ウマ娘ハーメルンダービー   作:ダシマ

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第14話「女の子の手作り弁当!」

 

 それはある昼休憩の事だった。

 

「天智くん。お昼ご飯食べよ」

「ああ」

 

 2年6組の教室で、琴美が天智に話しかけてきて、太一や紬は2人を見た。テツマは自分の席で欠伸をしている。

 

「机お貸ししましょうか?」

「あ、いいえ! 大丈夫ですよ!?」

 

 席が出席番号順で、天智と太一が連番になっていた為、太一がどいた方が食べやすいのだ。だが琴美は太一が昼ご飯を食べれないと思い、遠慮していた。

 

「食堂で食べますので…」

 

 天智がそう呟くとテツマがふと天智を見た。すると天智と丁度目が合って、天智が困惑した表情を見せていた。

 

「ど、どうされましたか…?」

「どうもしねぇよ。さっさと行ってきな」

 

 そう言ってテツマは天智と琴美に背を向けると、紬がまた困ったように憤慨したが、太一は無表情でテツマの意図を理解した。

 

「嫌がらせをしてくる可能性が出てきますね」

 

 太一の言葉に天智達だけではなく、他のクラスメイト達も反応した。天智と琴美は今付き合っているのだが、トレセン学園においてカップルは希少な存在なのだ…。その為、嫉妬してくる生徒も珍しくはない。

 

「性根が腐ってる奴ほど他人の幸せを壊したがるからな。迷惑な話だぜ」

 

 テツマがそう言うと、クラスメイト達は気まずそうにしていた。というのも、テツマはウマ娘科にいるスターウマ娘達と親交があり、それが原因で妬まれ絡まれる事が多いのだ。相手の話を聞いてもほぼ言いがかりでしかなく、微塵も自分に落ち度がある事を認めないのでうんざりしていた。

 

 そして天智達も度々そういう噂を聞いてはテツマに同情しているが、基本的にテツマの態度もあまり良いとは言えないので、何とも言えない状態だった。

 

 だが、そんなテツマが席を立ちあがって教室の外に出ようとすると、紬が話しかけた。

 

「どこに行くの?」

「…人がいねぇ所に行ってくるぜ。食堂はほぼ出禁状態だしな」

 

 そう言ってテツマは教室から出ていったが、天智達としてはかなり聞き捨てならない言葉を発された為、困惑していた。そんな中でも太一は無表情だったが…。

 

***

 

 テツマがふと廊下を歩いていると、

 

「はぁ…女子の手料理が食べたい…」

 

 という男子生徒の嘆きが聞こえてきたので、テツマがふと横を見ると4人の男子生徒が話をしていた。

 

「分かるぜ…」

「華やかだもんな…」

「温かみがありそうだもんな…」

 

 と、3人の男子生徒も男子生徒Aに同意していた。彼らの顔はごく普通で、彼女が出来そうな顔か出来なさそうな顔かと言われたら出来そうな顔であるが、いないのである。そんな彼らを見てテツマは天智と琴美を思い出した。

 

 だが、すぐにどうでも良くなってきたのでテツマはそのまま通り過ぎていった。

 

「その前に彼女ほしぃいいいいいいいいいいい!!」

「馬鹿野郎!! アレほど言うなと…」

「そういやトレーナー科にカップルいたよな…」

「うわぁあああああああん!! 何しにこの学校に来てんだよぉおおおおおお!!!」

 

*****

 

 テツマは学園内のトレーニングジムにやってきて、そこで軽くボクシングの練習をしていた。テツマは大柄で筋肉質であり、ボクシングをするのには恵まれている体格であったが、それ以上にパンチ力は日々のトレーニングによって人間離れしており、サンドバックを軽々と向こうまで飛ばしていた。

 

 ジム内に設置していた自動販売機でプロテインバーを1個だけ食べて、教室に戻ってきた。

 

****

 

 放課後…

 

「テツマ!!」

「……」

 

 テツマは気の強そうな褐色肌のウマ娘に声をかけられていた。彼女の名前はヒシアマゾン。テツマより1個上のウマ娘で、ウマ娘達が住む寮『美浦寮』の寮長をしている。そんな彼女がテツマに憤慨していた。テツマはそんな彼女に構わず、いつも通り無気力で話しかけた。

 

「美浦寮の寮長さんが一体何の用だい?」

「聞いたよ! あんた今日ジムにずっといたんだってね!」

「ああ。それがどうかしたか?」

 

 ヒシアマゾンの言いたい事を理解したテツマだったが、特に気にすることなく話を続けようとしていた。

 

「ちゃんとお昼ご飯を食べなきゃダメじゃないか!」

「ああ。そう言うだろうと思ってプロテインバー…」

「あれはおやつじゃないか!」

 

 と、ヒシアマゾンの説教が始まり、他の生徒達が何事かと思ってみていた。

 

「食ってねぇよりマシだろ」

「ああいえばこういう…!」

 

 テツマの態度にヒシアマゾンは憤慨するとともに呆れていた。まるで手間のかかる弟のように接している。

 

「まあ、これを機に自炊でもするよ。面倒な事になりそうだしな」

「面倒なことって何だい!」

 

 テツマの言葉にヒシアマゾンがまた憤慨すると、

 

「ヒシアマ姐さんがこいつに弁当を作ってくるかもしれないって事さぁー!!」

 

 と、まるでRPGのエンカウントのように男子生徒4人がやってきた。テツマが昼休憩に遭遇した男子生徒達と同一人物である。

 

「安心しろ。ヒシアマはオレに手作り弁当を作る気はサラサラねぇし、作ると思ってんのか」

 

 テツマの発言と声色に男子生徒達も思わずしり込みをしていて、周りの生徒はこう思っていた。本当にこいつは過去に何が遭ったのだと。

 

「つ、作るんじゃないのか!?」

「そう言ってお前、此間シチーやジョーダンと一緒にトレーニングしてたじゃねぇか!」

「しかもチケットにも構われてよ…」

「どうしてそんなにモテるんだ!!」

「ほざけよ」

 

 男子生徒達の主張をたった一言で突っぱねるテツマ。本当に鬱陶しそうにしていた。

 

「どうせシチーたちにも手料理作って貰ってんだろ!?」

「ねぇし、そもそもあいつら料理出来ねぇらしいぞ」

「ウソだ! オレは認めない!」

 

 これでもかという程がっつく男子生徒達を見て、テツマは憐れんでいた。

 

「ヒシアマ、あいつらに料理を作ってやったらどうだ?」

「そうだねぇ…」

 

 テツマの言葉にヒシアマゾンが考える仕草をすると、男子生徒達が目を輝かせた。

 

「まあ、たまには異性に料理をふるまってみるのも悪くないさね」

「ウォオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 ヒシアマゾンの言葉に男子生徒達が歓喜すると、テツマはやれやれと言わんばかりにその場を後にした。

 

「勿論アンタにも…って、いない! どこだテツマ!! テツマーッ!!」

 

 

 テツマにも食べさせようとヒシアマが声をかけようとしたが、テツマはもういなくなっていた…。

 

 

(自炊するか…)

 

 

 

おしまい

 

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