せっかく転生したのにイケメンじゃないし大変な世界に来た 作:ケリュム
俺は着物に赤黒いシミを作る原因である首の傷に指を這わせる、ジクジクと痛むソレを作る要因はしっかりと躱した筈なんだがな…。
見えない速度で切られた…いやそれは無い筈、野良の呪詛師 呪霊に俺が劣るとなれば名折れだ。
「イテ"~~」
「いくら化け物に襲われたからといっても正確に人間の急所狙って来る非術師は居ないよな? そこのお前さん」
ドシッ ドシッ
「タハハッ 俺も歳かの、今ので終わらせたかったんだが」
大きく舞った土煙からどっしりとした足取りで現れるは、酒焼で掠れた声に白髪の混じりの黒髪を持つ初老の男。 髪や髭は伸び散らかしているが髪をオールバックにしており、お腹が出た初老とはいえ筋骨隆々の身体は歳を感じさせない。
「……」
そその時甚壱は現れた呪詛師の呪力量に驚愕していた。
呪力で構成された呪霊ならば稀に見る呪力量だが、人間という括りで見ればそれは破格であった。
「多いな」
俺並み…いや、以上の呪力量か…。
カチカチにしてない状態の不意打ちとはいえ俺の呪力強化を軽く破って切り裂く呪力出力…そしてその出力を最大限生かす得物の扱い。
(とはいえわざわざ威嚇の為?か知らんが呪力垂れ流してる様子から見るに基礎の基礎を教えてもらう師匠がいない我流で鍛えてきた野良呪詛師か。 俺も童の頃は手合わせで勝利を掴んでもそれが原因で親父にぶん殴られたな〜懐かしい…)
「うぅん……しかし」
公にされていないことだが今回の任務の被害者には呪術界上層部の幹部の娘が含まれていた。 呪霊を視る事はできるが父親の意向で呪術の界隈からは離されま生活をしている娘、実質的な非術師と言ってもいい。
何かしら危険の伴う呪術から遠ざけるのは普通の思考をした親ならば至って正常な判断である、しかし今回はそれが裏目に出てしまったのである。
それらを知った幹部本人は、一般の呪術師が受けていた案件を御三家が引き継ぐ形にしたのだ。
禪院家への契約内容はざっくりいうと
①生存していれば最優先で保護orダメな場合、有れば娘の回収
完了 パーツは車のトランクに既に乗せている。
②呪霊の仕業である場合即刻祓うこと。
完了 俺はこれだけで終わると思っていた。 正道とガキンちょのいい相手で、もう十分だったがそれだけでは終わらなかった。 悪くない誤算だ。
③娘の死に第三者、あるいは呪詛師が関わっていればその者を即刻捕縛、そして依頼者の自宅に捕縛したその者を(勿論内密に)連れてくと契約は満了とする。
非術師の場合は始末書にその者の事の一切を記載せず提出し、呪詛師の場合は追って依頼主から送られてくる通りに始末書に記載し提出をすれば問題なく通る手筈らしく、任務対象に何が起こるのかは想像に易いな。
おそろしおそろしや〜
(あの穏健派の人がこれだ、さぞかしおかんむりなんだろな…父は"やはり"愛が深いと、いうことなのか…)
そしてそんな案件は当主直々に動けと思わなくも無いが、あのジジイ俺に押し付けやがって。
俺は委託された面倒な任務について、だめもとで報酬アップの直談判をしたが、それがまさかのまさか、成功に終わり報酬の額をかなり釣り上げる事に成功した。
だからあの2人に報酬が出せるというものだ。
「お前さんの術式か? その呪具、完璧に避け切ったと思ったんだが…その呪具には呪力の起こりが感じ取れなんだ」
「術式の開示」それが呪術師にはあり、そのおかげかこういう状況の時バカ正直に話してくれる呪術師、呪詛師は少ないがゼロではない。
その場合"開示"という縛りによって相手の術式の能力向上があるが、俺はそれよりも理解のしにくい術式の場合ば聞いてみるのも一つの手としている。
甚壱の予想では幻惑、錯覚、しかし呪力の起こりが感じれなかった。
(もしかすると事前に術式の一段階を行っていたのかもしれん、俺の術式で言うならば呪塊を既に作っておく様なものだ、それならば呪力の起こりは限りなくゼロにできる、が……うん…考えてはみたもののあまりわかんねぇって事だけが分かったな!ガハハ!)
清々しく正直に聞いてくる甚壱に、目前の初老の男は不覚にも笑ってしまう。
「クハッ…己で分析解析を考える事すらせんのか? 最近のガキはこうも頭が悪いのか……ククッ」
「そうだな準備をしようかお前さん……俺の術式は重さを付与する術式だ、物に付与もできるぞ」
甚壱は敵意を潜め、目線を呪詛師から離すと石畳の隙間、雑草などの隙間から子供の爪程度の石ころを拾い上げると、それを慣れた様子でホレと言いながら呪詛師向けて爪弾く。
「ッ!? ガキがッ………まぁいい、教え合いっこと行こうかカスゴミ」
顔目掛けて飛んでくる石ころを掴むとその見た目がまやかしなのでは、と思わされる"重さ".、そしてそれに付随した威力に弓握は驚愕し、手のひらから血がぽたりと石畳に滴り落ちると青筋が頭に浮く。
(シンプル故に強力…いや厄介…だがそれは俺も同じ)
「俺の術式は呪力の透明化、あぁ…注意深く見れば見れるもんじゃねぇさ…何者にも見る事はできねぇぞ? 分かりやすく言えばそうだ…あの五条家の"六眼"でも見る事は不可能な筈だの…まぁ憎たらしいがあの舐め腐ってそうな面のガキにはどのみちあたらねぇが…」
「!!」
そして次にその石ころを甚壱の喉目掛け爪弾く
「ィッ………ッ!」
呪詛師の話を信じるなら掴んでは確かめられないと思い、甚壱はもう消え入りそうな己の呪力しか付与されていない石ころを小さな動きで躱すが次の瞬間頬から
眼球の真横あたりまでを石で殴られた衝撃が襲い、傷を作る。
(感知も…無理そうか……なるほどな、厄介極まっている!!)
明らかに躱した、甚壱は理解する。
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「呪詛師よ、お前は殺しちゃ面倒な人間のガキンチョを殺している」
「ほう? あのガキか?……いや、高専か?……あの娘か?、若く清楚な身なりに興奮したが…まずったの〜…」
弓握三郎は数日前の獲物をを思い出していくと、目の前の呪術師が言った事と記憶、点と点が繋がり己のミスに気づくと舌打ちをする。
「それに時間を稼ごうが俺の連れ達はもう帰還した、口封じは不可能よ、大人しくお縄に付きやがれ」
腕を組み自信満々の様子を崩さず甚壱は言う。
こんな面白い呪詛師は滅多に出会えない、甚壱はそう思い駆け出したい意欲を抑え、事務的に声を紡ぐ。 その組んだ腕に力が入り指が食い込み始める。
「おいカスガキ、お前が俺を相手する理由は分かった…しかし何故その"娘"俺が殺した事になっておる?、証拠は? 他者を犯人に仕立て上げる証拠はあるのかの?」
「娘って言っちまってんじゃないかガハハ」
「…………」
墓穴も掘り、後は無い。 諦めた弓握は数秒黙ったのちにまた思考を巡らせる
「だが…被害者はあの呪霊に喰われておる、証拠は無い筈、いや、そうか……ふむ……クソガキ、お前の仰せつかった任務についてだが、まだ俺の耳に入ってないという事はおそらくこの任務あまり公にはされてないのう?」
「……だったらなんだ?」
「これでも情報網は張り巡らせてるほうでな……つまりあのガキと二級術師相当のあの呪術師はおそらく知らんだろう? この事を?、知っておれば負傷しているとはいえ2人の呪術師が来る理由も無いが先に、帰る理由が無い、おそらく報告に向かっているというのも嘘だのう?」
(そして俺が殺したその人物その任務を請け負うコイツは名家の呪術師か高専幹部専属の呪術師、ならあの呪霊をさばけるのもうなずけるのう)
顎髭をさすり、指を甚壱に向けながら言う。
「確かにお前とやりあえば残穢は必ず残るからバレずにとはもう、無理だの……しかし今から逃げてしまえばばどうとでもなるわ、しかしクソガキ、互いに準備を終わらせておいて俺が大人しくパクられると思うのか?」
(コイツ……)
「おい待て、聞いてりゃ俺がお前さんを逃すと思ってるのか?」
甚壱の額に青筋が薄く浮くと、空気に緊張が走る。
「お"? 誰がお前ごときに尻尾巻いて逃げると言った?、俺が小僧1人処理できないと? そうだとしたら随分と俺をなめとるなぁ? 随分と自信のある坊ちゃんだのぉ?」
会話の最中、甚壱は使い込みボロボロになった草履を脱ぐと帯に挟んだ。 帳のせいで暗くなったせいか冷え、冷たい石畳にぺたりと素足を載せる。
「たりまえよツ!老いぼれに俺様が負ける訳ないだろうが?」
フンと鼻から息を吹き、自信満々で甚壱は呪詛師を見下げると、三郎も額に青筋が浮く。 弓握は刃物を握り構え、甚壱は着物を上を脱ぎ上裸を晒す。
「クハハツ!…………次で仕留めるぞ呪術師」
「ガハハハハツ!!! なぁに抜かしてんだッ!不意打ちすら決めれなかったおじいちゃんにゃそんな気ばっても絶対に無理だぜッ!? お笑いもんだなこれぁッ!!」
「………ふっ、煽っておるな、青い青い」
呪詛師は落ち着いた口調で言い放つ、しかしその三白眼は綺麗な丸になるほどかっぴらくと"呪具"が砕けるか心配になる程度の力で拳に込めていた。
呪術師は目の前の男の空気が変わった事を察知すると、ニヤケ面のまま拳を握り込み、呪力を溜めた。
呪いが満ち満ちる廃神社……
大柄な男の呪術師と呪詛師が二人……
何も起きない訳も無く……
ジリ
ぬかせッゲロブスのクソガキか"ァ"ッ……!!
甚壱の挑発は成功した、これで心理戦で少し優位に立った筈だった。
しかし
甚壱もまた挑発に乗りやすい
た"ぁ"れがゲロ"ブス"だァ"くそじじぃ"い!? 目ん玉噴き出すくれぇボコボコにしたら""ァ"ァ"ァッ"!!!
飽きずに頑張る!