【第一章完】三流声優の俺、特殊スキル【演技】で異世界の英雄になってみた   作:阿弥陀乃トンマージ

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第7話(3)藍色髪の錬金術師

「そ、その姿は……?」

 

「ティッペ! また性別が変わっているじゃねえか⁉ うん?」

 

 俺は自分の口調に首を傾げる。

 

「さすがは『七色の美声』、男勝りな女の子を演じても違和感が無いっぺ……」

 

「感心している場合じゃねえよ!」

 

「ええっ⁉」

 

「な、何故『赤髪の勇者』の絵をよこさねえんだよ⁉ なんなんだ、この恰好は⁉」

 

「い、いや、かつてこの世界の危機を救った伝説の『虹の英雄たち』の一人、『藍色髪の錬金術師』を描いた絵を渡したっぺ!」

 

「はあ……まあいい、おめえのうっかりミスにもすっかり慣れてきたよ……」

 

「えへへ……」

 

「いや、褒めてねえぞ……」

 

「お、お、お……」

 

「ん?」

 

「女が一人増えた!」

 

「なっ⁉」

 

 パウルが鼻息を荒くしている。

 

「気の強そうな見た目もオイラ好みなんだな! お前もオイラのところさ来い!」

 

「ま、待て! 元は男だぞ!」

 

「早く、早く!」

 

「話を聞け!」

 

「そらっ!」

 

「どわっ⁉」

 

 一度は立ち上がった俺だったが、パウルが蔦を強く引っ張ったことによって、再び体勢を崩してしまう。パウルが笑う。

 

「ははっ! 蔦で女が釣れたんだな!」

 

「ちぃっ! この蔦をどうにかしねえと!」

 

「錬金術を使うっぺ!」

 

「どうやってだ⁉」

 

「それは分からないっぺ!」

 

「ったく! 重要な要素が抜けたアドバイスにも慣れてきちまったぜ!」

 

「いやあ……」

 

「だから褒めてねえよ!」

 

「とにかく早くなんとかするっぺ!」

 

「分かっているよ! おらあっ!」

 

「⁉」

 

「へへっ、なんとか上手くいったな……」

 

「な、なにをしたんだな……?」

 

「これだよ」

 

「つ、爪……?」

 

 俺は長く伸びた爪を見せる。元々藍色髪の錬金術師は爪をそれなりに伸ばしていたのだろう。それが目に入った瞬間、俺は両手の爪を金属の刃物に錬成させたのだ。とっさのことだったが、成功した。爪の鋭い切れ味は蔦をあっさりと切り裂いた。俺は体勢を即座に立て直し、パウルとの距離をとる。

 

「さて……痛い目見ないうちに降参しな?」

 

「ふふん、その強気な物言いと眼差し、ますますオイラ好みなんだな!」

 

「お、お前は色々と救えねえやつだな……」

 

「う~ん?」

 

 パウルは照れ臭そうに後頭部をポリポリと掻く。

 

「だから褒めてねえよ! なんなんだよ、どいつもこいつも!」

 

「そ、その声と口調でしかられたりすると、妙に嬉しくなるっていうか……」

 

「それについては同意だっぺ……」

 

 パウルの言葉にティッペが深々と頷く。

 

「はあ~~~!」

 

 俺は大きめに呆れ気味にため息をつく。ティッペが驚く。

 

「ど、どうかしたっぺ⁉」

 

「呆れてんだよ、てめえらのよく分からん性癖と、それを無自覚に刺激してしまったアタイの不用意さに対してな!」

 

 俺はティッペとパウルを交互に睨みつける。

 

「ほほっ! その睨むような視線、たまらないんだな!」

 

 パウルがうんうんと頷き、ドシドシと地団駄を踏む。駄目だこいつ、なんとかしないと。

 

「そらよ!」

 

「む! な、なんだ⁉ 前が見えないんだな⁉」

 

 俺は金箔を錬成し、パウルの頭の眼の部分を覆ってみせた。パウルは混乱している。この隙を突いて、俺は女性たちに声をかける。

 

「皆、建物の中に隠れていてくれ! こいつはアタイがなんとかする!」

 

「!」

 

 皆が俺の指示に従い、それぞれ建物の中に入っていってくれた。パウルの驚異的な吸引力をもってしても、それなりの大きさの建物は無理だろう。これで、女性陣が奴の人質になってしまうというような最悪のシナリオはなんとか回避出来そうだ。

 

「よし! 後はアタイがこいつを……!」

 

 パウルの懐に入る。御者の時に持っていた短剣を立派な剣に錬成出来た。これなら……!

 

「あ~うざったい金箔が取れた!」

 

「くっ⁉」

 

 パウルと目が合う。パウルは俺の振りかざす剣を確認すると、すかさず槍を構える。

 

「そらっ!」

 

「ぐっ⁉」

 

 パウルの槍が俺の肩を掠める。俺は剣を落として膝を突く。パウルが笑みを浮かべる。

 

「なかなか良い剣だが、オイラの槍とのリーチ差を考慮してなかったな」

 

「……いや」

 

「ん?」

 

「これで良いんだよ……!」

 

 俺は顔をサッと上げる。パウルは余裕の笑みを崩さない。

 

「度を越えた強がりも虚しいだけなんだな~」

 

「強がりじゃねえ!」

 

「なっ⁉」

 

 俺は槍を掴んで声を上げる。

 

「【錬成】!」

 

「むっ⁉」

 

 俺の錬成によって、パウルの持っていた平凡な鉄の槍は金の槍に変貌をとげた。俺は戸惑っているパウルの隙を突き、槍を蹴って回転させ、柄の部分をバッと掴む。

 

「攻守逆転だぜ!」

 

「は、はじめから、この槍狙いだったんだな⁉」

 

「なかなか勘が鋭いじゃねえか! オラッ!」

 

「うぐっ!」

 

 俺の槍がパウルの太ももを突く。パウルは苦しそうな表情を浮かべる。

 

「もらった!」

 

「なんの! スゥ~~」

 

「うおっと!」

 

「‼」

 

 パウルの吸引力に引き込まれそうになったが、俺は槍を地面に突き立て、その槍に捕まって吸引をなんとか回避する。立派な槍を錬成しておいて良かった……。すると、パウルが体勢を崩す、強烈な吸引を行った後は続けて行動することが出来ないようだ。これは好機だ。俺は地面に転がる剣を手に取り、パウルに斬りかかる。

 

「覚悟! どわっ⁉」

 

 俺はなにかに足を滑らせて尻餅をついてしまう。こ、これは……?

 

「さっき飲み込んだ酒樽の中身を吐き出したんだ~こういうことも出来るぞ?」

 

「な、なんだと⁉」

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