ランチラッシュのサイドキックは正義の味方 作:アイン_BD’sR
いやー今回の話はかなり悩みましたね!
書き方がおかしい所とかあったらどんどん教えて下さい!
あ、あと仕事がとんでもなく忙しかったというのも遅くなった理由ですね。いつもの業務の3倍くらいの量でほぼ毎日残業ですよ……
というわけで第5話です。
コンビニやスーパー、レストランなど接客業の店では店員間でよく行われている事がある。それはお客のあだ名付け。外見や話し方、何よりいつも同じものを買ったりしている客に対してはよりあだ名が付けられやすい。
そして雄英高校の食堂も例外ではなかった。毎日同じ料理を頼む人や学校行事で有名になった人はよくあだ名をこっそりと付けられている。そしてその両方に加えて外見的特徴から職員全員が認識している男が1人いた。
「今日も来てましたね〜『蕎麦衛宮』さん!」
「体育祭で一躍有名になっちまったから人の目もあるし来なくなるかと思ったが……いつも通りだったなぁ。何十人にも話しかけられてうんざりしてるとこ見てたら思わず笑っちまったけどな。」
「こらこら……『蕎麦衛宮』くんもうちの蕎麦が好きだから来てくれるんだ。そう馬鹿にしてはいけないよ?」
皿洗いやキッチン掃除をしながら『蕎麦衛宮』と呼ばれる男の事を話す2人にランチラッシュが軽く注意をする。そんな午後の食堂で話す3人をじとーっとした目で見る赤銅色に白が混ざる髪をした男がいた。
「………なんでさ。」
「………………ない?」
赤銅色の髪と白色の髪を半分にした男がポツリと呟く。彼の名は轟 焦凍。半冷半燃の個性を持つヒーロー科1-Aの生徒である。周りの生徒や先生、職員達にチラチラと見られるのは彼が少し前の体育祭にて素晴らしい戦いを見せ、準優勝という成績を納めたからか。……女性からの視線が多いのも体育祭の活躍のおかげであって、彼自身の顔の良さは関係ない………筈である。
そんな轟はお盆を持ち、探し物を探すようにキョロキョロと辺りを見渡す。
「やっぱ………ねェのか?」
「何か探し物か?」
突然背後から声をかけられバッと右半身を引き右の拳を構える。そこにいたのは自分と同じく顔に火傷の跡のようなものと似た髪色にこれまた似た白い髪色が混ざる青年だった。青年は困ったような顔をしながら胸の辺りまで手を上げ、手のひらを見せている。
「うぉっ……っと、驚かせたか……すまん。それで?何か探している様子だったけど、どうかしたのか?」
「……あんたは?」
「あ、あぁ……衛宮士郎……ここの食堂の職員だ。」
「…………そうですか。……蕎麦の窓口が見当たらないですが、今日はやってないんですか?」
そう言いながら轟はいつも蕎麦の受付がある場所に顔を向けた。そんな様子といつもからざる蕎麦だけを食べている姿を思い出し衛宮は少し笑ってしまう。本人の前で笑った事が轟からは馬鹿にしているようにも思えたのだろう。目を細め睨みつけられた衛宮は「蕎麦だよな?」と言葉を続ける。
「蕎麦は今回『日替わり』のメニューになっているからいつもの場所はお休みなんだよ。他の料理も同じ感じだ。」
「日替わり……?いつもと何か違うのか?」
「違う点といえば具材と作る人くらいだな。いつも担当してる人が休む時はその人の担当メニューを日替わりの人が作るんだ。」
その言葉を聞いた轟は「なるほど……ありがとうございます。」と軽くお礼を言い、日替わりの場所に向かう。しかしその足を止めて衛宮に振り返り「あんたは……」と話しかけるが、その言葉の先を飲み込み「……すみません。なんでもないです。」と険しい顔をしながら再び歩き始めた。
その迷いの見える後ろ姿に衛宮はどこか懐かしさを感じ、いつもの持ち場へと戻る。
「衛宮さんっ!まったくどこに行ってたんですか!?だいぶ列ができちゃってますよ……」
「すまんすまん!俺もすぐに取り掛かる!」
「衛宮くん!日替わり1追加で!……ちなみに注文はあの『蕎麦衛宮』だぞ。」
「おお!ついにW衛宮会合ですね!」
「なんだよW衛宮って………」
蕎麦を茹でる前におかずを作る。まずは野菜。ナスはヘタを切り取り、縦に4等分。半分に切って下半分のみ4つに分ける末広ナスでも問題ない。ピーマンはピーマンもナスと同じくヘタ部分を切り取り、中の種を取り除く。そうしたら縦に切り細切りにする。新玉ねぎと長芋は皮を剥き輪切りにする。次に鳥もも肉を一口大に切り分け醤油と塩、生姜を肉と共に袋へ入れよく揉み込む。この時に冷蔵庫で少しの時間漬け込むと味が染み込み美味しく仕上がる。これで下準備は完了。
鍋に油を多めに入れて火にかけておく。脂の様子を見ながら衣を作る。しっかりと冷やしておいたボウルに卵と冷水を入れよくかき混ぜる。混ぜる時に出てしまった泡をお玉で取り除き薄力粉を加え混ぜる。この時に混ぜすぎてしまうと重く柔らかい衣になってしまうため、ダマが残る程度に軽く混ぜる。これで衣の用意が完了。
全ての食材に軽く小麦粉を塗し液に潜らせ油へ入れる。油の温度は170度程度で衣の液を入れ、底まで着いたらすぐに浮き上がってくるくらいが目安。衣が綺麗な狐色になったら油から取り出して網などに乗せて油を落とす。鶏肉は他の野菜よりも少し長めに揚げる。
あとは蕎麦を茹で冷水でほぐし皿に乗せ海苔をかける。皿に揚げたての天ぷらを乗せたら……
「お待たせしました。今日のご飯は『天ざる蕎麦』です。」
「…………美味い。」
料理を受け取った轟は席に座り塩を付けた天ぷらを頬張り一言呟き、普段通りの仏頂面から僅かに驚きの表情が現れる。口に入れたナスの天ぷらはサクサクな衣からじゅわっとしたナスの旨みが溢れ、新玉ねぎは特有の強い甘みが口に広がる。長芋はシャクシャクとした食感に優しい味を感じ、かしわ天はおかずにもなりそうな醤油と生姜のしっかりとした味で食欲が増す。
そしてざる蕎麦のさっぱりとした口当たりに天ぷらの油っこさを中和させどんどんと箸が進んでいく。
「もう食い切っちまった……」
「美味かったか?」
普段とは違う種類の天ぷらに満足していると隣から声がかかる。そこにいたのは自分と似た顔の跡と髪の毛の色を持つ青年……衛宮だった。
「……あんたはさっきの。はい。とても美味しかったです。」
衛宮はその言葉を聞くと「それは良かった。」と嬉しそうに笑みを浮かべた。その優しい表情のまま続けて口を開く。
「俺に聞きたいことでもあるのか?さっき何か話そうとしてただろ。」
「…………それは」
どんどんと暗くなり下を向く轟の表情を見て少し胸が痛くなってしまう。しかし衛宮は変わらず優しい顔で轟を待つ。そして轟は少し考えた後、視線を衛宮に向け直し意を決した様に話し始めた。
「あんたのその顔の跡……何かあったのか?」
「ん?……ああ、これは個性の反動だ。俺の個性の力は俺の身体には少し強すぎるからな。個性を一定以上の力で使うとどんどん広がる。基本はそこまで力を使うことは無いけどな。」
「身体が力についていけない……か。」
轟は火傷を負った自分の左顔をなぞりながら話し始める。
「……………俺の顔の跡は『母さん』に付けられた。俺の炎の力が憎い。俺の左顔が『親父』の顔に見える……と。熱湯を俺の左顔に浴びせた。だから俺は左の……母さんをそこまで追い詰めた親父の力を使わなかった。」
『それは君自身の力じゃないか!!』
「だが、体育祭であいつと戦ってからわかんなくなっちまった。答えを得る為にすぐ後に母さんに会いにも行った。母さんは泣いて謝って、笑って赦してくれた。何にも捉われずに突き進むことが幸せであり救いであると……」
『俺の血をもって俺を超えて行き……俺の野望をお前が果たせ!!』
「でも……それでも俺はこの力をどうするべきなのかわからない。どうしてもあいつの顔が……母さんのあの顔が頭の中からこびり付いて無くならない……!」
顔の左側を抑えながら苦い顔をして話をする轟。その瞳は揺らぎ、何を信じれば……自分は何をすればいいのかわからない様子がわかる。そんな姿に衛宮はまた懐かしさを感じ、そしてゆっくりと轟に話をし始める。
「同情だとかそういった軽いものじゃないが、その気持ちはよくわかる。」
「自分の力、自分の在り方、そういったものがよくわからなくなってどうすればいいのか……俺にもそんな事があった。」
『切嗣わからないよ……一体さ、何をすれば正義の味方になれるんだ……』
「でもさ、簡単な話なんだ。そうでありたいと思った理由……そうなりたいと思った人……自分の原点をしっかりと見つめて向き合って……そうすれば自ずと答えは出てくるはずだ。」
「俺の原点……」
その言葉を聞いた彼の心には『エンデヴァー』の姿は無く、子どもの頃憧れたヒーローの姿が……『オールマイト』の力強く優しい笑顔が映っていた。
「少しはスッキリした顔になったかな?」
食堂を立ち去る轟の後ろ姿を見てやはり何処かその姿に懐かしさを感じてしまう。
「俺ももっと頑張らないとだな。俺の目指したもの以上に……そうだろ?」
彼の問いかけに返事をする者はもうこの世にはいない。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
というわけで今回は轟くんの回でした。
轟くんの話し方がむずかしい……どうやっても無愛想になってしまう……
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……てか前回の3人連続のコメント面白くて1人で笑ってました。