ここはトレセン学園。正式名称は「日本ウマ娘トレーニングセンター学園」と呼ばれているが、長いのでトレセン学園と呼ばれている。
トレセン学園などを管理している機関『URA』が管轄するものでは日本最高峰のレベルとされており、生徒数2000人以上在籍している。
国民的スポーツ・エンターテイメント「トゥインクル・シリーズ」への出場と勝利を目指しているが、その華やかさとは裏腹に生徒も教職員も地方では異次元レベル扱いされるようなエリートたちがしのぎを削る戦場でもあり、活躍できるのはほんの一握りで、ケガや戦績の悪さが原因で学園を去ることになった者も少なくはない。
基本的には全国から小学校を卒業したウマ娘が筆記試験・実技試験・面接を経て入学する一方で、中学進学後に編入入学する者、飛び級する者、試験を経ずに地方からスカウトされ入学する者、中には面接で合格を貰うという稀なケースも存在している為、基本的に実力があれば入学できるというものだった。
また、選手になる以外の進路も用意されており、サポートスタッフ等の知識を学べる研修コースも存在しており、本作に至っては男子生徒や普通科というものが存在する。
この物語は、そんなトレセン学園に在籍する生徒達の愛と勇気と誇りを持って戦い抜く物語である…。
ある日の事だった。
「天晴!! 普通科の一丈字飛鳥が警察から感謝状を貰ったので、トレセン学園でも表彰するぞ!!」
「……」
トレセン学園の体育館。ここに全校生徒が集まっていたが、壇上に一人の生徒が表彰されていた。彼の名前は一丈字飛鳥。普通科に通っている4年生だった。原作では中等部・高等部に分けられていたが、本作では1年生から6年生という位置づけになっていて、学年も本作オリジナルである。
トレセン学園の理事長である秋川やよいは飛鳥の顔を見てにこやかとしていたが、飛鳥はどこかばつが悪そうにしていた。そして生徒達も飛鳥を見ていた。
暫くして、飛鳥は自分の教室に戻ってきたが、まだ浮かない表情をしていた。
「あれ、オレ一人じゃないんだけどな…」
事の顛末はこうだ。飛鳥は友人2人と一緒に買い物に出かけていたが、その時暴漢がウマ娘達に絡んでいたのだ。ウマ娘は身体能力も高いので男なんてイチコロなのだが、そのウマ娘達は恐怖で身動きが取れず、かといってやり返せば過剰防衛とみなされて罰せられてしまう可能性があったのだ。
異変に気付いた飛鳥と友人2人は助けようと動いたが、暴漢が飛鳥の方を見ていちゃもんをつけてきたのだ。友人2人は言い返そうとしたが、飛鳥が止めて自分が注意を引き付け、その隙にウマ娘達を助けるように指示を出したのだ。
そしてこの一丈字飛鳥という男はエスパーであり、現在も超能力を使って暴漢を退けようとしたが、使う前に存在を気づかれてしまい、やむを得ず交戦する事となったのだ。
だが、基礎戦闘力もあったので、すぐに暴漢を撃退して警察に引き渡して…今に至る。
「飛鳥くんの指示のお陰で助かったんだから…」
「そうそう」
と、一緒にいた友人で中学時代からの同級生である奈良川京と林日向が飛鳥を労うと、飛鳥はそれでも困惑していた。
昼休憩。飛鳥は京達とランチを取ろうとしていたが…。
「探したぜ飛鳥!!」
と、一人のウマ娘に声をかけられた。
「ウオッカ!」
今年入った新人のウマ娘で、カッコよさを追い求めているウマ娘である。
「聞いたぜ。流石オレが見込んだトレーナーだ!」
「ありがとう。でもトレーナーじゃないんだよな…」
というのも、飛鳥は普通科に所属しているものの、特にトレーナーを目指しているわけではない。その理由はまたの機会に説明しよう。
「これから昼飯か!?」
「そうだけど…」
「だったらさ! 一緒に食べようぜ!」
「いいよ。あ、でも…」
一緒に昼飯を食べるというウオッカの約束に対してOKを出した飛鳥だったがある事を想いだした。すると、それを察したのか日向が話しかける。
「飛鳥くん。椿は今日クラスの子と食べるって言ってたから…」
「そっか」
そう。飛鳥にはもう一人中学からの同級生の女子生徒がいるのだが、彼女とはクラスが違うのである。林椿と言って日向の双子の妹である。
「じゃあ行こうか」
「おう!」
こうしてウオッカと昼食を食べようとしたが、
「しつこいって言ってんのよ!!」
「!?」
という一人のウマ娘の怒鳴り声が聞こえた。
飛鳥「あれは…」
ウオッカ「スカーレット!?」
飛鳥が現場に駆け付けると、ツインテールで発育の良いウマ娘が男子生徒達に絡まれていた。
「いいじゃんか。オレ達と昼食取ろうぜ?」
「ちょっとくらいいいじゃんか」
「嫌よ! あんた達の目つき嫌らしいから!」
事態を理解した飛鳥はまた嫌な予感がしたが、絡まれている以上放っておくわけにはいかなかった。
「全くしょうがねぇ奴だな…」
ウオッカが助けに行こうとすると、飛鳥が待ったをかけた。
「オレが前に出るから、お前は後ろにいてくれ」
「飛鳥…」
飛鳥がウオッカにそういうと、困った顔をした。
「お前が助けようとすると意地張るからさ」
「そ、そうだな…」
ウオッカとスカーレットは同期であるのだが、ウマが合わないのか事あるごとにいつも張り合うのだ。だが、流石にお互いが困っている時は助けようとするのだが、意地を張ってしまうのだ。
そして飛鳥が前に出て声をかけた。
「スカーレット。探したぜ」
「!」
飛鳥が演技をするように呼び掛けると、スカーレットや男子生徒達は飛鳥達を見た。飛鳥を見るなり、男子生徒達はイヤそうな顔をしていた。
「飛鳥!」
「チッ…! 一体何の用だよ陰キャ野郎!!」
男子生徒Aがそう言い放つと、飛鳥が苦笑いした。
「何だと!? 飛鳥は陰キャじゃねーぞ!?」
「そうだそうだ!!」
男子生徒Aの言葉にウオッカが噛みつくと、京も乗っかる。
「いいよウオッカ。そんな事言わなくても。スカーレット、待たせて済まなかったな。行こう」
「え、ええ…」
飛鳥がそう言って日向の方に視線を配ると、スカーレットが行こうとしたが男子生徒がスカーレットの手を掴んだ。
「誰が行っていいって言ったよ」
「!?」
男子生徒達がスカーレットを離さずにいると飛鳥は無表情になった。
「おい。人助けをしたか知らねーがな。ウマ娘を横取りしようとしてんじゃねぇよ」
「横取り?」
「ああそうだ! オレ達はトレーナーになる為にこの学校に来てるんだ! お前みたいな遊んでる奴にウマ娘が寄られると困るんだよ!!」
と、自分たちは如何にも夢に向かって頑張っているアピールをするが、そのアピールは飛鳥達にも周りにいるウマ娘達にも伝わらなかった。
「で、無理やりウマ娘の手を引っ張って自分の元から離れないようにする訳ですか」
「それが分かったら、ウオッカとそこにいる女子生徒…」
男子生徒Bが日向の方を見たが、日向が自分のスマホで自分達を撮影している事に気づいた。そう、スカーレットに乱暴している証拠を押さえる為に、日向に撮影を依頼するように目で指示を出していたのだ。
「な、何を撮ってやがる!!」
「これで証拠は揃いました。女子生徒を襲ったと言ってこの証拠を提出すれば大方信じてくれるでしょう」
「なっ! 返せ!!」
男子生徒達がスカーレットの手を放して、日向からスマホを奪おうとすると、ウオッカが日向をガードした。
「京はスカーレットを頼む!」
「分かった! こっちだ!」
「え? あ、はい…」
京がスカーレットの手を引っ張って安全な所に避難させると、飛鳥は4人いた男子生徒達のうち、襲い掛かってきた3人を返り討ちにした。
「なっ…! なっ…!」
飛鳥は残った男子生徒を見つめたが、その表情は殺気に満ちていた。
「大人しく引き下がればこれ以上罪は重くなりませんよ。如何なさいますか?」
「ひ、ひぎィイイイイイイイイイイイ!!!」
と、男子生徒は1人で逃亡していった。
「おーい」
「?」
クラスの友人と食事に行ってた筈の椿が先生と一緒にやってきた。
「椿!!」
「先生を呼んできてあげたわよ」
「あ、ありがとう…」
こうして昼休みのトラブルは幕を閉じたが、飛鳥はまた事情聴取に時間を取られると肩を落とすのだった。
「フッ…。お前のこれからの伝説、遠くから見守らせて貰うぜ!」
と、トレセン学園一奇天烈なウマ娘、ゴールドシップがかっこつけながら見守っていたが、この時点で飛鳥と目が合っていて、飛鳥は冷めた目で彼女を見つめるなり、すぐに背を向けて去っていった。
「ちょ、ノリが悪いじゃねーか! 待てよ飛鳥~~~~!!!!!」
ちなみに一話完結方式でお送りします。
おしまい