【完結】異世界TS少女はVtuberになってスローライフを配信したい   作:水品 奏多

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 ごめんなさい、遅れました。


第二十七話 【潜入】異世界の学校!

【そーいやカタリナちゃんたちは学校に行ってないの?】 

 

 きっかけはリスナーのそんな些細な一言だった。

 恐らくはVtuberとしての設定(・・)が知りたくて聞いたであろうそれに、「そういえばそこら辺の説明はしていなかったなあ」と今更ながら思い至り、ついでにアネットの強い要望もあってーー

 

「えー、地球のみなさんこんにちわ。

 異世界の美少女教師、カタリナ・フロムです。今回はタイトルの通り、リリストアルトの学校を紹介していきたいと思います」

 

「いえいっ」

 

【よ、待ってました~】

【相変わらず最初の挨拶安定しないなあ】

 

 ーー私とアネットは「フクロロの寺子屋」と書かれた建物の前にたっていた。

 

 「フクロロの寺子屋」。

 村の中心付近に建てられたそこは(ふくろう)族のフクロロさんが先生となって子供たちに読み書きや計算を教える場所だった。村で生まれた常者たちはみなここで5,6年の間に基礎的知識を学んで大人になっていく。今回はマハタ様の計らいで、特別に私たちのために時間を取ってもらった。

 そんな説明を画面に向こうの彼らに話していく。

 

【はあー、そんな教育機関があったんやねえ 全然知らんかった】

【やっぱ江戸時代をベースにしてる感じやな】

【>子供達 もしかして今からあの子たちの子供モデルが見えるんどす?】

【なん…だと…(ガタッ】

【お前天才かっ!? 今すぐ同志たちに連絡しないとっ】

【!?】

【何か、急に同接が500人くらい増えたんやがwww】

【「悲報」カタリナちゃんの人気、ケモナーたちの熱意に負ける】

【↑大丈夫 いつものことやから……】

【確か稀人のカタリナちゃんは村の学校に行かないで、家で勉強してたんだっけ?】

 

「ですです。渡された教材とかを各自で進める形ーーそちらで言うところの通信教育みたいな感じですね。

 12歳くらいまでは渋々やらされていたので、多分勉強量的にはそう変わらないはずです」

 

「わたしは今も空いた時間とかはカタリナお姉ちゃんに勉強を教えてもらってるんだよ。……まあ逆にわたしが教える場合が多いんだけど」

 

【?? 何か今ボソッとやべーこと言わなかった?】

【気のせい気のせい】

【あれ、でもそれなら何でこっちで一緒にやらないんだろ? わざわざ稀人と常者で分ける必要なくない? 先生の数が足りないとか?】

 

「え、えーと、それは……あれ、なんでしたっけ?

 確か稀人と一緒にいると穢者に狙われやすいから、とかそんな感じでしたよね。ね、アネット?」

 

「え? さ、さあ私はそういうものなんだって勝手に思ってたから……」

 

【???】

【お、闇深案件か?】

【当然のように妹に聞く姉さんよ……】

 

 突然出現した難問に、二人で首を捻る。

 おっかしいなあ、誰かに何度か説明してもらったと思うんだけど……まあ遥か昔のことだからね。忘れてても仕方ない仕方ない。

 

「はい、注目~。今日の朝に話したと思いますが、今回はとある有名人の方に来ていただきました。

 地球ともつながっているので皆さん節度ある態度を取ってくださいね。

 では。防人見習いのカタリナ・フロムさんとその妹のアネット・フロムさんです。どうぞっ」

 

「わあ、カタリナちゃんってあのカタリナちゃんっ!?」「おれ、前にアネットちゃん見たことあるぜっ」

 

【きたあああああ】

【あっあっ】

【いいゾ~】

【Woo-hoo!!!!!!】

【海外ネキもようみとる】

【ケモナーは向こうが本場やからな(適当)】

【やっぱかわいいは言語の壁を超えるんやなって】

 

 ーーというわけで、早速やってきたご対面の時。

 先生の合図とともに教室の中に足を踏み入れれば、猫、犬、などなど様々な形をした常者たちが文机の前で行儀よくお座りしていた。全部で20人くらいか、そこにいる誰もが期待を孕んだ瞳でそわそわとこちらを見ている。

 

 ああ……心が浄化されていく……。

 そうっ。これだよ、これ。最近はずっと残念美少女って扱いだったからなあ。ここらへんで一回、私のイメージをぴっしりとさせないとね。

 

「みなさんこんにちわ。リリストアルト(いち)の最強美少女、カタリナ・フロムです。

 もしかしたら私の美しさに怖気づいてしまうかもしれませんが、どうぞ自由に質問してくださいね」

 

「カタリナお姉ちゃんの妹、アネット・フロムだよ。

 今日はお姉ちゃんの付き添いできたんだ~。よろしくね?」

 

「ええー、タニアちゃんの方が可愛いよね?」「ねー」「それが地球と繋がる機械?」「はーいはーい、お姉ちゃんは恋人いるの?」「アネットちゃん、まさか君は僕の天使なのか……?」

 

【あっ】

【Oh………】

【あれなんか一気にコメントが減ったな? 一体ナニをしてるのかねえ?】

 

 座布団を離れ、一斉に詰め寄ってくる子供達。

 

 あ、圧が凄いっ。ってか、今一人やべー奴いなかった? いくら子供とはいえ私のアネットは絶対に渡さないよっ。

 

 と、私が混乱する中、アネットが「お姉ちゃんが困ってるじゃないですか、質問するなら一人ずつにしてください」と一喝し、彼らはすんなりと大人しくさせた。

 さ、流石はアネット。リスナー皆のママになるだけはあるっ(?)。

 

「ねえねえっ。防人ってことは浄化の力も使えるんだよね?

 ちょっとここで使ってみてよっ」

 

「あー、わたしも見たいっ」「わあ、楽しみだなあ。どんな術なんだろ……?」

 

「い、いや、それはぁ……」 

 

 狐族の少女の無茶ぶりに、思わず冷や汗が流れる。

 成人が近づいてきた影響で私の力も不安定になってきた。こんな場所で使えば最悪誰かを怪我させてしまう可能性もあるだろう。

 

 う、うーんでもアネットもまだ習ってないから使えないし、常者の皆なら怪我もすぐに治るし、ちょっとくらいならーー

 

「ひゃっ。

 ……ご、ごめんなさい。私達、今は特殊な事情で使えなくてですね……」

 

「えええ~~」

 

【意思よわよわじゃんwww】

【なるほど これが霊圧ですか】

 

 アネットの「分かってるよね?」という冷たい視線を受け、慌てて頭を下げる。

 当然降りかかってくるのは生徒たちの非難轟々の声。

 

 うう、私だって皆に見せたかったんだよ?

 でも流石の自分の自尊心(プライド)の為だけに子供たちを危険に晒したくないからさ。いや、ほんとだよ、うん。

 

「ぶーぶー」「なんだよ、嘘つきじゃねえか」

 

「いいの、カタリナお姉ちゃんは駄目駄目なのがいいんだから」

 

「うぐっ」

 

 何故かふんすと胸を張るアネット。

 

 そ、それ全然フォローになってないからね……。

 子供たちの視線の質が変わりゆくのを如実に感じて、私は心の中でため息をついた。

 

 

 

 

「アネットちゃん凄いっ。

 クーマくんでも1分以上乗れなかったのにっ」

 

「えへへ。でしょでしょ?」

 

「なにぃ、俺だってそれ位やれるってのっ」

 

 時刻は3時過ぎ。

 寺子屋横の空き地でアネットたちがタブレットを持ちながら竹馬などで遊んでいるのを、私は縁側に座ってボーと眺めていた。

 どうやら寺子屋は2時くらいには終わるらしい。その終了間際にお邪魔した私たちはあの質問タイムの後、こうして一緒の時間を過ごしているのだった。

 勿論私も最初は鬼ごっこに混ざったりしてーー結局、1時間で疲れてしまった。

 いやあ、子供って本当にすごい。あんな小さい体のどこにあんな体力があるんだろうなあ。

 

「……元気にやってるようじゃな」

 

「あ、マハタ様。ありがとうございます。来てくれたんですね」

 

「当然じゃよ。住民たちの幸せに気を配るのが儂の仕事じゃからな」

 

 どこからともなくやってきたマハタ様と挨拶を交わす。

 彼女は私の横に腰を下ろすと、アネットたちの歓声に目を細めた。多分マハタ様も私と同じ感情なんじゃないかな。

 

「そうだ。どうして私たち稀人はここでみんなと一緒に勉強しないんでしたっけ?

 見た感じ人数に余裕もありそうですし……」

 

 しばらく続いた賑やかな沈黙。

 雑談がてら気になったことを質問してみると、マハタ様は一瞬だけ眉をピクリとさせ、すぐにいつもの落ち着いた表情で話し始めた。

 

「言ったであろう? 稀人は特別だと。

 稀人はここに流れ着いた時点で、寺子屋で教えるような計算や読み書きなどの基礎的能力が何故か身に付いておる。

 フクロロには、というより儂以外の常者たちにはそれより上の教育は難しいじゃよ。じゃから儂がお前たち専用の教材を作って、お主たちの親にその教育を任せているわけじゃ。……情けない話じゃろう?」

 

「い、いえいえそんなことありません。

 マハタ様が作ってくれた教材、凄くおもしろかったですよ。色々と小話が書いてあったり、所々漫画になってたりして」

 

「そうか。それならよかったのじゃ」

 

 私から視線を外し、口角を上げるマハタ様。

 それがどこか辛そうに見えるのは私の気のせい、なのかな?

 

「……のお、お主はこやつらと一緒の子供時代を過ごしたかったと思うか?」

 

「え?」

 

「いやなに、もしもの話じゃ。深く考えんでもよい」

 

 朗らかな笑みを浮かべて、マハタ様が聞いてくる。

 うーん、もしもか。確かにそうなったら今よりはもっと賑やかな子供時代を過ごしていただろう。友達だって沢山できたはずだ。でもそれはーー

 

「ーー多分、私は本当の家族が欲しかったんだと思う。

 だからここでの生活は十分幸せだったよ」

 

 

『どうするのよ、あなた。

 このままじゃ、あのニュースの男みたいにーー』

 

『そんなこといっても仕方ないだろっ。それこそーー』

 

 

 度々蘇ってくる過去の断片。

 そこにリリストアルト(こっち)の家族のような温かい時間はない。いつもほの暗い空気に包まれていた、そんな感じがする。

 だから多分ここでの日々は救いだったのだ。私はお父さんたちに、そして目の前にマハタ様に救われてきた。

 ……なんて、ちょっとかっこつけすぎたかな。

 

「あーっ! アネットちゃんのお姉ちゃんが浮気してるよっ」

 

「……へえ? ほんとう、お姉ちゃん?」

 

「い、いやっ? 今はちょっと真面目な話をしていたというかーー」

 

「浮気者は全員そういうんだよっ。

 みんな、お姉ちゃんを捕まえちゃってっ」

 

「任せてっ」「ふ、我が天使の頼みとあればっ」

 

「ちょ、みんな聞いてーー」

 

 嬉々とした表情を浮かべる子供に抱きつかれ、もみくちゃにされる私。人の切れ目から見えるのは、アネットの楽しそうな笑顔。

 うぐぐ、アネットも冗談だってわかったやってるでしょ。これっ。

 

「かっかっ、儂と情を交わすには百年早かろうよ」

 

 私たちの背後でマハタ様が心底おかしそうに笑う。

 まあ、マハタ様の気分が戻ったならよかったかな、うん。

 

 

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