【第一章完】三流声優の俺、特殊スキル【演技】で異世界の英雄になってみた   作:阿弥陀乃トンマージ

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第6話(1)ギリギリアウト

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「ふう……」

 

「あら、青輪さん、目が覚めたのね」

 

「はっ⁉ あ、貴女は『ラヴィ』の鶯さん⁉」

 

「ど、どうも……」

 

「こ、ここは……?」

 

「この辺で一番大きな街の宿屋よ」

 

「はあ……」

 

「貴女は気を失っていたのよ」

 

「気を失っていた?」

 

「ええ」

 

「ああ、青輪さん、目が覚めたんですね」

 

 何やら話し声が聞こえてきたので、俺と瑠璃さんが部屋に入っていくと、青輪さんがベッドから半身を起こしていた。

 

「あ! 栄光優さま!」

 

「さ、さま……?」

 

「ああ……」

 

「ちょ、ちょっと!」

 

 再びよろめいた青輪さんを鶯さんが抱きかかえる。

 

「お、推しとこうして会えるなんて……まるで夢みたい……」

 

「夢ではないわよ」

 

「異世界転移最高……」

 

「そ、そうかしらね……」

 

「そうは思いませんか?」

 

「か、考えようだと思うわ」

 

 青輪さんの言葉に鶯さんが首を傾げる。俺は尋ねる。

 

「ここが異世界ということは認識されているのですね?」

 

「ま、まあ、なんとなくではありますが……」

 

 体勢を直した青輪さんが頷く。

 

「なんであんなところから現れたっぺ?」

 

「よ、妖怪⁉」

 

 俺の後ろから姿を現したティッペを見て青輪さんが驚く。ティッペがムッとする。

 

「失礼な! 妖精だっぺ!」

 

「よ、妖精……」

 

「まあ、妖怪と思ってしまうのも無理はないですね……」

 

「スグルも何を言っているっぺ!」

 

「冗談だ」

 

「笑えないっぺ」

 

「それはともかく……こいつ……ティッペの言ったように、何故あんなところから?」

 

「あんなところとは?」

 

「え?」

 

「正直無我夢中だったので、よく分からないのです……」

 

 青輪さんが首を傾げる。

 

「そ、そうですか……」

 

「ドラゴンに吞み込まれたのは分かっています。その後どこから出たのですか?」

 

「え、えっと……」

 

「ドラゴンの肛門からだっぺ」

 

「ティ、ティッペ!」

 

 俺はティッペをたしなめる。ティッペが首を捻る。

 

「どうかしたっぺか?」

 

「べ、別に言わなくてもいいことだろう、それは」

 

「事実を確認することは大事だっぺ」

 

「そ、それはそうかもしれんが……」

 

「こ、肛門から……」

 

「え、ええ……金色の球体から飛び出されてきました……あの球体は?」

 

「分かりません、ドラゴンに吞み込まれそうになったときに念じたらああいうことに……」

 

「ティッペ……」

 

「ふむ、よく分からんが、恐らくはスキルの一種だっぺねえ……」

 

「ス、スキル?」

 

 青輪さんが驚いたように呟く。ティッペが説明する。

 

「君たち異世界転移者はほとんどの者が何らかのスキルを持っているっぺ」

 

「せ、拙者がスキル持ち……」

 

 青輪さんが自らの手のひらをまじまじと見つめる。拙者?と思いながら、俺は礼を言う。

 

「お陰で助かりました。ありがとうございます」

 

「え? い、いえ、恩返しをしたまでです、お気にしないでください」

 

「恩返し?」

 

 俺は首を傾げる。青輪さんは頷く。

 

「拙者は栄光さまにいつも活力をもらっておりまして……」

 

「活力?」

 

「学校など、日常生活に馴染めないで悩んでいるとき、いつも拙者を励ましてくれました……ボイスアプリで……」

 

 ボイスアプリ……そういえばそんなのも収録したっけな。しかし、あれはほとんどダウンロードされなかったと聞いていたが……。俺は自嘲気味に重ねて礼を言う。

 

「あれを聞いてくれたなんてレアですね。ありがとうございます」

 

「お礼を言うのはこちらの方です! あれで一歩踏み出す勇気がついたのです!」

 

「踏み出す勇気?」

 

「ええ」

 

「そ、それはなによりです……」

 

「それから活動を陰ながら応援させていただきました」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「ホテルでアルバイトされていることが分かったので……」

 

「え?」

 

「何かの力になれればと思い、あのホテルの出入り業者へのバイトを決意しました!」

 

「え……?」

 

「タイミングが合わずお見かけすることは叶いませんでしたが、アルバイトで奮闘されているのも励みになりました……!」

 

「は、はあ……あ、あの……」

 

「はい?」

 

「『デモリベ』の打ち上げパーティーの日、ホテルにいらっしゃったんですか?」

 

「はい。バイトを頑張っているご褒美にと、社長のコネで参加することができました!」

 

「そ、そうですか……」

 

「ひょっとしたらお会い出来るかと思いまして!」

 

「は、はあ……あの眩い光に包まれた時、トイレ近くにいましたか?」

 

「ああ、確かにお手洗いに向かっていたと思います」

 

「そ、そうですか、分かりました……」

 

「……ギリギリアウトって感じね」

 

「ギリギリじゃないわよ、完全にアウトな事案でしょ」

 

 ほとんど言葉を失っている俺の横で、鶯さんに対し瑠璃さんが話している。

 

「……栄光さま、ご迷惑でなければ、拙者も同行させてはくれないでしょうか? この異世界、行く当てもないんです……」

 

 青輪さんが頭を下げてくる。

 

「……同じ世界の方が一緒なのは心強い、こちらこそ……お願いします」

 

 俺は戸惑いながらも青輪さんにお辞儀を返すのだった。

 

「た、大変だよ!」

 

「どうしたのよ、ロビン?」

 

 瑠璃さんが部屋に駆け込んできたロビンさんに尋ねる。

 

「この宿屋が囲まれているよ!」

 

「⁉」

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