【第一章完】三流声優の俺、特殊スキル【演技】で異世界の英雄になってみた   作:阿弥陀乃トンマージ

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第1話(1)突然のエンカウント

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「こ、これは……夢か?」

 

 俺は自分の頬を思い切りつねる。我ながらベタなことをやっている。うん、痛い……ということは、これは夢ではないということか?

 

「何をやっとるっぺ⁉」

 

 よく分からない声が聞こえてくる。

 

「どこだ?」

 

 俺は周囲をキョロキョロと見回す。

 

「よそ見をしている場合じゃないっぺ!」

 

「シャー!」

 

「う、うわっ!」

 

 トカゲのようなものが威嚇してきた。俺は間抜けにも尻餅をついてしまう。

 

「何をやっているっぺ!」

 

「な、何をって……」

 

 俺は困惑気味に呟く。

 

「お前さん、転移者だっぺ⁉」

 

「て、転移者?」

 

「転移者なら戦うっぺ!」

 

「だ、誰と……?」

 

「決まっているっぺ! その目の前にいるモンスターとだっぺ!」

 

「モ、モンスター……?」

 

 俺は先程の自分の言葉を繰り返す。まだ事態がよく飲み込めていない。

 

「シャー! シャー!」

 

「うおっ!」

 

 トカゲのようなものがさらに威嚇してくる。俺は尻餅をついたまま後ずさりする。

 

「あ~もう! なんて情けない姿だっぺ!」

 

「う、うるさいな!」

 

 俺は話しかけてくるやかましい声に反発する。情けないのは自分がよく分かっている。しかし、これは本当にどういう状況なんだ……?

 

「……」

 

 トカゲのようなものたちが徐々に近づいてくる。俺を恐れるまでの存在ではないと認識したのかもしれない。かなり癪に障るが、事実なのだからしょうがない。

 

「くっ……」

 

「とにかく早く立ち上がるっぺ!」

 

「分かっている!」

 

 俺は立ち上がる。

 

「!」

 

 トカゲのようなものたちがビクッとする。しまった、余計な刺激を与えてしまったか? もっとゆっくりと立ち上がるべきであったかもしれない。そうは言っても、このわけのわからない状況で冷静な判断を下すなど無理な相談だ。

 

「むう……」

 

「シャー……」

 

「……」

 

「…………」

 

 俺とトカゲのようなものたちが一定の距離を保ちながら、睨み合う。今更気付いたが、俺はホテルスタッフの制服のままだ。ホテルスタッフ(アルバイト)がモンスター?と睨み合う……よく考えなくても、シュールな光景だ。

 

「………」

 

「………」

 

 沈黙が続く。その静寂を破る大声が響く。

 

「あ~もう! 何をやっているんだっぺ⁉」

 

「⁉」

 

「‼」

 

 大声に反応し、トカゲのようなものたちが激しく動き出す。俺も堪らず叫ぶ。

 

「だ、誰だか知らんが、空気を読め! いたずらに刺激を与えるな!」

 

「見てられないんだっぺ!」

 

「どこで見ている⁉」

 

 俺は再びキョロキョロする。

 

「キョロキョロするなっぺ! まさか素人だっぺか?」

 

「し、素人呼ばわりするな!」

 

「いや、そのへっぴり腰……間違いなく戦闘の素人だっぺ!」

 

「あ、ああ、それはまあな……」

 

 俺は頷く。戦闘のプロなんてそうそういないだろう。ましてやモンスター相手なんて。

 

「あ~歯がゆいっぺ!」

 

「歯がゆいなら助けろ!」

 

「え?」

 

「え?じゃない! こっちは正直パニック状態なんだ! 何らかの手助けをしろ!」

 

「……ひょっとして、転移して間もないっぺか?」

 

「転移というのがまだいまいちどういうことか分からないんだが……目を開けてみたらここにいたんだよ!」

 

「なんと! 転移の瞬間にモンスターとエンカウントしたっぺか⁉ 運がとことん悪いのか、いや、ある意味強運というべきなのだっぺか……」

 

「何をぶつぶつと言っている!」

 

「仕方がない! ここは助けてやるっぺ!」

 

「ん⁉」

 

 俺の肩に何かが乗った。

 

「最初なら勝手が分からないっぺね……指南してやるっぺ」

 

「バ、バケモノ⁉」

 

「だ、誰がバケモノだっぺ⁉」

 

「お、お前だ!」

 

 俺は自分の左肩に乗った物体?に向かって叫ぶ。犬や猫やウサギやらが混ざったような一応かわいらしい顔をしているが、三頭身なのである。体には羽が生えているし。しかも人の言葉を話すときた。見た目で判断するのは悪いが、俺がそう感じたのも無理はないと思う。

 

「失礼な奴だっぺねえ……妖精に向かって」

 

「妖怪?」

 

「妖精!」

 

「まあ、どっちでもいい!」

 

「良くはないっぺ!」

 

「指南をしろ!」

 

 俺は自称妖精に呼びかける。

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