【第一章完】三流声優の俺、特殊スキル【演技】で異世界の英雄になってみた   作:阿弥陀乃トンマージ

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第7話(4)石対金

「ふん、形勢逆転なんだな……」

 

「調子に乗るなよ! ゲ〇吐いただけじゃねえか!」

 

「〇ロなんて……はしたない言葉遣いなんだな……」

 

「お前がはしたない行いをしてんだよ! 大体形勢逆転ではないぜ! アタイは剣と槍、そして爪がある! お前にはもうなにも残っていないだろう!」

 

「それならば……」

 

「ん?」

 

「補充するまでなんだな~」

 

「なっ⁉」

 

 パウルが周囲の建物の外壁を吸引する。まさか石造りの建物でもお構いなしってか。唖然としている俺の前で、パウルが大きめの石をいくつか吞み込んでみせる。

 

「ふう……ごちそうさん♪」

 

「暴飲暴食にもほどがあんだよ!」

 

「!」

 

「そらあっ! なに⁉」

 

 俺は槍を突き出すが、パウルの胸板に弾かれ、槍はポッキリと折れてしまう。それを見てパウルは得意気に笑う。

 

「ふふん……」

 

「ば、馬鹿な……」

 

「石を食べたことによって、体の強靭さが増したんだっぺ……!」

 

「デタラメ過ぎんだろう!」

 

「オラに言うなっぺ!」

 

 俺の言葉にティッペが言い返してくる。

 

「ふふん、まさか、これだけだと思ってないか~?」

 

「え?」

 

「オエッ……」

 

「石を吐き出した⁉」

 

「こういう使い方も出来る!」

 

「がはっ⁉」

 

 パウルはいくつか吐き出した石を積み重ねて、即席の石柱を完成させてしまった。パウルは間髪入れず、その石柱を振るう。あっけに取られていた俺は石柱での攻撃をほとんどまともに喰らってしまい、真横に吹っ飛ぶ。ティッペが声を上げる。

 

「スグル! 大丈夫だっぺか⁉」

 

「ぐう……」

 

「今のをまともに喰らって立ち上がれる奴はそうはいないんだな~」

 

「……」

 

「黙ったか。さて……」

 

「ま、待て……」

 

 立ち上がった俺を見て、パウルは少し驚いた顔になった。

 

「まさかそれで立ち上がるとは……」

 

「こ、転がっていた外壁を金の盾に錬成した……」

 

「ふむ……なかなかどうしてしぶといんだな……」

 

「くっ……」

 

 俺は膝をついてしまう。パウルは笑う。

 

「あっはっはっは、即席の盾では衝撃を緩和しきれなかったんだな。お前さんは後回しだ」

 

「あ、後回しだと?」

 

「ああ……さあ、隠れているお嬢ちゃんたち~出てくるんだな~」

 

「ちっ……」

 

 皆が近くに隠れていることには気付いていたか。もっと遠くへ避難させるべきだった。

 

「隠れていても無駄だぞ~オイラのこの吸引力ももってすれば、これくらいの石造りなんて、なんの意味も無いんだな~スゥ~~~」

 

「やめろ!」

 

「がふっ⁉」

 

 俺は別に転がっていた外壁から錬成した大きめの金槌でパウルの頭を後方から思い切り殴りつけた。パウルは吸引を中断し、頭をさすりながら振り向く。

 

「へっ、頭は石頭ではないようだな……」

 

「いい加減しつこいんだな……」

 

「そりゃそうだろ……」

 

「あん?」

 

「お前を懲らしめるんだからな」

 

「ああん?」

 

「さあ、かかってこいよ、小太り丸坊主……」

 

 俺はふらふらになりながら、パウルを挑発する。

 

「むん!」

 

「おっと!」

 

 パウルが石柱を振るってきたので、俺は金槌で受け止める。

 

「むう……」

 

「へへっ、互角かな?」

 

「調子に乗らないんだな!」

 

「うおっ⁉」

 

 パウルが再度石柱を振るうと、俺の金槌が粉々に砕けてしまう。パウルが失笑する。

 

「はっ、いよいよもう終わりなんだな……」

 

「くう……」

 

「今度こそとどめなんだな……」

 

「待った!」

 

「え⁉」

 

 俺の近くにボサボサヘアーの女性が近づいてくる。ドレス姿だ。見覚えのない方だが、この人もパーティーに参加し、転移に巻き込まれてしまった人か?

 

「栄光優さん、貴方……いえ、貴女の戦いぶりを見させてもらいました」

 

「え? いつから……」

 

「わりと最初の方から」

 

「最初から⁉」

 

「あなたに一発逆転の策を授けます!」

 

「い、いや、そんなものあんなら、最初から教えてくれよ!」

 

「わたしもさっき思い付いたんです!」

 

「さ、さっきって⁉」

 

「ギリギリにならないと力を発揮出来ないんですよ、仕事柄と性格が相まって!」

 

「し、仕事柄?」

 

「とにかく、耳を貸して下さい!」

 

 女性が俺に耳打ちする。俺は耳を疑う。

 

「そ、そんなことが⁉」

 

「出来るはずです! ……多分!」

 

「多分って!」

 

「何をごちゃごちゃ言っているんだな!」

 

「うおおっ!」

 

「なっ! 全身を金色にした? これは……どういうことなんだな?」

 

「世にも珍しい全身金色の女性像! 吸い込んでみたらいかが?」

 

 女性がパウルを煽る。

 

「ふむ……やってみるか……スゥ~~~! ……うぐっ⁉ な、なんだ、熱い……?」

 

「……狙い通りね。全身を火打ち金と化した栄光さんはあなたの中にあった石を使って発火したの、あなたの体内は大火事よ」

 

「オ、オエエ! なんて無茶苦茶なことを! ここは退散なんだな!」

 

「大丈夫、栄光さん?」

 

「あ、貴女は?」

 

 吐き出され元の姿に戻った俺のことを優しく抱きかかえる女性に尋ねる。

 

「わたしは藍ノ浜海(あいのはまうみ)、『デモリベ』の原作者です」

 

「え、ええっ⁉」

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