ランチラッシュのサイドキックは正義の味方 作:アイン_BD’sR
超特急で書き上げたのでミスあれば教えていただけるととても嬉しいです!!
「だってあんたはあの………エンデヴァーの息子だ!」
「さっき……から……何なんだよ……お前」
時は仮免試験の最終試験中。救助演習にてプロヒーローである『ギャングオルカ』が現れる。彼の役は敵……救護と対敵の同時進行が行われていた。そして敵である彼の前に立つ男は2人。雄英高校の『轟焦凍』と士傑高校の『夜嵐イナサ』各校のトップクラスな実力を持つ者達。
しかし夜嵐には轟家に対してヒーローとして認められない理由があった。
『邪魔だ……俺の邪魔をするな』
『邪魔だ……』
おなじ冷たい目をした2人の男にヒーローとして、同じヒーローを志す者として失望してしまった。それ故に夜嵐は彼を……轟炎司と轟焦凍を……
「俺はあんたら親子のヒーローだけはどーにも認められないんスよォーー!以上!!」
「………」
その悪意を……冷たい怒りしか伝わらない目を見つめると轟は込み上がった怒りを冷ますように身体から冷気を発し目を閉じ深呼吸をする。
『自分の思いを考えを気持ちを、人に伝えるのもやっぱり言葉なんだ。心を落ち着かせてちゃんと口にしないと伝わらない。』
数日前に衛宮が話した言葉を思い出し、目をゆっくりと開く。
「……思い出した。夜嵐イナサ……風を操る個性。」
「轟……?」
「過去も血も……忘れたままじゃいられないんだな……っ!」
ボソリとそう呟くと全身から今度は空間が歪んで見えるほどの熱気を放ち、炎を先ほどの風に合わせるように広く撒く。
驚いた顔をした夜嵐を見ると轟は今度こそ『目を合わせて』口を開く。
「確かにあの頃の俺はなりたくねぇもんと同じになっていた……!エンデヴァーを否定するためだけに行動していた……っ!!」
「それでもあいつらに……母さんに……みんなに……変えてもらった!変わったんだッ!!」
『君のっ!!力じゃないか!!』
『なりたい俺に……なる為に……!』
「お前……轟……!」
「合わせろッ!!なりてえヒーローになる為にはこんなところで足踏みなんてしていられねぇ!!」
「……そうだ……嫌だったモノに自分がなってたよ。」
「轟ィッ!!ごめんなッ!!」
突如風が吹く。強く強く炎を絡め取りそれはギャングオルカの周囲を高速で回転し始める。それは巨大な炎の竜巻となりてギャングオルカを閉じ込めた。
ギャングオルカは声には出さずに考える。
……先程までの無駄な言い争いも轟焦凍の言葉で即座に収まった。夜嵐イナサも瞬時に理解し行動に移したか……減点は免れないがそれほどの問題にならずに済んだようだな。
確かに俺は乾燥に弱い……しかし、惜しいな。先程までチグハグだった奴らの連携ならばこれで最大の威力の筈。むしろ制御できずに他に被害が出る方がNGだ。終了時間間近であれば耐久戦で時間切れを狙うこともできたが……
懐から水が入った瓶を取り出す。個性シャチによって実現可能な超音波は炎の竜巻を吹き飛ばせる威力を持つ。水分補給を行なおうとしたその瞬間が勝負の分かれ目であった。
「轟ッ!!もっと火力上げろォッ!!」
「ッ!?そんなことしたら制御が……ッ!」
「俺が合わせるっス!!何のためにずっと鍛錬を続けてたのか……アンタのおかげで思い出せたッ!!そうッ!PLUS ULTRAっスよぉぉぉ!!」
「……わかったッ!」
「何……まさか……!?」
そんな会話が竜巻の轟音越しに聞こえると熱風がより一層強くなる。それは手に持つ瓶の水すらも火を通し、仮に体にかけたとしてもすぐに蒸発してしまうであろう火力となってしまった。
「これは……っ!!」
「オイ!シャチのシャチョーがマジでヤバいぞ!!」
「
「……やらせないっ!!」
ギャングオルカの苦悶の声に反応したのか、サイドキックが轟と夜嵐に集まりセメント弾を打ち込もうとする。しかし突如地面が揺れ、足場を奪われ浮かび上がった彼らを重い足蹴りが突き刺さる。
「くっそ……騙し打ち狙ってたのによォ……あんの2人……っ!!」
「真堂さんっ!まだ揺れ出せそうですか!?」
「1年の奴らに負けらんねぇからなぁ……!まだまだ……!!」
「緑谷!」「加勢する!」
「尾白くん!常闇くん!」
「士傑も加勢するッ!」
「あんなスピ*1作れるなんてマジ凄すぎてきゃぱい*2〜〜!」
真堂の揺らす個性により敵集団の移動を制限し、緑谷含む学生達が集まり敵を叩き始める。このまま行けば時間終了まで持ち堪えられる!そう緑谷は考えたかったが不安が残っていた……相手がプロヒーローである事が彼の頭から抜けようとしないのだ。
そしてその想像は当たる。当たってしまう。
「舐めるなァ!!」
「ギ、ギャングオルカっ!?」
地面がボコりと膨らむと腕が生える。そしてドゴォと大きな音を立ててシャチの頭が這い出てくる。まさか下から出てくるとはと驚いた緑谷が声を上げてしまう。
「不恰好だが……緊急避難で地面を行かせて貰った。揺らす個性で地面は柔らかくなっていた。保湿は温めてくれた水の湯気ですぐに行えた。」
「っ……!」
「そんな……っ!」
「あの灼熱牢獄をこんな短時間でここまでの精度にできるとは賞賛に値する……さて、まずは
ギロリと鋭い視線を放つギャングオルカに轟は睨み返す。……否、睨み返す事しかできなかった。最大火力で炎を出し続けた彼の体はすでに熱気を放っており、氷を出しては溶かしを繰り返し行っているが動けずにいた。夜嵐も暴風を起こそうとするが、ギャングオルカの超音波に打ち消される事を知ってか轟を狙っている事を知ってかその場に止まる。
緑谷達はサイドキックの対応に追われ身動きが取れずにいる。圧倒的最悪な状況。残り時間も後どのくらい残っているかわからない状況。誰もが視界が狭まり自分の周りしか考えられない状況。誰よりも早く気がついたのは緑谷だった。背後から聞こえる爆音の正体にすぐ気がつくのは緑谷だけだった。
「よォやっと辿り着いた……」
「この爆発音は……っ!?」
「
煤だらけのギャングオルカを目にとらえると爆破音と共に空から急降下したのは色素の抜けた金髪に爆発したかのようなトゲトゲとした髪型……ようやく戦闘ができるからか不敵に口角を上げる爆豪の姿であった。
「残り時間でテメェをブッ殺してやるよォ……っ!!!」
「おかえり。仮免試験お疲れさま。」
「みんなどうだったかしら?」
寮のドアを開くとそこには2人のヒーローがいた。疲れたA組の全員を労ってだろう。荷物を回収し始めた。ふと香る良い匂いに緊張からあまり食事をしていなかった緑谷含む面々の腹の虫が鳴り始める。
「しっかりと腹減らして来たみたいだな。結果は食べながら聞くとしよう。」
「お風呂で汗流したいでしょう?上がったらご馳走よ!」
テーブルに並べられているそれは巨大なステーキとガーリックライス。サラダにソースがかかったスパゲッティ。そしてデザートなど見るだけでも美味しい料理が所狭しと並べられていた。正しくパーティの様な光景が一面に広がっていた。
その言葉に男子達は「肉ーっ!!」「米ーっ!!」と浴場に駆け込む。その様子では髪もロクに乾かさず特急で戻ってくるだろう。
女子達は遠坂の元に駆け寄り「疲れたー!」「とっても美味しそう!!」「凛さんも一緒に入りましょ!」と戯れながら浴場に向かっていった。
「……さてと、あいつらがくる前にメインの盛り付けを済ませよう。」
骨付きラム肉を冷蔵庫から出し、常温になるまで置いておく。他の肉も焼く前にそうすると焼いた時の温度差で身が締まるのを防ぎ柔らかく仕上がる。また、ラム肉は香りのクセが強くその原因は脂身の為、事前に防ぎたければ脂身を剥いでおく。
常温になったら塩とすりおろしにんにく、ローズマリーを揉み込み、フライパンで焼いていく。全面を中火で焼き色が付くまで火を通す。色がついたら表面を触り、弾力がある程度で火を止める。ラム肉は火を通し過ぎると固くなってしまうので柔らかく仕上げたい時はレア目にする。
火を止めたらアルミホイルで包み予熱でじっくりと中まで火を通す。その間に焼いている時に出た肉汁でソースを作る。バルサミコ酢と粒マスタードを肉汁が出ているフライパンに入れ焦がさないようゆっくりと煮詰める。ふつふつとするまで煮詰めたら火を止め別皿に入れる。
最後にアルミホイルを外したラム肉の骨部分に取る時に汚れないようアルミホイルを巻き、盛り付けたら完成!
「いっち番乗りーっ!!」
「腹減ったぁ!!」
「君達!ちゃんと髪を拭きたまえ!」
予想通り真っ先に上鳴と切島が髪から水滴を滴らせながら戻ってくる。そこに続きしっかりと髪を拭いた男子陣が戻ってくる。
「よし、それじゃあみんな何飲みたいか言ってくれ。」
「俺サイダー!」
「オレンジジュースをお願いします!」
「俺は緑茶が欲しい。」
要望を聞きながらコップに飲み物を注いでいると女子陣がワイワイ話しながら戻ってくる。予想以上に早かったのは流石に全員空腹だったからだろうか。既に風呂場で聞いていたのか衛宮の隣で飲み物の用意をする遠坂と手伝いたいと飲み物を持って行く八百万と飯田のお陰であっという間に全員に飲み物が行き渡る。
「よし、みんな飲み物は持ったな?それじゃあ委員長、乾杯の音頭を頼む。」
「あ、ハイ!……みんな!合格不合格関係なく今日は大変な1日だった!始まりは雄英潰しなどを知らない俺たちが他の学校から狙われ………」
「はいかんぱ〜い!!」
「「「かんぱーい!!」」」
痺れを切らした上鳴が勝手に音頭をとると全員同意見だったのだろうか、勢いよく乾杯をし食事を始めた。乾杯の音頭を取られ「ハハ……乾杯」と元気なく言う飯田の肩に手を置き、慰めながらこういうタイプだったか……と衛宮は少し反省する。
「ねぇ!ねぇ!衛宮さん!どんな料理があるの?」
「ん?今日は牛ステーキとガーリックライス、ナポリタンにシーザーサラダ、ゼリーにケーキ。欲しければ白米とかスープ、カレー……簡単なものだったらなんでも作るぞ。」
「すげー!至れり尽くせり!」
「とってもゴージャス⭐︎」
芦戸のテンションの上がった問いかけにメニューを話す。瀬呂、青山がそれに歓喜の声を上げるが、「そして……」と言う衛宮の声に視線が集まる。衛宮は立ち上がるとキッチンに置いてあったプレートを手に取ると全員に見せながら最後のメニューをテーブルに置く。
「ラムチョップ……骨付き羊肉の香草焼きだ。ラム肉は少し香りにクセがあるからなローズマリーで食べやすくしてる。それと好みでソースをつけてくれ。」
「まぁ!とっても美味しそうですわ!」
「本当に美味そう……頂きます!」
その香りにこんがりと焼かれ肉汁が溢れ出している見た目から八百万、尾白が反応する。それに釣られ続々とプレートの上から骨付き肉が消え、各々の手に収まり口にする。
「……!こんなジューシーな肉ウチ初めて食った……!」
「あぁ……!それに柔らかく噛めば噛むほど旨味が広がってく……!」
「……!……!」
耳郎が驚きを声に出す。口に入れ噛んだ瞬間に肉汁が噴き出て、旨味が口内に広がる。そして噛めば噛むほど肉本来の旨味が溢れ出し、香草とラム肉の香りが心地よく広がる。障子が頷き耳郎に同意するように話し、それに口田が勢いよく頷く。
「このソースもとても合っている。美味しいです。衛宮さん」
「ありがとな轟。……それで試験の結果はどうだったんだ?何も聞いてなくてな。」
衛宮がそう言うと「チッ!」と盛大に舌打ちをした爆豪がラム肉と皿に盛り付けたサラダを持ち外へ出てしまう。悪い事してしまったかと頭を掻く衛宮はみんなに目線を戻し話を促す。皆を代表してか、今度こそと思ったのか飯田が話を始める。
「爆豪君は残念ながら……しかし3ヶ月の特別講習と個別テストをおこなえば仮免許の発行をしていただけるようです。」
「あら、それならよかったじゃない。……それで爆豪くん以外には?」
遠坂がそう言うと全員が少し俯き静寂の瞬間が生まれる。その様子に遠坂はまさか……と身構えてしまう。しかしその静寂は盛大に崩れ去る事となった。
「全員合格しましたーっ!!!」
「なっ!?」
「うそっ!本当に!?」
飯田の声を皮切りに全員が満面の笑みで歓喜の声を上げる。衛宮と遠坂も過去に仮免許試験を行ったからか、雄英潰しを知っていたからか落ちてしまう生徒が3.4人はいると思っていた故に驚きを見せてしまう。信じられないと言わんばかりの衛宮を見ると緑谷が近くに来て話を始める。
「かっちゃんも仮合格みたいな物ですから実質全員合格です!衛宮さんのおかげで合格できました!」
「お、俺のおかげ?」
「はい!最終試験が敵乱入ありの救護活動だったんです!以前教えて頂いた『不安にさせない』話を思い出して活動できました!」
緑山出久……評価86点。救護前の行動が少し遅れた事や安心させる言葉がワンパターンという所などで減点されたが余裕を持って合格。そんな評価表を衛宮に見せ、興奮したように話を続ける。
「やはりプロヒーローの話は為になります!でも引かれた箇所を考えるとやっぱりまだまだで是非プロヒーローアーチャーの活動をもっと教えて欲しいです!特に重なってしまった障害物に閉じ込められた人を助ける時とか、負傷の具合で移動する時の体勢の変わり方とか、あとは……」
「俺も衛宮さんのおかげで合格できました。」
「と、轟もか……?」
ブツブツと話をするモードに入ってしまった緑谷を押し退け轟も評価表を出し衛宮に話を始める。……轟焦凍……評価55点。その低さに衛宮はかなり驚いてしまう。轟といえばかなりの実力者である事をよく知っていたからだ。
「試験中に他の受験者と衝突してしまいました。向こうは俺の事、エンデヴァーの事を嫌っていた。それに対してつい言い返してしまいました……」
「そんな事が……」
「衛宮さんの『心を落ち着かせて口に出さないと伝わらない』話を思い出して一度深呼吸してから、俺の思いをはっきりと伝えました。理解してくれたかわからないです。でもその後はちゃんと連携して敵の対応ができました。」
「そうか……力になれたのなら良かった。」
優しい笑みを見せる轟に勘違いでクドクドと話してしまった事が力になれてホッとする衛宮であった。その事実を唯一知っている遠坂は他の生徒の話を聞きながらチラッと衛宮の方を向くとニヤッと笑って見せる。そんな様子にやれやれと苦笑いをしてしまうのであった。
「それでその言い合ってたやつはどうなったんだ?」
「夜嵐……そいつも無事合格してました。俺以上にギリギリだったらしいですが。それでその後お互いに謝り合いました。」
「そうか……」
「それでメールアドレスを交換したんです。」
「そう……メールアドレスっ!?」
突拍子もない単語が出てしまい驚く衛宮であったが、轟はなんて事ないように携帯を開き送られてきているメールを見せる。そこには『今日は本当にすまなかった!ただ、変わったお前を知りたくなった!今度飯行こう!お詫びとして奢る!』と殴り書きのように書かれていた。
「落ち着いて話をする機会ができた。もしかしたら緑谷達と同じく……友達になれるかもしれない。」
「そう考えると俺、なんだか嬉しいんです。」
そう答える轟の笑顔はまるで憑き物が落ちたかのように優しい笑顔であった。
食事が終わり疲れているであろう生徒を休ませ衛宮と遠坂で片付けをする。洗い物を二人でしながら共同スペースに残っている数人に衛宮は声をかける。
「結局爆豪はどうして最終試験に受からなかったんだ?救護はまだしも戦闘面じゃ実力があると思っていたが……」
「あー……実はギリギリまで敵を発見できなかったらしいっス。俺は一緒に行動してたんスけど救護人対応ばっかで、アイツの口の悪さも相まって……」
「……なるほどな。」
そう切島が答えると納得する衛宮。確かにそれに関しては運の範囲だ。爆豪は運が悪かっただけ……という事になってしまう。
「いや、それだけではないと俺は思案するぞ。」
「常闇?そーなのかよ?」
それを否定する声が上がる。その主は常闇。どうやら最後の戦場にいたので見ていたらしい。
「最後の最後に爆豪が来てギャングオルカと相対した。流石の戦闘センスで爆破を利用しながら超音波攻撃を避け接近していた。」
「そう聞くとそこまで悪くはなさそうだが……」
「あぁ、接近するまでは良かったのだ。しかし……」
『シャチ頭っ!!ここまで来りゃ爆破も防げねェだろ………っ!?』
『……俺だけを戦闘対象と思っている時点でお前は敗北しているぞ。』
『ンだァこりャ!?体が!?』
「近くに居たサイドキックのセメント弾に当たってしまった。爆破の個性で破壊しようとしていたが、その一瞬の無防備な時間にギャングオルカの攻撃を喰らい沈黙した。」
「ウッソだろ!?あの爆豪がかよ!!」
「事前情報の不足による被弾……か。真っ先に戦闘を始める時に発生するリスクだな。その後はどうなったんだ?」
「ああ、その時間で回復した轟と夜嵐……だったか、それと周囲の把握もできていた緑谷がセメント弾を躱しながら他の受験生と共に抑え込む事に成功したんだ。」
「そうだったのか……爆豪も早めに敵を見つけられていたら変わっていたのかもな……」
そんな事を話しながら手元の洗い物に集中しているからか衛宮も遠坂も気付くことができなかった。爆豪が緑谷を引き連れ寮から出て行ってしまうところを。
最後まで読んでいただきありがとうございましたー!!
というわけで原作とは違った流れになりました。合わせてタグに原作改変を追加します。苦手な方申し訳ございません!今後の流れ的に必要でして……
次回は爆豪にとっての大きなターニングポイントなあの回……だと思います。きっと……