ランチラッシュのサイドキックは正義の味方 作:アイン_BD’sR
なぜ前編になったかは読んで頂くとわかると思いますのでまた後書きにてお話ししましょう。
というわけで第7話前編です〜!
「凄いですわ……やはり『本物』は違いますわ……」
「本物……か……」
机に並べられた2組の白と黒の夫婦剣を見比べ、八百万は目を輝かせて『本物』を作った者を称賛する。しかし、その相手は困ったような苦笑いをして少し悲しそうに小さく口を開く。そんな衛宮を見て彼女は何か言ってはいけない事を言ってしまったのかとオロオロしながら話しかけた。
「ど、どうしましたの……?私何か……」
「あ、いやすまん。八百万は悪くないさ。そうだな……」
そう言うと衛宮は顎に手を当て目を閉じ、考え始める。そして少し経った後、再び八百万に話し始める。
「八百万。俺の個性が何か知っているか?」
「え、ええ……『投影』と伺っていますわ。」
「ああ正解だ。物を解析してその物を投影……同じものを作り出すのが俺の個性。だけどその投影した物は決して本物ではないんだ。」
その言葉を理解できないのか八百万は首を傾げ、少し難しい顔で考える。その事を最初からわかっていたのか少し口角を上げ衛宮は続けて話し始める。
「俺の投影は物の構造を理解して、それを生み出す。ここまで聞くと八百万の個性『創造』とよく似ているな。だけど、その投影した物は本物……全く同じなものじゃない。あくまで俺が複製したどこか綻びがある所謂『贋作』なんだ。」
「……なるほどですわ。データとしても同じ、いくらコピーした文章や画像でも元の情報を全て持っている訳ではないという事ですわね。」
「流石だな。その通りだ。もしも敵が使っている武器をそのまま投影したとしても打ち負けるのは俺の方だろうな。……それに比べて八百万の個性は凄い。」
その言葉にえっ?と少し驚く八百万を見て衛宮はお互いが作った夫婦剣を両手に1本ずつ持つ。そしてその両方を互いに撃ち合わせると軽く火花が飛び、2本の剣はまるで鍔迫り合いのように均衡し合う。力を緩め剣同士を離し2本とも傷や欠けが無いことを確認すると、満足したかのように頷き剣を机に置き直した。
「強度、切れ味共に文句なしだな。この剣そのものの特性……力を除けば全く同じだ。これはとても凄いことなんだ。……俺にはどうやっても同じようにはいかない。」
「俺の投影した物はその元の物より何ランクか質が落ちる。切れ味に強度、質量もだ。さっきも言った通り、俺が投影したものはあくまで『贋作』」
続けて衛宮は八百万の作った剣を持ち、それと同じ物を投影する。一見全く同じなものが3組並んでいるように見えるが、本質は1つのみ異なる。先程と同じように衛宮の『八百万が作った剣を投影』した剣に『八百万が創造』した剣を当てると『投影した方の剣』にヒビが入り、欠けてしまう。
「それに対して八百万は知識さえあれば100%本物の物質を作る事ができる。それが『投影』と『創造』の違いだ。最早『創造』は『投影』の上位互換と言っていい。勿論、カロリー消費の激しさや事前に知識を得ていないといけない所は『投影』よりも大変だけどな。」
「そ、そうですか……?私の個性がアーチャー様の上位互換……?」
「さて、と!個性の話も終わったし、さっきも沢山戦い方の訓練をして動いたからな。そろそろ昼の時間だ。食堂に戻って今日の料理を作っておくぞ。その後の片付けが終わったら東京近くでパトロールだ。もし早く終わったら個性の話の続きをしよう。」
まずは具材の準備。さやいんげん、にんじん、鶏もも肉を一口大、新生姜をみじん切りにして置いておく。普通の生姜でも問題ないが、辛味が強い為今回の料理には新生姜がおすすめ。
次に米を研いで炊飯器に入れる。米を研ぐ際は水を吸ってしまうので時間をかけないように水を変えながら優しく研ぐ。力強く研ぐと米が割れてしまい、ふっくらと炊き上がらない。水も変えすぎると米の味、風味が無くなってしまうので2〜3回が丁度いい。
米を釜に入れたら切っておいた具材も同じ釜に全て入れ水と醤油、粉末出汁を入れて炊く。炊飯器で作る場合はその炊飯器の指定されている水分量で作る。
炊き上がるまでにおかずを1品。玉ねぎ、キャベツ、ピーマンを一口大に切る。肉は豚、鶏のどちらでも問題ないが、今回は使いかけの鶏もも肉を使う。少し大きめな一口大に切りボウルに野菜と共に入れる。そこへ塩麹入れて揉み込み冷蔵庫で15分ほど漬け込む。量が少ない場合はポリ袋で揉み込みと漬け込みをするとやりやすいのでおすすめ。
漬け込みが終わったら油を引いたフライパンに汁気を取った鶏肉を入れ、焼き目が付いたら野菜も全て入れる。汁気が取れ、野菜に火が通ったら塩コショウで味の調整をして完成。
最後にご飯が炊き上がったらバターを少し入れ混ぜて完成。
「アーチャー様!こちらの席で少し遅めのお昼としましょう!」
「ああ、そうだなクリエティ。昼前に訓練をしていたから昼ご飯を食べる時間もなかったしな。」
公園に入った八百万……クリエティが手招きをしてベンチへ誘う。場所は東京都保須市。衛宮……アーチャーが指定したパトロール場所である。この場所は人が多く、目立つ服装をしているアーチャーは声をかけられ続けパトロールにあまりなっていなかったが、その事にアーチャー自身も特に問題にしていなかった。寧ろサインを求められて、一人ひとり丁寧に対応した所を見ると楽しんでいるようにクリエティは感じていた。
ベンチに腰掛けた2人はアーチャーが元々持っていた手提げ袋の中にある弁当箱を取り出し蓋を開ける。
「今日の日替わりのあまりだけどな。鶏と新生姜の炊き込みおにぎりに鶏肉の塩麹炒め……だったんだが、まさか塩麹炒めが無くなってしまうとは……」
「しょうがないですわ。塩麹炒めはお肉がほろほろに柔らかくなって、尚且つしっかりと塩麹の旨味が肉や野菜に染み込んで噛めば噛むほど美味しさが広がっていくのですもの!」
「やけに人気だったからなぁ……おかわりもいつも以上にあった事を考えるとやっぱり学生はこういった野菜炒めみたいなのが好まれるのかもな。代わりに八百万……っとクリエティに唐揚げを作ってもらったから助かった。」
「殆ど教えてもらいながらでしたが……美味しそうに出来上がってよかったですわ!できるお料理も沢山増えてきて……お料理は忙しいですけどとても楽しいですわ!!」
上手に完成した唐揚げを嬉しそうに頬張るクリエティを見て、それに釣られるように笑顔になるアーチャー。少しの間クリエティを見ているとゆっくりと顔を赤らめ「た、食べないのですか?アーチャー様……?」と恥ずかしそうに話しかけられる。
「……っと、ずっと見ていたら食べづらいよな。すまん……少し昔を思い出しててぼーっとしていた。」
「昔……ですの?」
「ああ、俺が学生の頃だな。丁度今のクリエティと同じくらいの歳の後輩に料理を教えていたんだ。物覚えが良くて、家事も教えたらすぐにできるようになって……優秀な後輩だった。」
「……だけど、クリエティも負けてないぞ?ヒーローとしての俺と同じくらいの仕事をこなせているのは本当に凄いからな。」
「あ、ありがとうございますわ!アーチャー様っ!」
突然褒められ、感謝をするクリエティにアーチャーは少し困ったような苦笑いをしながら恥ずかしがるように頭を掻く。「あー……そのだな……?」と言いづらそうに小さな声で呟くアーチャーは少し考えた後苦笑いの表情のままで話し始める。
「アーチャー『様』はやめてくれないか?ヒーローネームだから『アーチャー』だけでいいんだぞ?」
「……!それはできませんわ!前にも言いましたけど私の憧れであり、目標であり、先生であるアーチャー様を呼び捨てになんてできませんわっ!!これは教わっている身であり、何より1人のファンとして絶対に譲れない事ですのよ!!!」
先程までの女の子らしい雰囲気から一転してとてつもない熱意で真剣に話をするクリエティ。その様子は話を始めたアーチャー自身が「あっほ、ほら!おにぎりは食べないのか!?料理してる時食べたそうにしていただろ!?」と話を逸らす程に迫力があった。
「そうでしたわ!炊き立てのご飯の美味しそうな香りでお仕事中ずっとこの炊き込みご飯のことしか考えられなかったんですの!」
「お楽しみは最後に取っておいたんですのよ!それじゃあ……」
これまた迫力のある様子から一転しておにぎりを持ちキラキラした目で話し始める。その様子にホッとしたアーチャーはクリエティと同じようにおにぎりを持ち、ラップを剥がして軽く一口頬張る。
「……うん。冷めてもおいしく仕上がっているな。」
「これは……!とても美味しいですわ!この香りは……生姜ですの?でも全然辛くありませんわ……むしろ甘いくらいの……」
「今回入れたのは新生姜だからな。普通の生姜と比べて辛味が弱くて食べやすい。それに加えて普通の強い香りじゃなく軽いいい香りだから食材としても薬味としても色んな料理に使えるんだ。」
「お醤油の濃い味に新生姜のさわやかな香りが合わさって……凄く食べやすいですわ!暑くなってきたこの季節にぴったりのご飯ですわね!」
頬を抑えながら美味しそうにおにぎりを食べ進めるが、最後の一口と言うところでその手は止められる。「すみませんわ。メールが来たみたいですので……」とアーチャーに軽く断りを入れ携帯の画面を見る。そのメールは驚くような内容では無かったものの、クリエティの……八百万の動きを確かに止めた。
「……………どうした?クリエティ?」
「……………………アーチャー様。申し訳ないですわ。私の杞憂ならいいのですけれど……少しだけお時間を頂戴してもいいでしょうか……?」
足の出血からか目の前が歪む。フラつきながらゆっくりと立ち上がり目の前に作られた氷を見て緑谷は考える。
『2回!!ここから飛んで氷を踏み台に……踏み込み2回……行けるか!?いや……』
自分の腕に刺さっているナイフを口を使って無理矢理抜き取り、氷によって冷えた足を……個性を使い飯田は考える。
『ありがとう轟くん。戦うんだ!腕など捨ておけ!レシプロエクステンド!!』
狙うは宙より轟を狙う1人の敵。
『『今は』』
2人の個性がスピードを高める。目の前に飛び上がるその敵の顔に体に狙いを定め
『脚が』
『拳が』
『あればいい!!!』
全力の攻撃を叩きつける。
その力は容易く敵を気絶させる事が可能だろう。
だが、彼は違った。
「……いい連携だ。」
ヒーロー殺しステイン。
この個性社会においてより強い個性を身につけたヒーローを17人殺害し、23人を再起不能に至らしめた男である。そして何より恐ろしいのは個性ではなくその身体能力。個性の力無しで戦いに身を投じるその力は並の人間を軽々と超えていた。
もし彼が2人の贋作を粛清する事のみに固執していたら攻撃を受けていたのかもしれない。
彼がここにいるもう一つの理由が無ければ可能性があったかもしれない。
「残念だったな……?その速さは既に見たぞ……」
ギョロリと瞳を動かし、飯田と緑谷を見る。そこにいた2人は全力の攻撃をお互いに受け、緑谷は受け止めようとした轟と共に建物の壁へ、飯田は地面へ叩きつけられた。
「ぐっ……カハッ……」
「今のお前達の動きはとても良かった……俺とて喰らっていたら危なかったかもな……」
「確かにお前の志は素晴らしい物かもしれない……ハァ……だが、お前が先まで見せていた行動は『贋作』そのものだ……人はそう簡単には変わる事ができない……お前はやはり粛清対象だ。」
地面に蹲り血を流す飯田を見下ろしその手に持つ刀に力を込める。ゆっくりと振り上げられる刀を見た緑谷と轟は飯田を守る為ステインへ駆け出す。しかし彼は回避する気は無いようにその場に留まる。背後で倒れる2人の音を知っていたかのように。
「あ、足が……ッ!」
「緑谷っ……クソッ!飯田に蹴られた時か……この距離じゃあ炎も氷も緑谷を巻き込んじまう……」
そして無慈悲に掲げていた刀が飯田に振り下ろされ
『身体は剣で出来ている』
6枚の花弁を思わせる紫色の半透明な盾が飯田を覆い、ステインの刀を弾き返した。
「『
「来たか……衛宮……士郎……!!」
目を見開き口角をニタァ……と上げるそのステインが見せる表情はとても凶悪なものであり、どこかヒーローに出会った少年のような雰囲気を出していた。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
7話は構想段階から戦闘をしっかりとする感じだったんですが「料理パートを消さないと今までの2話分の長さになるぞ……!?」となり、消したら消したでこの作品の個性が無くなる気がしたので前後編に分けちゃいました。
次回はガッツリ戦闘パートなります。(上手く書けるか心配ですが……)
感想や評価とても励みになります!
誤字報告もとてもありがたいのでどんどん見つけていただけると助かります!!