ある日の事。雑誌に滅茶苦茶仲良しと記載され、周りからの温かい目に耐え切れなくなったウオッカとスカーレットは絶交することを決意。どうせ長続きしないとトレーナーである飛鳥達は踏んでいて、案の定そうなったが、仲裁しようとしていたツインターボによって、話は妙な方向に流れていく…。
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「2人ともむしはよくないぞ! ターボと一緒に仲直り…」
ウオッカとスカーレットがずっと無視している所を見ていたターボはターボなりに考えて仲直りさせようとしていたのだが、持ってきたのがけん玉だった。
で、何とか仲直りが出来たので結局必要なくなったという。
「ありがとうターボ。何とかなったわ」
飛鳥はターボの事を察して一言声をかけると、
「何とかなったの? ウオッカとスカーレットはもうケンカしない?」
「当分は大丈夫そうだ…」
ターボの言葉に飛鳥が苦笑いすると、一緒にいた京がターボが持ってきたおもちゃ箱に目を付けた。
「それはそうとお前…それは一体なんだ?」
「あ? えっとね。これで一緒に遊んで仲直りをさせようって思ったんだ!」
ターボの言葉に飛鳥や京は苦笑いした。恐らく自分の方が上手いってまた言い争いになると。
「ありがとう。お前の気持ちは十分に伝わった…。後は任せな」
「え? うん。分かった…」
「それにしてもけん玉かー。懐かしいな。ちょっと貸してみてくれ」
そう言って京がけん玉をやったのだが、上手く行かない。
「ちょっと何やってんのよアンタ」
「あれ、昔は出来たんだけどな…」
あまりにも失敗するので椿に呆れられるが、京は諦めずにやるが、上手く行かない。
「ターボに返してやりな」
「いや、ちょっと待ってくれ。なんか出来そうなんだって」
と、京は諦めずにやり続けると、ウオッカとスカーレットが飛鳥達の方を見たので、飛鳥は話がややこしくならないように超能力を使おうとしたが、
「一体何やってんだよ」
「けん玉?」
まるで何かを見透かしたかのようにウオッカとスカーレットが食いついてきた。飛鳥はまあ、また後で何とか出来ればいいかと思い、超能力を使うのをやめた。京も人が増えてきたのでやりづらくなったのか…。
「あーダメだ。あ、そういや飛鳥お前出来たよな」
「ここでオレに話振るんじゃないよ」
「ちょっとやってみてくれよ!」
そう言って京が飛鳥にけん玉を渡すと、飛鳥は困惑していた。
「オレも長い間やってないからな…」
とか言いながら飛鳥はもしかめを軽々とやると、途中でけんをし、その次にけんフリップをかけてけんを行ってそこで止めた。それを見て椿は困惑していた。
「アンタも結構わざとやってるでしょ」
「……」
椿にそう突っ込まれると飛鳥は視線をそらしたが、一応主人公である以上は盛り上げないといけないのである。ウオッカとスカーレット、ターボは目を輝かせた。
「すごいすごーい!! 今のどうやったの!?」
「え? まあ、これをこうしてだね…」
と、ターボたちがけん玉に夢中になっているすきにウオッカとスカーレットがこれ以上無茶をしないように超能力で暗示をかけることにした。
これで話が一件落着になるかと思われたが…。
「なあなあ! オレにも貸してくれよ!」
「何言ってんのよ! あんたじゃ無理だから!」
「ターボやりたい! ターボが持ってきたんだから!」
とまあ、誰がけん玉をやるかでもめだしてしまい、飛鳥達は困惑していた。
「私知らないわよ」
「大丈夫だ。オレが責任取るから帰っていいぜ」
椿がわざと皮肉を言って見せるが、飛鳥は元から責任感は強いので全く動じなかった。そして椿もそう言われてばつが悪くなったのか、残る事にした。
「じゃあとりあえずジャンケンな」
すると3人がじゃんけんをしたが、ウオッカが負けた。
「ふ、ふん! オレはスカーレットみたいにがっつかないから、先にやってもいいぜ!?」
「精々言ってなさい!」
とまあ、ターボとスカーレットがけん玉をやる事になったが、思った以上に上手く行かなかった。
「お、思った以上に難しいわね…」
「ねえねえ! さっきのどうやったの!? 教えて!」
ターボが飛鳥にけんフリップのやり方を教わろうとしていた。
「ちょっと貸してみな。まずこうだろ?」
ターボからけん玉を受け取った飛鳥はまた同じ技をやって見せた。
「で、ここからが解説だ。投げ方も気を付けないといけなくて、ちゃんと玉が受け取れるように一回転させるようにな」
と、飛鳥が丁寧に教えると、ターボが再びやり始めた。前よりかは進歩しているが、球を乗せることに苦労しているようだった。
「スカーレット。いい加減代われよ!」
「ま、まだまだ…」
スカーレットが中々交代しないのでウオッカも苛立ち始めたが、飛鳥の一声で交代することとなった。だが、ウオッカも中々上手く行かない。
「くっそー!!」
「そんな力任せで出来る訳ないでしょうが! 代わりなさい!」
「まだ1分しかやってねーんだぞ!」
とまあ、言い争いは続いたが何とか収まり始めていて、飛鳥も安心していた。
「一体何をしているんだ!」
「エアグルーヴさん」
生徒会副会長のエアグルーヴがやってきたが、けん玉をやっている事に眉をひそめていた。
「学園に必要ないものを持ってくるんじゃない! 没収だ!」
「えー! ターボのけん玉~!!」
と、エアグルーヴがけん玉を没収しようとしていたので、ターボが抵抗しようとするが聞く耳を持たない。
「すみませんグルーヴさん。ウオッカとスカーレットの喧嘩を止める為に貸して貰ってたんですよ…」
「そんなの理由にならん!」
飛鳥が何とか許して貰おうとしたが、これもダメだった。すると京がある事に気づいた。
「そういえばグルーヴ副会長ってけん玉やった事あります?」
「ある訳ないでしょう! 誰だと思ってんのよ!」
京が笑ってごまかすようにグルーヴに質問するが、椿が諫めた。だが、グルーヴとしては椿の発言に引っかかっていた。
「いや、けん玉くらいは知っているが…」
「え? もしかして副会長ってけん玉下手なのか?」
ツインターボも余計なことを言い出したので、ウオッカとスカーレットが青ざめた。こればっかりは2人も流石にまずいと判断し、恐る恐るエアグルーヴを見ると、若干不機嫌になっていた。
「出来ない事は恥ずかしい事じゃないぞ!?」
と、何故かエアグルーヴはけん玉が下手糞という事で話が進もうとしていたので、グルーヴはこめかみを押さえた。
「ええい! そういう話じゃないだろう! とにかくそれは預かるからな!」
グルーヴがターボからけん玉を取り上げようとするが、周りからはけん玉が出来ないというレッテルを貼られているような気がしていた。そして飛鳥もこの空気を何とかしないといけないと考え、超能力を使おうとしたが…。
「…いいだろう。そこまで言うなら見せてやろう」
「え?」
エアグルーヴがけん玉が下手でない事を証明しようとしていたので、飛鳥達はぎょっとした。
「けん玉を成功させたら大人しく引き下がるんだ。いいな?」
そう言ってエアグルーヴがけん玉を披露しようとしたが、すぐに失敗してしまい、飛鳥は即座に超能力を使って強制的に何とかした。
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「危ない所だった…」
飛鳥、京、日向、椿が下校すると、飛鳥がそう呟いた。
「超能力があるとはいえ、やっぱり色々疲れるわ…」
「すぐに撤収しないからよ…」
「それはそれで話がすぐに終わるんだよ…」
と、これからどうするか話し合いながら4人は帰路に就くのだった。
おしまい