ウマ娘ハーメルンダービー   作:ダシマ

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第17話「屋上の常連たち」

第17話

 

 ある日のトレセン学園。この時間帯は昼休憩だったが…。

 

「……」

 

 生徒会副会長であるナリタブライアンは目の前の光景にうんざりしていた。というのも、屋上に沢山の生徒達がいて、そこで昼食を食べたり談笑していたからだった。

 

「チッ…。どうしてこんなに混んでるんだ」

 

 屋上はとても見晴らしがよく、生徒が誤って飛び降りたりしないように自殺対策をこれでもかという程しているため、生徒達も安心して利用できるのだ。

 

 だが、結果的に皆考える事は同じで、ドラマやアニメの影響で皆屋上に来ているのだ。元々人と群れる事を好まないブライアンにとってはこんな所で休憩などできなかった。最も、屋上が改修されるまでは人気のない場所で生徒達もあまり来なかったのだが、先述の通り、改修された事で生徒達が来るようになったのである。

 

「屋上なら誰も来ないと思っていたのに…」

 

 ブライアンの後ろからそう呟くウマ娘の名前はアドマイヤベガ。ブライアンの1個上の先輩で、彼女もまた人と絡むことを嫌っていた。そしてナリタタイシンもやってきて、人の多さに辟易していたが、他に行く当てもなかったのか、ため息をつきながらこう言った。

 

「…まあ、昼寝くらいは出来るでしょ。あっちで昼寝するから邪魔しないで」

「フン。言われなくても私も別の所で寝る」

「そう…」

 

 こうしてそれぞれ昼休憩を過ごした訳だが、話し声がでかい上に、ウマ娘という事もあって聴覚も人間の倍以上あったので耳障りでしかなかった。

 

****

 

 その日の放課後

 

「という訳で仮眠室の設置を要求する!」

 

 ブライアンを筆頭にタイシン、アヤベが生徒会室でルドルフに直談判していた。ルドルフとグルーヴはブライアンが珍しくやる気を出している事に面食らっていたが、グルーヴがすぐに冷静を取り戻した。

 

「言いたい事は分かったが、少し落ち着かんか」

 

 そう言ってエアグルーヴが落ち着かせるが、ブライアン達の熱が収まる事はなかった。

 

「今すぐ用意しろ。一秒でも早くだ」

「…貴様。まさかとは思うが、ナリタタイシンやアドマイヤベガを利用して、サボれる場所を作ろうしているんじゃないだろうな?」

「黙れ。ファインモーションの姉を呼ぶぞ」

 

 ナリタブライアンが鋭い眼光を放ちながらエアグルーヴにそう言い放つと、エアグルーヴは青ざめた。ブライアンが怖いからではなく、ファインモーションの姉の単語に青ざめていた。何が遭ったかはまたの機会に。

 

「これは死活問題なのよエアグルーヴ。あと、仮眠室の枕と布団はふわふわのものにして頂戴」

「ていうか、静かに昼休みを過ごしたい生徒だっているんだけど。それは無視するの?」

 

 アヤベとタイシンもブライアン側についてメンチを切ると、グルーヴはどうするべきか困惑していた。

 

「まあ、落ち着くんだ3人とも」

「ルドルフ会長…」

 

 シンボリルドルフの言葉にブライアン達は彼女の方を見た。グルーヴとは対照的に冷静を保っている。

 

「仮眠室を設置するというアイデアは私も良いと考えている」

「!?」

 

 ルドルフの言葉にグルーヴが驚いて、ブライアン達がやや嬉しそうな顔をすると、ルドルフが静かに目を閉じた。

 

「実際に君たちと同じように静かに過ごしたい生徒もいて、騒音が原因でゆっくりできないという声も上がっている。ましてや先生方からは午後の授業で居眠りする生徒が増えてきて、食事をした後ゆっくり休めてないのではないのかという声も上がっているくらいなんだ」

 

 ルドルフの声を聴いて、ブライアン達の目は希望に満ち溢れていて、グルーヴは本当に大丈夫なのかと困惑していた。

 

「そ、それじゃ…」

「ただ…」

「!?」

 

 ルドルフの「ただ」という言葉に3人のテンションが一気にがた落ちして、ブライアンはすぐにルドルフに掴みかかった。

 

「何が問題なんだ! 言え!!」

「だから落ち着かんか!!」

 

 エアグルーヴがツッコミを入れると、ルドルフが気まずそうに視線をそらしていた。

 

「…もし仮に仮眠室を作る事になっても、予算を考えなけれならない上に工事もある。時間はものすごくかか」

「いや、そんな豪華じゃなくても良いから。とにかく寝れる場所だけ頂戴」

「いや、フワフワは欠かせないわ」

「何そのふわふわに対するこだわり!」

 

 一刻も早く安息の地が欲しいタイシンに対し、ふわふわの要素だけは欲しいアドマイヤベガ。早くも仲間割れしそうな感じがしてきた。それに対してルドルフは困った顔をした。

 

「…理事長が新しいものは新しく作らないと気が済まない性格でね。タイシンの意見が通るのは難しいだろう」

 

 ルドルフの言葉にタイシンの額に青筋が立った。そして一言思った。めんどくせえなと。

 

「まあ、私も出来る限り要請してみるが…もし無理なら他の方法を考えよう」

「頼むぞ」

「もうこの際時間かかってもいいけど…」

「ふわふわを忘れないで頂戴」

 

 ブライアン達のガチな姿勢にルドルフとグルーヴは共に困惑していたと同時に、それなりに切実なんだろうなと思っていた。

 

***

 

 そんなこんなでルドルフは理事長達に頼んでみると、反応は予想外だった。

 

「謝罪ッ!! 今まで気づかなくて悪かった!! 早急に作らせるッ!!」

 

 理事長である秋川やよいから猛烈に謝られ、ルドルフは少し困惑したと同時に自分も生徒達の声をちゃんと聴かねばと反省していた。

 

 仮眠室…もとい『レストルーム』は一週間で完成した。思っていた以上に要求が上がっていたのか、大急ぎで完成させた。

 

 こうしてブライアン達は安息の地を手に入れたのかと思いきや…。

 

 レストルーム運用初日。行列ができていて、ブライアン、タイシン、アヤベは唖然としていた。

 

「考える事は皆同じだったという事だな…」

 

 一緒にいたシンボリルドルフが苦笑いしながらそういうと、3人は何も言わずにそのまま後ろに倒れた。

 

「ブ、ブライアン!? ベガにタイシン! しっかりするんだ!!」

 

 

 彼女たちの戦いはまだまだ続く…。続くったら続く。

 

 

おしまい

 

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