ブルアカの短編とかいろいろ   作:一生ホームアローンマン

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時系列は最終編のちょっと前とかそんな感じです。先生が出ますが見た目のイメージは便利屋漫画な感じ。


名探偵ネムガキ 第一話 謎のカリスマ犯罪者ファウスト登場!

 合歓垣(ネムガキ)フブキはヴァルキューレ警察学校所属、生活安全局の生徒だ。いうなれば街のおまわりさんである。サボりぐせのある不良警官ではあるものの、敵の動きを止める技に関しては類稀なものがあり、連邦捜査部シャーレにも籍を置いている。

 

 シャーレのオフィスに居るときは大体日当たりの良いところでごろごろしながらドーナツをかじっている彼女だが、今日は珍しく先生のデスクまでやってきていた。

 

「やー先生、今ちょっと時間ある?」

 

 >『あとは書類仕事だけだから、大丈夫だよ』ピロンッ! 

  『いつものドーナツデートかな? もちろん行くよ!』

 

 メガネの下にやや隈の浮いた白衣の青年が頷いた。いかにも物語の中盤で裏切りそうな顔をしているが、いざとなれば生徒のために命をかけることも辞さないナイスガイこと、シャーレの先生である。

 

 彼は国や自治体ともいえる各学校の垣根を超えて、キヴォトス全体の様々な問題を解決するために日々奔走するシャーレの主であり、そして女子校生が大好きだった。基本的には穏やかな微笑の下に変態性癖をしまっておける大人であり、今もその姿勢を崩すことはないが。

 

「それならよかった。ヴァルキューレでちょっとしたイベントがあってね。先生にも来てもらおうかと」

『ふむ。何かスピーチとか必要かな?』

「いや、展示会みたいなもんだから。一緒にぐるっと回ろーってだけ」

 

 気楽な様子で手をふりふりしながら言うフブキは、ついでというように横にいたトリニティ総合学園の阿慈谷(アジタニ)ヒフミに声をかけた。

 

「せっかくだし、ヒフミちゃんも一緒にどう?」

「私もいいんですか? 先生が出かけるならご一緒したいですけど……」

「おーけーおーけー。一般公開はしてないんだけどね。先生の付き添いってことで」

 

 本日のシャーレの当番、書類仕事やエナドリ買い出しなどの雑用をする、であったヒフミは笑顔で頷く。

 

「それじゃあご一緒させてもらいますね。ヴァルキューレ警察学校って普通の学校と色々違いそうなので、ちょっと気になってたんです」

 

 傍から見て全然普通でも地味でもないのだが、彼女は地味で普通を自認しており、“特別”だったり“個性的”なものに惹かれる習性があった。

 

「ヒフミが行くなら私も行く」

「はいよー、まあ一人も二人も一緒だし、構わないよ」

 

 近くのソファでモモフレンズグッズをいじっていた白洲アズサも立ち上がり言った。ここしばらくの補習授業部の活動でアズサはヒフミと交友を深めていた。

 

 モモフレンズはキヴォトスで流行っている……まあ流行ってるかな、一部界隈では有名だよね、くらいのゆるキャラグループだが、ヒフミは狂信的とも言うべき愛をそのモモフレンズたちに向けていた。

 

 普通の子はその熱量にわりと引くことが多いのだが、良くも悪くも世間知らずで素直なアズサは、ヒフミの熱烈な勧誘によりすっかりモモフレンズ沼に引き込まれていた。普通に自身が可愛いもの好きということに気づいたのもある。

 

 ちなみにヒフミのお気に入りはペロロ様というなんかベロンと舌を出したキモ……変な鳥で、アズサはわりと正統派に可愛いデフォルメ骨マスクをかぶった謎の動物、スカルマンがお気に入りである。

 

『それじゃあ、皆で行ってみようか』

 

 ということで4人はヴァルキューレ警察学校へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「案外普通……ですね?」

「ご期待に添えなくてわるいね。でもまあ業務にかかわるとこ以外はマジで普通の学校だからねー。トリニティとかの方がよっぽどデカいし色々特殊だと思うよ」

 

 ヴァルキューレ警察学校はキヴォトスの全行政を担う連邦生徒会の管轄だが、お役所の常というべきか予算はかなりカツカツであり、校舎のビルもよく見ればやや古びて補修が行き届いていないようだった。

 

「構造的に防衛力に問題があるように見える。これでは暴徒の襲撃などに対処できない」

 

 会場はこっちだよー、と先導するフブキの後について体育館へと足を進める中、あまり周囲を観察しているようにも見えなかったが、実はしっかりとチェックしていたアズサが呟いた。ゲリラ屋として訓練を受けた彼女は、初めて訪れた場所でテロしたりされたりの想定をするクセがあった。

 

「キヴォトスは基本平和だから大丈夫だって……。あってもせいぜい軽い銃撃戦とか爆弾騒ぎとかくらいだし~」

 

 >『銃撃戦や爆弾騒ぎがあるのに平和……?』ピロッ

  『キヴォトスではよくあることだな!』

 

「あはは……まあ、本当に大事件みたいなのはめったにないですから、平和と言えば平和なのかもしれません」

「うん、今日の視察任務にヴァルキューレの防衛状況は関係ないか。行こう」

 

 普段は普通に授業に使われている体育館の前には、「押収品陳列会場」と立て看板が置かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『これはまた、壮観だね……』

「ですね……」

「これすべて盗品? すごいな」

 

 広めの体育館はパーテーションでいくつもの区画に区切られ、それぞれ敷かれたシートや台の上に無数の盗品が整列していた。

 

「まずは定番の下着だね~。お金に困った不良が盗って売っぱらうパターンが大半なんだけど、たまーに自分でコレクションしてるやつもいるね」

 

 >『生徒の下着を……許しがたいね』ピッ

  『自分でコレクション……つまり百合下着泥棒!?』

 

「うん。下着ドロ出るとパトロール増やされたりするしほんとサイアク……キヴォトスの人間は身体能力高いから、素手で壁よじ登ってベランダから盗ってくとか、屋上からロープ一本で降下するとかやるし。こういう空き巣系なかなか対処しづらいんだよね」

 

 やれやれと肩をすくめるフブキと、真顔で床のシート一面にずらりと並べられた女性用下着の群れを眺める先生とアズサに対し、ヒフミはほんのりと頬を赤くしていた。

 

「あの、ところでこれ、なんでこんなふうに並べる必要が?」

「グラデーションが綺麗だね」

 

 色ごとに仕分けされきっちりとグラデーションになるように並べられた下着類はまるで現代アートのようであった。

 

「累犯・模倣犯の根絶が目的。こういうふうに並べて報道すれば一発で犯人が恥ずかしいやつだってわかるから、だって。いやまあどんだけ効果あるかは知らないけどね~」

 

 言われてみれば、体育館の中にはヴァルキューレの生徒だけでなくカメラを持ったクロノスジャーナリズムスクールの生徒らしき者もちらほらかいた。彼女たちがこの光景をニュースで流すのだろう。

 

「はぁ。ちゃんと真面目な理由でやってるんですね」

「まあ並べる私ら下っ端はわりと遊び半分だけどね」

「ええっ?」

「そうでなきゃやってらんないよこんなの。そんじゃ次行こうか」

 

 けらけら笑いながら移動するフブキとともに、一同は体育館の中を一回りすることになった。

 

『野球のボールがピラミッド状に……』

「なにかの商品展示みたいですね」

「キヴォトスではボールよりもバットの方が大量に売れていると聞いたけど、ボールもたくさんあるんだ」

「それはただのジョークだね。バットより銃のほうが強いし」

 

 様々な学校から盗まれた野球ボールであったり。

 

「運動靴がこんなにたくさん」

「靴を盗ってどうするんだろう。サイズが違うと履けないし、たくさんあっても意味がない」

「これも売れるみたいだね~」

 

 >『ちゃんとした競技用のは安くないし、酷いね』ピロッ

  『興味があります!』

 

 整然と並べられた大量の運動靴であったり。

 

『これはキヴォトス特有だね……』

「いえ、キヴォトスでもだいぶ珍しいと思うんですけど……」

「銃のストックだけ盗んだの? わざわざ分解して? まるごと盗むならともかく、理解不能」

「嫌がらせなのか愉快犯なのか趣味なのか……まあよくわかんないことするやつを見るのも案外珍しくないね、警察なんかやってるとさ」

 

 種類別色別にこれも綺麗にグラデーションで並べられた大量の銃床であったり。陳列された様々な大量の押収品を眺めながら4人は回り、そしてその区画へと立ち入った。

 

「こ、これは……!」

 

  『キモい鳥!』

 >『モモフレンズのグッズ……?』ピポッ

 

「見たことがあるものばかり、いや違う。なんだか違和感がある……これは一体何?」

「いや、それがね」

 

「海賊版ですっ!」

 

 ヒフミが叫び、一瞬体育館が静まり返る。

 

「これは公式が出しているモモフレンズグッズではなく、非公式の、それもファンメイドの二次創作作品などでもなく! 海賊版、いわゆるバッタモンです! 公式グッズの粗悪なコピー品! 公式の利益を掠め取る最悪の所業っ!」

 

 拳を震わせ猛り狂うヒフミさんに、叫び声に注目していたその場のほとんどの人間はそっと目をそらした。アズサはなるほどと頷き、フブキは苦笑いで誤魔化した。

 

『なぜそんなものがここに?』

 

 もはやグッズ専門店ではないかというくらいに山ほどのぬいぐるみなどが並べられた一画を前にして先生は疑問を呈する。

 

「盗品じゃなくて押収品だからね。盗品以外もあるんだよ。これはちょっと前にブラックマーケットの著作権法違反グッズ製造工場を制圧したときのやつ」

 

 なぜか工場自体は到着前にまるごと壊滅してて、これは別の倉庫にあったやつなんだけど、とフブキはヒフミをちらりと見た。ヒフミはスッと目をそらした。

 

「あ、悪は滅びるんですね。ペロロ様もきっとお喜びですよあはは……」

『ヒフミ……?』

「大丈夫先生。証拠は残っていないはずだから」

 

 そういう問題ではないと先生は思ったが、フブキがここは本題ではないと言うように先へと促す。アズサはいつの間にかいつものガスマスクを装着している。顔を隠さなければならないような事態がこの場で起きるとでも言うのだろうか。

 

「───! こ、これは……!」

「この間皆でゲットしたやつだね。私も部屋に飾っている」

 

 海賊版モモフレンズグッズの先にあったのはまたしてもモモフレンズグッズであった。しかし先程のものと比べて明らかに質がよく、またペロロ様たちが普段見慣れないコスプレをしたぬいぐるみであった。よく見ればそれは各学校の制服のようだった。アズサのギリギリの発言はスルーされた。

 

「限定モモフレンズグッズ。買い占めと値段の吊り上げでちょっと前に話題になったよね」

 

 ヒフミがたらりと冷や汗を流すのを先生は横目で見た。

 

「とある不良集団が買い占め転売やってたんだけど、それ自体は別に犯罪じゃないからね。通報とかもけっこうあったけどヴァルキューレ(うち)に言われても困るよ~って感じでさ」

 

 アズサはそっぽを向いていた。しゅこーしゅこーとマスクの呼吸音が白々しく響く。

 

「ただそいつらこの間別件逮捕したんだよね。転売で集めたお金で色々ヤバいもの買い込んでたり、さっきの海賊版工場ともつながりがあったみたいでさ。ブラックマーケットの拠点が謎の覆面集団に襲撃されたって話で、全員ぶっ倒れてたから楽な仕事だったけど」

 

 ヒフミの冷や汗がたらりたらりと増えていく。

 

「海賊版は処分するとしてもこっちはまあ、一応正規品なんだよね。それで捜査や罰則が終わった後で返却予定なんだけど、でも全種類数個ずつ帳簿と数があわなくてさあ……」

 

 なぜかお金は置いてあったんだけどね。何か知らないかなあ、とフブキは目をそらす二人にニッコリと笑いかけた。

 

「あ、あはは……ちょっとなんのことか全然わからないですね」

「……シュコー」

『ヒフミ、アズサ……?』

 

 自分がいないところでまた大立ち回りをしていたことを察し、心配半分呆れ半分で見つめる先生を尻目に、催涙弾のピンに指をかけ素早く脱出経路を確認するアズサと、そっぽを向きながらもペロロ様リュックに手を突っ込みガサゴソとなにかを取り出そうとするヒフミ。

 

「まー別に被害届とか出てないし、その襲撃犯をどうこうってことはないんだけどね?」

 

 明らかに臨戦態勢に入った二人を相手にも余裕綽々といった調子を崩さないフブキ。敵(?)のホームで無闇に戦う愚を犯すことはあるまいと、大胆かつクレバーな天才犯罪者阿慈谷ヒフミ(ファウスト)の思考を読み切った一手であった。両者ともに内心ちょっとビビっているが。

 

「そ、そうですか。私は特に関係ないですけど、少し用事を思い出したので失礼しますね!」

「私も帰る。じゃあね先生、シュコー」

 

 足早に立ち去る二人を見送り、先生はフブキに声をかける。

 

『いいの、フブキ?』

「なんのことだかわかりませんなあ。ちょっとした銃撃戦なんてキヴォトスじゃよくあること、だし」

 

 今日のイベントにヒフミたちを連れてくることになったのは偶然ではあるまい。先生は少し前にシャーレの当番決めの際、フブキが予定をズラしたことで玉突き的にヒフミの当番が今日になったのを思い出していた。

 

 直接交換したわけではないので印象に残っていなかったが、各人の予定を読み切っての動きだとしたらなかなか大したものである。ただ、わざわざ連れ出してグッズを見せただけというのどういうことなのか。

 

「これは独り言なんだけど、あんまり派手にやるのは控えてねーって一言言いたかった感じ。こっちの立つ瀬がないからさ」

『……謎の覆面集団に会うことがあったら言っておくね』

 

 先生は生徒に清廉潔白であることを求めていない。衝動のままに駆け抜けることも、時には成長のために必要だと考えているからだ。基本的には見守り、ときに応援することすらある。もちろん積極的に犯罪を教唆するわけでは無いが。

 

「よろしくー。いやまあヴァルキューレがもっとバリバリ働けって話なんだろうけどさ。根本的に戦力不足だからどーしよーもないんだよね」

 

 カンナ局長またキリキリしてるよ、とフブキはため息をついた。

 

『カンナとはまたご飯行って愚痴聞いてあげないとだね。フブキも行く?』

「やー、例の屋台でしょ。それは普通に二人きりで行ってよ。私とはまた別に二人でドーナツ食べに行こ」

 

 それじゃあそうしようととぼけた顔をする先生に、フブキは苦笑いで仕切り直した。

 

「それはともかく……うちは人数、装備もそうだけど、エースがいないんだよね。だから舐められてる。先生があのウサギちゃんたちうちに引き込んでてくれたらなーなんて」

 

 元SRT特殊学園の生徒たちの多くはヴァルキューレに転入することとなったが、全体的な質は高くともやはりエースと言える人材はいなかった。件のRABBIT小隊の面々は転校を拒否したままであるし、SRT最強と名高いFOX小隊は行方知れずだ。

 

『無理強いはできないからなあ。私は基本的に生徒の自主性を尊重したい』

「だよねー……。はぁ、お散歩日向ぼっこドーナツタイムだけで業務が終わる平和が欲しいよ。安心してサボりまくれる素敵な職場……」

 

 以前はサボりまくって完全にそんな感じだったじゃないか、と先生は思ったが、そんなフブキでも真面目に働くときはある。この怠け者の小さな婦警さんも、なんだかんだで正義感というものをちゃんと持っているのを先生は知っていた。思えば最近は少し真面目に働いている様子だったかもしれない。

 

「近頃どうもブラックマーケットやカイザーグループに妙な動きが増えてる。何かあるかもしれないから、気をつけてね先生」

『ありがとう。フブキもね』

「あはは、私は大丈夫だって。所詮街のおまわりさんだからね。本当にヤバいとこには近づかないから」

 

 パシパシと先生の背中を叩き、フブキは体育館の出口へと向かう。すれ違う先生の鼻にふわりと甘い香りが漂った。




元々タイトルは盗品陳列ヴァルキューレでしたがヒフミさんが出ると一目でわかるようにしたかったのでこうなりました。特に続く予定はないですが語呂と勢いで第一話。冷や汗ダラダラヒフミさんとガスマスクアズサがそっぽを向いてしらを切るところが書きたかったのとリアル警察の盗品陳列展示の記事を見てこんなんできました。
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