ウマ娘ハーメルンダービー   作:ダシマ

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第9話「まあ、アイスでも食べようよ」

 

 

 ある日のトレセン学園。神社エリアにてキングヘイローは落ち込んでいた。そしてそれを天智、ライスシャワー、ハルウララ、カワカミプリンセスが陰から見ていた。

 

「キングさん…」

 

 落ち込んでいるキングの姿を見て天智がそう呟いていた。

 

「やはりここは直接聞いた方が宜しいのでは!?」

「かえって逆効果です。ここは静かに見守ってあげましょう…」

 

 しびれを切らしそうになっているカワカミプリンセスを何とか落ち着かせる天智。

 

「や、やっぱりライスがいるから…」

「そんな事言ったら僕の存在自体良くないことになってしまいます」

 

 自己肯定感が低いライスシャワーが自分を責めると、天智は何とかなだめる。

 

「キングちゃんがげんきがないと、ウララたちもげんきなくなっちゃうよ!」

「まあ、それはそうなんですが…」

 

 ウララの言葉に天智は何とかしようと考えていた。そんな時だった。

 

「あ、日陰独占禁止法違反だ~」

 

 一人のウマ娘がやってきた。白い髪にタンポポの髪飾りをしている。

 

「あ、セイちゃ…」

「しっ!」

 

 ウララが大声を出そうとしたので、天智が大人しくさせた。彼女の名前はセイちゃんことセイウンスカイという名前で、キングの同期である…。のんびりしていてつかみどころのない性格をしている。

 

「せーんせに言っちゃお~」

「ス、スカイさん…」

 

 キングがセイウンスカイの存在に気づくと、警戒した様子を見せていて、天智も自分たちが現れたら同じことを言われていたのだろうと思っていた。

 

「何しにって、アイス買ってきたから食べる場所を探してただけだよ」

「…クーラーが効いてる部屋で食べれば良いじゃない。前にそこで食べるのが1番美味しいって言ってたじゃない」

 

 セイウンスカイの意図が分かったのか、キングはそっぽを向きながらブツブツ喋っていた。

 

「まあ、そうなんだけど、今は暑さの中でヒヤッとしたいって気分なんだよ」

「ウソおっしゃい。私のテストの点数が悪くて落ち込んでるから、余計なお世話をしに来たのでしょう?」

 

 キングがそうセイウンスカイに向き合うと、天智が驚いていた。

 

「え? キングさん点数悪くありませんでしたよ?」

「赤点なかったよね?」

「た、多分キングさん自身は納得してないんだと思うよ…?」

 

 カワカミプリンセスとハルウララが不思議そうにしていると、ライスシャワーはおずおずとしながら2人に話しかけた。

 

「そんな訳ないじゃん。キングの成績は上の下なんだし」

「上の上よ!!」

「で、またグラスに負けた訳だ」

 

 セイウンスカイの言葉にキングヘイローは落ち込んだ。グラスことグラスワンダーというウマ娘がいるのだが、彼女もキングやセイウンスカイの同期であり、物腰は柔らかいものの芯は強く、そして3年生のウマ娘の中でトップの成績を誇った。

 

「5点も落とすなんて…」

「5点落とすだけでこんなに落ち込む?」

「当たり前よ!! しかも初歩的なミスで失点したのよ! こんなの一流じゃないわ!」

 

 キングヘイローの叫びに天智は困惑していた。

 

「さ、流石キングさん…とても意識がお高いですわ…!」

「記号問題でずれちゃったのかな?」

 

 天智達がまた話し合っていると、キングが一息ついた。

 

「でも、もう落ち込んでなんかいないわよ」

「!」

「次のテストの対策はもうしているの。今度こそ…」

「あのさ。熱く語ってる所悪いんだけどキング」

「な、何よ…。アイスが溶けても奢らないわよ」

 

 キングの言葉にセイウンスカイが笑みを浮かべる。

 

「キングのトレーナーさん、あそこで聞いてるよ。ウララちゃん達も」

「!!?」

 

 セイウンスカイに気づかれて天智が青ざめると、その場から逃亡しようとしたがカワカミプリンセスとライスシャワーに取り押さえられた。

 

「落ち着いてお兄様!!」

「足の速さでウマ娘に勝てると…いや、トレーナーさんなら可能ですわね。じゃなくて!」

 

 カワカミやライスの声も聞こえてきたのでキングが額を押さえた。

 

***

 

「その…すいません…」

「全くもう…!」

 

 天智が謝罪するとキングが呆れていた。ライスも申し訳なさそうにしていて、カワカミが笑ってごまかしていた。

 

「元はと言えば余計な心配かけさせたキングが悪いじゃん。アイスも結局溶けちゃったし、奢りね?」

「いえ、僕が弁償します…」

「しなくていいわよ! それよりももっと堂々としてなさいと言ってるでしょう!」

 

 そんなこんなでキングは全員分のアイスを購入することとなったが、セイウンスカイがある事を想いだした。

 

「あ、そういえば4年生のテスト結果って明日発表されるんですよね?」

「そうですが…」

 

 スカイの言葉に天智が答えると、キングの視線が突き刺さったので露骨に視線をした。

 

「勿論1位取れるんでしょうね?」

「…赤点なしは保証できます」

「そういえば風見トレーナーも前回2位でしたもんね。1位が…」

「…黒島トレーナーよ。グラスさんのトレーナーをしている」

 

 そう言ってキングは太一の顔を思い浮かべていた。天智や太一が何故トレーナーと呼ばれているのかはまた別の機会に説明しましょう。

 

***

 

 翌日、4年生のテストの結果が発表されたわけだが…。天智と太一が1位だった。

 

「……!!」

 

 結果を見て天智が唖然としていた。まさか太一と同じ点数となるとは思っておらず、滝のような汗を流していた。天智とは対照的に太一は無表情である。

 

「4年のトレーナー科…。またあの2人がトップだぞ…」

「そういやあの2人って増田トレーナーが連れてきた奴らだよな…?」

「やっぱり実力はあるんだな…」

「そういやもう1人いるって…あ、4位だわ」

 

 そしてウマ娘達がやってくると、ウララが天智の順位を見て目を輝かせていた。

 

「トレーナーすごーい! 1番だよ!」

「それなのにどうしていつも自信がないのか、不思議でしょうがありませんわね…」

 

 ウララに続いてカワカミプリンセスが天智の事を不思議に思っていた。

 

「こ、琴美さんも3位…」

「う、うん…」

 

 琴美も一緒にいてライスに順位を言われて苦笑いしていた。そんな中キングが天智を見つめていて、天智は気まずそうにしていた。

 

「な、何でしょうか…」

「あなたは本当に…」

 

 キングはプルプル震えていた。

 

「それだけ点数が取れるのにどうしてそんなに自信がないの! 琴美さんの前だからあまりこういう事言いたくないけど、もうちょっと自信持ちなさいよ! このへっぽ…」

 

 キングがそう言うと、天智がスッと手を上げた。

 

「な、何よ…」

「キングさん。思い上がりは命取りです」

「それにしたって腰が低すぎるのよ! このおばか!!」

 

 と、キングの叫びが響き渡り、太一とグラスワンダーは近くで見ていた。

 

「キングヘイローさんがとても勤勉家だというのが理解できました」

「ええ。あの姿勢は見習わなければなりません。テストお疲れ様でした」

「はい。グラスワンダーさんもお疲れさまでした」

 

 こうしてキングの悩みは無事に解決した…。

 

**

 

 

「その…キングさんの発言はお気になさらないでください…」

「いえ」

 

 余談であるが天智と太一は同室である。

 

 

おしまい

 




         出演

  キングヘイロー
  セイウンスカイ

     風見天智
    隅田川琴美
     黒島太一

  グラスワンダー
    ハルウララ
  ライスシャワー
カワカミプリンセス
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