ブルアカの短編とかいろいろ   作:一生ホームアローンマン

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ナツ絆ストーリーと古書館イベのウイでそのまんまアフォガードいけるやんとなったので二人のナツ絆メモロビ直前の話って感じです。


甘ナツと魔術師にアフォガードを

 

柚鳥(ゆとり)ナツが一人古書館を訪れたのは特になんてことのない天気の良い日のことだった。初夏の候、日向にいればほんのり汗ばむ、そんないい陽気だ。

 

ここに来るにあたって放課後スイーツ部の面々も誘ってはみたがカビ臭いとこはパス、などとヨシミには一発で切り捨てられ、カズサもそこまではっきり言う事はなかったもののそういうとこは苦手、アイリは普通に用事があってダメだった。

 

別に今日でなければならないということもないので日を改めても良かったのだが、まあいつもいつでもつるんでいるというわけでもない。こうして一人、いかにも雰囲気のある古風な建物を前にするのも胸が高鳴るというもの。

 

ちょっと寂しいのは確かだが、図書委員の人から預かった大きく重厚な鍵もまさに物語のキーアイテムといった風情を醸し出している。冒険、そして古代の謎をめぐるロマン。甘いスイーツだけでなく、ナツはそういうのも大好きだった。

 

いざ、と鍵を差し込み、固く閉じられた門扉の封印を解く。意気揚々と戦々恐々半々くらいの気持ちで、大きな軋む音とともに薄暗い古書館の中へと入り込んだ。

 

 

 

 

 

「ごめんくださーい。誰かいないのー……」

 

コツコツ、ギシギシ。思ったよりも掃除は行き届いているようで、明らかに埃まみれで人の気配がないだとか、そこかしこに蜘蛛の巣が、なんてことはなかった。しかし強い独特の古い紙の匂いの中、光の差さない古い建物を進むのは思った以上に度胸のいる行為だった。

 

古書館はそれなりに大きな建物だったが、その殆どは書棚で埋め尽くされた閉架書庫であり、古書館の主ともいうべき人物の居室としている空間は普通に入口の近くにあった。そのため冒険の時間は案外あっさりと終わりを告げる。安心したような不満なような。ともかくナツは隙間から細く明かりを廊下に投げかけているドアをノックした。

 

「……」

 

無反応。もう少し強く。

 

「……」

 

重厚なドアを叩く音は静かな廊下によく響いたが、何も起こらない。明かりはついており、耳をすませばカリカリとなにか書き物をする音が聞こえるし、定期的に紙をめくる微かな音すら耳に届く。中に人がいることは明らかなのだが。

 

ナツは少し考え、突入することにした。そういう人だということはシャーレの先生やメガネの図書委員さんから聞いていたし、だからこそ会ってみたいと思ったのだ。

 

ギィと重いドアを開け中に入る。

 

中はやはり薄暗い部屋。四方の壁際に大きな書架が並び、隅にはデスクがある。そこに置かれた間接照明がまあまあ見える程度には明かりを投げかけており、廊下と比べればある程度人が暮らせる空間だ。

 

それ単体で歴史的な価値の有りそうなほどの古い本を、慎重な手付きでめくりながらノートに現代語訳と注釈を加えているのは目的の人物である古関(こぜき)ウイだ。こちらに気づいているのかいないのか。作業の手が緩むことはない。

 

なんと声をかけたものかな。迷い、口を開き、閉じる。友人たち相手であれば雑に適当になんとでも思うまま喋れば良いのだが。ほとんど初対面で、先輩だ。別に1歳2歳違うだけで偉いなんて思っちゃいないけれど。

 

「先生からお話はうかがっています。なにか、依頼があるとか」

 

言葉が出る前に、メガネを外し、ペンを置いたウイがこちらを見た。胡乱げな目には明らかに歓迎の意はなく、敵意と言うほど強くはないが、めんどくさいなあという感情が溢れていた。人間を見る目より古書を見る目の方にこそ愛情が籠もっている。そんな風にすら見えた。

 

「本当であれば門前払い、外の方の話なんて聞きたくないのですが、しかたありません。受けるかどうかは別としても聞くだけ聞きますので、どうぞ」

 

ナツは半目のウイにニヤリと笑った。見本のような偏屈な隠者。なんとも、面白い人じゃあないか。

 

「それではお言葉に甘えて。私はトリニティ総合学園1年、放課後スイーツ部のナツ。トリニティでも随一の賢者と名高い古書館の魔術師さんにお願いがあってきたよ」

「随一でもないし、名高くもないし、変な二つ名みたいなのはやめて欲しいんですが……お願いとはなんでしょう」

 

ことさら大仰に語るナツに、言葉ではバッサリ切ってみせるが意外と満更でもないようで照れくさそうにするウイ。基本引きこもりなので褒められることに慣れていないのだった。

 

「私は、伝説の“忘れ去られた駄菓子屋さん”を探しているんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

忘れ去られた駄菓子屋さん。トリニティの生徒たちに古くから伝わる都市伝説。長い長いこの学校の歴史において、その変遷とともに流行っては廃れていく数々のお菓子ちゃんたちが、すべてそこに集まっているという伝説の場所。そのお話はいつの間にか風化してしまい、誰にも探されることなく、今や逆にそのまま丸ごと博物館のようになってしまった。と言われてたり言われてなかったり。

 

「聞いたことはありますね。他愛もない、無数にあるゴシップの一つとしてですが」

 

聞いたことがあるというよりはそういったゴシップを集めたような本で読んだことがあるだけだが、ウイは首を傾げた。そんな変なものを探してどうしようというのだろう。

 

「中央図書館で調べたり、聞き込みをしてみたり、色々やってみたけれど手がかりは全然。でもきっとどこかにあると思ってるんだ」

「それはなぜですか?」

 

しょせんは噂話。どこかの誰かの思いついたホラ話。なにか話の元になるような何かはあったのかもしれないが、似ても似つかないような真実か、時の流れのなかで消え去っているか。紙の上に記された文字たちと違って、現実のなんと移ろいやすいことだろう。信じる理由などどこにあるというのか。

 

「だって、あった方が素敵じゃない?」

 

ニカッと笑うナツに、そのキラキラ光る目に見つめられ、ウイは恥ずかしくなった。依頼というから少し身構えてしまっていた。ああ、この子はお馬鹿な子供なんだな。

 

なんということはない。これは遊びのお誘いだ。幼い日に、友達の家の玄関に駆け込んでその名前を呼ぶような。一緒に宝探しごっこをして遊ぼうと、そういう話なのだ。

 

外の人間の中でも一等嫌な政治ごっこ権力ごっこに血道をあげているような類とはかけ離れた人種だということが一発で理解できてしまった。先生が自身に彼女を差し向けることを良しとした理由も。基本的に人嫌いなウイだが、こんな子供を跳ね除けるほどでもない。そしていいだろう。一緒に遊ぼうじゃないか。

 

しかし、遊びだとしても、この古書たちに関わることならば手抜きなど一切しない。

 

「わかりました。では、忘れ去られた駄菓子屋さんの真実を探るとしましょう。この子達のだれかが、きっとそれを語る時を待っているはずですから」

 

そっと手に持った古書を閉じ、その表紙を優しく撫でながら、しかしギラリと輝いたウイの目にナツは怯む。なんかちょっとミスったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉぅ……」

 

丁寧な手付きで、しかし重苦しい音とともに、ナツの目の前に分厚い古書が何冊も置かれる。別の部屋から机と椅子にライトなど作業に必要なものを持ってくるように指示され、その通りにすると、終わったときには既にかなりの量の本が集められ、移動式の小さな書架に収められていた。

 

「ゴシップについて纏めた本や古い日記、当時の有力生徒のものだけでなく一般生徒のものもできる限り集めてきました。その中でも比較的新しく読みやすいものがこちらです」

「こ、コレ全部読むの……?」

 

一冊一冊の分厚さもさることながら、とにかく量が多い。ナツもそれなりに読書家ではあったが、当然読むのは綺麗に印刷された活字本だ。癖のある手書き文字の日記や、古文の授業でも専門コースでなければ触れないような古い資料の数々に気圧されていた。

 

「読むのではなく文字を探すんです。お菓子、駄菓子、食品関係の話題、ゴシップ関係、とにかく関係の有りそうなところをチェックしてください。さほどの手間ではありませんよ。翻刻*1や完訳を作るとなれば相応に時間がかかりますけれどね」

「ふぅむ、達人の言う、ね、簡単でしょ?と同じような気配がするんだけど……まあともかくやってみるね」

 

なにしろ自分で頼んだことであるし、なによりこれも宝探しの1コマだ。授業で読む古文のテキストなんかよりもずっとわくわくする。

 

「ええ、わからないことがあればなんでも聞いてください。私はもう少し心当たりのある資料を集めます……ああ

付箋を貼ったり、ましてや折り目をつけたり、本を痛めるようなことをしたら叩き出しますからね

ページ数をメモしたり栞用の書き損じ紙を挟むように」

 

普段自分も使っているらしい長方形に切られたコピー用紙の束を渡すウイの異様な迫力にナツはコクコクと頷くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょいちょい休憩を取りつつも半日ほど。こぼしたり、手が汚れたりするようなもの以外なら何でもいいですというウイをオススメスイーツ責めにし、自分ももしゃもしゃしつつナツは頑張った。

 

渡された量の1/3も終わっていないが、慣れない作業に頭が疲れくらくらする。外の景色は全く見えないがそろそろ日が暮れる頃だろうか。

 

「それじゃあ魔術師さん、私は1回帰るね。明日の放課後また来るから……」

「何を言っているんです?」

「ぅえ?」

 

腰をあげかけたナツの肩を細い指がつかむ。見た目に反して思いの外強力なパワー。メレンゲの泡立てとか上手にできそう。

 

「半端で終わらせたら、気持ち悪いじゃないですか。……これはあなたがはじめた物語です。完結まで走り抜けるのが、義務というものです」

「いやでも授業とかあるし……」

 

基本的にこういう無茶振りを言うのは自分の仕事だったので新鮮だなあと思いつつ、常識的なことを言ってみるがもちろん通用しない。

 

「古文の成績を、学年1番にしてあげましょう。十分ですよね?」

 

ウイとしては外の人間に何度も何度も来られるよりは一度で済ませた方が楽だ。ナツの本の扱いが丁寧で、作業の覚えも早かったためまあまあ許せるタイプの人間だと判断したことも大きいが。

 

「少しボロですがシャワーもあります。缶詰になるにはそう悪くない環境ですよ」

「……私は缶詰になるよりはフルーツ缶でパフェを作りたいな~」

「終わったらお好きなだけどうぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、作業にはほとんど丸2日を要した。疲れ果てて倒れ伏すナツに、爆速で最初の分を終わらせさらに大量の追加の資料に当たっていたウイが声をかける。

 

「ではチェックした箇所の表を作成。時系列順に情報を並べ、関連性の低い情報を弾き、法則性を見出します」

「そーいえばまだ終わりじゃなかったんだった……」

「ある程度検討はついていますから、もうすぐですよ」

 

そう言うウイの言葉に半信半疑ながら、集めた情報を整理し考察を進めていく。曲がりくねった文字をひたすら眺めるばかりだった数十時間、それは果たして報われるのか。

 

小さなメモに情報を書き写し、年代ごとに分けた菓子の空き箱に入れていく。古い日記にあったのは雑多で胡乱なゴシップ記事ばかり。いつの時代もこの年頃の女の子なんてこんなものだよね。

 

お菓子を作ったり食べたりした記述も宝探しついでに集めようかと思ったけれど、あまりに多かったので断念していた。古いレシピなんかは普通に中央図書館に行けば本があるだろうから折を見て読んでみようかな。そんなことを考えつつ、ひたすらに手を動かした。

 

 

 

 

 

「では、やってみましょうか」

 

すぐ、と言われてそれから結局数時間。ようやく一通りの情報をまとめ終わった。そして紙片の山を前にしたウイが、次から次へと机の上に並べていく。的確に整理された雑多な情報が、一つの真実を伝える。

 

“忘れ去られた駄菓子屋さん”の噂がある時期まで遡るとぱったりと途絶えることが一目瞭然だった。

 

「つまり……」

「そう、恐らくはこの時期に噂が生まれた。そしてその元となるものがこれ以前、近い時期に存在した。この頃トリニティで……キヴォトスで何があったか分かりますか、ナツさん」

 

ナツは考える。歴史の授業もそんなに苦手ではない。記憶の中で年表を辿る。

 

「アビドス恐慌?」

 

現在は廃校の危機に瀕している砂漠の学校。その名を関する経済的なイベントが、その時期では一番象徴的なものだった。

 

「ええ、ちょうどその頃です。キヴォトスでも随一のマンモス校であったアビドス高等学校のデフォルトに端を発するキヴォトス全体の経済危機。あの学校本格的に斜陽に向かうまでもちょいちょいやらかしてますからね。もちろんトリニティ総合学園も大きな影響を受けました」

 

ウイは予め用意していたのであろう古い都市図を取り出し、そのページを開いた。

 

「当時の市街地の地図です。古聖堂を中心としているのは変わりませんが、今とは栄えてる場所がかなり違います」

 

ウイが指さした場所を見る。現在の地図と違い、なんだかごちゃごちゃして分かりづらいが、今の中心市街からはだいぶ離れていることが分かった。

 

「当時のトリニティ上層部は経済危機を乗り切るために、大規模な公共投資、新市街の開発に着手しました。現在は交通網の発達でさらに新しく市街地が形成されているので、この場所は旧旧市街とでも言うべき地域になるでしょうか。今ではかなり寂れているようですね」

 

古い地図と、真新しい綺麗な地図を見比べるウイ。現在の鉄道駅を囲むようにできた中心市街、当時の開発でできたというちょっと離れた旧市街、すっかり外れの旧旧市街、それらを指で辿る。

 

「つまり、忘れ去られた駄菓子屋さんはこの時の都市開発の影響で“忘れ去られた”……ってこと?」

「恐らくは。そして旧旧市街でそれに当てはまりそうなのは、これらでしょうか」

 

綺麗な地図には容赦なくマーカーで印をつけていくウイ。いくつかの製菓会社、流通倉庫、小売店、製菓店。既に廃業したものも多く、古地図や資料と照らし合わせながら探し出し、関連性の有りそうなものを片っ端からマークしていく。

 

 

 

「流石にこれ以上は絞りきれませんでしたが、現地を散策すればなにか分かることもあるかもしれません」

「……すごい」

 

手がかりなんて何もない、噂だけがあり、真実へ向かう道筋なんてどこにもなかったはずなのに。どうしたことか、今この手には伝説を踏破するヒントが握られている。目をしょぼしょぼさせながら眺めた少女たちの他愛ない日記の雑記の塊が、確かな形になっている。

 

薄力粉、砂糖、卵。なんでもない材料が、正しい手順を経てあるべき形になるように。当然のように宝の地図が出来上がっていた。

 

「さすがは古書館の魔術師さん。噂に違わぬ素晴らしい魔術、感服したよ~」

「……あなたも一緒にやったでしょうに。根気とやる気、丁寧ささえあれば誰でもできることですよ」

 

疲れグデっていたナツの瞳にまたキラキラとした光が宿る。それに見つめられたウイは頬を赤くして目をそらした。

 

「ともかく、依頼の件はこれで終わりです。実際に見つかるかどうかは知りません。あとのことはあなた次第です」

「うん、ありがとう。……ひとまず今日は帰ってベッドで寝て、明日現地に行ってみるね」

 

気持ち的には元気が出てきたとは言え、流石に今から宝探しをするほどの体力は残っていなかったのだ。見送りはなく、しかし最初の刺々しい空気がすっかりなくなった古書館をナツは後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ、魔術師さん」

「……こんにちは、ナツさん。」

 

後日、現地調査を終えてナツは再び古書館に顔を出していた。目星をつけた建物を一通り回ってみたところ更地になっていたり、すっかり崩れて瓦礫の山になっていたり、食品とは関係ない別の企業が使っていたり、ほぼ全て空振りだったが一箇所だけいかにも怪しい地点を残していた。ただそこはなんとも薄気味悪い、不良たちですら塒にするのを躊躇うような有様だったので中には入っていなかった。一人では怖かったのだ。

 

「というわけで今度先生と一緒に探検に行くつもりなんだけど、魔術師さんもどうかな?」

「……。……いえ、私は遠慮しておきます」

 

先生とお出かけ、という点でウイは非常に悩んだが、この後輩の邪魔をするのも野暮だろうというのと、外に出たくない気持ちとで断った。

 

「そう?じゃあ、結果はまた後日。それじゃああとは、今回のお礼だね」

「別にそういうのは構いませんけど……」

「私がしたいから」

 

そう言ってナツは鞄から小さな魔法瓶とクーラーバッグ、大きめのマグカップ2つを取り出す。魔法瓶の蓋を開ければほこほこと湯気が立ち、濃いコーヒーの香り。

 

「……これは」

「そう。図書委員さんに聞いたんだ~」

 

保冷剤の詰められたクーラーバッグからはバニラアイスの箱。更にマグカップのサイズに合わせた大きめのアイスクリームディッシャー*2

 

カップそれぞれにアイスを落とし、魔法瓶から濃いめに入れたエスプレッソを注ぐ。熱いコーヒーがバニラアイスを緩々と溶かしながら絡み合っていく。

 

「……アフォガードですね」

「その通り。アメリカーノ*3が好きな魔術師さんと、甘いものが大好きな私が一緒に楽しめるスイーツということでチョイスしたよ」

 

さあどうぞ、とナツがスプーンを添えて差し出せば、ウイは大人しく受けとった。意外なほどの気遣い。好みのリサーチをしてくるというだけでなく、自分も楽しめるものという選択。一緒に良い時間を過ごそうという、そんな一皿。

 

「……では、いただきます」

 

とろけたバニラアイスの甘みとエスプレッソの苦味。刻一刻と変化する味、食感、温度。甘いものはさほど好きではないが、これは確かに好みのスイーツだった。対面するナツもスプーンを咥え、実に幸せそうな表情で味わっている。

 

なんだか、不思議だ。ウイは自分のテリトリーである古書館に人が立ち入るのを好まない。無理やり入ってくる子たちや、一緒にいて欲しい人もいないことはないが。しかし、別にいても構わないかなと、そう思うような子は初めてだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ご馳走様でした。とても美味しかったです」

「にひ、シンプルだけど、複雑な味。こういうのもいいよね~」

 

食べ終えたカップを片付け一息。魔術師さんの満足げな様子に、ナツも嬉しくなっていた。誰かと共にスイーツを楽しむ。それはなににも代えがたい素晴らしい一時だ。

 

「魔術師さん、あなたは孤高の人だ。人を拒み、知恵の泉に沈み、ただ無言の声を聴くことだけを生業にしている。私も人に周りに合わせろと言われることが多いけれど、あなたもきっとそう。図書委員さんの外出お誘い作戦も失敗したし」

「……シミコ、また余計なことを」

 

突然語りだすナツに、ウイは特になんの反応もしない。図書委員の後輩であるシミコの先生まで出汁にした策謀はともかく、話したいなら聞く。きっと不愉快なものではないだろうから。

 

「私も、他の誰かのようになれるとは、なろうとは思わない。よくわからない私をよくわからないままに受け入れて、分かってくれる人たちがいるから。魔術師さんもあなたのやりかたで世界と関わっているのが分かるから。きっと本来ならすれ違ってお終いだった。だから、嬉しかったよ」

 

ナツはウイの手を取り、ゆるゆると上下に振った。

 

「全然違う世界に生きていた私たちが、こうして一緒にアフォガードを作って楽しんだ。それはとても素敵なことだと思う。最終的にはどうなるかわからないけれど、今回のこと、この機会と、あなたに、かんしゃを」

 

ウイもまた、それに応えて小さな手をそっと握り返した。

 

「……ええ、私も、この数日楽しかったです。たとえどれほど世界が広がろうともきっと変わらない私ですが、ナツさんの心遣いをありがたく思います。あなたの探索が、良い結果になりますように」

 

 

 

 

 

そうして二人は別れた。紐解かれた伝説。忘れ去られた駄菓子屋さんの真実は、秘密だ。

*1
くずし字で書かれている古文書を活字化して現代人が読めるようにする作業

*2
半球形の金具にペンチのような握るための持ち手がついたアイスを綺麗に丸く盛り付けるための器具。

*3
エスプレッソをお湯で割ったもの。コーヒーの旨味が凝縮されている。




やや今更ですが感想評価ここすき誤字報告等ありがとうございます。励みになっております。淫夢語録で感想増えて草なんだ。



スイーツ部イベント良かったですね。レイサ好き。でも水着アズサ引きたいのですり抜けてきてくれ。ということで引いてません。絆ストーリーすごくいいらしいのでぐぬぬですが。

今回イベではナツが一番好きになったしすり抜けで引いてたのでナツ書きました。

黒歴史バッサリやって、当時の人間関係も全部切り捨てて、それがほんとに大人になるってことか?俺ら子供なんだから子供らしくバカでも中二病でもいいじゃねえか。俺らも一緒にバカやるからよ、あの子と仲直りしな!終始コレ。お節介焼きの余計なお世話と言ってしまえばそれまでですが、レイサがいい子なのでザクザク刺さるんですよね。ナツは変な子ですが友情に厚いし怖がりだったり普通の女の子らしいとこもあり、すごい可愛いかんしゃあ~。
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