【第一章完】三流声優の俺、特殊スキル【演技】で異世界の英雄になってみた   作:阿弥陀乃トンマージ

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第4話(1)バックステージ

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「しかし、スキルですか……まるでアニメやゲームの世界ですね……」

 

 鶯さんが呟く。天が尋ねる。

 

「自覚はなかったのですか?」

 

「まさか、とにかくこの異世界?に適応するので精一杯でしたから……」

 

「ああ、それがしと同じですね……」

 

「橙々木さんは……」

 

「天で良いですよ。呼びづらいでしょ」

 

 天が笑う。

 

「しかし……」

 

「現場でも皆から天さんとかって呼ばれておりますから、餃子が側にいないというのに」

 

「え?」

 

「い、いや、なんでもありません……とにかく、この世界を共に生き抜いていく者同士、余計な気兼ねなど無用です」

 

「はあ、それなら天さん……」

 

「はい」

 

「天さんも自分にスキルがあるとは……」

 

「まったく考えもしなかったですね」

 

「……スキルに関しての見極めは基本的に妖精しか出来ないっぺ」

 

「妖精?」

 

 ティッペの言葉に対し、瑠璃さんが反応する。

 

「……なにか文句あるっぺか?」

 

「い、いや、文句はないわ。だから、あんまり顔を近づけないで……まだ慣れないから」

 

「ボクはキモカワイイ感じで良いと思うけどね~」

 

 ロビンさんが楽し気にティッペを評する。ティッペが嬉しそうにする。

 

「おおっ、見る目があるっぺね~」

 

「でしょ~?」

 

「……アンタは楽しそうね、ロビン」

 

「ん? 瑠璃姉は楽しくないの?」

 

「鶯姉と一緒で環境に適応するのに必死よ……アンタと違ってウチは繊細なの」

 

「分かってないな~それも含めて楽しいじゃん」

 

「アンタ……よっぽどの大物か超のつく馬鹿ね……」

 

「あ、気づいちゃった?」

 

「今のところ後者だと思うけど」

 

「ちょっと、ちょっと! ひどくない?」

 

 ロビンさんが声を上げる。

 

「今までのことを総合して判断したまでよ」

 

「ふっ、そういえば思い出した……初の武道館ライブでも大寝坊していたわよね……」

 

「そうよ、日本のアーティストならば誰でも夢見るような武道館のステージを飛ばしかけたのよ、この子?」

 

 鶯さんの言葉に瑠璃さんが同調する。天が驚く。

 

「そのライブはそれがしも見に行くことが出来ました!」

 

「あら、ありがとう」

 

 瑠璃さんが天にお礼を言う。

 

「そのライブの裏側はそんなことになっていたのですね~」

 

「いや~そんな……トイレでうっかり居眠りしてしまっただけなんだって~」

 

「トイレ⁉」

 

「どうせ楽屋にいるだろうと思ったら探しても探しても見つからない……まさかトイレにいるとは……」

 

「トイレで最終確認するのがボクら『ラブィ』にとって大事なルーティンワークなの」

 

「は、はい……」

 

 天がロビンの言葉に頷く。瑠璃さんがすかさず訂正する。

 

「ちょっと待って、堂々とデマは流さないでちょうだい」

 

「え~言うほどデマかな~」

 

「そういう時はインディーズの頃から多いけれども」

 

「駅前や公園でのライブは楽屋とかまずないからねえ……」

 

 鶯さんが懐かしそうに呟く。

 

「そう、精神集中はいつもトイレだった!」

 

「そんな強調しなくてもいいから!」

 

「ボクはその初心をいつまでも大切にしようと思っているんだよ!」

 

「だからってトイレで居眠りかましていい理由にはならないのよ!」

 

 ロビンさんの開き直りを瑠璃さんが注意する。

 

「あっ……」

 

「あっ……じゃないわよ! 大体アンタは……」

 

「ふふっ……」

 

「……なにがおかしいのよ、鶯姉……」

 

「いや、段々といつもの感じに戻ってきたんじゃない、瑠璃……」

 

「! ……ふっ、まあ、そうかもね……」

 

 鶯さんの指摘を受けて瑠璃さんが冷静さを取り戻す。

 

「おっ? またもや貢献しちゃった感じ?」

 

「調子にのんな」

 

「ぶぉっ⁉ る、瑠璃姉、後頭部へのチョップはないって……!」

 

「ごめんね、天さん、やかましくて……」

 

「い、いえ、なかなか見ることの出来ないバックステージを観られているようで、それがしとしては得をしたつもりです!」

 

「バックステージ……なかなか言い得て妙ね」

 

 鶯さんが笑う。瑠璃さんが補足する。

 

「こんなバックステージじゃなくて、今度はVIP席に招待してあげるわ」

 

「ほ、本当でありますか、瑠璃さん⁉」

 

「瑠璃で良いわよ、同い年くらいでしょ? ウチは天って呼ぶから」

 

「じゃあボクは天ちゃんって呼ぶよ~」

 

「は、はあ、よ、よろしく……瑠璃……ちゃん、ロビンちゃん」

 

「だから呼び捨てで良いって」

 

「いやいや! 飛ぶ鳥を落とす勢いの皆さんを呼び捨てなんてそんな恐れ多いことは出来ません! お三方は今、アニメ界にとって『神』なのですから!」

 

「神なんて大げさな……」

 

「いやいやいや! 一体、何曲の神曲を世に放ったことか! 特に『デモリベ』のオープニングときたら、それはもう!」

 

「天さん、ちょ、ちょっと落ち着いて……」

 

 鶯さんが天を落ち着かせる。

 

「は、はい……?」

 

「褒めてくれるのは嬉しいけど、アタシたちに言わせれば、天さんの方がよっぽど『神』よ」

 

「え? そ、それがしなんてとてもとても……」

 

「アニメーターさんが素晴らしい絵を描いてくれたからこそ、アタシたちの楽曲は相乗効果で跳ねた。日本のみならず、世界中の人に楽曲を届けることが出来たわ。これはアタシたちだけでは到底成し得なかったこと……だから天さんたち現場のスタッフさんには感謝してもしきれないわ……」

 

「そんな……」

 

「いや、これはボクたちマジで思っているからさ、天ちゃん」

 

「だから、繰り返しになるけど、今度はVIP席に招待してあげる……ドームのね」

 

「ド、ド、ドーム⁉」

 

「盛り上がっているところ申し訳ないが、前で襲われている人がいるぞ!」

 

「ん? どなただっぺ?」

 

「『馬車の御者』を演じている栄光だ!」

 

「ああ、スグル! なんでまたそんな恰好に?」

 

「お前がやれと言ったんだろう! これで馬を御すことが出来るから移動手段も一気に解決だっぺ~とか言って! 高かったんだぞ! それよりもこの馬車も囲まれている!」

 

 俺は荷台でガールズトークをしている四人に声をかける。

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