【第一章完】三流声優の俺、特殊スキル【演技】で異世界の英雄になってみた   作:阿弥陀乃トンマージ

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第12話(3)締め切りなんて関係ねえ

「大丈夫だっぺかなあ……テン……」

 

「ここは信じるしかないだろう」

 

「でも……」

 

「天は頭が回る。パウルの奴を出し抜くことも十分可能なはずだ」

 

「それはそうかもしれないっぺけど……」

 

「とにかくとしてだ。魔王の居城はまだか?」

 

「もうそろそろ見えてくるはずだっぺが……」

 

「本当か?」

 

「本当だっぺ」

 

「見えてくるのか……うおっ⁉」

 

 カラスが馬車に襲いかかってくる。俺は思わず馬車を停車させる。

 

「え、えい、離れろっぺ!」

 

 ティッペがカラスを追い払う。俺は問う。

 

「あれはモンスターか?」

 

「いや、単に大きめのカラスだっぺ」

 

「そ、そうか……気を取り直して先を急ぐと……」

 

「そうはさせないわよ……」

 

 そこに褐色の豊満な肉体をバンドゥビキニで包んだ、黒髪に緑のメッシュを入れたドレッドヘアーの女性が現れる。俺が声を上げる。

 

「セルか!」

 

「わたしもいるよ……」

 

 褐色のたわわな体を眼帯ビキニで包んだ、黒髪に黄色いメッシュを入れた女性がコーンロウの髪型を触りながらこちらに近づいてくる。

 

「ベリまで! ということは……」

 

「そう、私もいる……」

 

 褐色のワガママボディをマイクロビキニで包んだ、黒髪に赤いメッシュを入れた大きなアフロヘアの女が馬車にゆっくりと近づいてくる。ティッペが叫ぶ。

 

「『ラストのABC』だっぺ!」

 

「やはり待ち伏せされていたか……」

 

「栄光さん、ここはわたしに任せて下さい」

 

「海⁉ 一人ではさすがに危険だ! ここさえ突破すれば、後は魔王だけなはず!」

 

「連戦は出来る限り避けるべきです! わたしを信じて!」

 

「……無理はしないでくれよ!」

 

「ええ、天さんに【描写】してもらった煙玉を投げます。その間に……えい! 今です!」

 

「ああっ!」

 

 俺は馬車をその場から全速力で走らせる。

 

「ふむ……」

 

 海は顔をしばらく布で覆ってから顔を出す。煙が次第に晴れてくる。

 

「け、煙玉とは古典的な……」

 

「煙が目に入って……スキル【時戻し】を発動出来なかった……」

 

「目で追える範囲じゃないと、私たちのスキルは発動しない……馬車ももう見えなくなったか。ただ、行先は分かっている。ベリ、セル、気を取り直して、英雄気取りを追うぞ」

 

「ええ」

 

「分かったわ、アラ姉さん」

 

「そうはさせません!」

 

「ん?」

 

「貴女たちはここで食い止めます!」

 

 海がアラたちの前に立つ。

 

「ハッ!」

 

「ハハッ!」

 

「ハハハッ!」

 

「ハーハッハッハ!」

 

 アラたち三人が揃って笑う。

 

「な、なにがおかしいのですか⁉」

 

「……勝てると思っているのか?」

 

 アラが胸を張る。

 

「い、いや、スタイルの良さでは到底敵いませんけど!」

 

「なにを言っているのよ……」

 

 ベリが呆れる。

 

「勝負はそんなことでは決まりません!」

 

「勝負って、ワタシら三姉妹をまとめて相手するってこと?」

 

 セルが首を傾げる。海が力強く頷く。

 

「だってよ?」

 

「やるだけ無駄だと思うけどね……」

 

「まあいい、ベリ、セル、少し遊んでやれ」

 

「はいはい……」

 

「分かったわ……」

 

 セルとベリが構えを取る。海が声を上げる。

 

「か、かかってきなさい!」

 

「調子狂うわね……すぐに終わらせる!」

 

「えい!」

 

「がはっ……!」

 

「なっ⁉ セル⁉」

 

 セルに対し、海の放ったパンチが入り、セルは崩れ落ちる。海はボソッと呟く。

 

「う、うまくいった……」

 

「ちっ、どうせまぐれよ!」

 

「せいっ!」

 

「ぐはっ……!」

 

 ベリに対し、海のキックが決まり、ベリは倒れる。

 

「や、やった……」

 

「……なるほど、お前のスキル【閃き】が関係しているんだな?」

 

 アラが冷静に尋ねてくる。海が戸惑う。

 

「し、知っていたんですね?」

 

「一応、情報に目は通しておいた……しかし、そんなスキルで格闘能力が飛躍的に向上するものか? お前、漫画家なんだろう?」

 

 アラが首を傾げる。

 

「せ、性格と仕事柄、いわゆる『修羅場』で力を発揮するようでして……格闘能力の向上に関しては、わたしのイメージを具現化させたものでしょう。もっとも、わたしの肉体的限界を超えた動きなどは再現出来ないようですね。あまりに荒唐無稽な事象も発現させるのは困難なようです……」

 

「分かったような、分からんような……」

 

 アラが首を捻る。海が苦笑する。

 

「まあ、わたし自身もはっきりと把握出来ているわけではありませんから……」

 

「ただのヒョロイ女かと思ったら、そうではないということが分かった。だが、私はスキル【時止め】を発動させる……お前に万の一つも勝ち目はない」

 

「! ……やってみなくては分かりませんよ?」

 

「ふん、抜かせ……」

 

「ていっ!」

 

「ごはっ……⁉ な、なんだと……?」

 

 アラの胸元に海が強烈な頭突きを食らわせる。自らのスキルが発動しなかったことにアラは驚いたような顔を見せる。海が淡々と告げる。

 

「……恐らくですが、スキルはちゃんと発動していました。私がそれを破ったんです……」

 

「⁉ な、なんだと……?」

 

「仕事柄でしょうか、時間という概念にあまり囚われ過ぎないようにしていますので……『締め切り破り』の常習犯です」

 

「ば、馬鹿な……あ、案外ロックな生き方……!」

 

「……いや、わたしの性格の問題か……」

 

 倒れたアラの脇を通りながら、海が呟く。

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