朝、決まって同じ時間に目が覚める。おそらく長年の間の習慣が当たり前となってしまったのだろう。
顔を洗い歯を磨いた後、庭で剣を振る。ただひたすら無心に。
いや、剣を振っている、という方が正しいか。悠久の時をひたすら研鑽に注ぎ込んだ成果なのか、いつからか剣を振ろうとした時にはもう振っているのだ。
無意識に剣を振り、間合い、歩法、呼吸、そして剣の振り方。全て無意識下で最適化してしまうのだ。
故に喜びは無く、剣を振り敵を殺すことに感情は浮かばない。気づいたら目の前で首と胴がふたつに分かれているなんでざらだ。
でも、剣を振るうことは辞めない。いや、辞めることができない。この剣は皆に教えを乞って作り上げた剣であり、これが唯一彼らと繋がりを感じられるものだ。
ただ不意に考えることがある。果たして俺はこの世界で剣を交えられるほどの強敵と出会えるのだろうか。
佐々木小次郎、宮本武蔵などカルデアにはたくさんの剣豪が在籍していたので相手に困ることは無かった。
ただここは違う。魔法という技術がこの世界の根幹であり、魔法至上主義なんて考え方さえある。
そんな魔法に依存した社会で剣を極めた達人が生まれるかと言われれば限りなく可能性は低いだろう。
悠久の時間を生きる俺にとって、目標というものは1番大事なものだった。
目標は生きがいを与え、充実感をもたらしてくれる。自分の全力を出し切って、届くか届かないかくらいの目標はもうこの世に存在しないのだと。
能力を制限すれば叶えられるだろうが、それは結局紛い物に過ぎず、満足することはできない。
一騎当千の英霊も人類悪も、ORTだって足りない。結局根源は俺に全てを与えてくれた代わりにいちばん大切なものを奪い取った。
しかし、俺は根源はこの並行世界の情報以外存在しないことを知っている。世界は平面に無限に広がっていることはわかっている。ただ立体に広がっていることはわかっていない。
今この世界で創作された物語がどこかの世界で実在しているように、この世界は誰かの創作物である可能性があるのだ。
そしてこの世界からはその創作者の世界には絶対に干渉できないようになっている。
根源は一人の創作者が作り上げた世界という一部分に置いて無限に分裂する世界の全てを知っているのだ。
言えば、ワンピースの世界にある根源はドラゴンボールの情報を知らないようにできているのだ。
そしてこの真実は人に気づかれないように操作されている。
ただ俺は最初はここよりも上位の世界出身だった。だからこの世界を作り上げた人物を知っているし、この世界の派生した世界を文章として認識した。
そのため根源も認識することができる。根源とはそれ即ち作者の創造性のことを指しているのだから。
無意識も意識も作者がなにか考えたことは選択肢となって世界に迫る。
ただその選択肢を内包した多数の分岐点を行った先にある終着点が根源であり、言えば物語の終わりとなるわけである。
世界の終わり=物語の終わりならその世界がたどってきた正史の事細かな情報、砂の1粒まで根源にたどり着く。
つまりありとあらゆる可能性の終着点なわけなので終わりがあるはずだと言えるがそれは違う。
分岐した先でそこが始発点となりあらゆる可能性を秘めた異世界となってさらにまた収束する根源ができる。これが下位世界である。
この下位世界の根源は始発点までしか認識できないため、上位世界の根源よりも劣る。
ただ結局、根源の情報の質は同じなのだ。ありとあらゆる可能性が分岐しているのなら、上位世界の情報を内包している世界がある可能性なんて無限に存在する。
ならその情報の終着点も全て根源なわけで、そこに優劣なんてものは存在しない。
情報が同じでも認識はできない。これが全てだ。ただそれでも例外は居る。それが俺だ。上位世界から下位世界へ移動してきた奴らは違う。
次元を飛ぶ際に認識してしまうのだ。全ての始まりを。
普通に生きているだけだと根源なんてものはまず知りもしない。その資格があるのは運がよかった者か、自力でたどり着いた者かだ。
俺は前者で、運が良かった。いや、運が悪かったと言った方がいいのか。
待っていたのは地獄なのだから。
創作物の中に入るということは、その世界の人間を全て創作物としか見られなくなるということである。
人間は自分一人なんだという孤独感と、彼たちの絶望はひとえに読者を喜ばすためだけの娯楽なんだという罪悪感に押しつぶされそうだった。
ただそれは違う。目の前で、彼らを長い間見てきたから分かった。生きている。そう、彼らは生きているんだ。
確かに作られたシナリオで、敷かれたレールを無意識のうちに走っているのかもしれない。ただそれでも彼らが乗り越えた苦難も、その時に感じた感情も全て俺たちと同じだった。
ならそれはもう、本物と言っていいに違いない。だから俺は彼らに溶け込めたし、孤独感も無くなった。
ただ、それと同時期にふつふつと湧き出てきたのは絶望だった。彼らを同じ人間と見てててしまったための苦悩。
まだ創作物が目の前で幾度となく死んでゆくのは耐えられた。だが人間は違う。家族同然の存在が幾度となく手からこぼれおちて行くのを見て何も思わないほど冷たい人間にはなれなかったのだ。
ひたすら、試行錯誤の連続。藤丸やマシュ、そしてロマニなどどうしたら救えるかをひたすら考えては試し、考えては試していくどとなく失敗してきた。
ただ、ある時心が折れて引きこもっていた時のことだった。自分は何もせず藤丸に全てを任せ、俺は1人で部屋に閉じこもっていた。
ただ今までと違うのは彼らの力だけでゲーティアを打ち倒したこと。ロマニという犠牲はあったが無事にゲーティアを打ち倒し、崩壊した。
崩壊するのを見るのは少しだけ慣れてきた。
ただいつもと違うのは彼らが正史を辿ったということだけ。唯一正史と違う点をあげるとするならば俺という存在がいるということだけだ。
なら俺がいなければどうなる?無事に藤丸たちは成し遂げられるのではないか?そんな疑問を解決するためすぐに行動に移した。特異点Fに置いて、開始直後に自殺をする。世界は崩壊し、初めから。そうしてまたあらゆる可能性を試し数十億回。ある結論にたどり着いた。それは俺がゲーティアを吸収し、藤丸たちに倒されるということ。
俺が物語の終わりで死ぬ事、ゲーティアを倒すことが条件だと分かった。ならゲーティアを吸収した俺を倒せばそれ即ち藤丸がゲーティアを倒したこととなるのではないか?
ただ、この策には最大の難所がある。それは藤丸達が俺を倒すことだった。自殺することに関しては自分から刃を突き立てているので構わないが、他者に刺されることは違う。
俺はもうこの時点で人間という枠組みを大きく外れており、正しく神秘の塊のような存在だったのだ。
その理由は簡単で、回帰したとしても俺の能力値は初期化されなかったのだ。それ故に俺はひたすら己を強化した。
その結果、死をも超越し弱点すら存在しなくなってしまった
そんな俺を殺すのにはまずこの数多ある強力すぎるスキルを一時的に封印しなければならない。
俺はルールブレイカーを元にしてひたすら俺のスキルを封印できるほどの効力を持つ短剣を作成していった。
この短剣に費やした回数は脅威の3兆4789億5278万2541回。元々礼装すら作ったことが無い俺にとって
その長い道のりによってできた短剣も使用可能回数は1回だけと、随分脆いものになってしまった。
だが、その1回さえあれば十分。俺は次の回帰で全てを終わらせ、今ここにたっているというわけだ。
途中から何書いてるのか分からなくなってしまいました。