新世紀エヴァンゲリオン旧劇。そのエンディングを、独自解釈で描いてみました。

 もう、たくさんの方々が触れられ、創られたであろうテーマ。それに手を出そうと思ったのは、緒方恵美さんが歌った『甘き死よ、来たれ』を聴いたから。シンジ君の魂の声を聴いて、どうしても描きたくなりました。これでもか、というほどのシンジ君とアスカの愛情を描きたくなりました。

 よろしければ、ご笑覧くださいませ。




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名もなき詩

 

 傷は残った。痛みは消えた。

 

 アタシは包帯で巻かれた右腕を使って、アタシの上に無遠慮に乗っかっているバカ(シンジ)をどかす。バカはドシャッと音を立てて砂浜に倒れ込み、そのまま自分を抱きしめるように縮こまって、肩を振るわせて泣いていた。

 

 アタシたちがこの赤い海の砂浜に辿り着いてから、どれだけの時間が経っただろう。赤い海の水平線にはファースト(綾波レイ)の顔が夜空の月を見上げるように浮かんでいる。もう見飽きた光景だ。

 

 お腹も空かない。眠くもならない。二人しかいないアタシ達は、ただひたすらに何かを探して歩き回り、砂浜近くの廃墟を漁り、何か役に立ちそうなものはないか、誰かいないかを探し続けた。

 

 結果は芳しくなかったけどね。唯一使えそうだったのは小型の果物用ナイフくらいか。ステンレスって錆びにくいから、切れ味だけは保証されていた。

 

 その果物ナイフを手に取り、アタシは隣で倒れ込んでいるシンジにゆっくりと近付くと、顔を覆っていたシンジの両手を無理やりどける。手の下からは、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになったシンジの顔が出てきた。

 

 その左の目、その少し上の眉毛あたりに、アタシは果物ナイフの刃先をそっと当てる。

 

「っ!」

 

 息を飲んだシンジを無視して、アタシはゆっくりとそのナイフを滑らせる。シンジのきつく閉じられた瞼の上を撫でながら、頬を通って顎下まで。赤い、細い線がシンジの顔に刻まれた。

 

「赤い血・・・」

 

 何気なく、アタシはつぶやいた。これが青とか緑とか、アタシの常識外の色だったら、どうだったんだろう。深くは考えてなかった。なんとなく、衝動に身を任せて行動しただけだから。

 

 ただ、それを見たアタシが、どこか安心したのは不思議な感覚だったけど。

 

 シンジが怯えた目でこちらを見つめる。

 

 アタシはその顔にそっと近付く。

 

 ちょっとくらい、汚れてたって。

 少しくらい、傷付いていたって。

 

「あんたが全部アタシのものにならないなら、アタシ何もいらない」

 

 シンジの唇に、アタシのを重ねた。

 

 唇から伝わる体の震え。

 

 これはシンジの?それとも、アタシの?

 

 わからなかったけど、震えはゆっくりと収まっていき、深い呼吸とともに、アタシたちは唇を強く押し付け合った。

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

『アンタ、だれ?』

 

 最初に目が覚めて、アタシの隣で横たわっていたコイツに問いただしたセリフ。コイツは最初嬉しそうに笑い、そのあと、怯えた目をし始めたのを覚えている。それでもコイツから目を逸らさず見つめ続けるアタシに根負けしたのか、

 

『碇・・・碇、シンジ・・・』

 

 そう、辿々しく、わかりきった答えを返してきた。

 

『アンタ、何を知ってるの?』

 

 赤い海。遠くに見える廃墟。紋様の入った不気味な月。極め付けは巨大で、頭の真ん中から綺麗に割られたファーストの顔。アタシ達の周囲の状況が常識外れなのはバカでもわかる。アタシはバカじゃないから、当然。ただ、これが本当に現実なの?という途方に暮れた感情は味わっていたけど。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・』

 

 答えは沈黙。そして、アタシから目を逸らして俯くシンジの顔。

 

『・・・・・・誰かに優しくしてもらった結果がコレ?』

 

 アタシの問いかけに、シンジはガバッと顔を上げた。シンジは心底怯えた表情を見せたあと、突然、どこかへ走り去っていった。

 

 それが、もう何日前の出来事なのかはわからないけどね。

 

 アイツが戻ってくるまでの間、アタシは自分の記憶を辿っていた。断片的に思い出せるのは、アタシとアイツが嫌々ながらに体を重ねた記憶。その後の、ミサトのマンションでの罵倒と──、

 

 

 

 アタシがアイツに首を絞められたこと。

 

 

 

 そこまで思い出したとき、アタシは生まれて初めて「タバコが吸いたい」なんてことを考えた。加持さんやミサト、リツコが吸っているのを見た時は「人体に煙なんか入れて良いわけないでしょ」とか思ってたけど、沸騰した頭を落ち着かせるのに、あのタバコの香りは良かったのかもしれないと今では思う。

 

 だから、だと思う。まずはタバコが落ちていないか、アタシは探そうと思って、包帯を巻いた右腕に力を入れて立ち上がった。

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

 押し付けていた唇をゆっくりと離す。アタシの口とシンジの口から唾液が糸を引いて垂れ落ちた。

 

「気持ち悪い」

 

 これはツバに対して言った言葉。決して、シンジに向かって言った言葉じゃない。

 

 なのにコイツ、また泣き始めて。

 

「アタシを疑ってんの?」

 

 つい、アタシの口調も強いものになる。

 

「あ、アスカ、は・・・・・・」

 

 シンジの言葉をゆっくり、じっくりと待つ。情け無い男の顔を見下しながら。さぞ冷たい目になってたことでしょーね。

 

「なんなんだよ、アスカは・・・」

 

「・・・・・・は?」

 

「全然わからないよ!なんなんだよアスカは!?僕をどうしたいんだよッ!」

 

 ハア、ハア、と息を荒くするシンジ。その顔に、アタシは思いきり強く唾を吐きかけてやった。

 

「な・・・」

 

「気持ち悪いっつったのはね。唾よ、ツバ。わかる?ツ、バ」

 

「は、はぁ・・・?」

 

「気持ち悪いって思わない?顔に唾を吐きかけられて。アタシは思う。あんたはどうなの?」

 

「・・・・・・気持ち悪い、と、思う」

 

「でしょ?」

 

 アタシは口を乱暴に拭う。その口で、その舌で、アタシはシンジの顔についた自分の唾液を丁寧に舐め取った。

 

「これは?」

 

 アタシは自分の右目をシンジの左目に近づけた。絶対にアタシから目を離さないように。逸らさないように。

 

 逸らさせて、たまるか。

 

「・・・・・・好きだ」

 

「あ?今のが?」

 

「今のも。アスカも・・・」

 

 シンジの傷ついた左目から、血と一緒に涙が零れ落ちる。

 

「僕は、アスカが好きだ・・・。だから、アスカに会いに行ったんだ。あの病院でも。あのマンションでも。アスカに会いたかったから・・・」

 

 でも、とバカは続ける。

 

「アスカは、僕とは死んでも嫌だって・・・」

 

 その言葉。それを聞いた瞬間、アタシのなかでプツンと何かがキレた。

 

 アタシは手に持っていたナイフを強く握りしめた。それを見たバカの顔に再び怯えが走る。

 

 その果物ナイフを高く持ち上げ──、

 

 

 

「アスカ!!」

 

 

 

 アタシは自分の首に思い切り突き立てた。

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

 探していたのはタバコだ。シンジじゃない。

 

 なのに、アタシはアイツを見つけてしまった。崩れかけた廃墟の一室で、首を吊った状態で。

 

 あろうことか、アタシの前で、首を吊っていやがった。

 

『この馬鹿野郎ッッ!!』

 

 怒りが身体を突き動かしていた。渾身の蹴りを、首を吊ったシンジに叩き込む。シンジを吊るしていたロープは半分腐っていたのか、その衝撃でロープがブチッと音を立てて千切れた。

 

 シンジが地面に力無く落ちる。

 

 うつ伏せのシンジの身体を転がして、その胸に思い切り拳を叩きつける。何度も。何度も。

 

『この馬鹿、馬鹿、馬鹿シンジ!』

 

 ゴホゴホ、とシンジが咳き込んだ。生きてる。どれだけの時間、首を吊っていたのかはわからないけれど、シンジは確かに息を吹き返した。

 

 だけど知ったこっちゃない。アタシの怒りは収まっちゃいないんだから。咳き込むシンジを無視してアタシは拳で叩き続けた。

 

 シンジの学生服の襟を締め上げて、怒りに任せて頭突きする。

 

『つぎ!アタシの!前で!死んだら殺す!!アタシが殺す!!アタシ以外があんたを死なせてなるもんか・・・あんたを殺すのはアタシだ!!』

 

『・・・・・・殺してよ、今すぐ』

 

 アタシに身体を揺さぶられながら、シンジは力無くつぶやいた。

 

『死ねないんだ・・・。何をやっても、どうやっても。お願いだよアスカ。お願いだから、僕を殺して』

 

 そう(のたま)った馬鹿の顔を殴りつける。シンジの首の骨がゴキッと嫌な音を立てた。

 

『死ね!馬鹿シンジ!!』

 

 シンジの頭が、曲がってはいけない方向へとだらんと垂れる。でも、その頭はまたゴキゴキゴキと音を立てて、元に戻っていった。

 

『!!?』

 

『ほらね・・・死ねないんだ・・・』

 

『あんた・・・』

 

『全部僕のせいなんだ・・・世界がこんなになっちゃったのも、アスカをそんな風にしたのも、僕のせいだ。僕が動かなかったから、もっと早くエヴァに乗って、アスカを助けにいけてれば・・・』

 

『・・・・・・』

 

『殺してよ!ねぇ、僕を殺して!アスカになら殺されたっていい!アスカにしか僕を殺せないんだ!だから・・・』

 

『それはアタシ以外に頼れるヤツがいないからだろ!この馬鹿シンジッ!』

 

 シンジの顔を殴りつける。何度も。何度も。首の骨が折れても。何度も。その度にコイツの頭は不気味な音を立てて元に戻る。

 

 だから、何度も折ってやった。

 

 それでも、コイツは死ななかった。

 

 アタシの荒い息遣いだけが、この場を満たしていた。

 

『あんた、何もわかってないようね。・・・・・・いいわ。立て』

 

 虚な瞳で、シンジはアタシを見上げる。

 

『立てッ!!』

 

 その腕を乱暴に取り、アタシはシンジを無理やり立たせた。

 

『アンタにわからせてやる・・・。もう本当にアンタにはアタシしか居ないんだって、思い知らせてやる!』

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

 アタシの首から、血が噴水のように噴き出した。

 

「あああああああああああああああ!!」

 

 アタシの返り血で顔を汚しながら、シンジがアタシの首を絞める。殺すためじゃない。アタシの血を止めるためだ。

 

 大丈夫。もう何度も試したことだ。アタシは、アタシ達は死なない。いや、違うわね。死ねないんだ。

 

 ビュッ、ビュッと心臓の鼓動に合わせて噴き出していた血が、ゆっくりと止まる。

 

「アスカ!アスカ!!なんで、なんでこんな・・・ッ!」

 

「アンタのせいで、アタシの傷が今、ひとつ増えたでしょ」

 

「ッ!」

 

 シンジが目の前で息を呑んだ。その表情が見れただけでも満足だ。

 

「アンタがアタシを疑ってんのなら、何度だってやってやるわよ。アンタの目の前で、いくらでも命なんかくれてやるわ」

 

 信じられない。そんな感情が、シンジの顔にありありと映し出されてる。その顔が、なんとも言えず愛おしくて、アタシはシンジを抱きしめた。

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

 馬鹿なシンジと二人で、いくつの墓標を立てただろう?

 

 コイツがやらかしたおかげで戻ってこない人たち。もう二度と、アンタのせいで戻ってこないんだということを、墓標を立てることでわからせてやった。

 

 一つ、一つ。墓標を立てるたびにシンジは涙を流した。後悔?懺悔?知ったことか。そんな感情をシンジに持ってもらいたいわけじゃない。もうシンジには、アタシしかいないんだと、アタシを見るしかないんだと、わからせるのが目的なんだから。

 

 アタシとシンジ、二人の共通の知人全員の墓を立てたところで、バカシンジはアタシに言った。

 

 生きてるのが辛い、と。

 

 やり直したい。それが無理なら、消えてしまいたい、と。

 

 アタシはそのシンジの髪の毛を掴み、最後に立てた墓標、ミサトの墓に無理やり向き合わせた。

 

『あんた、バカ?無理に決まってんでしょ、バカシンジ』

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

『アンタも、アタシも、絶対に忘れない。アンタが忘れようとしたら、アタシが何度でも思い出させてやる』

 

『・・・・・・わかってる。それが、僕の罪だ』

 

『アンタの罪なんか知るかバカ』

 

『・・・・・・僕は』

 

『ん?』

 

『誰かを、愛してたんだろうか』

 

『・・・』

 

『誰からも信じてもらえなかった・・・たぶんミサトさんや父さん、アスカからも。僕が弱かったからだ。アスカは強いから、きっと、いつも僕の事が鬱陶しかった、よね・・・?』

 

『愛してる、って言えばいいわけ?』

 

『・・・無理だってわかってるんだ。アスカから、そんな事を言われるなんて、絶対』

 

 シンジはアタシの手を振り解くと、フラフラと砂浜を歩いていく。アタシは黙って、後をついて行った。やがて、シンジは力尽きたように砂浜に倒れ込む。その顔には、もう何も残っていなかった。その横に、アタシも黙って寝転がる。

 

 腹が立つほどに、綺麗な星空が広がっていた。

 

『・・・・・・アスカを、生かしておけない』

 

 ぼそっと、シンジが呟く。

 

『こんな世界に、僕と二人だけで残されて。そんなの、アスカが可哀想だ』

 

 アタシは黙って寝転がったまま、星空をボーっと眺め続ける。

 

 横のシンジが起き上がった気配を感じた。ゆっくりとシンジがアタシに近づいて、アタシの上に馬乗りになる。

 

 シンジの手が、アタシの首に伸びた。アタシの首を絞めたその腕に、徐々に、確実に力が込められていく。

 

 そんな状況で、アタシの胸の中を満たしていたのは、ただただ、『喜び』だった。

 

 シンジがアタシを殺してくれる。死ねないとわかっていても、それでも殺そうとしてくれている。それがたまらなく嬉しかった。

 

 だって、これはシンジの『愛』なんだから。アタシのことを初めてしっかりと見て、感じて、アタシのことを想ってしてくれる、初めての行い。

 

 息ができなくなる。でも、苦しくはない。今にも死にそうな顔でアタシの首を絞めるシンジが狂おしいほどに愛おしくて、アタシはシンジの頬を撫でた。

 

 でも、シンジの手の力が緩んだ。

 

(なんで・・・?やめないで・・・?)

 

 アタシの心からの願いとは裏腹に、その手はずり落ち、シンジはアタシの胸に倒れ込む。あろうことか、アタシの胸の上で泣き始める始末。

 

(・・・・・・結局アンタ、自分が満足したいだけなの)

 

 怒りに満ちた瞳をシンジに向ける。

 

『気持ち悪い』

 

 アタシの口から、自然と言葉が漏れた。

 

 

▼△▼△▼△▼△

 

 

 アタシの胸の中、アタシの血で汚れたシンジの頭を、アタシは優しく抱きしめながら撫でてやる。

 

「シンジ。こんな場所じゃ、アタシ達二人ともマトモではいられないわよね?」

 

 シンジは黙ったまま、それでもアタシの胸の中で強く頷く。

 

「だから、アタシは今からマトモじゃない事を言うわよ?」

 

 少しの沈黙のあと、シンジが弱々しく頷く。

 

「アタシの生涯をアンタに捧ぐ」

 

「・・・・・・っ」

 

「アタシもなのよ、シンジ。アタシも、アンタみたいにありのままで生きられなかった。ありのままの心で、生きることができなかった。結局、アタシはそれを全部アンタのせいにしてた」

 

「そんな、こと・・・っ」

 

「アンタが見てたのは、アタシが自分で築き上げてた『アタシらしいと思うアタシ』。それしかアンタは見てくれなかった。アタシも、アンタにそれしか見られたくなかった。・・・それだけのことなのよ」

 

 シンジの手が、ゆっくりとアタシの背に回される。

 

「・・・・・・僕だって、そうなんだ」

 

「・・・そうね。知ってる」

 

 キツく、キツく、アタシ達は抱きしめ合う。

 

「アタシ、アンタの愛を奪いたかった。アンタから愛を与えてほしかった」

 

「・・・うん」

 

「でも違った。アタシ、気がついたら、アンタを愛してた」

 

「・・・うん、僕もだ」

 

 くすりと、アタシは笑った。

 

「もうさ、バカみたいなプライドは捨てない?」

 

「え・・・」

 

「そこから始めましょうよ。アタシ達、二人きりのこの世界で」

 

 すっと、アタシはシンジから離れた。少しだけ距離を置いて、アタシは体育座りで赤い海を、その先の、月を見上げて微笑んでるファーストの顔を眺める。

 

 なんだか、少しだけ心が軽くなった気がする。

 

 アタシの横で、シンジが立ち上がる。見ている方向は、見ているものはきっとアタシとおんなじ。

 

「・・・きっと、さ」

 

「・・・ん」

 

 シンジがポツリと呟く。

 

「僕は、アスカをいっぱい傷つけちゃうと思う」

 

「・・・ん」

 

「あるがままの僕じゃ、きっと・・・」

 

「・・・それはきっと、アタシも」

 

 くすり、と。

 

 シンジが笑ったのがわかる。

 

「愛情って、どうやったら伝えられるんだろうね」

 

「ん?」

 

「愛してる。アスカ。でも言葉だけじゃ、全然足りなくてさ・・・」

 

「その方法を、一緒に探すところから、でしょ?」

 

 アタシ達は死ねない。死なない。永遠に、きっと。

 

 だから、時間だけは無限にある。その間に、少しずつでも、気持ちを伝えていけばいいだけ。

 

「Komm, susser Tod・・・」

 

「え?」

 

「『甘き死よ、来たれ』って意味。いつの日か、アタシ達二人で迎えましょ?」

 

「・・・・・・うん。そうだね」

 

 お互いに顔は見合わせない。見なくてもわかる。

 

 きっとアタシ達、微笑んでる。笑えてる。

 

 これから、二人きりのこの星で。

 

 誰かが戻ってくるかもしれないと願いつつ、二人きりの時間が少しでも長くなるようにと望みつつ。

 

 きっと優しい笑顔で、アタシ達は死を迎えることができる。

 

 

 

 海の向こう、月を見上げていた不気味なファーストの笑顔が、少しだけ、柔らかくなったような気がした。

 

 

 

 

 終劇


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