【第一章完】三流声優の俺、特殊スキル【演技】で異世界の英雄になってみた   作:阿弥陀乃トンマージ

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第3話(3)強欲なものたち

「こいつらは……!」

 

「知っているのか、ティッペ!」

 

「ああ、スキルを悪用してこの世界を支配しようとしている奴らだっぺ……」

 

「! こいつらも転移者か?」

 

「ああ、『グリードのリュカと三幹部』だっぺ」

 

「グリード?」

 

「強欲とも言い換えられるっぺ」

 

「なるほどな……」

 

 俺は美人の三人を侍らせているリュカという男を見て頷く。ティッペがそんな俺の考えを見透かしたのか、補足を入れてくる。

 

「強欲とはそういう意味だけではないっぺ……」

 

「? どういうことだ?」

 

「そこの君、彼女たちを引き渡してくれないかな?」

 

 リュカが語りかけてくる。

 

「そう言われて素直に引き渡すと思うか?」

 

「うん?」

 

「野郎と美人三姉妹……どう見たってお前の方が悪いだろう」

 

「なっ⁉ リュカ様を悪いですって⁉」

 

「ははは!」

 

「なにがおかしいのよ! ジュリエット!」

 

 茶髪が金髪に怒る。ジュリエットと呼ばれた女がなだめる。

 

「まあ、落ち着きなって、ルイーズ……」

 

「これが落ち着いていられる⁉」

 

 ルイーズと呼ばれた女が興奮する。リュカが口を開く。

 

「まあまあ、ルイーズ、ちょっと静かに……君は見ない顔だね? 何者だい?」

 

 リュカが俺に尋ねる。

 

「俺か? この世界の英雄になる予定の者だ」

 

「! はっはっは! 何を言うかと思えば……」

 

「お前らのような悪い転移者を懲らしめてな……」

 

「!」

 

 リュカの顔色がわずかに変わる。青い髪の女が尋ねる。

 

「リュカ様……?」

 

「ああ、サラ、少しばかり痛めつけてあげて」

 

「はい……可哀そうな方々……」

 

 サラと呼ばれた女が涙を拭いながら、こちらに進み出てくる。

 

「……!」

 

「栄光さん! ここはそれがしにお任せを!」

 

「天!」

 

 天が前に進み出て紙を取り出す。

 

「【描写】! って、ええっ⁉」

 

 天の持つ紙が水で濡れる。サラが涙ながらに呟く。

 

「愚かな……紙を用いるスキルの持ち主だということは誰の目にも明らか……ならば紙を使いものにしなければ済むこと……」

 

「くっ……!」

 

「どこからともなく水が⁉」

 

「水系統の魔法の使い手だっぺか?」

 

 ティッペの言葉にサラが反応する。

 

「少し違います……私はユニークスキル【哀愁】の持ち主……」

 

「あ、哀愁だと⁉ な、なんだそれは!」

 

「こういうことが出来ます……『哀の弓』!」

 

 水で出来た矢がこちらに向かってきて、俺はなんとか反応し、回避行動を取る。矢は俺の肩をわずかに掠める。

 

「うおっ⁉ 水の矢⁉」

 

「正確に言えば、涙の矢です」

 

「な、涙?」

 

「そうです。人々から集めた哀しみの感情からあふれ出た涙を用いています」

 

「そ、そんなことが……」

 

「矢はほぼ無限にあります……どこまでかわせるでしょうか?」

 

「くっ!」

 

 サラが矢を放ってくる。俺はなんとかそれをかわしていく。

 

「なかなかの反応ですね……」

 

「サラ! まどるっこっしいんだよ!」

 

「む!」

 

「うおりゃあ!」

 

 ルイーズがどこから取り出したのか大きな斧を振るってくる。俺はなんとか避ける。

 

「な、なんてデカい斧だよ!」

 

「これは『怒の斧』!」

 

「えっ⁉」

 

「わたしはユニークスキル【激怒】の持ち主!」

 

「っていうことは⁉」

 

「そう、人々から集めた怒りの感情がこの斧の刃の切れ味を増すことに繋がる!」

 

「ちっ!」

 

 ルイーズが横に振るった斧を俺はなんとかかわす。

 

「ちっ! それもかわすか!」

 

「ははっ! 甘いよ、ルイーズ! そらっ!」

 

「くっ⁉」

 

 ジュリエットがこれまたどこから取り出したのか、柄の長い槍を突き出してくる。俺の膝をわずかに掠める。俺はうずくまる。

 

「ははっ、『喜の槍』はどうかな?」

 

「よ、喜びだと⁉」

 

「ワタシのユニークスキルは【歓喜】! 人々から集めた喜びの感情がこの槍の鋭さを増してくれるんだよ!」

 

「こ、こいつら、もしかして……?」

 

 俺はティッペに尋ねる。

 

「ああ、この街の人々から感情を奪い去ったんだっぺ……感情を奪い去って、己の意のままに街を支配する……それがこいつらの手口だっぺ」

 

「な、なんていうことを……!」

 

 俺はリュカを睨みつける。リュカが肩をすくめる。

 

「なにか問題が?」

 

「な、なんだと⁉」

 

「素晴らしいじゃないか、怒ることも哀しむこともない、さらに喜ぶこともない……」

 

「ど、どこが素晴らしいんだ⁉」

 

「なまじっか余計な感情があるからいけないんだよ。だから感情なんて無くしてしまえば良い……ここは誰も傷つかない、理想郷だよ」

 

「……なよ」

 

「うん?」

 

「ふざけるなよ! 感情あってこそみんな豊かな生活が送られる! こんなものを理想郷と呼んでたまるものか!」

 

 俺の言葉にリュカは笑う。

 

「別にどこの馬の骨ともしれない君なんかの理解を得ようとは思っていないよ……三人とも、そろそろ黙らせてくれないか」

 

「はっ……」

 

 サラたちが武器を構える。 

 

「スグル!」

 

 ティッペが前足を振ると、一枚の紙が現れる。俺はそれを掴む。

 

「絵を見て……念じる!」

 

「⁉」

 

 サラたちは驚く。俺は緑色の髪をした少年の姿になったからだ。

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