イエスタデイ・ワンスモア。
その計画は成功を収めた。
大人達は昭和に帰り、子供達は無理矢理適応させられた。
しかし、その中でも極小数の跳ねっ返りが、絶望の中抵抗を続けていた。
原作崩壊・原作キャラ未登場。
なんなら原作時空の一年後です。
イエスタデイ・ワンスモアとかいうふざけた名前の連中が出てきてから、もう一年にもなる。
「いたか?」
「いや、だがまだ近くにいるはずだ。探すぞ!」
「おう!」
珍妙な青白い服を着たオトナ達が、周囲を駆け巡っているのを俺はゴミ捨て場の中からじっと確認している。
ひどい匂いのするゴミ袋の隙間から四名……いや五名か、司令塔兼監視役がいるな。
どかどかと走り回るオトナ達、その腰にはピカピカのニューナンブM60。
実弾が入っているだろう。
俺はゆっくりと、バレないように握りしめるM4カービンの照準を不自然な動きをする一人のオトナに向ける。
そのまま息を潜め、時を待つ。
オトナ達が一度集合した時、俺は引き金を引いた。
タタン、と短い破裂音。
弾丸は不自然な動き____周りと比べて動き回らず、少し装備が派手だった____のオトナの胸と眉間に命中し、ついでに俺から重なって見えた後ろのオトナに貫通した銃弾があたる。
「き、きさま!よくも隊長を!」
指揮官が倒れ、動揺するオトナ達。
貫通した弾をくらったオトナは腹を押さえながら地面をのたうち回っている。
そして漸く銃を抜こうとするが、もう遅い。
今度は少し長い破裂音が続き、大きな肉袋が倒れる音がした。
イエスタデイ・ワンスモア。
訳して「明日をもう一度」。
古き良き昭和に戻ろうと標榜する奴等の事が両親にはとても良いものに見えたらしいが、俺達子供にとっては即ち未来を奪う事に他ならない。
比較的高学年であった俺達は即座に組織化し、必死の抵抗を始めた。
それが文字通り血みどろの戦いになったのは、俺達の誰かが放った銃弾からだった。
地面をのたうち回るオトナに静かにトドメを刺すと、俺はオトナ達の体を弄り銃と弾薬を手にする。
そうすると、サイレンがだんだんと近づいてくるのが聞こえる。
俺は手早くM4を小さく折り畳み鹵獲した武器と共にリュックサックに入れ、路地に止まるバイクに跨る。
SG、排気量は250。
因みにエンブレムはメグロだ。
エンジンをかけ、そのままサイレンと反対側に走り出す。
その内サイレンも聞こえなくなり、人気のない所で目出し帽を取った。
ヘルメットなど最初から被っていない、そんなもの被っていると21世紀かぶれとして
兎も角、これにて作戦は終了。
敵中央区の末端兵の装備と形式の調査が出来た。
後は酷い交通網を駆使して、穴倉に帰るとしよう。
その銃弾を放ったのが誰かはわからない。
しかし、その時実弾を持っていたのは俺達だけだった。
それとも永遠に別れる事になってしまった両親の復讐か。
その銃弾は、懐古に縋る醜いオトナの一人にあたり、そのオトナは動かなくなった。
そしてその時から、オトナ達は変わった。
銀玉の入ったおもちゃを捨て、プラスチックの刀を折った。
代わりに鉛の入った実銃と警棒で武装したのだ。
軍隊、と言うには稚拙な連携だが、しかしこの瞬間からこの戦いは変わった。
もう
ここから先、どうなるのかは誰にもわからない。
しっかりと舗装されてない悪路の上にバイクを走らせると、山の中にトタンで出来た小屋が何個も見えてきた。
その手前の倒れた木に枝を使って偽装したトーチカからは、M249軽機関銃がのぞいている。
そのままトーチカの前にを通り過ぎ、大きな広場を目指す。
最初に声を上げたからか、それとも初期のメンバーの生き残りが俺一人だからなのか。
ここの首領は何故か俺と言う事になっていた。
その為、警戒も顔パスなのである。
まあ、その首領が前線に出る程度には規模も小さいんだが。
広場にバイクを停めると、副官が走り寄ってくる。
「ボス!お疲れ様です。どうでしたか」
「ボスはやめろ」
話しかけてきた副官に、俺はエンジンを切り跨ったまま応えた。
「ニューナンブに警棒だけだ。あくまで末端だがな」
「思った以上に武装は貧弱ですね」
「この期に及んで体勢を変えたくないと見える。裏にはある程度の装備をした兵隊がいると見て良いが、数はこちらが上だろう。しかし自衛隊が動かないのが肝だ」
「装備を
「そもそも関わらせるつもりがないのか、だな。このニオイとやらは海外にも届いてる。早く事を進めないと、元に戻ったとしても大きな混乱に繋がる」
「とすると……」
「いよいよだ。本拠地を取りに行くぞ」
俺の言葉に大きく返事をし敬礼した副官は、そのまま走り去っていった。
抵抗しているのは俺達だけじゃない。
ここら一帯に、同じようなレジスタンスが潜伏している。
そいつらに情報共有と連絡を入れ、いつ侵攻……いや、俺達の未来を奪還するのかを決めるのだ。
バイクから降り、キーを抜くと主計が話しかけてきた。
「今回の損耗はどのくらいでしょうか、ボス」
「ボスと呼ぶな」
「ではなんと呼べば?名無しの権兵衛とでも?」
主計は俺の次の古株だ。
俺にあまり気負わず話しかける数少ない奴である。
「消耗だが、NATO弾が数発程度だ。特に問題はない」
「しかし、もうすぐ大規模侵攻でしょう?追加の装備も必要です。また横田から引っ張ってきますか?」
米軍極東の本拠、横田基地。
気がついたら、武装も何もかもそのまま人だけがいなくなっていた。
「多少派手でも良い。出来るだけ火力を確保したい」
「了解です。侵攻日に合わせて補充しときますね、ボス」
「ボスはやめろと言っはずだ」
俺の言葉を主計は無視し、踵を返して小屋の方に向かった。
そのまま俺も武器庫に装備をしまうために歩いていくと、副官と同志が話してるのが聞こえてくる。
「中にいる一般人はどうするんだ?」
「決まってるだろう、皆殺しだよ。あんな裏切り者どもなんて生かしておけるか」
その言葉に、思わず項垂れる。
そのまま胸ポケットからタバコを取り出し____親のお使いと言えば簡単に売ってくれる辺りがなんともいえない____それに火をつけた。
少しむせながら、ゆっくりと空を向く。
最初はオトナと子供のふざけた喧嘩だった筈だ。
しかし今はもう、見る影もない。
そして、俺達が本来掴むはずだった未来も、遠く消えてしまったのだ。
きっと、次の戦いで終わる。
その結果が如何であれ、日本は、世界は大きく動く。
その先に俺達の居場所があるのかは、誰にもわからない。