劣等生と回帰者   作:あるとりあ

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3話

さて、司波達也を大体観察し終えたところで俺は彼にある提案をする。

『少し手合わせをしないか。もちろん魔法なしの肉弾戦でね』

「叔母様への許可を取ってきてからなら受けよう」

『わかった』

そのまま司波達也、が本館の扉に消えてって5分すぎに戻ってきた。

「構わないそうだ」

『なんで真夜もいるんだい?』

「私が見たいってお願いしたのよ」

『そういう事か。司波達也もいいのかい?』

「まあ、俺に拒否権なんてものは無い」

『そうか』

こいつも苦労してるんだろうな。同情するよ。

『先程も言ったが魔法の使用は禁止、それ以外ならなんでもありだ。

ところで司波達也、君は何が武器を使うのか?』

「いや、使えることには使えるが無手が1番得意だな」

『わかった俺も無手で行こう』

始まりの合図は真夜にお願いして俺は司波達也に向き直って構える。

「始めるわね。よーい始め!」

間合いを詰め、右手でジャブそれは難なく躱される。今のジャブを躱されるのは想定内だ。

避けた際に少し左にズレた重心を崩すべく、足払いを仕掛ける。が、これもいち早く後ろに下がることで躱される。

(思ったよりやる。だが大体掴めたな、それにやはりか)

彼はひたすらカウンターを狙っている。足払いした際に動くのに一瞬遅れるその隙。その一瞬を彼は狙おうとしてきたが、足払いの際に真空を作る事で少しそちらに意識を向けさせたことでカウンターには至らなかった。

じゃあ少し意地悪をしてやろうか。

俺は少し距離を取っている達也に向かってある歩法距離を詰める。その歩法とはあっちにいた際新撰組の天才に教えを乞うた言わば奥義。

知っている人は多いんじゃ無いだろうか、縮地だ。

本来縮地とは、身体を大きく前傾させ重力を利用して素早く移動する方法だが、これを極めた達人が行うとまるで瞬間移動したような錯覚に陥る。

起こりが無いのだ。身体を前傾させる。この動作がまず見えないため判断もできない。それが真の縮地法とあいつは言っていた。

その縮地を使って間合いを詰める。司波達也は少し驚き硬直したがすぐに建て直しそれに対応する。

その一瞬で十分。意を司波達也に放ちガードをあげたところでボディに蹴りを入れる。

司波達也はそのまま5mほど吹っ飛んだ。

「まいった、降参だ」

彼の口からそのような言葉が漏れる。

『そうか。大丈夫か?』

「ああ、問題は無い」

『なら良かった』

彼の本質は理解出来た。俺が拳を交えた理由、それは彼の本質を再確認するためだった。

剣なら良かったのだか別に拳でも見たいものは見れる。戦い方、目、そして構えや雰囲気で相手の本質は観ることができる。

そして司波達也に俺が見たのは、やはり守りたいものを死んでも守るという強い意志だった。

だから無駄な攻撃はしない。全てカウンター狙いで、1発で息の根を止めようとする。

ああ、なんとも難儀な生き方を強制されたものだ。彼が魔法で感情を削ぎ落とされたことはもう根源にて確認済み。でも俺はその選択に怒りなどの感情は浮かばなかった。

大のために小を切り捨てる。この考え方を否定することなんて出来ないのだから。

手合わせが終わり、司波達也が回復した事を確認して俺は部屋に戻る。

汗を流して再び屋敷内を歩き出した。端的に言うと、暇なのだ。

何か達成する目標も無いため、何かをしなければならないという事も無い。長年、ひたすら目標を追っていた身としてはどこか物寂しさや空虚感を覚えざるを得ない。

しばらく屋敷内をうろつき回っていると、司波達也くらいの上品な女の子がこちらに歩いてきた。おそらく彼の妹の司波深雪だ。

『君が司波深雪かい?』

「ええ、私が司波深雪であっていますが。何か御用ですか?」

『いや、いい。観たいものは観れた』

俺はそのまま彼女の横を歩いていく。彼女は終始何かよく分からないといった顔でこちらを見ていた。

 

 

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