ランチラッシュのサイドキックは正義の味方 作:アイン_BD’sR
少し時間が空いちゃいましたね。
結構仕事が忙しくなり書く時間が無かったのです……
というわけで第3話です。楽しんで貰えるととても嬉しいです!
「ハァ……」
顔や体全体に包帯が巻かれた男が溜息を吐く。理由は目の前のパソコンに映し出された大量のヒーローの写真か、それとも包帯の下で治りつつある負傷の痛みからか、はたまたこの負傷の原因である
「……本人に聞くのが一番手っ取り早いか。」
画面の中央に映し出された『衛宮士郎の経歴書』を何故見ているのかも彼しかわからないのである。真実は本人にしかわからない。1-Aの担任で抹消ヒーローである『相澤消太』にしかわからない。
先ずは魚を焼いていく。今は春なので旬の魚の
焼き鰆とご飯、味噌汁でも問題ないが今回は一工夫。温かいご飯に焼いた鰆と千切りにした生姜、小口切りにしたねぎを乗せる。作り置きの出汁を鍋に入れ一度沸騰させない程度に温めたら鰆の上からお椀にかける。
最後にわさびや大葉など薬味を乗せた小皿を用意したら完成。
「うん。ふっくらと焼けた鰆と出汁が混ざりあってとても美味い。薬味が豊富だから味に飽きがないし上手く噛む事も難しい今の俺の為にお茶漬けにしたのはとても有難い。」
「だが、やはり料理は合理性に欠ける。あまりにも時間がかかり過ぎるからな。結局ゼリー飲料で済む事だ。」
そう言いながら箸を進める包帯まみれの男。その向かい側には本来なら厨房に居るはずの衛宮士郎が席に座っていた。
時間は13時過ぎ。学校で言うと5時限目が始まり少し経った位である。この時間には昼に予定が入ってしまった学校の職員が遅めの昼飯を食べる為に食堂に集まる。その人数は少ない為、衛宮は厨房に居なくても問題がない。なので、普段は食器洗いの手伝いや厨房の掃除、ヒーロー活動の一環として街を歩いている筈の衛宮は雄英の教師であり抹消ヒーローとしても活動している相澤消太に呼び出され無人の教室に居た。
「……それで俺に話ってなんですか?相澤さん。」
「そうだな。話をさっさと終わらすのは合理的だ。……勿論、直ぐに終わる話であればだが。」
話を始めない相澤に催促をすると空になったお椀を机に置き衛宮を睨みつけるかの様に見つめる。その目はまるで敵を目の前にしているかのようであった。
「…………俺の個性を消していますね。俺が何かをしましたか?」
「端的に聞こう。」
「衛宮士郎。お前はAFOと繋がりがあるのか?」
相澤は睨みつけている瞳をより強く衛宮へと向け、自分の立てた予想を口にした。衛宮は驚いたかの様に少し目を見開くが、直ぐに表情を戻し言葉を返す。
「…………そんなことはないって言っても言葉だけでは素直に信じることはできないですよね。その理由を教えて下さい。一つ一つ包み隠さずお話しします。」
「……そうせざるを得ないだろうな。わかった。話そう。だが、整合性が取れない箇所や矛盾点があった場合は直ちに敵と見做す。事実だけを話せ。」
そう言うと相澤は目線を衛宮に向けたまま右手の人差し指を立てる。
「疑念その1だ。USJでの襲撃事件……お前は学校にはいなかったとランチラッシュさんより聞いている。何故襲撃されていることが分かった。もしかして『知っていた』のか?」
「それは簡単な話です。オールマイトさんから電話があったんですよ。自分の知っている遠距離個性の中で最長は君だと……この話はオールマイトさんに聞けば裏は取れます。」
その言葉を聞くと相澤は「そうか……」と一言だけ漏らし顎に手を当てる。聞けば裏が取れるような嘘はつかないだろうと考えているのか。勿論目線は衛宮に向けたままだ。次に右手の中指を立てる。
「それじゃあ疑念その2。何故お前はランチラッシュのサイドキックになった?お前の個性や認知度などは新人ヒーローでも事務所を持てる物だ。ヒーローランキングもそろそろ上位になるだろう。それなのに料理を主にするランチラッシュの事務所にいる。まるで『その身を隠すかの様に』だ。」
「………これについては俺の気持ちもありますし、相澤さんも想像の域を出ていない。『
相澤は表情を変えない。……がポツリと「流石にわかりやすかったか」と呟いた。だが、相変わらず目線は衛宮に向けたまま右手の薬指を立て、机に置いてあった紙を衛宮に差し出した。その紙には経歴書や履歴書、住民票など衛宮士郎の情報が載っている物だった。
「無断ですまないが色々と調べさせてもらった。だが、どうしても気になる点がある。疑念その3だ。」
「お前の父親、母親はこの個性社会にしては珍しくどちらも無個性だ。その家系を調べてもお前の個性に近いものは存在しない。家系とは全く別の個性を持つことはあり得ないことは無いがお前の個性は『あまりにも違いすぎる』」
「そんな事はあり得るはずがない。それこそ『誰かに個性を与えられでもしなければ』だ。」
話を聞きながら衛宮は全ての書類に目を通す。そして懐かしいものを見る様な目をしながら静かに笑みを浮かべる。その様子を見た相澤は首元に巻いているマフラーを掴み力を込めるが、衛宮がそれを止めるように口を開いた。
「随分と前のことだから書類にも記載がないですね。でももっと調べればきっと出てきますよ。確か戸籍には書いてあったか?必要なら今度貰ってきますよ。」
「………何を言っている?」
「『衛宮切嗣』と『アイリスフィール・フォン・アインツベルン』ここには俺の両親と書いてありますが、2人は俺の養親……俺は養子なんですよ。」
『生きてる……生きてる……!生きてる……!!ありがとう……ありがとう……見つけられて良かった……一人でも助けられて……救われた……!』
俺は十数年前とある事故に巻き込まれました。父も母もそこにはいませんでした。燃える周りの景色の中、誰かの手や誰かの足を見ない様に……聞こえない様に歩いてました。
やがて俺自身の体力も尽き、ゆっくりと倒れると誰かに体を支えて貰ったんです。そこには泣き腫らした目をしている男性……『衛宮切嗣』がいたんです。助けた側なのにその顔はまるで自分が助かったような表情をしてました。
『一つだけ教えなくちゃいけないことがある……僕は……魔法使いなんだ……』
俺は切嗣に……じいさんに助けて貰いました。そして親がいなくなった俺は孤児院ではなくじいさんの養子になる事を選びました。そしてじいさんの夢を俺は受け継いだんです。切嗣の夢を俺が代わりに叶えると誓ったんです。
『僕はね、正義の味方になりたかったんだ。』
衛宮の過去を聞いた相澤はゆっくりと目を閉じ、ポケットから目薬を取り出した。未だ傷が残る瞳に目薬を指すと少し申し訳ない様に衛宮の方を向いた。その瞳からは力を感じる事はなく、それはまた個性の使用をしていないということでもあった。
「衛宮……辛いことを話させてしまってすまない。お前の個性についても大体理解した。念の為お前の本当の親の事も調べるが、此処で嘘を言っても何にもならないだろう。俺はお前を信用する事にした。」
相澤は少し笑みを浮かべながら机に置いてあった書類を片付ける。衛宮は懐の携帯を取り出し時間を見ると、5時限目の終わり前を指している。「かなり話し込んでしまいましたね」と呟くと丁度携帯から電話の着信が来る。相澤は出ても問題ないと手のひらを出すジェスチャーをすると、まとめ終わった書類を鞄に入れた。
「ありがとうございます。………もしもし?………あぁじいさんか。どうしたんだ?こんな時間に。」
「そっか、そっちは今夜なのか。日本の時間くらい確認してくれよ……」
「……また!?また何か送ったのか!?ったく……物が物だから捨てるに捨てれないんだぞ。」
「………それで?送り先は前と同じイリヤの方か?……わかった伝えておく。そろそろイリヤもうんざりしてるから程々にしてくれよ。」
「………ん、あぁ。イリヤも俺も元気だ。心配なら顔くらい見に来いよ……もう何年帰ってきてないんだ?イリヤも久しぶりに2人に会いたいって言ってたぞ。」
「…………そうか。それじゃあひと段落着いたらまた連絡してくれ。」
通話を終わらせると座ったままの相澤と目が合う。
「……衛宮切嗣さんか。」
「あっ……すみません。俺なんか気にしないで先に行っててもよかったんですよ?」
「いや、俺は少し此処でやることがある。時間を取らせてすまなかったな。」
軽く頭を下げる相澤に「気にしないでくださいよ……」と衛宮は少し困惑してしまう。電話中に何もしてない事を見ていた衛宮は自分が居るとできない仕事があると考え、教室から出て食堂へ向かった。
衛宮が教室から出た事を確認すると相澤はパソコンを開き、書類を記入し始めた。カタカタと小気味良い音が無人の教室に鳴り響く。
「……疑念その4」
相澤はUSJの時を思い出す。
オールマイトに飛び掛かる2人の
そして生徒が
「……衛宮士郎。あの時の爆発は威力を少しでも間違えていたら緑谷を吹き飛ばしていたはずだ。」
「的確に
「俺にはお前が『戦い慣れている』ようにしか思えない……お前は一体何者なんだ。」
それを答える人間は此処には居なかった。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
何故期間が空いてしまったかというと……結構この回悩んだからです。当初の予定だと相澤先生ではなく爆豪君に登場して貰おうと考えていました。……が全体の構想とか流れを考えていく内に出番が後の方へ。すまない爆豪君。君の出番は結構先だ。
また、今回は料理の場面がかなり少ない感じになりましたがこれも全体の構想をまとめた影響ですね。元々1.2話は何にも考えずに書いていたので……ね?
料理で出てきた出汁の作り方は衛宮さんちの今日のごはん第7話「さらりと頂く冷やし茶漬け」を参照。または粉末出汁を沸騰したお湯に溶かしても問題ないですよ。
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