邪悪を清める叛逆の王   作:ガンダムラザーニャ

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烈 勇士さんからのリクエストの転生者の話を書かせていただきました。


女将にして処刑人

「はーいこちらが男湯でこちらが女湯でちよ!

 

あっ、このミルクはいかがでちか?」

 

アクセルの大浴場で、一人の小柄な少女が切り盛りしていた。

 

名前はベニ、カズマたちと同じく、キングオージャーとして復活した転生者だ。

 

ちなみに特典として求めたのは審議を見極める洞察力。

 

復活する前はある国の最高裁判長にして処刑人をやっており、自身も徹底的に詳しく調べるので冤罪などはほぼ無いと言っていい程で、処刑場に立たされた時には彼女直々の手で葬られる。

 

それ故に罪人からも恐れられ、指名手配犯も彼女に目をつけられたらもう終わりだとただ怯えるしかないとまで言われていた。

 

だがその一方で裁判長としての仕事がないときは自ら囚人や死刑囚に食事を作ってあげることもあるので、中には快く死刑を受け入れたり納得の行かない罪状であろうとしっかり励んで罪を償おうと考える輩も少なくなかった。

 

だがある時、十分な証拠や証言があるにも関わらず、自分は悪くない、この手が悪いんだと叫ぶ囚人が暴走し、他の囚人や看守を次々と殺害し、止めに入った自身も殺されてしまった。

 

自身たちだけでなく、罪を償ってる罪人を殺したその囚人を、この手で裁くために、復活に応じた。

 

復讐心からではなく、裁判長にして処刑人としての責務で、だ。

 

ちなみに復活してから大浴場で女将として切り盛りしてるのは、元々温泉の女将に憧れていたからで、本当は副業でも良いからアルカンレティアで女将として温泉宿を開きたいと考えていたが、アクシズ教の執拗な勧誘に嫌気がさしたので断念した経緯がある。

 

その為、キングオージャーとして復活した今は、アクシズ教徒による執拗な勧誘がないアクセルの大浴場で女将として働いている。

 

そんな彼女が働く大浴場は人気であり、今日も盛況だった。

 

「ふぅ…今日も大盛況でち。

 

冒険者の皆様方!クエストで流した汗をちゃんと流すでちよー!」

 

そう言って大浴場に向かう冒険者たちに元気よく挨拶をするベニ。

 

すると彼女が首に掛けてるエリス教のお守りが光った。

 

「…どうやら招かれざる客が、アクセルに近付いてるようでちね」

 

せっかくの女将の仕事を台無しにされたとばかりにため息を吐いて、ギルドのルナにバグナラクが近付いてるから自分が出たらアクセルの門を閉めるように言って、アクセルの外に出る。

 

腰に革で作った鞘に収められたキングオージャーを構え、今から来る敵を見据える。

 

その様は見た目こそ変わらないものの、先程の幼子とは思えないくらい大人びた雰囲気を醸し出し、その目つきも純粋な少女ではなく、処刑台に登る罪人を待つ処刑人の目だ。

 

なだらかな地平線の先を睨みつけ、ベニはその時を待った。

 

地平線の彼方からやってきたのは、軍服を着た黒髪の青年だ。

 

「一人で待ち構えているとはキングオージャーも随分余裕だな」

 

「そういう貴様はバグナラクの転生者か?

 

だとしたら何故この地に現れた?」

 

青年に向けて放ったベニの口調も声色も冷徹そのものだ。

 

先程までの舌っ足らずな言葉遣いから、処刑台の上で罪人を問い詰める裁判長を思わせるような口調と、声色だ。

 

しかし、青年は臆することなく答えた。

 

「バグナラクは正義だからだ。

 

あの国こそ正義、俺の信じる正しい世界、それを否定するお前たちを俺は許さない。

 

お前たちのような転生者は全て、この手で排除する。

 

それが俺の使命なんだからな!!」

 

叫びながら鎧を身に纏う。

 

漆黒の戦国時代の鎧を纏い、手には呪われた雰囲気のある刀が握られていた。

 

「…この感じ、2つの特典を与えられてるのか。

 

となると精神の汚染具合もより酷いものですね」

 

青年の放つ禍々しい気配を感じ取り、冷静に分析しながらベニは、オージャカリバーを鞘から引き抜く。

 

「この精神汚染の度合いとその夥しい血の匂い、さぞや多くの罪なき人々を殺めてきたのですね。

 

その正義のために、一体どれだけの人々を、民を屠ったのですか」

 

淡々と話す彼女に、青年の表情が憤怒に染まる。

 

だが、それは一瞬で元の無表情に戻り、次の瞬間にはニヤリと口元に笑みを浮かべる。

 

「何を言っている? 俺が殺したのは人間じゃない、悪だ。

 

悪であるお前たち転生者を排除するのが俺の役目だ。

 

そこに善悪の区別はない。

 

悪は滅ぼす。それこそが悪を滅ぼして正しき道を作る事に繋がるのだからな。

 

そしてそれを邪魔する者も全て粛清対象、すなわち悪なのだ。

 

ならば貴様もここで死ね、キングオージャー!!」

 

そう言って青年は刀を振るう。

 

だがベニはその動きをしっかり見極め、後ろに飛んで避ける。

 

「貴方がやっている事は、ただの虐殺です。

 

それを正義などとは、何たる非人道的かつ悪質な。

 

精神汚染されてるとはいえ、その罪は重いですよ。

 

だから……私の手で裁きます。

 

それが、私が下した審判の結末です」

 

オージャカリバーを引き抜き、パピヨンのボタンを押す。

 

【パピヨン!】

 

剣先を地面に突きつけ、トンボ、カマキリ、パピヨン、ハチの順番で操作する。

 

「王鎧武装」

 

【You are the KING, You are the You are the KING!】

 

【パピヨンオージャー!】

 

クワガタのレバーを引くと同時にベニの体が紫の結晶に覆われ、そこに巨大なパピヨンのオーラが突撃すると同時に砕け、ベニの姿も変わる。

 

紫の鎧を纏い、パピヨンを思わせるバイザーを頭に装着し、左肩には紫のマントを靡かせる。

 

その出で立ちはまさに、悪という罪人を葬る処刑人だ。

 

「これなる間合いは我が処刑場、悔いるというのならばこのまま王国にて刑を受けよ。

 

刑を受けぬのであれば処するまで」

 

「黙れ! 俺は貴様らのような外道を断じて許さん!! 貴様を処刑し、正義を行うのだ!!」

 

青年はそう叫ぶと、刀を構えながら突っ込む。

 

それに対しベニは左手にオージャカリバーの柄を持ち、居合いの構えを取る。

 

「ならば、ここで処刑するまで。

 

我が刃は、転生者をも殺す」

 

そのまま腰を落とし、抜き放つ。

 

居合は見事に命中し、青年の胴体が切り裂かれる。

 

「グハァッ!?」

 

「この刃は、正義に仇なす敵を討つ処刑人。

 

その刃の前には、如何なるものも防ぐ事叶わず」

 

オージャカリバーを腰のホルダーに収めると、青年の体からは血が噴き出す。

 

「おの、れぇ……こんな所で、俺、は……」

 

青年は血を吐きながらも膝を着く。

 

それでもまだ息はある。

 

その瞬間、青年の体が再生し始めた。

 

「む?」

 

「まだ、終わってたまるかぁ!!」

 

体が再生したことにより一瞬眉を潜めたベニだが、すぐに青年に向き直る。

 

「なるほど、その刀が貴様の体を再生させる呪いの類か」

 

「そうだ…!

 

俺がこいつを持ってる限り、お前がどれだけ素早く攻撃しようと、俺の体は斬られたそばから再生してダメージはゼロになる!」

 

「ほう、それで? それがどうしたというのですか?

 

傷を治せるからといって、痛みがないわけではないでしょう?

 

斬られるたびに苦痛に耐え、戦い続ける。

 

それは地獄のような苦しみなのでは?

 

そのような状態で戦えるとでも? 私なら耐えられませんね。

 

それに……その刀は所詮借り物の力でしょう?

 

いくら優れた力だろうと、貴様自身がそれを使いこなしているようには見えなかった。

 

その刀もまた、悪の力に染められている」

 

「黙れ! これは正義のための力だ! 悪である貴様に何が分かる!!」

 

「何も。

 

ですがその正義とは最早悪事を働く己への言い訳に他らならない。

 

ならば、尚更この場で斬り伏せるのみ」

 

「舐めるな小娘が! これがある限り、俺に敗北はない!!」

 

そう叫びながら青年は刀を構えると、再び再生した肉体で突撃してくる。

 

ベニはそれを冷静に見据えつつ、冷静に対処していく。

 

間合いに入った青年の腕を、刀ごと斬り飛ばした。

 

斬り飛ばした腕と刀は、鮮血を撒き散らしながらベニたちから少し遠くに突き立てられる。

 

「ぐぁあ…!

 

だが、こんなことをしても…!?

 

何故だ、何故再生しない…!?」

 

「それは貴様が刀を今手に持ってないからだ。

 

あの刀が所有者に不死の呪いを掛ける。

 

ならば簡単な話、手放させればよいだけのこと」

 

「くっ…!」

 

一歩、また一歩と近付くベニに、青年は一歩後ろに下がってしまう。

 

「お、おい待て!

 

お前らはそうやって俺たちを殺してきたんだろ!?

 

俺たちは確かにバグナラクの転生者だ、だがそれでも元は人間だ!

 

大勢の人間を殺して、何も感じないのか!?

 

良心が傷まないのか!?」

 

必死の形相で青年は説得を試みるが、ベニは全く動じずに青年を見つめる。

 

「ふむ、確かに痛みもしよう、涙を流そう。

 

しかしそれだけだ。

 

私が為すべきことはただ一つ。

 

貴様らという悪を処刑する。

 

そこに、一切の私情などなし」

 

「……ッ!! 貴様ァァァァァァァァァッ!!!」

 

雄叫びを上げながら、青年は最後の足掻とばかりに襲い掛かる。

 

それを見てもベニは冷徹に構えるだけ。

 

その目はどこまでも冷え切っていた。

 

「俺にはもう後がない……ここで死ぬわけにはいかない! せめて一矢だけでも報いてやる!!」

 

「往生際が悪い。

 

これで終わりだ」

 

【オージャチャージ!

 

オージャフィニッシュ!!】

 

ホルダーに収められたオージャカリバーのパピヨンのボタンを3回押した瞬間に抜き放ち、青年の首が宙を舞う。

 

首のない青年の体は、力なく地面に倒れ伏す。

 

「成敗。

 

処刑はこれにて閉廷…、でち」

 

静かにそう呟いたベニは、青年の首と体が消えていくのを見てからその場を後にし、門番に連絡して門を開けてもらいアクセルへと戻る。

 

アクセルに戻ったベニは、大浴場に戻る前に教会にて祈りを捧げていた。

 

「…エリス様、此度もまたバグナラクの転生者を処刑しましたでち。

 

どうか、この悪を断罪せんとする私をお許しください……でち」

 

そう言って深く頭を下げるベニ。

 

しばらく祈りを捧げてから、ベニは立ち上がる。

 

そして、いつものように笑顔を浮かべながら、童女のようにパタパタと大浴場へと向かうのだった。




ベニは普段の見た目はFateの紅閻魔ですが、戦う時の見た目(というか雰囲気)が紅閻魔オルタみたいに見えるように錯覚します。
理由としては闘志みたいなものです。
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