捉えて監視しておきたいのでしょう?」

「………」

 

 その問いかけに相澤は答えない。この話を断られてしまうと目的が達成できない、そんな状況に安易に答えてしまう事ができないのだ。しかし否定の言葉が出てこないとなれば粗方合っているということでもある。無言を貫く相澤に衛宮は体を起こして目を合わせる。

 

「俺は相澤さんを信頼します。少しずつとはなると思いますが我々が知っている事も話します。」

「ちょっ……士郎!!」

「凛もそのつもりだったんだろう?大丈夫。相澤さんは信頼できる人だから。」

 

 その言葉に相澤はつい頭を上げてしまう。その目に映っていたのは若き頃のあの日。山田に頭を雑に撫でられ、それに照れながら柔らかく微笑む幼い赤銅色の髪の子。そしてその様子を見ながら満面の笑みを浮かべる空のような……

 

「ありがとう衛宮。詳しいことはまた追って伝える。それじゃあ安静にな。」

 

 慌てて後ろを向き要件だけ伝えると相澤は部屋を出る。その際に顔に手を当てていることを衛宮は気が付いていた。

 軽く目を擦り、自前のタブレットを出すとそこには『またも』失踪事件の表題がニュースに上がっていた。近頃起きているその悩ましい事件につい先程まで話していた内容も相まって現実味のない事を考えてしまう。

 

「まさか……な。」

 

 そう呟くと相澤は学校の通信媒体を開き、衛宮の件を報告するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで?コイツで本当に合ってんのかよ。ただの女子高生だぜ?」

「あら。私の事が信じられないのであれば契約を切っても良いのよ?貴方無しでも問題は無いのだけれど。」

 

 薄暗い部屋。電球が消えたり点いたりしながら部屋を薄ら照らすその場所は錆だらけの鉄に包まれた小部屋。一組の男女が軽く言い合うが女性の方が上手なのか男はふてぶてしく謝罪の言葉を口にする。

 

「コイツは今までとは違うのか?」

「ええ、今までのは言わば燃料ね。可哀想だけどしょうがないわ。そしてこの子は依代。適性は十分だから安心しなさい。」

 

 女はそう言うと視線を下に向ける。そこにいたのは丸型の鉄の板に乗せられ手足を鎖で縛られ動きが取れない一人の女性であった。眠らされているのか意識はなく、起きても問題ないようにか口は布で縛られていた。

 

「さぁ、早速始めましょうか。」

「あぁ、頼んだぞ『キャスター』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、茶番もここまで。これより本当の争いが始まる。」

 

 教会の中で一人呟く男がいた。

 

「残り数人。決まり切るまでどの程度の時間を要するのか。想像はあまりに容易。」

 

 誰もいない空虚に語り続けるその男は光を灯さない目を閉じて口角を上げる。

 扉が開きそこにいたのは一人の男と黄色いカッパを身につけた女性が歩み寄る。その姿を見るとその男の表情はより歪み始める。

 

「これでまた一人決まったな。」

「『セイバー』よ」

 

 セイバーと呼ばれるその女性は金色の髪を揺らし、碧色の瞳が神父の姿を映した。

 

 

 

 

 

 

 

 




 最後まで読んで頂きありがとうございました!!しっかり書いたつもりなんですが改めて見ると意外と短い……1万字以上で毎日投稿している方はバケモノですね(褒め言葉)

 そして最後には謎の人物が出てきましたねぇ……一体誰なんでしょうねぇ……

 感想、ここすきがとても励みになってます!どんどん書いてくれると作者がとっても喜ぶので是非お願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。