劣等生と回帰者   作:あるとりあ

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4話

あれから数ヶ月が経ち俺は今国立魔法大学付属第一高校の校門の前に立っている。

この数ヶ月、真夜にこの高校に入ってくれと頼まれ、四葉の力で試験をねじ込み、受験をして今に至る。

成績は座学、実業共に好成績を叩き出したが、流石にねじ込んできて一科生になるのは申し訳なく思い、二科生を希望した。

五教科を含め魔法関係のテストは全て根源に任せたし、実技はデモンストレーションをしてくれた先生を真似たおかけで2回ほどでコツを掴めた。これで一科生になれない方がおかしいだろう。

それはそうと、いつまでも校門の前で立っているのはおかしいので校内に入る。

この、桜が舞う光景を見るのは前前世の時の話なので少し感慨深い気持ちになる。

が、俺の隣の男はそんなもの関係ないとばかりに近くのベンチに腰を下ろした。

そう司波達也である。

『もう少しこの空気を堪能させてくれてもいいんじゃないか?』

「別に良二はそんな感受性の高い性格してないだろ?」

『酷いことを言うな』

この3ヶ月、ちょくちょく彼の修練に付き合っていたのでそれなりに親しくなった。

『それで達也、深雪は今リハーサルか?』

「ああ、確かそのはずだ」

俺は今1度、辺りを見回す。春の心地よい風が当たりを通り抜け、満開の桜が雲一つない晴天の空に時折花弁を散らしている。

こうもゆったり出来るのも、一重に自分のやるべき事を成せたからだろうな。

『読書か。確か校内で仮装型は禁止されてたんだったな』

俺は司波達也がデバイスで何かの小説を読んでいるのを見てそう話しかける。

「ああ、まあ俺はスクリーン型の方が合っているしな」

この世界は、もう既にデジタル化が進んでおりほとんど紙媒体を使う機会がない。故に読書など紙で読む人は極小数であり、ほとんどが1部のコレクターなのだ。

まあ嵩張るし、重いし色々なデメリットがあるとは思うがそれ以上に、この紙をめくる感覚が好きなのだ。

「良二は紙が好きなんだったな」

『ああ、デバイスだと読んだ気にならないんだよ』

「共感出来んな。嵩張るだろうに」

『まあ、俺には亜空間があるからな』

「そういうことか」

この亜空間というものだが、実を言うと魔術ではない。どちらかと言うと剣術の応用なのだ。この世界に少し切込みを入れて別次元へと繋げる。これが亜空間のしくみだ。

ただ、亜空間自体は剣術の応用だが使う為には魔術を行使しなければならない。世界に切込みを入れる、これ自体世界の理に大きく反した事であり抑止力の対象だ。抑止力が関わって来ると色々と面倒なので、魔術で隠蔽を行っている。

亜空間から取り出した本を読み進める。達也も読書に集中しているようで会話は無い。

そのまま数十分が経過した。

「新入生の方達ですか?もうすぐ入場時間ですよ」

余程読書に熱中していたらしく、彼女が2mほど迫ってきたタイミングでしか気付くことが出来なかった。

「スクリーン型ですか、感心ですね。仮装型の持ち込みは禁止されていますから」

「スクリーン型の方が読書がしやすいですしね」

達也が簡潔に返す。

「自己紹介が遅れました。当校で生徒会長をしています、七草真由美です。あと1年と少ない時間ですがどうぞよろしくお願いします」

七草真由美か、確か十師族である七草家の長女だったな。それに少し気色悪い。

「司波達也です」

『小林良二だ』

俺たちふたりが自己紹介をすると彼女が驚いたようにこちらを見る。

「あら!貴方達があの司波くんと小林くんなのね!職員室で話題になっていたわ。司波達也くんは入試七教科平均、100点満点中96点。特に圧巻だったのは魔法理論と魔法工学。合格者の平均が70点にも満たないのに、両教科とも小論文を含めて文句なしの満点。前代未聞の高得点だって騒いでいたわよ?

それと小林くんも筆記、実技共に高得点だったのにも関わらず二科生を希望した生徒だって聞いてるわ」

生徒会長が少し興奮気味にそう話す。にしても流石達也だな。魔法理論と魔法工学なんて、あんなテストよく満点も取れるもんだ。

「いえいえ、たかがペーパーテストの点数です。見ての通り自分は劣等生ですから」

その一言で生徒会長の顔が見てわかるほど曇ったのが分かった。まあ、達也はそういうやつだ。自分の実力を評価されても、自分が評価することは無い。

「そんなことないわ、確かにこの一高は実技がメインで評価されますが社会では違います。貴方の魔法理論や魔法工学の知識は一高、ひいては日本において素晴らしいと断言していい。だからあまり自分を卑下にしてはいけませんよ」

ああ、素晴らしい人格者だ。初対面の他人を気遣いそして補うような言葉を送れる人間がこの日本に何人いるのだろうか。だから、いっそう気持ち悪いのだ。

「そろそろ開場の時間ですね。時間に遅れないようにしてください。またお話できたら嬉しいわ」

そう言って一礼し彼女は講堂の方に歩いていく。

虚偽にまみれたその背中を俺は黙って見ているだけだった。

 

 

「最も差別意識があるのは差別されている者である、、か」

達也が隣でそう呟いているのも無理は無い。前半分と後ろ半分で綺麗に一科生と二科生で座席が別れている。

『くだらんな』

無意識にそう吐き捨てた言葉がまさに今の俺の心境だった。

全くもってくだらない。優越感、劣等感、嫉妬、慢心、軽侮、そして自己嫌悪。それらの感情がここには渦巻いている。

学校側は何をやっているのだろうか?生徒の自主性に任せるなどと言った方針を打ち出してはいるが、結局やっているのは極度の放任主義。

全くもって不愉快だ。子供にとってこの時期が1番大事な時期。もはや人生を決めると言っても過言では無い。

それなのにも関わらず、一科生と二科生という溝を作り、二科生は諦め、一科生は二科生を見下すだけで向上心の欠けらも無い。ふざけているとしか言いようがないな。

「良二、あそこの席が空いている」

『分かった』

達也はその席の隣の女子に了承を取っていたが話に入る気にはなれず、座った際にそのまま寝てしまった。

 

 

 




8月22日大幅に改変しました。
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