【第一章完】三流声優の俺、特殊スキル【演技】で異世界の英雄になってみた   作:阿弥陀乃トンマージ

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第3話(4)緑髪の幻獣使い

「しょ、少年じゃねえか!」

 

 俺はキッとティッペを睨む。

 

「い、いや、かつてこの世界の危機を救った伝説の『虹の英雄たち』の一人、『緑髪の幻獣使い』を描いた絵を渡したっぺ!」

 

「だから、『赤髪の勇者』の絵をよこせよ!」

 

 俺は後ろに一つしばりにした長い緑色の髪を揺らしながら声を上げる。

 

「こ、この場合はその方が集団に相手するのに向いているっぺ! それにしても……さすがは『七色の美声』、少年を演じても違和感が無いっぺ……」

 

「だから感心している場合じゃねえって!」

 

「少年に変わった? どういうスキル?」

 

「サラ、さっさと仕掛けるんだ」

 

「はっ!」

 

 リュカの指示に従い、サラが矢を数本放ってくる。ティッペが叫ぶ。

 

「来た! 早く幻獣を使役するっぺ!」

 

「ど、どうやってだよ⁉」

 

「言い伝えによると、少年は小瓶の中に幻獣を封印していたとか……」

 

「! これか! えい!」

 

「!」

 

 巨大な狼が現れ、遠吠えをしたかと思うと、口から出した冷気で矢を凍らせてしまう。

 

「こ、これは……⁉」

 

「恐らくフェンリルだっぺ! 氷の属性で、涙で出来た矢を凍らせたっぺ!」

 

「よ、よし! いけ、フェンリル!」

 

「ぐはっ!」

 

 フェンリルの爪を受け、サラが倒れ込む。

 

「ちっ、小賢しい真似を!」

 

 ルイーズが斧を振り上げながら飛び込んでくる。

 

「今度はこいつだ!」

 

「‼」

 

 風が吹いたかと思うと、一本角を生やした馬がルイーズの懐に飛び込み、角を突き立てる。

 

「ユニコーンの角はどうだ!」

 

「がはっ!」

 

 ルイーズが倒れ込む。すかさずジュリエットが槍を突いてくる。

 

「子供の悪戯にしてはやり過ぎだね!」

 

「お、お次はこいつだ!」

 

「⁉」

 

 赤い炎をその身に纏った鳥が翼を広げ、ジュリエットの槍を燃やす。

 

「フェニックスの炎を喰らえ!」

 

「ごはっ!」

 

 フェニックスの突撃を喰らい、ジュリエットは崩れ落ちる。

 

「よっしゃ! どうだ! ざっとこんなもんだぜ!」

 

 俺はガッツポーズを取る。我ながら少年らしい振る舞いだ。

 

「……」

 

「後はお前だけだ!」

 

 俺はリュカをビシっと指差す。リュカは笑みをたたえたまま、低い声色で呟く。

 

「あまり調子に乗らないことだね……」

 

「なに⁉」

 

 リュカが剣を振るうと、幻獣たちが消し飛ばされる。

 

「……これはユニークスキル【快楽】のもたらした『楽園の剣』、多くの人から集めた楽しいという感情が込められている……その切れ味はご覧の通り。お遊びはこれまでだ……!」

 

 リュカが俺に剣を向けてくる。

 

「くそ、どうすれば……」

 

「栄光さん!」

 

「えっ⁉」

 

「援護します!」

 

「え、援護って⁉」

 

「アタシは楽器を鳴らす!」

 

 鶯さんがどこからか取り出したハーモニカを吹く。

 

「ウチは歌う!」

 

 瑠璃さんが歌い出す。

 

「ボクは踊る!」

 

 ロビンさんが踊り出す。

 

「えっと……ん⁉」

 

 あっけに取られていた俺だが、何やら力が湧いてくるのを感じる。ティッペが声を上げる。

 

「三人のスキルが分かったっぺ!」

 

「ええっ⁉」

 

「【演奏】、【歌唱】、【舞踊】、それぞれ防御力、攻撃力、精神力を向上させる効果があるっぺ!」

 

「そ、そうなのか! 確かに力がみなぎってくるような……」

 

「よそ見をしている場合かい?」

 

 リュカが俺に剣を振りかざしながら向かってくる。

 

「! ま、任せたぞ!」

 

「なっ⁉」

 

 黄色い竜が現れ、咆哮と同時に雷を落とし、リュカの体に当てる。

 

「竜の雷撃はどうだ!」

 

「そ、そんな馬鹿な……」

 

 リュカが跪く。ルイーズが声を上げる。

 

「リュ、リュカ様!」

 

「もっと痛い目に遭いたくなかったら、この街から出ていけ!」

 

「くっ、撤退だ! サラ、ジュリエット!」

 

 リュカを連れてルイーズたちが逃げていく。ティッペが問いかけてくる。

 

「とどめは刺さなくて良かったっぺ?」

 

「いや、力を増した反動なのか、こっちも満足に動けないんだ……」

 

 その後、やや間を置くと、街の至るところから笑い声や泣き声、怒鳴り声が聞こえてくる。

 

「街が本来の姿を取り戻したようだっぺな……」

 

「まあ、泣き声や怒鳴り声はあんまり聞きたくないのが正直なところだけど……」

 

 元の姿に戻った俺は鶯さんたちを見つめる。

 

「ど、どうかしましたか?」

 

「お陰で助かりました。ありがとうございます」

 

「い、いえ、恩返しですから気にしないで下さい」

 

「え? 恩返し?」

 

 俺は首を傾げる。鶯さんは口を開く。

 

「アタシたち三姉妹はデビュー前、よく路上ライブをしていました」

 

「え……」

 

「ある時、いつものようにライブをしようとしたら、質の悪い人たちに絡まれて、ライブに支障をきたすほどでした。これはライブを中止にしなければいけないかと思った時、その人たちを追い払ってくれたのが、栄光さん、あなただったんです」

 

「ああ、そういえば、そんなこともあったかな……」

 

「お陰さまでライブを続けられて、そのパフォーマンスがレコード会社の人の目にとまり、メジャーデビューすることが出来たんです!」

 

「そ、そうだったのですか……」

 

「ですから、いつか恩返しがしたいと思っていたのです」

 

「はあ……」

 

「栄光さん、あなたは英雄になるというようなことをおっしゃっていましたが……アタシたちにも手伝わせて下さい!」

 

「えっ⁉」

 

「この世界、行く当てもないんです! どうぞ連れて行って下さい!」

 

 鶯さんたちが頭を下げてくる。

 

「……同じ世界の方々が一緒なのは心強い、こちらこそお願いします」

 

 俺は三姉妹にお礼を返すのだった。

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