それはある日の事。太一はオグリキャップ達と一緒に買い出しに出かけていたが、スーパークリークとイナリワンは別行動を取る事になり、太一はオグリ、タマモクロスと共に行動していたが、ある店の前に来ていた。
「凄いな。話は聞いていたが…」
「……」
オグリキャップがあるものを見て感嘆としていて、太一もその横であるものを見ていた。そのあるものとはそう、ウマ娘達のぬいぐるみだった。
「意外と作りもしっかりしとるやんか。原価いくらやろな~」
と、タマモクロスもぬいぐるみをじっと見つめていた。
「まあ、クリークに会長もあるけど、1番売れとるのはオグリやな。あと1つで売り切れや」
そう言ってタマモクロスが見た先にはオグリのコーナーがあり、そこにはぬいぐるみが一つしかなかった。
「流石ですね」
「せやろー。レースだけやのうて、大食い大会でも名を売っとるからなー。まあ、老若男女問わず大人気って訳や」
「それはタマモクロスさんもですが」
「…ありがとな//// あんたのそういう所、嫌いやないで/////」
太一が無表情でタマモクロスを褒めると、タマモクロスは思わず照れくさくなった。
「まあ、ウチもこのオグリやったら欲しいわ。飯代もかからんし…なーんて」
「確かにぬいぐるみなので食事代はかかりませんね」
「なんか妙に話がかみ合っとらん気がするのは、気のせいか?」
太一の言葉にタマモクロスが心配そうにツッコむと太一はタマモクロスを見た。
「大丈夫です。意図は理解しているつもりです」
「真面目に突っ込まんでええわ!」
「折角ですし、オレも買ってみましょうか…」
「え!?」
太一の言葉にオグリキャップが酷く驚いていた。いつもの彼女から出そうにない声に太一もタマモクロスも驚いていた。
「…オグリキャップさん?」
「どないしたんや急に…」
「な、なんでだ。これはただのぬいぐるみだぞ?」
太一がぬいぐるみを購入しようとしている事に狼狽えている様子だった。そんな彼女の意図が理解できない2人だったが、太一はオグリがぬいぐるみを買う事を嫌がっているようだったので、取りやめることにした。
「…冗談です」
「いや、冗談ちゃうやろ! オグリも急にどないしたんや!」
急に不穏な空気になりだした為、タマモクロスが何とか場を取り繕うとしていた。
「その…なんだ…。太一がいても走ったりはしないんだぞ?」
「まあ、そりゃぬいぐるみやしな」
「飯代もかからないが…いや、飯代はちゃんと自分で出すぞ。負担だってかけない」
オグリキャップが落ち込んでいるのを見て、太一はある事に気づいた。
「…仰りたい事が分かりました」
「!?」
「ご本人の前で大変失礼な事を致しました。申し訳ございません」
太一が急に謝るので今度はオグリキャップが慌てだした。
「いや、私はそういうつもりで言ったわけでは…」
「ご本人がいるのにぬいぐるみの話をされるのを嫌がる方がいらっしゃるというのを聞いたことがございまして…」
「あー…」
太一の発言にタマモクロスもようやくオグリキャップが渋っていた理由が分かった。
「オグリ。ぬいぐるみを買ったくらいでアンタの事を見限ると思うか?」
「それはそうだが…」
と、微妙な空気になった次の瞬間、クリークとイナリがやってきた。
「おうおうどうしたんだ三人とも。湿気たツラして」
「イナリ…」
「それがですね…」
太一が事情を説明するとイナリはタマモクロスと同様、困り顔になったがクリークは理解していた。
「オグリちゃんはもっと太一くんに見て欲しいんですよ~」
「?」
クリークの言葉に太一が反応すると、オグリが少し照れくさそうにする。
「ク、クリーク…////」
「まあ、簡単に言えばぬいぐるみに嫉妬しとったって事やな」
「タ、タマ!///」
タマモクロスもフォローするとオグリキャップがもっと照れだした。そして太一はオグリキャップを見つめると、オグリキャップは申し訳なさと恥ずかしさでずっとモジモジしていた。
「その…済まない…大人げないとは思っていたのだが、太一が私よりもぬいぐるみの方に行ってしまったらと考えたら…」
「オグリさん」
太一は無表情でオグリキャップの顔を見ると、オグリは太一に怒られると思って身構えていた。
「ぬいぐるみはあくまで応援の形です」
「!」
「寧ろ、あなたもですがタマモクロスさん達にも日ごろからお世話になっています。オグリさんが考えている事には決してなりません」
太一の言葉にタマモクロス達も口角を上げた。
「せやってオグリ」
「太一の言う事を信じろよ」
「そうですよオグリちゃん。だから大丈夫です」
「みんな…」
オグリキャップがそう呟いて、後ろを向いてぬいぐるみを見ようとしたが既にぬいぐるみがなくなっていた。
「!?」
「どうやら話している最中にどなたか購入されたようですね」
太一がそう喋ると、オグリが困った顔をして太一の方を見た。
「す、済まない太一。ぬいぐるみが欲しかっただろう…?」
「いえ、もう必要ございません」
「だが…」
オグリキャップが言い返そうとした次の瞬間、太一がオグリキャップの顔を見てこう言った。
「オレには本物(あなた)がいるからです」
「……!」
太一の言葉にオグリキャップの目が大きく開き、タマモクロス、イナリワン、スーパークリークの3人が顔を真っ赤にしていた。そう、傍から聞けばプロポーズとも思われてもおかしくなかったからだ。
そんな3人にはお構いなしに太一は話を続けた。
「クリークさんとイナリワンさんも来られたので、買い出しの続きを行いましょう」
「…ああ!」
太一の言葉にオグリキャップは一瞬面食らったが、すぐに嬉しそうに返事をした。そして買い出しを再開しようとする太一とオグリは顔を赤くしている3人に気づいた。
「どうかされましたか?」
「いや、その…なんていうか…////」
太一の言葉にイナリが視線をそらしてモジモジしていると、タマモクロスが憤慨した。
「見とるこっちが恥ずかしいわ!! プロポーズやんけ!!//////」
タマモクロスが思わず放ったツッコミにオグリキャップが一瞬考えると、彼女も顔が真っ赤になった。
「い、今のはプロポーズだったのか…!?//////」
「申し訳ございませんが違います」
オグリキャップが太一に聞いたが、太一はまた無表情で言い返した。
「プロポーズであればきちんと場所とタイミングを…」
「真面目か!!/////」
「……//////」
太一の言葉にタマモクロスがまたツッコミをしたが、オグリキャップはプロポーズという単語にかかってしまい、完全に太一の顔が見れなくなってしまった。
「あの、オグリさん…」
「太一…」
「はい、申し訳ございません」
「謝らないでくれ。ただ…/////」
次の瞬間、オグリキャップの耳がへにゃっと落ち込み、身体はプルプル震わせていた。
「暫くこっちを見ないでくれ…/////」
ぬいぐるみに嫉妬していた恥ずかしさや、プロポーズという単語の気恥ずかしさと、太一にちゃんと必要とされていた事の嬉しさがぐちゃぐちゃになってしまっていた。
それによりタマモクロス、クリーク、イナリワンが衝撃を受け、太一はオグリに悪い事をしてしまったと反省するのだった。
ちなみに買い出しは予定通り行われた。
おしまい
おまけ
「またテストを最後まで書ききれなかった…」
オグリキャップとタマモクロスが話をしていたが、オグリがまたゆっくり回答していたせいでテストを最後まで答えられずにいた。そんな彼女を見てタマモクロスは呆れていた。
「あんなぁ。アンタはのんびりしすぎやねん」
「そ、そうだな…」
タマモクロスもオグリのマイペースさには良い所もあると思っていたが、直すべきだとも考えていた。するとタマモクロスはある事を考えていた。
「…にしてもこのままのペースでやっとったらいつか赤点やで」
「そうだな」
「そうなったら…太一もホンマにぬいぐるみの方に夢中になるかもしれへんで」
「」
数日後…
「この問題分かる人…って、オ、オグリさん…」
オグリ達がいる6年1組のとある授業、先生が誰かに質問しようとしたが、オグリキャップが大きく手を上げていて、それを見た先生が困惑していた。
「その…最近授業を真面目に聞いてくれるのは嬉しいけど、何があったの…?」
「恥ずかしいから聞かないでくれ。あと、私に答えさせてくれ」
「オグリ!! うちが悪かったって!! ホンマに堪忍してぇや!!」
数年同室だったが、6年生になって親友の意外な一面を見たと同時に危機感を覚えるタマモクロスなのであった…。
おしまい