【第一章完】三流声優の俺、特殊スキル【演技】で異世界の英雄になってみた   作:阿弥陀乃トンマージ

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第9話(2)救出作戦敢行

 俺たちは一旦馬車まで戻ってきた。荷台の中で会議を行う。監督が話す。

 

「……情報を総合すると、あのオークション会場には獰猛な数匹の虎だけでなく、屈強な男たちは十人近く警備をしているようだ……」

 

「全部まとめてぶっ飛ばせば良い!」

 

「落ち着きなよ、栄光くん……」

 

「これが落ち着いていられますか⁉」

 

 俺は声を上げる。監督は再度なだめてくる。

 

「冷静さを失ったら負けだ。救い出されるものも救い出せない……」

 

「しかし……!」

 

「何度も似たようなことを言わせないでくれ……!」

 

「は、はい……!」

 

 監督の静かな迫力に俺は押し黙る。瑠璃さんが口を開く。

 

「とはいえ、売買、オークションまでもう時間がないわ」

 

「アタシたちもオークションに参加するとか? って、さすがにそれは悪趣味よね……」

 

 鶯さんが腕を組む。

 

「そういう時こそ彼女の感覚は研ぎ澄まされる……」

 

「彼女?」

 

「ふふっ……」

 

 監督がロビンさんに向かってウインクして、顎をしゃくる。そこには街の地図――いつのまにか姫ちゃんがもらってきたという。買ったのではない。これも繋がりの成せる業だろうか?――とにらめっこしながらぶつぶつと呟く海の姿があった。

 

「さすがに締め切りまで小一時間も無いのは経験が無いですよ……」

 

 青輪さんがおずおずと尋ねる。

 

「せ、先生、どうでしょうか?」

 

「……」

 

「せ、先生?」

 

「閃いた!」

 

「きゃあ!」

 

 海がいきなり大声を出したため、青輪さんは驚く。

 

「……救出作戦、ネーム切れました……」

 

「聞こうか」

 

「はい、まず……」

 

 海が地図を片手に説明を始める。皆が輪になって、それに耳を傾ける。

 

「……さあさあ! 間もなくオークションの開始だよ! 準備はいいかい?」

 

 スキンヘッドの男が舞台上から呼びかける。客同士で話をする。

 

「……おい、お前の狙いは?」

 

「はっ、決まっているだろう。いつもの通り安くこき使える奴だよ」

 

「目玉っていう異世界からの転移者は?」

 

「額が馬鹿みたいに釣り上がるだろう? 手が出せねえよ」

 

「それもそうだな」

 

「あ~!」

 

「! ビ、ビックリした……」

 

「な、なんだ? どうした姉ちゃん? いきなり大声出して……」

 

「あっちの広場で『ラヴィ』がゲリラライブを行っていますよ!」

 

「え? 誰だよ?」

 

「知らないんですか⁉」

 

「か、顔が近いな⁉」

 

「周辺の街では有名なアーティストですよ!」

 

「ア、アーティスト?」

 

「ええ、彼女らの演奏を聞かないなんてもったいない!」

 

「彼女ら……女か?」

 

「はい、それはそれは美しい三姉妹ですよ~!」

 

「お、おい、ちょっと行ってみるか?」

 

「そ、そうだな……」

 

「行きましょう、行きましょう! そうしましょう!」

 

「俺らも行くか?」

 

「あ、ああ……」

 

「尊さ大爆発の『ラヴィ』のライブ! 見なきゃ損ですよ!」

 

 舞台前から人がほとんどいなくなった。スキンヘッドの男が呆然とする。

 

「なっ……」

 

「ど、どうしますか?」

 

「どうするもこうするもねえ! ゲリラライブなんて聞いてねえぞ! 営業妨害じゃねえか! お前、何人か連れてとっちめて来い!」

 

「は、はい!」

 

 男が仲間を数人連れてその場を離れる。スキンヘッドの男がいら立ちを見せる。

 

「ったく……ん?」

 

 スキンヘッドの男が舞台に近づいてくる何人かの男女を確認する。

 

「ここまでは先生の筋書き通りだね」

 

「あらすじです……粗がありますよ? 『ラヴィ』の三人や青輪さんは大丈夫なんですか?」

 

「馬車の御者に【憑依】した紫代反田さんが手際よく回収してくれる。問題ない」

 

「な、なるほど……」

 

 海が頷く。スキンヘッドの男が声を上げる。

 

「なんだ⁉ お前ら⁉」

 

「……このふざけたオークションをぶち壊しにきた!」

 

 俺が声を上げる。

 

「な、なんだと⁉ おい、お前ら、あいつらをぶちのめせ!」

 

「へい!」

 

「ティッペ!」

 

「了解だっぺ! それ!」

 

 俺の合図に応じたティッペが上から屈強な男たちに向かって色々ぶちまける。

 

「⁉」

 

「な、なんだ⁉ うわっ⁉ ヘ、ヘビ⁉」

 

「こっちはクモだ!」

 

「こっちは……!」

 

 屈強な男たちはパニック状態に陥る。監督がケラケラと笑う。

 

「あはははっ、ああいう手合いほど、ヘビとか虫が意外と苦手だったりするんだよね~」

 

「橙々木さんのスキル【描写】、見事な早描きですね……」

 

「い、いや、それほどでも……あるでござる~」

 

 海の賞賛に天はまんざらでもない表情を見せる。スキンヘッドの男が声を荒げる。

 

「お、お前ら! 大の男が揃いも揃ってみっともねえ! ったく! おい!」

 

「ガルル……」

 

 獰猛な虎たちがこちらに向かって歩いてくる。海がたじろぐ。

 

「問題はこれですよ! どうするんですか⁉」

 

「問題ないの!」

 

「プ、プロデューサー⁉」

 

「それっ!」

 

「‼」

 

 姫ちゃんが投げつけたものに虎たちは目の色を変えて群がる。

 

「なかなか食べられない高級肉なの! 虎ちゃんたち! たんとお上がり!」

 

「そ、そんなもの、どこから? どうやって?」

 

「ちょっとしたコネで、格安で譲ってもらったの!」

 

 姫ちゃんは振り返って満面の笑みを浮かべ、海の疑問に答える。

 

「よし! ……おい、オークションは中止だ。奴隷は皆解放しろ!」

 

 舞台に駆け上がった俺は剣をスキンヘッドの男に向ける。

 

「くっ……旦那、用心棒の旦那!」

 

「何⁉」

 

「……ふん」

 

 スキンヘッドの男の叫びに応じ、長髪の男が現れる。

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