ずっと胸の奥にある感情。目を逸らし、隠して、出してはいけないと思ったもの。
それはきっと独善的で、醜悪で、許されないもの。
「ごめん、なのは」
あぁ、でも……
「今回ばかりは無理だ」
このわがままだけは、もう我慢できない。
「僕はもう、君の道を応援できない」
♢
その言葉を聞いて、ふざけるなと思った。前々から思ってたけど、やっぱり貴方はいつもそうやって自分を蔑ろにする。
「わかったよ」
それに、ソレは貴方が言っちゃいけない事でしょ。他の誰でもない、貴方がソレを言わないでよ。
「受けて立つ、真っ向から」
私の本気をぶつけてあげる。
♢
雪の降るあの事件から一年と数ヶ月、〝彼女〟はもう一度翼を広げた。
「いやぁ、今日は我々家族を呼んでくださりありがとうございます。リンディさん」
「いえ、そんなことありませんよ士郎さん。誰よりも皆さんがなのはさんの身を案じていたのは同じ親の身として理解しております。これくらいなんて事はありません」
「ははは……あ、こちらお茶っ葉と家で作った菓子です。恐らく長丁場になると思うので良ければ」
「まぁ、わざわざありがとうございます」
今日はなのはが怪我から復帰し、〝慣らし〟の為という建前で〝模擬戦〟が行われる。そこに訳合って普段は関われない我々高町家一同もご一緒させてもらった。
「あの、士郎さん……あの二人の事なんですが」
「うん、クロノ君が心配するのは分かる。けど、これはもうあの二人が取り決めた事だ。外野がとやかく言うことこそ野暮だろう」
「ですが!」
「確かにやり過ぎだと思う所もあるが、そこまで追い詰めたのも我々だ。なら、どっしり構えて結果を見守る他あるまい?」
「……はい」
「よし、男は度胸だ! やはり君も中々いい男だな!」
「恐縮です」
「父さん、あんまりクロノを困らせるな。すまんな? 騒がしくして」
「大丈夫です……恭也さんも、いいんですか?」
「ん? あーまぁ、心配してないと言えば嘘だけど、それでもこうしないときっと〝終わらせる事〟も〝もう一度始まらせる事〟も出来ないと思うんだ。だから、どうあれ受け止めようと思う」
そう言って、彼はモニターに映る〝少年達〟に目を移した。
♢
「こうやってなのはと模擬戦するのは本当に久しぶりだね」
金髪の少年──ユーノはなのはに語りかけながら戦場を見渡す。
見渡す限りの海と、廃墟同然にさびれた高層ビルが点在するフィールド。
なのはは手に持つ赤い宝石を見ながら答える。
「そうだね、出来たらユーノくんとは背中を預け合うチーム戦とかが良かったけど、残念だ」
「そこはほら、色々あったからしょうがないんじゃない? ……ねぇ、確認の為に聞くけどさ」
穏やかな会話、緩やかな面立ち、まるで日常のようでけれども一切合わせなかった視線が今ぶつかる。
「今でもあの〝約束〟は覚えてる?」
「うん、この一年とちょっと……1度たりとも忘れた事なんてなかったよ!」
両者は飛び下がり、各々の
「あの約束を言われた時私がどんな気持ちになったか、ソレを他でもない貴方に……ユーノくんに言われて、どれだけ心の中がドス黒い気持ちでいっぱいになったか……」
「そうか、それは悪かったね。でも、僕にはコレをやり通さないといけない義務がある。例え君に許されないと分かっててもね」
「ッ……! どうあっても、意見を変えるつもりは無いみたいだね」
「うん、そろそろ模擬戦を始めよう。今からこのコインを指で弾く、それが落ちきったら開始。シンプルでしょ?」
「わかった」
私が返事をするとそのままピーッンとコインを弾くと、彼は構えをとる。
以前のBJに加えガントレットや肘当てに膝当て、私の知ってる彼の戦闘では無いのが始まる前から分かる。
(この距離で始めたのは失敗だったかも、ここじゃ多分)
静寂に、水しぶきが〝広がる〟。
(一息だッ!)
ガキィンッ!
槍と鉄拳が激突し、甲高い音が鳴り響く。
「シュート!」
二撃目の拳を避けつつ返しに振り払い、そのまま魔力弾を数発射出し牽制。距離を離しながら自分も一気に高さをあげる。
スフィアを六つ形成し、自身の周りに六角形が描ける形に配置する。そこからレーザーを放ち彼を〝捕獲する〟。
(ユーノくん相手にバスターを撃つなら出し惜しみしちゃダメ、あの〝盾〟に何度私が助けられたかを思い出すんだ)
愛機に撃鉄を起こし、カートリッジ三発を一気に使用した。
「ディバイン、バスター!」
回避出来ない空間に追いやっての砲撃、私の得意戦術。今回は相手の力量も分かってるから出し惜しみも無し、いくら彼でもブーストも無しにコレを受け切る術は無い。
「────え」
爆煙が晴れそこに見えたのは〝無傷の彼とヒビが入っているシールド〟だった。私は彼に対して侮りも侮辱も一切が無く寧ろ賞賛を送っていた、ただ純真たる事実として彼の護りでは私の攻撃を防げないはずだった。故に反応が1歩遅れた。
【マスター!】
「しまった!?」
愛機の呼び掛けで回避するも間に合わず、私は左右から飛んできた魔力弾をまともに受ける事になった。
負けじと後退しながら砲撃するもその場しのぎ程度の魔法は、彼の盾の前じゃ子供の児戯にすら及ばないだろう。
あぁ、あんな約束さえ無ければ今頃きっと私は笑顔だったろう。
(いやだ、絶対いやだ)
──離れたくなんかないよ。
心には焦りの色が零れた。
♢
「なにか、おかしくないかコレ?」
まずそう発言したのはヴィータだった、ソレに私も同意した。
「うん、私もこの試合どこかおかしいと思う」
「フェイトもか?」
「うん……ユーノが〝魔導書型デバイス〟使ってたり、戦闘スタイルが以前とはまるっきり違ってたりで変わった事があるのはまだいいんだ。けど、それにしても二人の様子が何時もと比べておかしい」
ユーノはたかが模擬戦であんな、鬼気迫る顔で戦う人じゃなかった。
なのはは例え押され気味になっても、あからさまに焦りが顔に出るような人じゃなかった。
この戦いは私達の知らない〝ナニカ〟が二人にある、ソレも重大なナニカが。
「そこら辺を知ってそうだけど、ずっと黙ってるそこの執務官どのはどうなんですかい? 思えば最初っからどーも、イヤそーな顔してましたけど」
「ヴィータ、流石にその言い方はクロノ君に失礼だよ」
「いいんだはやて、実際僕はヴィータが言う通りあの二人の不調の原因を知ってるからな。知ってて、この模擬戦も認めた」
「なんやて?」
「そもそもとして魔法の慣らしの為だったら別段退院する時の検査の段階でしてるから、そういう意味ではこの試合に意味は無い。けど他に意味があるからコレをやっているんだ」
「ねぇお兄ちゃん、その他の意味ってなに?」
私がそう問うと一瞬目を逸らしたと思えば、しっかりとこっちに向き直し心底嫌そうな顔で答えた。
「なのはが入院してすぐ、ユーノはとある賭けをなのはに持ちかけたんだ」
「〝賭け〟?」
「そうだ、内容は簡単に言うと〝退院後に戦い、勝った方の言う事をなんでも一つ聞く事〟というシンプルな物だ」
クロノが言う通りその賭けとやらは子供が友人同士とゲームをするかのような、あやふやでけど効力が強そうな、ユーノが持ちかけたにしては随分と幼稚っぽさを感じるものだった。
「それの何が二人をあそこまで……」
「単純にその時ユーノが付け加えた条件が条件だったからだろうな」
「あの天然バカ二人があそこまでなるって、どういう条件だよ」
「まず一つ、ユーノが勝った場合──なのはには管理局を抜けてもらい、魔導師としても完全に引退してもらう事」
「は?」
「もう一つ、なのはが勝った場合ユーノはなのはの要求をどんな事だろうと受け入れる事。この条件に際限はなく、死ねという要求も受け入れなければいけないこと。以上二つがこの〝賭け〟の概要だ」
率直な感想として、まずどれに怒ればいいか分からなかった。ふざけた賭けを持ち出したユーノに怒れば良いのか、ソレにYESと答えたなのはに怒ればいいのか、それともそれらを知っておきながらそのままにしたこの兄に怒ればいいのか。怒りたいものが一気に増えると困惑して人は怒れなくなるらしい、また一つ賢くなった。
「ってちがァう!? え、この戦いにユーノ勝ったらなのは管理局ってか魔導師辞めちゃうの?! てかなのはが気が狂ってふざけた事言い出さないなんて確証も無いのに何言ってんのユーノは! そしてなんでお兄ちゃんは二人を止めてないの!?」
「……コレは二人の問題だ、僕が口出していい案件じゃない」
「だとしてもせめてそのふざけた賭けは止めるべきでしょ! 何考えてるの!」
「コレをしなかった場合、ユーノは壊れる。だからそのままにしたんだ、フェイトだってあの時のユーノがどれだけ限界ギリギリだったか知ってるだろ」
「そ、それはそうだけど」
あの頃のユーノはなのはが墜ちた事の原因を自分と決めつけた、他にも色んな理由があった事は理解してる。様々な要因が重なった結果なのも分かってる。その上で〝決定的な要因は自分と出会ってしまった事だ〟と結論付けた。
賭けの最後の条件は恐らくその事への贖罪も込めてなんだと思う、けどそんなのはあんまりにも悲しすぎる。
出会いを否定するというのはつまり、思い出を真っ向から全て否定する事になる。あんな仲の良い二人のこれまでを全てだ、辛いにも程がある。
「フェイトちゃんありがとう、娘達の事でそこまで憤ってくれて」
「桃子さん」
「けどいいの、コレはあの子達にはきっと必要な事なの」
「必要? こんなにも悲しい事がですか……」
「うん、あの子達は優しくて思い遣りが深い。そして特段仲が良くて通じあってるからこそ、〝踏み入れなかった〟んだと思うの。そして今回ソレが爆発しちゃった」
桃子さんが言わんとしてることは何となく分かる気がする、なのはとユーノは贔屓目抜きに距離感が近い。たまに家族なんじゃないかってほど近くて、そして同時にお互い抱える性格だ。
「通じあってきたからこそ、すぐに理解し合えたからこそあの子達は〝衝突〟が無かった。けど違う人同士が営みを共にするならずっと無いなんて事はありえない……私達夫婦ですら喧嘩をするもの」
「桃子さんと、士郎さんがですか? ……あまり想像つきません、いつもあんなに仲がよろしいのに」
「ふふふ、ありがとう。けどね、大好きで大好きでたまらない相手だろうと、何時かは衝突するものなの。だからこそ私達家族はユーノくんからこの話を持ち出された時も、その背中を押したわ」
「え」
「〝自分のせいで娘さんを危険に追いやった、その責任を取る〟って聞かないんですもの。ご丁寧に絶縁状なんて書き記しても来たし……あーいう無鉄砲な所とか昔の士郎さんを思い出して、嫌な血の受け継がれ方しちゃったなぁなんても思ったわ」
「え? ママ?」
「あーいう男を好きになるとね、胃が痛くなりやすいのよねぇ……フェイトちゃんも男選びの時は気をつけるのよ?」
「え、ちょ……え?」
「あ、あははは……」
「まぁ話を戻すとね、あそこまで二人を追いやって覚悟を決めさせたのは我々周りの人間にも原因があると思うのよ。だから、やらせたい事をやらせようと思ったの」
「それで、もし本当に二人が絶交とかになってもですか?」
「そう、想いは伝えないとずっと心に残って何時しか呪いに変わる。だったら全部ぶちまけて新しい関係性になった方が健全になったりするものなのよ」
桃子さんって、結構ワイルドだなぁ。なのはのお母さんなだけある。
「もうあの二人は止められないし、止めちゃいけないの。だから私たちが出来ることは待ってあげること」
「二人を、待つ」
「そう、あの子達が戻ってこれる場所がどこか、分かるようにね」
♢
痛い、胸が熱い。痛い、頭に針があるようだ。痛い、体がバラバラになってる気がする。痛い、痛い、痛い……
「それでも!」
「はああぁぁ!」
〝互いの利き腕がリングと鎖で繋がれてる私達〟は、離れる事が出来ず互いに攻めを押し付け合う我慢比べをしていた。私が近距離でバスターを放ち、ソレを全身で浴びながらも直進し直接殴り返す彼。使用済みの薬莢と紙が空を舞い、息を切らして、それでも辞めない。
「そろそろ、いいかな」
「? 一体なんのこぉっと!?」
ユーノくんがそう呟くと、鎖はまるで巻取られるように彼の右腕についているリングに近づき取っ組み合いの構えになる。
「これから一体何を」
「なのは、今の内に息をできるだけ多く吸っておくんだね」
その後場面が変わった、文字通り彼によってフィールドを変えられた。
周りには水の壁、頭上には〝ここにあった筈であろう大量の水〟とビル群の瓦礫というおまけ付きだ。
「ッ! 死にたいの!?」
「死ぬつもりはないさ、僕はね」
転移魔法をここまで凶悪な使い方をしたのは彼くらいだろう、なのはは死にものぐるいで彼に頭突きや膝蹴りを入れるが離れる気配がない。
刻一刻と迫る水の壁、水と瓦礫の天井。なのははカートリッジをそのままの状態でデバイスから2発射出し、爆散させた。
彼もこれにはたまらず離れた、なのはは一目散に〝真上〟へ飛び上がる。
(ユーノくんと水中戦なんてしてたら命がいくつあっても足りない! 砲撃で穴を開けて一直線に突っ切る)
カートリッジを使い、一人分の穴を開けて海上目掛けて浮上するなのは。
「読んでたよ、なのは」
「──ッ!」
突如、瓦礫から鎖付きの楔が伸びなのはを襲う。楔は刺さった事を確認するや否や魔法陣が浮かび、瓦礫をなのはに引き寄せた。
「ヒッ」
全方位からの瓦礫を捌き着るには心にも魔力にも余裕がなく、その強大な質量攻撃を甘んじて受ける事になってしまった。
(やばい、このままじゃ私本当に…………本当に……あっ)
彼女の意識は、温もりに触れながら着実に薄れていった。
♢
「え゛っほ、おっは……はぁはぁ」
口や鼻から水を出して、ついでに目からも水が出てきた。
あの後無理やり体に電気ショックさせて、意識を取り戻した後近場のビルの窓から中に這い上がった。
(ユーノくん、多分さっきのはそういう事……なんだよね、きっと)
「酷い顔だね、臨死体験でもした?」
彼は何食わぬ顔で窓から入ってきた、だがそんな彼も私に負けず劣らずの酷い顔色だ。水滴とは無縁そうな容態から察するに、自分は転移魔法で難を逃れたのだろう。
「そっちこそお顔真っ青だよ、無茶しすぎなんじゃない」
「君ほどじゃないよ」
体に鞭打って重い体を起き上がらせ、一歩一歩と彼に近づく。彼も一歩そして一歩と私に近づく。
「っラァ!」
「だァァ!」
互いに体力も魔力も空っぽ、残るはただ相手にぶつけたい〝想い〟だけで殴る。
「いい加減諦めろよ! 辛いんでしょ! 怖いんでしょ! だったら逃げちまえよ!」
「そうやって私を想いやってくれるんなら別の方法があるでしょ! ふざけんなこのバカ!」
一つ拳をねじ込み鬱憤を叫び、一つ蹴りを叩き込んで怒りをあげる。
構えも無し、ただ勢いをつけて身体ぶつけるというもはや〝殴る蹴る〟とすら言えないような純粋な暴力の応酬。
「そもそもユーノくんが私の道を否定する事自体気に食わないのよ!」
「ガッ、どういう事だよソレ!」
「私を一番誰よりも理解してるのは貴方でしょ! なのに、どうして!」
「だから止めるんだよ! わかってるから、このままじゃ早死するだけだって言ってんだよ!」
「だったら貴方が私を護ってよ!」
そうだ私の事を誰よりも理解し、想ってるのは他でもない彼だ。それが嬉しくて心地よくてずっと一緒に居たいのに……
「私と一緒に生きてよ! 私と一緒に喜んで、悲しんで……そして、私と一緒に死んでよ!」
「めちゃくちゃ言いすぎだ!」
「うるさい! 私は貴方を絶対手放さないんだから! 覚悟しろ!」
私が約束を決める時、一番苛立ったのはコレだ。彼は私に寄り添ってくれる存在の筈なのに、彼は私の手を引っ張ってくれる存在の筈なのに、彼は私の隣に居るべき存在の筈なのに今は対立してる。それが許せなかった。
言ってしまえばどうしようも無いわがままだ、けど、それでも、私には許容する事は出来なかった。
「貴方の意見は分かったし、きっと正しい。だけど正しさなんかの為に貴方を失うなら、私は愚かで良い!」
「なのは……」
(もう体が言う事を聞いてくれない、次の一撃で決める!)
左手をポケットに入れてから拳を作り、そのまま殴りかかる。
「はぁぁああッ!」
「なんのー!」
「爆ぜろ! 〝カートリッジ〟ッ!」
「──ッ!」
ぶつかる瞬間拳の中に忍ばせていた最後の隠し玉を使い吹っ飛ばす。
反動で自分も壁に叩きつけられたが、ソレは相手も同じだ。
落ちそうな瞼を気合いで止めて、目をこらすと彼は頭から壁にぶっ刺さって動く気配が無い。
「ふ、ふふ……わたし、の、勝ち……だね」
病み上がりのこの身体は、本当によくやってくれたよ。お疲れ様私、ありがとう私、離さなかったよ……
♢
「二人とも無茶し過ぎです、なのはちゃんに関しては入院逆戻りコースです、それで……なにか申し開きはありますか?」
「「めっそうもありませんシャマル大先生……」」
おかしい! ユーノくんはともかく私は否応なしだから怒らなくてもいいじゃん!
そんな気持ちを言った所で火に油なので心に留めた。
「全く……自分の気持ちを曲げずに通す、ソレに関しては君たちの美徳の一つです。ただその為に自分の体をまるで通す為のコストみたく度外視で行動するのは控えてください。特になのはちゃん」
「え?」
「え、じゃありませんよ。デバイスを通さずカートリッジの直接使用とか死にたいんですか? 模擬戦で使うような手段じゃありませんよこのおバカ、怪我を見る此方の立場にもなって下さい良いですね?」
「は、はい」
「ユーノくんもです、大規模転移の連続使用、それに伴う魔力は魔導書のリソースで賄えても負荷自体はリンカーコアに響くのですから。良いですね?」
「はい、すいません」
「……はぁ、なのはちゃんの入院用病室の手配にはもう少しかかります。それまではここで二人仲良く待ってて下さいね?」
そう言ってシャマル大先生は病室を後にした……いつもの二割増で怖かった。
その後しばし静寂が続いたが、それを破ったのはユーノくんだった。
「なのは、怪我の方は大丈夫? 僕が言えた義理じゃないけど」
「あーうん、かなり痛いけどリハビリ程じゃないからまだ平気かな」
「ソレと比べられるとはね……謝りはしないよ」
「ユーノくん……」
「今でも、僕はあの戦いは正しかったと思うし、ソレを覆すのは今後も無い。だから謝りはしないよ」
「うん、ソレで良いと思う。その気持ちはユーノくんの優しさから来る物だから、大事にして欲しい」
「なのは……」
「〝ソレはソレとして〟約束は守ってもらうよユーノくん」
「くっここぞとばかりにめちゃくちゃいい笑顔でッ!」
「そりゃそうだよ、ユーノくんをなんでも一つ言う事聞かせれるんだから……本当に良いんだね?」
「うん、それだけの事を僕は君に要求した。その代償だ、覚悟は出来てる」
「そう、じゃあ遠慮なく」
さぁ、贖罪の時間だ。どんな無理難題でも、やり遂げよう。ソレが例え死ぬ迄続く地獄のようなお題目だろうと──
「私と死ぬ迄一緒に生きて欲しい」
「……へ?」
「戦ってる時も言ったでしょ、私が貴方に求めてるのは一緒に在り続ける事。嬉しい事も、辛い事もこれからの人生全部を……それこそ死ぬ迄貴方と共に生きていきたい」
「………………」
「あ、あの……ねぇ、その、なんか喋ってよ!? 乙女の一世一代の大告白だよ!? ねぇ!」
「え! あ、いや……ごめん」
「え?! 拒否れるのコレ?!」
「あっちが、そうじゃなくて! 罰的なナニカが来ると思ってたから、ちょっとびっくりして……うん、そっか……そう、なのか」
「な、なに……おかしい?」
「いや、うん。僕も、僕もなのはが好き。こんな僕でも良かったら、貴方の人生にお供させて下さい」
「〝こんな〟じゃないよ、キミ〝だから〟だよ。これからもよろしくね、ユーノくん」
「うん、よろしくなのは」