【第一章完】三流声優の俺、特殊スキル【演技】で異世界の英雄になってみた   作:阿弥陀乃トンマージ

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第7話(1)オレッ娘コスプレイヤー

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「どこかで見たことがあるとは思ったけど……どこだっけ?」

 

 ロビンさんの言葉に俺たちは思わずズッコケる。

 

「……『デモリベ』の打ち上げパーティーで会ったでしょ」

 

「そうだっけ?」

 

 瑠璃さんの言葉にロビンさんは首を傾げる。鶯さんが口を開く。

 

「作品の広報係として色々と活動されていたのよ……そうですよね?」

 

「ああ、公認コスプレイヤーとしてな……」

 

「確かあの時もキャラクターのコスプレをしていらっしゃったかしら?」

 

「そうだな」

 

 鶯さんの問いに紫代反田さんが頷く。

 

「あ~だから分からなかったのか……」

 

 ロビンさんが納得する。監督が尋ねる。

 

「異世界転移してからずっとあのトーマの下に?」

 

「ずっとではないが、自分のスキル……【憑依】とやらに気付いてからはそうだな」

 

「どうなんだ、ティッペ?」

 

「ああ、【憑依】で合ってるっぺ……」

 

 俺の問いかけにティッペは頷く。紫代反田さんが笑みを浮かべる。

 

「スキル名が偶然にも合っていたか、【憑依】……悪くない」

 

「それで何故にトーマの引き連れていた骸骨兵士たちの中に?」

 

「……身を隠すのには都合が良さそうだったもので」

 

「身を隠す?」

 

 監督が首を傾げる。

 

「異世界からの転移者でスキル持ち……色々と不自由が発生しそうだと予想して、そのように動いた。皆と合流出来ればと思ってな」

 

「? 君は我々がこの世界に来ていると知っていたのかい?」

 

「いや、勘のようなものだ。希望的観測と言った方がいいか」

 

「えっと……伺いますが、紫代反田さんもあの光に包まれた時……ホテルのお手洗いにいらっしゃいましたか?」

 

「ああ、衣装を着替えようとした時に、手洗いの近くにいたな」

 

 俺の質問に紫代反田さんは頷く。監督が笑う。

 

「ははっ、むしろ着替える前で良かったね」

 

「ふふっ、まったくもってそのとおり、下手にドレスなどに着替えていたら、この世界でも浮いていただろうね」

 

 紫代反田さんは自身の着ている服を指でつまんでみせる。

 

「怪我の功名というやつかね?」

 

「こういうコスチュームでも浮かない世界に来られたという点では、コスプレイヤーとして僥倖と言ってもいいかもしれない」

 

「ま、前向きな考え方……」

 

 紫代反田さんの言葉に天がやや面食らう。

 

「……確かに、こうして栄光さまとお近づきになれましたからね……」

 

「青輪さん、今何か言いました?」

 

「いいえ、何も」

 

 俺の問いに青輪さんは首を振る。監督が俺に尋ねてくる。

 

「さて、どうする?」

 

「……トーマを追いかけようかと……騒ぎを起こしてしまった以上、あの町に戻るというのもどうかと思いますし」

 

 そう、俺たちは町の外にいる。やや壊れてしまった宿屋の修理代もしっかり置いてきた。

 

「ふむ……」

 

 監督が腕を組む。俺が問い返す。

 

「……危険ですかね?」

 

「……この世界にいる以上はトーマのような連中に絡まれる危険性が高い。ここはこちらから先手を打ってみるというのも悪くない筋書きだと思うね」

 

「そ、そうですか……?」

 

 天が不安そうな顔になる。監督が話を続ける。

 

「天さん、こちらもスキル持ちが大分揃ってきたんだ、必要以上に怖気づくことはないよ」

 

「は、はあ……」

 

「もちろん、油断大敵だがね」

 

 監督が首をすくめる。俺は紫代反田さんの方に向き直る。

 

「紫代反田さん」

 

「……うん」

 

「トーマの行く先などに見当はありますか?」

 

「側近に相談するようなことはしなかったから正直分からないな」

 

「そうですか……」

 

「ただ……」

 

「ただ?」

 

「これまで制圧してきた町などに戻って体勢を立て直すんじゃないか?」

 

「なるほど……」

 

「まあ、推測だけどな」

 

「……紫代反田さん、良ければ俺たちと行動を共にしませんか?」

 

「もとよりそのつもりだよ。声をかけられなかったどうしようかと思ったぜ。それと……」

 

「それと?」

 

「オレのことは静で良いよ、昔みたいにな」

 

「昔? どこかでお会いしましたか?」

 

「オレのバイトしていたメイドカフェの常連だったじゃないか」

 

「!」

 

 思い出した。俺が高校時代通っていたメイドカフェにいた静か。監督が笑みを浮かべる。

 

「へえ、そういう趣味があったとは驚きだね……」

 

「いや……」

 

 中性的な雰囲気を漂わせる静をはじめ、結構個性的なキャストがいるカフェだったので、演技の参考になればと思って、よく顔を出してはいた……しかし、何を言っても言い訳になってしまうので、俺は黙る。静が笑みを浮かべながら話す。

 

「あの時、よく指名してくれたお陰で自信や度胸もついたし、なによりお金が貯まって助かったよ、コスプレはなにかと入り用だからな」

 

「……それはなにより」

 

「しかし、本当に声優になるとはな」

 

「……覚えていてくれたのか?」

 

「ああ、真剣な眼差しで自分の夢を話すのが印象的だったからな、結構注目していたぜ」

 

「それはどうも……」

 

「立ち話もあれだから移動するっぺ」

 

 ティッペの提案を容れ、俺は御者となって、皆を馬車に乗せて移動する。

 

「そういう言葉遣いでもメイドカフェで働けるのね」

 

「ロビン、失礼でしょう……」

 

 鶯さんがロビンさんをたしなめる。静が笑う。

 

「ははっ、オレはタッパもあるから男性キャラのコスをする機会が多くてね、キャラになりきろうとするあまり口調もすっかりこんな感じになったんだよ」

 

「なるほど、プロ精神の賜物ってやつね」

 

「プロって言われるとちょっと気恥ずかしいが……」

 

 瑠璃さんの言葉に静は苦笑する。

 

「しかし、本当に『デモリベ』のキャラが飛び出してきたかのような……」

 

「ああ、おぼろげながら画が浮かんできたね、元の世界に戻ったらそのキャラのスピンオフ作品を企画するのもありだな」

 

 感心する天に監督が同意する。静が反応する。

 

「それは嬉しいね、是非実現して欲しいものだ」

 

「あの、高校時代の栄光さまはどのような感じだったのでしょうか……⁉ 高校名までは分かっているのですが……」

 

「ええ?」

 

 馬が進むとともに、女性陣のトークは弾む。一人だけ話のベクトルが違う気がするが。

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