ランチラッシュのサイドキックは正義の味方 作:アイン_BD’sR
元々今回の話はずっと書きたかったので「1週間で書き切れるっしょ!」と余裕な感じでしたが、1週間で数行しか書けておらず「こりゃあまずい……」と絶対に本日投稿すると決めてました。
結構ギリギリだった……
「お前をここに呼んだ理由……わかってるよな?」
薄暗い部屋の中男は重々しく声を上げる。表情は真顔そのものだが、その瞳は厄介ごとを持ってきた目の前の女性を面倒くさそうに睨みつける。対する女性はその瞳に気圧されたのか身体を少し震わせ、冷や汗が垂れる。その口は何かを話そうと開きかけているがそれを遮る様に男は再び話し始める。
「あと残っているお前だけなんだ。いいか?俺を困らせるんじゃない。時間のムダだ。さっさと差し出すんだな。」
「………はい。申し訳ございません……」
すっかり暗くなってしまった空は白く光り、間隔をあけて大きな音が聞こえる。一瞬照らされた室内には山積みにされている1-Aの生徒たちの写真とともに個人情報とその中の1人を映し出したpcが存在している。
そんな緊迫した空気の中、頭を下げている女性は意を決して口を開く。
「……部屋の電気付けませんこと?相澤先生……さっきまで晴れていたから付けていなかったのかと思いますが……」
「……俺もそう思っていた所だ八百万。すまないが付けてくれないか?」
「わかりましたわ。」
パチパチと電気をつけ明るくなった職員室。その相澤の自席に向かうよう立つ八百万は手に持つ『白紙』の職場希望書を相澤に差し出した。その顔は申し訳ないようでもあり、これから怒られる子供のような緊張感も持っていた。
「………何のつもりだ?」
「指名していただいた方々には申し訳なく思っていますわ。でも、その上で私は相澤先生にお願いがあります。」
「…………話だけは聞いてやるが応えられるほど俺は甘くないぞ。」
その言葉を聞くと八百万は両手から何処か見覚えのある白と黒の混ざった短剣を2本、個性の力で『創造』する。その剣は鉈の様な形状をしている物であり、白と黒に色付けられ二振りが反転した色をしている事から2本で1つの剣としても見る事ができる。
「私の個性『創造』は構造や素材を理解することであらゆるものを創り出す事が可能ですわ……」
「……そしてそれはあくまで理解できるものの範疇。だからこそお前は推薦入学ができるほど勉強をしてきた。学校で学ぶ範囲を超えてな。」
その言葉にゆっくりと頷くがその表情は晴れることはなかった。剣を握る手の力が強くなり、剣先が少し震える。
「ええ……ですがこの剣はただの剣。勿論切ることもできますし、戦うことだってできますわ。でも私の目指すのはそこではありません。この剣を『本物』にする事が私の目指す場所……私がより素晴らしいヒーローに近づく為の目標ですわ!」
「そしてその目標に到達する為に敢えて……私は職場体験の逆指名をしたく思っていますわっ!!」
「…………『アーチャー』衛宮士郎か…………」
八百万の言葉とその両手に握られた見覚えのある『夫婦剣』からその人物を予想した。彼女の真剣な表情からそれが正しい事がよくわかる。おそらく彼のあの性格から頼まれたらできる限り断ることはしないだろうと相澤は考えるが「ハァ………」と疲れを吐き出すかのようにため息をし、八百万に向かって面倒くさそうな顔を見せる。
「……この白紙の職場希望はお前に返す。お前を指名したヒーロー達の中から希望の場所を書いておけ。明日の放課後までにだ。」
「ッ!先生!お願いしますわ!確かにこんな話聞いて頂けるとは思っていません!でもせめてアーチャー様にお話しだけでも………」
「この問答は時間の無駄だ。合理的じゃない事をするな。いいからさっさと帰れ。」
相澤の返答に声を荒げるが、鋭い目で『無駄』と言われてしまい押し黙ってしまう。その表情は恐ろしく冷酷であり、何を言ってもそれはどう転んでも自分の不利益になってしまう程と考えてしまう。相澤は再び深いため息をして変わらない表情で八百万を見る。
「……話くらいは衛宮にしといてやる。もし断られた場合も考えて希望を書いておけ。わかったらさっさと帰るんだな。衛宮と話す時間が無くなる。」
驚く表情を見せる八百万を職員室から無理矢理追い出し、衛宮士郎に話をする為の資料を急いで作り始める。そんな相澤は自席へ戻る時に周りの先生達が生暖かい目で見ていた事に気がつく。何を隠そうこの『相澤消太』は上っ面だけは恐ろしいがとことん生徒に甘く、その生徒達の為なら『クラス全員を除籍』する事も躊躇わない人間である。そして彼の本質を先生達が理解していない筈もなく、相澤と八百万が話している間に口を挟まず見守っていた。
その事実に気がついた相澤は自分を見る先生達に何か言おうとも考えたが合理性に欠けると自己完結し資料の作成に戻るのであった。
「それじゃあ早速だけどこれを着てくれ」
「えっ?」
紙袋を渡された八百万はその中身を出すとさっきまでわくわくしている子供のような顔が一気に困惑の表情に変わる。それもそのはず、紙袋に入っていたのは自分のサイズに近い真っ白な新品の『エプロン』だったからである。
「そのエプロンは貰ってくれ。職場体験が終わっても返さなくていいぞ。さて!この1週間で最低でも食堂で出せるくらいにもなってもらうから、一緒に頑張ろうな『料理の勉強』を!」
「えっえっ……」
困惑の表情を強くする八百万。
それに対して衛宮は屈託のない笑顔をしていた。
まずは具材を切っていく。基本具材はお好みだが、今回は夏野菜中心によく食べられる食材を選んだ。玉ねぎは半分をみじん切り、もう半分をくし切りに。ピーマンはヘタを取ったら中の種を取り除き、縦に細切り。ナスもヘタを取ったら輪切りにしていく。じゃがいもは皮を剥き芽を取り除いたら、サイズにもよるが8等分くらいに切る。
肉は豚、鶏、牛……とどれでも良いが、豚と牛は切り落としを。鶏はお好みの部位を一口大に切っておく。鶏肉は生で食べるだけじゃなく、生で触れた場所にも食中毒の原因になるためまな板は肉用と野菜用に分けた方が良い。勿論触ってしまった場所はよく洗い、不安が残る時はアルコールで除菌をする。
具材を切り終わったら鍋に少し多めの油を入れ少し温める。そしたらまずはナスを入れ柔らかくなるまで炒める。ナスは油を吸って柔らかくなるので油を多めに入れないと吸い尽くしてしまう。もし炒めてる途中で油が少なく感じたら追加で入れる。ナスを炒め終わったら一度取り出し、みじん切りにした玉ねぎを入れ炒める。甘めにしたい場合は飴色になるまで、甘さが必要なければ透明感が出るまで炒める。
玉ねぎを炒め終わったらナスを含めた残りの具材全てを鍋に入れ火を通す。目安としては肉に焼き色が付く程度。火を通したらそこに具材が浸かるくらいの水を入れ一煮立ちさせる。沸騰させている間に肉や野菜の灰汁が出てくるのでお玉で掬って捨てておく。……が正直取っても取らなくてもあまり変わらないので完璧に取り切る必要はない。
具材に串を刺し、じゃがいもが柔らかくなった事を確認したら市販のカレールーを入れてゆっくりと溶かす。ここで違う企業のルーを2種類入れると2種の違う香辛料の組み合わせから一味違った美味しさになる。勿論1種のみで作っても問題ないし、むしろそっちの方が好きな人もいるのでお好みだ。
ルーが完全に溶けたらご飯を盛った皿にかけて完成。
「よし!完成したし配膳の準備をしなくちゃな。カレーは人気メニューだから人が沢山来るぞ。」
「わ、私の作ったカレーを皆様にお渡しするので!?私料理なんて殆どした事がないですのに……」
「大丈夫だ。俺もちゃんと見ていたから問題ないさ。」
不安そうな顔で「でも……」と言い淀む八百万に痺れを切らしたのか衛宮は慣れた手つきでご飯とカレーを皿に盛り付け、それを彼女に差し出した。
「生徒達が来るには少し時間がある。昼ごはんも兼ねて食べてみな。」
「わ、わかりましたわ……」
戸惑いながら自らで作ったカレーを受け取り、厨房にある小さめの机に座る。経験がない自分の作ったカレーに自信がないのかおずおずと口に入れる。
「……美味しいですわ。」
「そうだろ。八百万は手際もいいし教えた事をちゃんとその場でやれていた。知識自体はあったんだろ。実際側から見ても上手だった。」
「そ、そんな褒めないで下さい……」
「そして何より『料理を楽しんでいた』それが生徒達にこのカレーを出す理由だ。勿論俺も味見して問題ないと判断した上でだけどな。」
「!ありがとうございますわ……!!」
真正面から褒められたのが原因か八百万は顔を真っ赤にしながら満面の笑みで感謝を伝えた。
衛宮に見守られながらカレーを食べ進める八百万だったが、我に帰ったかのようにハッと机に手を当て立ち上がる。
「違いますわ!私アーチャー様に戦い方を教わりに来たんですの!料理は……楽しかったのですけど……それよりも教わりたい事がたくさんありますわ!」
「ん?もちろん教えるつもりだぞ?相澤さん直々にお願いされたからな。しっかりと教えるさ。」
「で、ですが『この1週間で料理の勉強をする』と先程……」
「料理の勉強『も』だ。悪いが俺は食堂の仕事もしながらヒーロー活動もしている結構忙しい奴なんだ。……俺自身で言うのも変だけどな。だから教える時間以外は俺の仕事を手伝ってもらうぞ。仕事が早く終われば教える時間も増えるから頑張ってくれ。」
その言葉を聞いた八百万はパッと表情を明るくさせる。しかし彼女はまだ知らない。衛宮がどのくらいの仕事量をこなしているのかを。1年もかからずサイドキックに認められる程の仕事量を抱えている事を………
「つ、疲れましたわ……食堂ってあんなに忙しいのですわね……初めて知りましたわ……」
「休んでる暇はないぞ。このまま戦闘訓練だ。これでも食べて個性をある程度使えるようにしておいてくれ。」
先程まで明るい表情だった八百万はその顔を疲労の色に染めてぐったりしていた。そんな彼女を叩き起こすかのように次の予定を話す。相澤から聞いた彼女の個性を使うためのエネルギー……カロリーを補充させるために黄色い箱に入ったブロック食品とパックの牛乳を渡し訓練室へ向かう。八百万は少し行儀が悪いと思いつつ、自分のしたい事の時間を取られないために衛宮の後をついて行きながらブロック食品を齧った。
そして同じようにブロック食品を齧る男がとある町の路地裏で佇む。酷く冷たいその瞳は足元に転がる贋作を汚物を見るかのように見つめ、何を考えたかその頭を思い切り蹴飛ばした。
口元についたブロックのパサパサしたカスを長い舌で舐め取り片手に持つ携帯の画面を見る。
「アーチャー……ハァ………あの時の小僧がよくここまで育ったものだ……」
「だが……人は時が経てば変わる………ハァ………直接確かめてやろう……」
「衛宮………士郎………」
というわけで今回は衛宮と八百万です。まあ、衛宮をヒロアカと関わらせる時は八百万出てくるでしょ……個性似てるもん……
本来ならもっと掛け合いをしたかったのですが相澤先生との会話が楽しくてほぼほぼそちらに持ってかれました。次回はたくさん話すから……ね?
感想、評価とても嬉しいです!
書くモチベーションにも繋がるので書いて頂けると投稿が早くなるかも?(絶対とは言えないチキンです)