ブルアカの短編とかいろいろ   作:一生ホームアローンマン

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雑草学会なるものが実在すると聞いて。扱うネタ的に名前そのままはやめておきましたが。


ハルカと雑草研究会

伊草ハルカはよく散歩をする。敬愛する便利屋68の社長である陸八魔アルやシャーレの先生のために、なにか献上できる品がないかと物陰から物陰を伝うようにゆっくりと歩きながら探しているのだ。

 

他にも、便利屋の依頼でよく使う爆発物の掘り出し物がないかだとか、地形を把握することで効率的にターゲットを爆破する方法を考案するだとか、歩き回ることは大きなメリットがあると感じている。

 

同じ便利屋の仲間であるカヨコやムツキのように知恵を巡らせることも得意ではない、とハルカは自身を評価しており、それが正当かどうかはともかく無能な己はとにかく脚を使うのが良い、と日々あちらこちらを散策しているのだ。この日はゲヘナ自治区のやや外れ、特に何もなく、それゆえにまあまあ治安のいいエリアをうろついていた。

 

ゲヘナでは三歩歩けば不良に因縁をつけられるだとか、目的地につくまでにカツアゲに合う確率が250%、つまりは2回でメインと予備財布は確実に取られて3回目に靴下の中の最後のお金まで奪われる可能性が50%みたいに言われる危険地帯……も実際あるが、そこそこ普通にすごせるエリアもそれなりに広い。

 

シャーレの先生に言わせればめっちゃ可愛いヒナちゃん、ゲヘナの不良にはまさに悪魔の王と恐れられている空崎ヒナ率いる風紀委員会の活躍によるものである。

 

ともかくそのため他校の生徒が普通に遊びにくる繁華街だとか、ちょっとしたイベント会場だとか、そういったものも存在していた。渡航危険レベル3(渡航中止勧告)とかレベル4(退避勧告)みたいな場所ばかりではないのだ。

 

ハルカがぶらりと歩いて見つけたその場所もそんなイベントスペース、というか大きめの貸し会議室のようなところであった。だだっぴろい空間を用途に合わせて区切ったり装飾したりして使う、たまにアングラな薄い本即売会会場になっていたりする。

 

「え?え?アレ?どうして……???」

 

グラサンと大きめのマスクで顔を隠したピンク髪の元トリニティ正義実現委員会、現補習授業部部員の謎の人物がここにいるのはそれが理由だったりするのだが、残念ながら今日は薄い本即売会の日ではなかった。日付を間違えたのだ。補習授業部のカレンダーに大きく丸がつけてあったため勘違いしたのである。

 

「コハ……あなたも例のグッズを買いに?」

「シュコー」

 

後ろから紙袋とガスマスクで顔を隠したわりに普通にお嬢様学校トリニティの制服を着ているため何度も不良に絡まれては撃退しつつここまでたどりついた謎の補習授業部部長と部員……もうめんどくさいのでヒフミとアズサがやってきて話しかけるが、ピンク髪のめんどくせえコハルはぶんぶんと首を振って否定する。

 

「ちちち、違うわよ!私は、そう!学術的興味があって来たの!勉強しに来たんだから!一緒にしないでよね!!!」

 

ぴゅーと駆けていくコハルにヒフミとアズサは顔を見合わせると、少し肩を震わせて笑い、歩いて会場へと向かっていった。ハルカはそんな謎のトリニティ生集団を物陰から黙って見送った後、ゆっくりと看板へ近づく。

 

『キヴォトス雑草研究会 会場』

 

達筆な筆文字でそう書かれた看板の足元には、鉢植えにその名の通り雑草が植えられ、ドンと置かれていた。本来日陰でのけ者にされているべき彼らが、今日の主役は俺たちだぜ、と言わんばかりに堂々としていた。

 

普段ハルカが育てている半陰性、日向過ぎても日陰過ぎても生きていけない半端者、の雑草たちと違ってバリバリ陽性なのもあるだろうか、立派に大きく育って看板の下半分を半ば覆い隠している。

 

「わぁ……」

 

ハルカは、自分のような駄目で役立たずで邪魔なやつ、に似ている雑草に親近感を感じ、密かな植物園……ただの郊外の廃墟だが、を作り育てている。鉢に植えたり、なんならただのバケツに穴を開けたものを鉢代わりにしたり。森の土を集め、道端の雑草を植え替えて育てる趣味だ。

 

先生は素敵だと言ってくれてそれはそれは嬉しかった、まさに天にも登るような喜悦であったが、ただそう言われたのは先生の優しさからであって、変なことをしている自覚はある。

 

だからこそ、この雑草研究会、看板下に置かれた雑草の鉢植え、自分と同じようなことをしている人間がいるというのはなんともいえないむず痒い気持ちを起こさせた。

 

存在し得ないであろうと思われた同好の士が地上にいたことを知る喜び、しかし雑草「研究会」という、自身とは遠く離れた世界を思わせる単語に見る不安。同じ雑草、とはいえ、あちらからしたらお前なんかと一緒にするなと、そう言われるようなものかもしれない。

 

「ど、どうしよう……」

 

会場の方を見やり、なにかいかにも賢そうなインテリ集団のイベントだったらどうしようとか、鉢植えに育った雑草のたくましさを見てほっこりしたりだとか、なんとなく看板に手を伸ばしてはすぐ引っ込めたりだとか、いつも以上に挙動不審なハルカを見とがめたのだろうか。後ろから新たにやってきた人物が声をかけた。

 

「あの、どうかしましたか?」

「ひゃわぁっ!すみませんすみません私なんかがごめんなさいすみません……!」

 

看板の前に立ち尽くすハルカに声をかけたのはゲヘナ学園給食部の愛清フウカであった。なんとなくひと声かけた瞬間怒涛の勢いでマシンガン謝罪を食らい半眼になって引くフウカであったが、まあこのくらいの変なやつはキヴォトスでは珍しくもない。気を取り直して尋ねた。

 

「興味ありますか、雑草研究会」

「いえ、すみません。あの、その……気になります」

 

ものすごい勢いで目をそらし、か細い声で、しかし確かな肯定を聞き色々気にせず話を進めることにする。

 

「私も、ちょっと面白いよと聞いただけなので詳しいことは知らないんですけど、一般の人でも普通に入れるそうなので気になるなら少し覗いてみてはどうですか?」

「はぁ……でも、邪魔になってしまわないか……」

 

雑草研究会は一応キヴォトスの食料生産にかかわる分野で、なおかつ直接的には飲食物に関係がない。たまの休みを平和に過ごそうと考えたフウカは、これならば例の集団が突然POPして店を爆破したり拉致されて料理を作らされたりクレイジータクシーばりの暴走運転を強要されたりするような目には合うまいと思いやってきたのだった。別に嫌いではないが、疲れるのだ。

 

出入りの業者から研究会の話を小耳に挟んだくらいだったが、いかにも平和そうだし、こうして気にしている子もちょっとおどおどし過ぎだが、大人しくていい子そうではないか。フウカは今日という日が素敵に穏やかな休日となることを確信しつつ続けた。

 

「知名度が低すぎるのをなんとかしたくて、キャラクターコラボグッズまで作ったそうで。誰が参加しても、喜ばれこそしても嫌がられることはないはずですよ」

「……それなら、ちょっとだけ。隅っこの方に、お邪魔します……」

 

優しい言葉をかけられ内心ではすごく死にたくなっていたハルカだが、あまり断るのも逆に失礼だし、相手の時間を無駄にさせてしまうと思い頷いた。

 

フウカと連れ立って会場に進むが、先程のものだけでなく、会場周りにはいくつか同じような看板があり、誘導の矢印とともに雑草の鉢植えも置かれていた。

 

完全に統制を離れ無節操にボーボーになったその辺の空き地を切り取ってきましたみたいなものから、なんらかのテーマ性をもってまとめられたのだろうなという芸術性を感じるものまで様々だった。

 

「なんだか不思議ですよね、雑草の鉢植えなんて」

「そ、そうですね。変ですよね……」

 

自分でもそう思っている、とはいえハルカはフウカのストレートな感想に心がぶん殴られる。いろいろな鉢植えを見て、どんな人がどんな思いで育てたのだろうとウキウキした気持ちがしゅるしゅるとしぼんでいくのを感じた。

 

「でもこうして植えてあるとなんだかちゃんとしたもののように見えるから面白いですよね」

「そ、そうですよね!私も、その、嫌いじゃないです」

「お花は控えめな方が可愛らしかったりしますし、切り花を食卓に飾ったりしたら素敵かも」

「はい……」

 

フウカはとくに何も考えずつらつらと思ったことを言っていただけだが、ふと思いついた食卓を飾る、で給食部にはそんな暇も予算もないな、とげんなりした。さらに言えば花を愛でて喜ぶような感性をもったゲヘナ生なんか激レアだよなあ、とか自分で駄目なとこが次々と思いつきやや半目になる。

 

しかし気を取り直して、先生に食事を届けるときに食卓の彩りに食事以外の物も考えたほうがよりよいかも、と良いアイディアが浮かび心にメモした。

 

ハルカは雑草が褒められてウキウキが復活し、先生が雑草の門松をとても喜んでくれたことを思い出し、鉢植えを飾る方向には可能性があると思った。その後すぐにやっぱり花の咲かない雑草を愛でる人はあまりいないですよねとへこんだが。ハルカはシダ植物のような花の咲かない雑草を好んでいた。

 

こうしてぽつりぽつりと雑談をしつつ歩みを進め、二人は会場内へと入った。この時点での双方相手の印象は、優しくて落ち着いてて素敵な人、話しかけてくれて嬉しい上手く返せなくて申し訳ない。

 

ゲヘナ生にあるまじき大人しさ、雑草の話になると目がキラキラするし植物が好きなのかも、こんな子ばかりなら日々の生活も平和なのに、であった。

 

片方は相手の印象ほぼこのまま帰路につくが、もう片方は数時間後に180度ひっくり返されることになる。フウカの表情は穏やかであった。今はまだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ~!こ、これが……!」

「モモフレンズ草むしり検定カード……かわいい」

「限定グッズですから、しっかりゲットしないとですね!」

「うん。観賞用・保存用・布教用に3つずつ買わないと」

 

入ってすぐ脇には物販コーナーがあり、奥には机と椅子が並べられ、プロジェクターなども設置された大部屋になっている。謎のトリニティ生二人は農学関係の書籍や雑誌、植物の写真集、押し花のキーホルダー、謎に値段の高い雑草の鉢植えなどには目もくれず、限定モモフレンズグッズを買い漁っていた。

 

ヒフミとアズサの他にもグッズを買い求めるギャルっぽい生徒が数名おり、レジの店員はわりとニコニコしているのでこれはこれで正しいムーブなのかもしれない。

 

「ど、どうしましょう。見ていきますか?」

「ええと、そろそろ時間みたいですし、ちらっと見るくらいで」

「そうですね……」

 

ハルカとフウカは少しうろついた後、会場の奥に入る。そこは通常の教室の倍程度の広さに2~30人ほどが集まり、やや閑散とした様子だ。キヴォトスの研究会はミレニアムサイエンススクールで一般人には理解不能の最新理論を喧々諤々戦わせるようなガチのものから、単に学校の枠を超えて生徒同士で集まる趣味のサークルのようになっているものまで様々あったが、雑草研究会はやや後者よりの集まりのようだった。

 

趣味の人が多くてゆるい空気だが、ガチめの論文発表をする人もおり関連企業の人間も少ないが来る、くらいの感じである。

 

前の方でしゃんと背筋を伸ばして座っているコハルを横目に、二人が隅っこの方へ座るとまもなく、司会の生徒が開会を告げた。いかにもゲヘナ生といった風体のスケバンだったが至極真面目に進行していく。

 

定期参加者以外も多いからだろうか、前口上として司会はすらすらと雑草研究会について説明していく。

 

「雑草の研究って、つまりは除草剤とか、薬品を使わない防除とか、そういう話だったんですね……」

「ええ、食料生産に関わる地味に重要な分野だとか」

 

司会の説明について小声でポソポソと感想を述べるが、ハルカはガッカリしていた。結局のところ、どこに行っても邪魔者か。いや、わかっていたことだ。誰かの育てた鉢植えに妙な期待をしてしまっただけのこと。自嘲の笑みがこぼれた。

 

その後は実際に発表者がそういった内容の研究発表をしていく。基本的にはライトな内容で、ほとんどガーデニング日記だったり、エリアごとに外来種の雑草の繁殖状況を調べるようなちょっと凝った夏休みの自由研究のようなのだったりした。

 

合間合間の農薬関係などわりとガチな内容の発表ではどこかの教員か企業所属らしいロボットから素人質問で恐縮ですが、などと恒例のワードが飛んで発表者を青くさせたりしつつも研究会は順調に進んでいった。

 

前の方のコハルはちょっと難しい内容の発表になった瞬間突っ伏して寝始め、ヒフミは気もそぞろに買ったばかりのペロログッズをいじり、アズサは授業を受けているかのようにノートを取っていた。

 

ハルカとフウカはポソポソ感想を交わしつつ、基本はぇ~とテレビの教養番組を見るような調子であった。そんなこんなで研究発表が進んでいくと、ある生徒が前方に出る。

 

セーラー服を着崩しバッテンマスクで顔を隠した、いかにもゲヘナの不良生徒といった彼女だが、普通に発表者席に着くとプロジェクターに画像を映しつつ、慣れた様子でレジュメのデータを参加者に送る。

 

「新参者でしたが、ちょっとは慣れてきました、今回何回目だったかな。ま、ともかくゲヘナ農地で一般的な雑草への肥料・農薬の影響の発表。そんじゃよろしくお願いします」

 

次々と映し出されていく映像は看板前を飾っていた雑草の植木鉢だ。どうやら彼女があれらを育てた人物だったらしい。投与した肥料や農薬、また日照時間や降水量、散水量などの基本的なデータ、雑草の生育について詳細なデータが次々と出される。

 

考察部や結論部はやや稚拙ながらも特定の種類の雑草のみを農薬で排除する実験だとか、肥料の組み合わせで雑草を大繁殖させるだとか、実用的な部分もちょくちょくあり、業界関係者を唸らせるできであった。

 

「すごいですね。あの鉢がこうやって育てられたんだ」

「ええ、本当に……」

 

ハルカは、自分が育てる雑草に向ける愛情とはまた別の、やや無機質ながらもじっと見つめて目を離さないような愛を感じ、発表者に称賛の念を送った。

 

「ご清聴あざした。鉢の販売もやってるんでね、特別なやつはちょっとお高いですけど、わかってる方は買ってってください」

 

不良生徒が頭を下げ、発表は終わった。そしてハルカが感動に浸るまもなく入り口のドアが蹴り開けられた。

 

「風紀委員会だ!大人しくしろっ!お前たちには違法薬物売買の容疑がかかっている!!!」

 

「……は?」

「え?え??」

 

フウカとハルカを含めた会場の過半の人間の混乱をよそに、勢いよく飛び込んできたのはゲヘナ風紀委員会の銀鏡(しろみ)イオリだ。ゲヘナ生に恐れられまくる委員長のヒナと違ってわりと舐められがちな彼女だが職務には熱心だし普通に強い。

 

「な、何言ってんだぁ!?ここは健全な研究発表の場だ!風紀委員会の犬どもなんかお呼びじゃないぜ!」

 

発表を終えたばかりの不良生徒が叫ぶ。司会や他の不良生徒たちもそうだそうだと同調し、あっけにとられていた他の参加者たちにもその空気が伝染し、睨まれたイオリはちょっと引く。

 

「え、えーと……犬はアコちゃんだけだ!じゃなくて、証拠証拠、アレ持ってきて」

 

するとイオリはぞろぞろと引き連れていた他の風紀委員たちに指示し、例の雑草の鉢植えがバケツリレーで運ばれてきた。

 

「な、何をやってるんでしょう?」

「なにがなんだかさっぱり。でも確かなことは、私の平和な休日が消えそうだということです」

 

半目でやさぐれるフウカを後目に状況は加速していく。鉢植えをみてぎょっと表情を変える不良たち。

 

「こいつを、こうだ!」

「あぁっ!?」

 

床に叩きつけられバラバラに飛び散る鉢と雑草にハルカは悲鳴を上げたが、気にせずイオリは鉢の中から“証拠品”を拾い上げる。

 

「ネタはあがってるんだ!規則違反者ども、逃げられると思うな!」

 

土に汚れながらも厳重に包まれた物体、その中から現れたのは謎の白い粉であった。ご禁制のハッピーターンの粉であることは誰の目にも明らかだった。

 

「ちっ、ばれちまったら仕方ねえ!やるぞてめえら!」

「抵抗は無駄だ!」

 

あれよという間に風紀委員会と不良達の間で銃撃戦が始まり、犯罪に無関係だったらしい参加者たちが悲鳴をあげて逃げ惑う。

 

「私達も逃げないと!」

 

一緒に避難しようとハルカの袖を引いたフウカは、それが微動だにしないことに気づく。そして銃声に紛れ細い声が漏れている。

 

「許さない許さない許さない許さないこんなこと、絶対に、許さない……!」

 

呪詛のように絶対許さないと呟き続けるハルカの暗く深く沈んだ目を見てフウカはすべてを察した。このキヴォトスにまともで大人しい子なんてものは存在しないのだ。

 

フウカ自身もわりかしまともな方ではあるものの、今不良を鎮圧しようと頑張っているイオリを亡き者にしようとしたこともある。ここはキヴォトスなのだ。

 

椅子を蹴立ててハルカは立ち上がる。

 

「許さない……!死んでください死んでください死んでください!」

 

同時、机などの遮蔽を利用して結構頑張って風紀委員会に対抗していた不良たちの横っ面をぶち抜くショットガンの連射が直撃した。そしてなんとか生き残った不良たちにまた別方向からトドメのアサルトライフルの銃撃が突き刺さる。

 

「そうだ、許さない」

 

アズサは雑草というものに特別な想いを抱えていた。あるいはハルカと同じか、それ以上に。だからこそ同じように許せなかった。ガスマスクの下の紫の瞳を同じ色でハルカは見つめた。

 

「な、なに!?援軍!?ってお前便利屋のやつじゃないか!お前らまた悪さしてたな!っていや、便利屋の奴らじゃない!?なんだお前ら!ほんとになに!?」

 

突然敵が全滅してあっけにとられていたイオリがハルカを見て戦意を取り戻す。しかし、ガスマスクと紙袋と未だに寝ている謎の集団に気を取られた瞬間、狙いすましたアズサ必殺の銃撃がお腹パンチとなりぶっ飛ばされる。

 

「ばにたす ばにたーたむ」

 

これにより同じく敵の全滅に驚き戸惑っていた風紀委員たちがイオリちゃんの仇を取れ、とハルカたちを狙う。イオリは死んでないぃとうめきながらもお腹痛くて立ち上がることができない。

 

「ペロロ様、お願いします!」

 

次の瞬間、射線を遮るように出現した謎のデカくてキモい鳥がハルカたちの姿を隠す。派手な音楽をけたたましく鳴らしながら光り、踊り、回る。意味不明な事態に恐慌状態に陥った風紀委員たちはペロロ様に銃撃を集中させるが意味不明な耐久力で完全に耐えるキモい鳥。恐慌は拡大するばかりだ。

 

「続けてコハ……謎のグラサンちゃんお願いします」

「もうっなんなのよもう!ほんとになんなのよ!」

 

ペロロ様を盾にしている間に叩き起こされたコハルがセイなる手榴弾を投げ込み、恐慌状態の風紀委員部隊が半壊状態になったところでこの戦闘の趨勢はほぼ確定した。

 

「なにがなんだかわからない……でも風紀委員に捕まるわけにはいかないしとにかく逃げないと!」

「そ、そうですね!逃げましょう!」

「何がどうしたらこんなことになるのよっ!」

 

半泣きになりながらも地味に的確なサポートをしていたフウカと、同じく地味に的確に指揮を取っていたヒフミと、寝起きに戦場に立たされてやっぱり半泣きのコハルが駆け出す。アズサもそれに続こうとしたが、立ち止まり振り返る。

 

「あげる」

 

アズサは手短に告げモモフレンズの1体、スカルマンの草むしり検定カードをハルカに押し付けてから走り去った。シンパシーを感じたので布教用のグッズを早速渡すことにしたのだった。ややあっけにとられたハルカがカードを仕舞っていると、最初に倒れた不良生徒が意識を取り戻したようで、もぞもぞと動く。

 

「結局、こうなるのかよ。雑草風情の定めとはいえ……クソっ」

 

倒れていた不良生徒が漏らした声に、ハルカは返した。

 

「雑草でも、鉢に植え替えてくれる方がいます。雑草でも、素敵だと言ってくれる方もいます」

 

ハルカが思い浮かべた人物たちを不良生徒は知らないだろう。ただ、そういう人と同じ心をこの不良生徒はきっと持っているのだと、そう信じたかった。そういう気持ちを踏みにじられた怒りと悲しみと、それでも信じたいという思いが渦を巻きグラグラと煮えていた。

 

「……へっ。ただの隠れ蓑、カモフラージュ、それだけ。それだけだったのになあ」

「すべて消します。許せないので」

「わかったよ。次からは真面目にコツコツやるさ……」

 

ハルカがスイッチを押すと会議場のすべてが爆炎に包まれた。巧妙に仕掛けられた爆弾による爆発の連鎖が芸術的なまでに会場を吹き飛ばしていく。ハルカが立っていた会場の中央と、その足元の不良だけは無傷だ。

 

ちょうど出たところだったフウカとコハルは爆風にふっとばされ、少し離れていたヒフミは必死で紙袋を抑え、アズサはただ風に吹かれた。

 

すべては灰と瓦礫の山になった。違法薬物も、世にも珍しい雑草の鉢植えたちも。

 

「踏まれて踏まれて折れ曲がっても、その先で花を咲かすのが雑草さ。なあ、そうだろ」

 

ハルカは無言で瓦礫を乗り越え立ち去る。花が咲かない雑草もある。それを愛してくれる人がいるならそれでいいと、そう思った。でもその人達も雑草が花を咲かせたならば、それはそれで喜んでくれるだろう。自分はどうするべきなのか、どうなるべきなのか。

 

敷地の端、瓦礫の隙間から顔を出し、吹き飛ばされながらも生き残っていたらしい鉢植えだった雑草を見つけ、ハルカは摘んで帰った。後日、秘密の植物園に白い仮面の謎の動物カードが刺さった雑草の鉢植えが一つ増えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おのれ便利屋68!絶対に許さんぞっ!陸八魔アル!!!」

 

ややアフロのイオリは瓦礫を跳ね除けながら立ち上がり、空に吠えた。




正月ハルカが可愛かったの(とフリフリミニスカ着物ムチュキが着せたのかなとか思ってましたが、安いから選んだ+先生が慌てて別の着せようとする→アレな店のコスプレ衣装では?というのを見てえっちだ……と思ったの)で書きました。
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