ランチラッシュのサイドキックは正義の味方   作:アイン_BD’sR

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 やった!今回は筆が乗るぞ!更新早いぞ!と思っていたら1ヶ月以上経っていたとは……時間が経つのはあっという間ですね。
 というわけで14話です。あれ?前回もゼリー系統じゃ……?といった質問は受け付けていません。(7割くらい書いた時に気が付きました。しょうがないね!)


第14話 しゅわしゅわフルーツポンチゼリー

 

 

 

 

 

「蛙吹……であってるよな?もう寝る時間だぞ。どうしたんだ?」

「え、衛宮………さん。ケロ……」

 

 衛宮と遠坂が寮の管理人として配属された初日の夜。朝と昼の担当である遠坂が就寝し、警備の為リビングに備え付けられたソファから立ち上がった衛宮は隠れている者に声をかける。

 そこに居たのは蛙のように大きな瞳をし、湿ったように真っ黒な長い髪をしていた女生徒。蛙吹梅雨であった。

 

「隠れて何をしようとしていたんだ?」

「そ、その……」

 

 その様子は明らかに動揺しており、緑谷達からよく聞く性格のそれとは違って見えた。

 

「私……あの日に爆豪ちゃんを助けに行ったみんなに話したい事があるの。でもできれば他のみんなには聞かれたくない……」

「だからお願い……少しだけでいいの。外で話をさせて欲しいの。」

 

 あの日……AFOとの一件があった日のことであろう。病院で相澤から聞いていた衛宮はその事を理解していた。外の警備ヒーローもいるだろう。衛宮は問題はないと考え頷く。

 

「そうか、蛙吹は整理をしたいのか。」

「……」

「わかった、それなら一つ条件がある。俺も同行する。話を聞いてしまう事にはなるけど、問題ないか?」

「…………わかったわ。ありがとう衛宮……さん。」

 

 玄関を開けると灯りが一つ周囲を照らす。その元に衛宮と蛙吹の2人は立ち、会話は無くただ待ち合わせの人を待っていた。

 やがて玄関扉が開くと緑谷に轟、八百万と飯田の衛宮からして見るといつものメンバーに麗日と切島が姿を現す。衛宮の姿を見た面々は驚きの反応を見せる。

 

「な、なんで衛宮さんがここに……!?」

「まぁ、監督役みたいなもんだ麗日。流石に無断で外に出すのは管理人として許されないからな。」

 

 そう言うと面々はなるほどと受け入れる。ただ、麗日だけは顔を引き攣らせ後退りをしていたが話に参加したいのか踏み止まる。全員の顔を見ると蛙吹は意を決したのか口を開くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「お茶子ちゃん……ちょっといいかしら?」

「梅雨ちゃん?開いてるから入っていいよー!」

 

 麗日は完全にオフモードなのかふわふわとした声で扉の向こうにいる友人に入室の許可を出す。ガチャリと扉が開き顔を覗かせるのは瞼を落とし、口角が下がっている。表情を崩さない事が特徴的ないつもの彼女とは違う蛙吹の姿であった。

 

「……!どうしたの?もしかして……昨日の事?」

 

 麗日は昨日の話を思い出す。もしかしたら途中で自分が代わりに話してしまったから本当に言いたい事が言えなかったのか。それとも何か自分にも話しておきたい事があったのか。集中して聞くために身構える。

 

「…………」

「……………衛宮さんについてなの。」

「………へっ?」

 

 その言葉に麗日はついついよろけてしまう。余程身構えていたのか、虚を突かれ間の抜けた声が漏れ出し真面目な顔から中途半端に表情が崩れてしまう。

 

「大丈夫?お茶子ちゃん。」

「アハハ……大丈夫大丈夫。えーっと衛宮さんについてだっけ?」

 

 心配されてしまった事が気恥ずかしいのか指で頬を掻くと話を戻し続きを促す麗日であった。その言葉に肯定の意を示すように蛙吹はゆっくりと頷き、話を戻す。

 

「そうなの。衛宮さんについて色々と教えて欲しくて……」

「な、なんで私に?」

「お茶子ちゃん、食堂によく行っていたのよね。緑谷ちゃん達と一緒に。だったらよく知っているかなって思って……」

「い……いやいや!!」

 

 麗日は手を広げブンブンと振り否定の意を見せる。それはもう手首の先が飛んでいってしまうかと思わせるほど強く否定する。

 

「最近はあまり行ってないし!それに行っていたのはみんなと一緒で特に衛宮さんの事は意識してなかったし!そ、それに……っ!」

「お、お茶子ちゃん……?」

 

 否定の言葉を勢いよく口にしたかと思えばピタリと止まる。心配そうに様子を伺う蛙吹だったが、俯き表情を見せない麗日は深呼吸をした後ゆっくりと重々しく言う。

 

「……ここだけの秘密にしてもらえないかな。梅雨ちゃん。」

「……ケロ。約束するわ。」

「ありがとね……実は私」

 

「あの人の事……衛宮さんの事が苦手なの。」

 

 無理に作った笑顔で言う麗日の言葉はどこか苦しそうに見えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜の11時……寮の共同スペースとはいえ、各々が部屋に戻り明日のため就寝の準備を進めている時間。そこには3人の学生と1人の管理人がいた。

 奇妙な事に学生の1人は十数分……もしかしたら数十分、果ては一時間以上か。管理人を見ては目線を外し、立ちあがろうとしては突如止め、明らかに挙動不審な動きをしていた。

 

「………えぇっと、どうしたんだ?蛙吹。……それに轟と緑谷。」

「俺は緑谷と少し話してただけなんだが……」

「もし聞かれたくないなら僕らは部屋に戻るけど……」

 

「……いえ、できれば緑谷ちゃんも轟ちゃんもいて欲しいの。いるだけでいいの。」

 

 その言葉を聞いた2人は蛙吹とは違う元々座っていたソファーに腰をかける。

 それからしばらく経ち、やはり話す事ができない蛙吹は座っている大きなテーブルをじっと見つめ俯いてしまうのであった。しかしコトリという音と共に視界の端に何かが映る。

 

「ほら、あまりものだけどこれでも食べながら話そう。緑谷と轟の分もあるぞ。」

「本当ですか!?」

「ありがとうございます。頂きます。」

 

 自分の目の前にある、そして衛宮がトレーの上に乗せている物はカクテルグラスにぱっと見カラフルな見た目をしたゼリーであった。しかしよく見るとサイの目状のフルーツが幾つも入っており、ゼリー内にある空気の粒が色を反射しカラフルに見えたのであった。

 

「ケロ……これは?」

「フルーツポンチゼリー。蛙吹、ゼリーが好きって聞いたからな。口に合うといいが。」

「とっても美味しそう……いただきます。」

 

 ゼリーを掬い上げるとかなり柔らかく、つるんとした感覚がスプーン越しに伝わる。口に入れるとしゅわりとした刺激が広がり、優しく強い甘みが舌を包み込んだ。その刺激に面食らったのか驚いた声で蛙吹は口を開く。

 

「これって炭酸……!?美味しい……」

「あぁ、炭酸ゼリーだ。琥珀糖を作ったんだがそのついでで試しにな。」

 

 

 先ずは好みの果物を用意する。シロップも使いたいので缶詰やカット済みの物がおすすめ。今回はパイナップルと桃、あとさくらんぼを使う。

 常温の缶詰からシロップをボウルに入れ、果物を取り出して一口大に切り分ける。食感を残したい時は大きめに、全体の一体感を感じたい時は小さめに切る。

 もしも生の果物を入れたい場合は同じく一口大に切り分け、缶詰から取り出したシロップに漬けて冷蔵庫で2時間以上冷やすと良く馴染むのでおすすめ。

 常温にしたサイダーを別のボウルに少量注ぎ入れ、シロップが入ったボウルに残りのサイダーを注ぎ入れる。少量のサイダーを温めてゼラチンを入れ溶かす。温め方は電子レンジでも問題ない。

 ゼラチンを溶かしたサイダーをシロップと合わせたサイダーに注ぎ入れゆっくりとかき混ぜる。この時冷えているサイダーやシロップにしてしまうと、注ぎ入れたゼラチンがそのまま固まってしまう事があるので常温が好ましい。また、かき混ぜる際は炭酸が抜けないようにゆっくりと静かに混ぜる。

 容器の半分程まで注ぎ入れ果物を好きなだけ盛り、最後にカサが8分目程になるまで液を注いだら冷蔵庫で3時間ほど冷やして完成!

 果物が底に沈むのではなく全体に広がるようにしたい時はゼラチンを溶かしたサイダーを入れる際に一緒に果物も入れ、氷水でボウル後と冷やしながら混ぜる。やがて全体的にとろみが出てくるので、その時に容器に注ぎ入れると果物がゼリーの全体に広がった状態で固まるのでお好みで。

 

 

「しゅわしゅわして爽やかで美味しいです!」

「あぁ、フルーツも多く入っているから飽きが来ないな。」

 

 少し離れたソファーに座る緑谷と轟はゼリーを食べ、その美味しさにテンションが上がったのか少し声を大きく話をする。

 対する蛙吹は口角を緩ませたが、相変わらず沈んだ雰囲気を出し顔を上げる事はなかった。そんな様子に意を決したのか重々しく衛宮は口を開く。

 

「……昨日の夜の事か?」

「あっ……!」

「………」

 

 その一言に回答は無い。緑谷の少し緊張した声が聞こえたのみである。

 衛宮は昨晩の蛙吹から緑谷と轟、八百屋に切島の4人に話をしていたことを思い出していた。あの時の蛙吹が言っていた一言が「私……思ったことは何でも言っちゃうの」という発言が今の状況と真逆である事が不可解であった。そしてその理由を想像する時間は彼女自身がこの場で作ってくれていた。

 

「あの時、蛙吹が話した事は決して間違いじゃない。あの時の告白はあの場にいたみんなをより良いヒーローに押し上げたと思っているよ。」

「え、衛宮さん……」

「でもこう思っているんじゃないのか?」

 

『あの日の言葉は私の不安をみんなに与えてしまっただけ』

『何でも言ってしまう性格のせいでみんなを悲しませてしまった』

『せっかく気持ちを切り替えていたみんなを暗い気持ちに戻してしまった』

 

「そんな……ッ!」

「蛙吹……そんな事は……!」

 

 聞いていた緑谷と轟は否定の声を大きく上げ立ち上がる。そんな彼らを衛宮は首を振り、その先の言葉を止めてしまう。

 

「確かに何でも言ってしまう性格は直さないといけないと思う。緑谷、ヒーローにおいて一番必要なスキルは何かわかるか?」

「ぼ、僕ですか!?えっと……人を救う為の力……敵を倒し人を救助する力ですか……?」

 

 脳裏に浮かんだのは昔の大災害。炎の海から100人以上を笑顔で助け出すヒーローの姿。一人のヒーローのデビュー動画。自分がヒーローを志すきっかけとなったオールマイトの姿であった。その回答に衛宮はゆっくりと頷く。

 

「確かに力があれば誰かを救う事はできる。でもな、一番必要なのは戦闘技術でも救助技術でも無いと俺は考えている。勿論ヒーローとして活動するには必要な力ではあるけどな。」

「ケロ……それじゃあ……」

 

 蛙吹はその先の答えが気になるのか顔を上げるとようやく目を合わせる。その様子に衛宮も優しく微笑むとその答えを口に出す。

 

「『守る人を不安にさせない事』それが一番だと思う。」

「守る人を……」

「そう。災害に遭ってしまった人や負傷してしまった人。彼らに必要なのは最悪を考えさせない事なんだ。」

「もしも目の前で不安にさせる言動や行動をするとどうなるか。自らの命を守るためを最優先で行動してしまう。そうしたら避難誘導や救護活動なんて以ての外、最悪被害が広がってしまう。」

 

『人々を笑顔で救い出す』
『平和の象徴は、決して悪に屈してはいけないんだ』

 その衛宮の言葉を聞き思い出すのは忘れもしない、初めて憧れに……オールマイトと出会ったあの日。敵の襲撃で失った半分の呼吸器官と胃袋とその悲惨さが見て取れる傷跡。そんな男も笑顔で人々を救う。

 程度の大きさではない。同じ心を持つ衛宮を緑谷は改めてヒーローとして凄まじい人物であると考えていた。

 

「私……」

「……でもな。その言葉は、思った事をそのまま話せる事はとても大切だとも思う。」

「……ケロ?」

 

 先程の言葉と真逆な言葉に緑谷はキョトンとしてしまう。それは自らの心を封じる茨の道。それに身を投じるヒーローの話だと考えていたからである。同じ事を思ったのであろう蛙吹も疑問の声をあげていた。

 

「自分の思いを考えを気持ちを、人に伝えるのもやっぱり言葉なんだ。心を落ち着かせてちゃんと口にしないと伝わらない。」

「そう、自分の事を良く思っていない奴にも」

「っ……!」

「2度と話したくないような恨んでいる相手にも」

「……」

「そして大切に思っている友達にも」

「ケロ……」

 

 それぞれに思う事があるのであろう。緑谷は肩を振るわせ、轟は相変わらず無言でしかし苦虫を噛み潰したような辛い顔をし、蛙吹は次の言葉を待ち衛宮をじーっと見つめる。

 全員の反応を見た衛宮は口を開くが、少し躊躇うように声を出さない。ゆっくりと口を閉じてしまうと、少し考えたのち目を閉じ息を軽く吐くと穏やかに話を続ける。

 

「たとえ相手と自分が決して交わらないような関係でも」

『そんな男は今のうちに死んだ方がいいと思わないか……自害しろ、衛宮士郎』

 

「どんなに恨みを重ねても、どんなに相手を否定したくとも言葉を想いをぶつけなくては伝わらない。」

『この夢は決して、俺が最後まで偽物であっても、決して!間違いなんかじゃないんだから!』

 

「最終的にそれがどんな道に続くのかわからない。その道を少しでも目指した場所へ導くのは自分の言葉なんだ。そしてその心を変える事ができるのも言葉……自分の心なんだ。」

 

 少し遠い目をした衛宮の言葉が止まると静寂が訪れる。各々がその話を自分に当てはめて考えているのであろう。

 やがて食べかけだったゼリーをコトリとテーブルに置くと蛙吹はゆっくりと話を始める。

 

「そう……ね……きっと伝えないとずっと後悔するでしょうから。」

「衛宮さん……?あなたに言いたい事があるの。私を…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで?どーしたのよ士郎?」

「断ったよ……まさか相談したい事が想像していた事と違ったなんて……」

 

 頭を抑え盛大にため息を吐きながら俯く衛宮の肩にポンと遠坂は手を置く。慰めなのか同情なのか。しかしその声は確かに笑いを含んでいた。声だけでわかる……絶対に遠坂は今ニヤニヤしている……と視界に入らない遠坂の姿を安易に想像する衛宮であった。

 

「あの時クドクドと話していたのが全くの見当違いだったとは……」

「あら?いいじゃない。いつかは学ぶ事とはいえ、きっとあの子たちには必要な話だったわよ。」

「だといいけどな……」

 

 設営させた小さな事務所には小さな机と椅子があり、マグカップには湯気を上げるコーヒーが注がれていた。遠坂は衛宮の向かいの椅子に座ると今度はクスリと優しく笑いかける。

 

「でも断らなくてもよかったじゃない?梅雨『ちゃん』は距離を縮めたいってことでしょう?」

「流石に女子高生の下の名前をちゃん付けなんて同じ女性の遠坂ならまだしも俺にはハードルが高いな。呼んでいる所を相澤さんに見られた日には数日は顔を合わせて貰えないだろう。」

 

 ふと窓の外を見ると夜の間に雨が降っていたのか水溜りができており、蛙吹はその上で跳ねながら今の晴れ模様に良く似合う笑顔をしていた。水飛沫が飛んでキラキラと輝くと、その笑顔と相まってとても眩しく見えていた。

 とても清々しい晴天の下で楽しそうに弾んでいた。

 

 

 

 

 




 最後まで読んで頂きありがとうございました!
 麗日さんの匂わせは前から書いていたのですが、感情はまさかのこっちでした。この話の続きはまた今度……
 この作品でなんだかんだ初登場……?な梅雨ちゃん!ちゃんと書けていましたでしょうか……不安なのか無意識なのか話の流れでなのか読み返すとセリフの量がかなり少ない……
 感想、ここすきがとても励みになってます!どんどん書いてくれると私とっても喜ぶので是非お願いします!
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