今回の投稿分は、Pixiv投稿分からR-18描写に該当しそうな部分を削除しています。あらかじめご了承ください。
Nov. 5th, 1943, McArras's Resident, Upper West Side, NYC
「あ、開いたあ......」
三十分近い格闘の末、私は遂にマカラスの金庫を開けることに成功した。ソファの背面にどっかりともたれかかって、大きく息を吸い込む。
「げほっ、ごほっ、げえっ!」
途端、今まで意識の外に締め出していた血と死の臭いが鼻を突き、私は思いっきりむせ返った。四つん這いになって嗚咽を漏らすと、よだれが絨毯に垂れる。
「ワトソン、開いた?......ワトソン!?」
悪いタイミングで戻ってきたぐらが、咳き込む私を見つけて血相を変えて駆け寄ってきた。
「しーっ、大丈夫だよワトソン。アタシはここにいるから」
「大丈夫、大丈夫よ。けほっ、あなたが思ってるようなことじゃないの」
抱き起こしてくれたぐらの腕を、ぽんぽんと叩いて続ける。
「金庫破りをしてる間、この臭いがすっかり気にならなくなってたんだけど、集中力が切れたら途端に......」
「ああ」
ぐらは安堵混じりの相槌を打って、金庫の方に歩み寄った。扉を開け、中に山積みにされているマニラ紙のフォルダーを漁りはじめる。
「ワトソン、ちょっと待ってね......これか」
一冊を抜き取ると、それを私に差し出してきた。インデックスには"Watson, A"と書かれている。
「中身を確認して。あいつがあんたを脅すときに使った書類が、全部あるかどうか」
「わかった」
フォルダーを開くと、一番にとじ込まれていたのは事の始まりになった運転免許証の謄写だった。二番目は私が陸運局に提出した、免許証の交付申請書の写しだ。これはあの時には見せられなかった。
さらにめくっていくと、社会保障カードの写しや出生証明書、各種申請書の写しなどに加えて、マカラスがこの件で雇っていた私立探偵かららしいタイプ打ちの報告書――レターヘッドも署名もない――などが綴じ込まれていた。あの日私が見せられた書類は全部あり、メモ書きや便箋や報告書はもっとあった。
私は溜息とともにフォルダーを閉じて、ぐらに差し出した。
「オーケイ、私が見せられたものは全部あるわ」
「......」
ぐらは一冊のフォルダーを開いていて、その中身を凝視していた。
「ぐら?」
「んえっ!?」
ぎくりと上がったその瞳が、動揺と不安に揺れる。
「どうしたの?」
「いや、なんでもない」
フォルダーを閉じると、ぐらは私が差し出していた私のフォルダーを受け取って続けた。
「そこの暖炉で全部焼いちゃおう。その方が、ここに書類がある全部の人のためだし、書類が無ければアメに疑いがかかることもないしね」
「そうね。そうしましょう」
二人で金庫の中のフォルダーの山を半分ずつ抱えると、部屋の隅でちろちろと炎を立てている暖炉に向かった。
ぐらが最初の一束を放り込んだ時、一番上にはさっきぐらを動揺させたフォルダーがあり、一瞬だけだったけれど、私はそのインデックスを読み取ることができた。"Gawr, G"。次の瞬間には、それもその下のフォルダーも火に包まれて、端からゆっくりと灰になっていった。
10:00 PM, McArras's Resident, Upper West Side, NYC
紙の書類を焼却するときにコツは、全部いっぺんに焼いてしまわないことだ。フォルダー数冊ずつに分割して焼き、火掻き棒なんかで適宜灰を崩して中の方までしっかり焼いてしまうようにすること。そうじゃないと周辺が焼け焦げるだけで終わっちゃったりする。
炉辺に二人並んで、黙りこくって書類を焼き終わると、二人とも汗びっしょりだった。ぐらは誰かが介入してきた場合に備えてコートを着たままだったから、たぶんシャツの下はとんでもないことになってるだろう。
「帰りましょうか」
「そうだね。早くシャワー浴びたいし......」
金庫のレバーとダイヤル、鍵を拭って指紋を取り除くと、応接室を後にする前に、もう一度マカラスに目を向けた。椅子の上でぐったりして、その表情は苦悶と言うよりは驚愕のそれのようだ。相手を見て驚き、そのまま苦痛を感じず即死したんだろう。
「ワトソン、早く」
「今行くわ」
私は被りを振ってドアを閉め、廃業した脅迫屋の応接室を後にした。
10:23 PM, Gura's Apatrment, Upper East Side, NYC
アタシは
――10/23 I、K、Fに買取を打診。
10/29 Kに売却。
このメモ書きは、"Hozuki, I."とインデックス付けされたフォルダーに挟まれていたものだ。アメが自分のフォルダーを確認してる間に偶然見つけて、つい持って来てしまった。
フォルダーは折り目からして、かなりの量の書類が綴じ込まれていたはずだけれど、中身はこの一枚だけになっていた。たぶん、"売却"されたんだろう。
しばらく見つめてから、サイドボードの上に置いてあるジッポを手に取って火を点けると、その火を紙切れの端に移した。そのまま灰皿に置き、燃えるままにする。
「このメモの通りなら、あるいは......上手くいくかも」
燻るメモを眺めていると、暖炉の中で燃えていたアタシのフォルダーを思い出した。
「まさかあいつが、あそこまでアタシのことを調べてたなんて......」
あのフォルダーの中身があれば、アタシはいやでもあいつに逆らえない。そうしたらあいつは、アメよりもさらにいい買い物をすることになっただろう。
ふと、脅迫屋の本当の狙いはアタシだったんじゃないか、って考えが頭をかすめた。あいつはアタシとアメの"関係"をしっかり調べていた。その上でアメに乱暴すれば、アタシがキレて乗り込んでくるのは簡単に想像がついただろう。アメはただ、アタシの前にぶらさげるニンジンにするために襲われたんだ。何もかもアタシのせいだ。
「くそっ!」
ベッドの支柱を思いっきり蹴飛ばしたけど、足に痛みが走っただけで怒りは全然鎮まらなかった。ふーっと息を長々と吐いてから、アタシは浴室に足を向けながら自分に言い聞かせた。
「落ち着け......マカラスが死んだ以上、それが本当かどうかなんて確かめようがないんだから......どうであれ、アタシがアメに寄り添い続けることも変わらないんだから......」
ぶつぶつ言いながら、アタシはズボンを脱ぎ捨てた。シャワー室への短い道中でシャツも脱ぎ、汗でべたつく体からシュミーズとパンツを剥ぎ取ると、冷静さを取り戻すために湯温のダイヤルを華氏七十度に設定してシャワーを出した。
「嫌っ! やめて! 嫌ぁ!」
死んだはずの脅迫屋はしかし、私の夢の中では相変わらず健在で、そのぶよぶよの体で私を押しつぶし、元気に腰を振っていた。
<削除>
「もう嫌、もう嫌ぁ。ああ、ぐら、助けて、ぐら」
あの時ぐらの名前を呼んだかどうか、それはよく覚えていない。それでも夢の中の私はぐらを呼び、まるでそれに応えるかのように、悪夢の寝室のドアが轟音とともに蹴破られた。そろって戸口を振り向いた私とマカラスが見たのは、悠然と寝室に入ってくるチビのサメ女だった。いつも通りサイズ・オーバーの青いチェスターフィールド・コートを着込んで、同色のフェルト地に黒いリボンを巻いたフェドラ帽を被っている。
「いかん、いかん! これは台本に無いぞ」
マカラスが叫び、私から自分を抜いて立ち上がった。
「貴様の出番はもっと後だ。出て行け。出て行くんだ、さあ!」
マカラスが詰め寄ろうとしたとき、ぐらが右腕を持ち上げた。その手には一丁の拳銃が握られている。懐かしいあの日、初めて会った時に彼女が使っていた、ブルーイング処理されたコルト・ガバメント。
次の瞬間には轟音が響き渡り、マカラスの体を吹っ飛ばした。もう一発、さらに一発。マカラスの体はきりきり舞いして、ベッドの上を飛び越して視界の外へ消えた。
ぐらは何も言わずに、ベッドに横たわる私に近づくと、そのまま私を抱きしめてくれた。コートを着こんでいるはずなのに、その身体はまるで裸みたいな肌触りで、ぬくもりが私を包み込む。齢を重ねた男の不快な体臭ときつい香水の臭いにかわって、ぐらの匂いに包まれる。
ああ、悪夢はこれで終わりだ。少なくとも、今日は。
Nov. 6th, 1943, Gura's Apartment, Upper East Side, NYC
「落ち着いて、ワトソン。大丈夫だよ。アタシはここにいるから」
耳元でぐらの声が、優しく小さく響く。
朝日の射し込む寝室で、ぐらは私を背後から抱きしめてくれていた。シーツの中ではお互いに裸だから、夢の中のぐらの肌触りがそうだったのも、目が覚めてみれば疑問でも何でもない。
「安心して。あんたは安全なところにいるから。アタシがちゃんと側にいるから」
私は腰に回されているぐらの腕に触れながら、小さく息を吐いてから言った。
「今朝はそんなに悪い気分じゃないわ」
「そお?」
寝返りを打って、ぐらと目を合わせる。ぐらはすこしだけ眠たそうな目でまじまじと私を見つめてから、おもむろに言った。
「ほんとだ、そんなにひどい顔はしてないね」
「あなたが夢に出てきたの」
「アタシが?」
ぐらが眉を上げた。
「ええ、あなたが」
「面白そうな話じゃん」
ぐらは起き上がり、伸びをしてから続けた。
「お腹すいちゃった。朝ごはん食べながら、その話をじっくり聴きたいんだけど、いい?」
「ええ、もちろん」
悪夢自体は明日以降も見るだろう。でもこれはきっと、私にとって大きな一歩だ。
二人で並んで浴室に向かいながら、私はここ一週間で久しぶりに楽観的な気分になっていた。
Nov. 7th, 1943, Gura's Apartment, Upper East Side, NYC
"もしもし、
お休みを取っていたその日の昼下がり、疲れ切った男の声が電話の向こうから聞こえてきた。誰だっけ、と思い出そうとしている間に、向こうが先に名乗った。
"フランクリンだ、殺人課の"
「ああ、第20分署の"
"その呼び方はやめてくれ。というか、あんたの方が年下だろ"
「で、用は何なの、サニー?」
第20分署と言えば、マカラスの家がある辺りを管轄している分署だ。そして用件も、思った通りの内容だった。
"西83丁目の殺人事件の話は聞いてるだろ? 例の、恐喝の疑いがあった金持ちの"
「ええ、聞いてる」
"目下あれを調べてるんだけどな、
「それで?」
"そいつが部分的にライセンス・ナンバーを覚えててな。それを車種と色と組み合わせて陸運局に問い合わせたんだが、市内で該当する車を持ってるのは、借金取り、あんただけだった"
「面白い話だね」
口調をフラットに保ったまま、アタシは指で受話器のコードを弄りながら続けた。
「アタシがやったんじゃないかって思ってるの?」
"まさか。あんたが銃を使えないのは市警中の人間が知ってる。ただ、何か知ってることがあるかと思ってな"
「一昨日の夜は、セントラル・パークの反対側にある家にいたよ。この一週間友達を泊めててさ」
"ああ、あんたの家は泊まるにゃうってつけだろうよ"
電話口の向こうでサニーは笑い、続けた。
"もともと証言もちょっとあやふやだったんだ。こりゃ無視してよさそうだな"
「そうしなよ......そうだ、アタシから一個訊いていい?」
"なんだ?"
「マカラス・ファイルって、ホントにあったの?」
ホントにあったかどうか、それをアタシは当然知っている。この手で焼いたんだから。でも、ここでそれを訊かないのはアタシらしくない。
"サニー"・フランクリン刑事は溜息を吐いて答えた。
"昨日からずっと、警官に会うたびにそれを質問されてる"
「みんな気になるんだね」
"らしいな。だがわからん"
「わかんないの?」
"ああ。金庫がこじ開けられてて、暖炉に大量の灰があった。鑑識の連中曰く、しっかり焼かれてて復元は絶望的だそうだ"
「へえ」
"何が焼かれたのかわからん以上、それがマカラス・ファイルだったのかもしれん。そうじゃないのかもしれん"
「"灰は灰へ、塵は塵へ"*1、か」
"ああ。いっそ実在してくれたら、俺の仕事も楽になったと思うんだがな"
「ご愁傷様」
電話を切って、アタシは深々と溜め息を吐いた。これでアメの秘密もアタシの秘密も、その他大勢の秘密と一緒に葬り去られた。目下懸案の事項は、あと一つだけだ。
Dec. 1st, 1943, Ina's Residence, Flashing, Queens.
感謝祭が過ぎて12月に入ると、ニューヨークは本格的に冬へと突入しようとしていた。二日前には最低気温が華氏三十度を下回っていたけれど、今日は晴れていて少し暖かかった。天気予報によれば、十日頃から朝晩は二十度を切るようになるらしい。今はまだ、厳しいニューヨークの冬に入る前の助走期間だ。
ぐらの大きなクライスラーは63丁目トンネルを通って朝のイースト川をくぐると、落ち葉があちこちに吹き寄せられているクイーンズの街路を走り、フラッシング地区にあるこじんまりとした
「いらっしゃい、準備はできてるよ」
玄関ドアを開けたのは、この家の主であるイナニスだ。本職は近代画家であるところのイナはしかし、今は黒っぽいブラウスの上に白衣を羽織っていた。彼女の副業は闇医者なのだ。
「おしっこは持ってきた?」
「ええ」
鞄から、事前に渡されていた試験管を取り出して、黄色っぽい液体の入ったそれを手渡す。
「じゃ、早速診てみよう。こっちに」
大きなガラス窓があって広々としたアトリエを通り抜けると、奥の小さな一室にその椅子はあった。いくつもの関節をもつ診察椅子は、ぱっと見は歯医者にあるもののようにも見えるけれど、大きく股を開いて足を乗せる台があることが、いやでもその椅子の目的を知らせてくれる。
「アメ、服を脱いでそこに座って。下着もね。ぐらはどうする?」
「アタシは待っとくよ。待合室、じゃなかった応接室で」
「いいえ」
私は立ち去ろうとしたぐらの手を慌てて握りしめた。
「お願い、一緒にいて」
「......わかった」
イナは私のおしっこ入り試験管を持って一度立ち去り、ニ十分くらいで戻ってきた。
それから私の体を、それこそ隅から隅まで調べた。頬や首回りなんて関係なさそうだけれど、イナが言うにはここに斑点が出やすいんだそうだ。
<削除>
「......よし、これで診察は終わり」
器具を私から外すと、手を洗いながらイナは言った。
「尿検査が終わるまでまだまだかかるから、家に帰ってもいいし、散歩してきてもいいよ。ああ、ぐら、ちょっといい?」
「いいよ。ごめんワトソン、ちょっと外すね」
「こっちこそごめんね、ぐら。あんまり見たくないものを見せちゃって」
「アタシは大丈夫だったよ」
「尿検査が終わるまで確かなことは言えないけど、アメが妊娠してる可能性は低いと思うな」
書斎に入ると、イナはアタシにそう言った。
「まだ本人には言わないでね。ここからひっくり返る可能性も十分あるから」
「わかった」
「それと、一つ確認させて。重要なことだから嘘は吐かないで」
「なに?」
「あなたがドクターズ病院*2じゃなくて私のところに――闇医者のところに――彼女を連れてきたってことは、つまり彼女は"弄ばれた"ってことでいいんだよね?」
「そうだよ」
イナを信用できなければ、この街にアタシが信用できる医者は誰一人いない。ただ、イナ相手でも喋れないことはある。
探るような視線を投げつけたけれど、イナもそこまで深くは踏み込んでこなかった。
「じゃ、彼女はその時のことを夢に見たりしてない? それでうなされたりとか」
「してる」
「そういう時、どうしてる?」
「抱きしめてあげてる」
「殴られたりとか、引っかかれたりとかは?」
「......した」
今でも時々、アメは錯乱状態に陥ったまま目覚めるときがあった。この一か月、アタシはほっぺが腫れたり引っかき傷ができたり、目に青タンを作ったりしていた。穏やかに目覚める日も増えているとはいえ。
「それでアメを怒ったりした? 怒鳴ったりとか」
「してないよ」
ちょっと腹立たしい質問で、アタシは自然と不機嫌な声で答えた。
「アメが殴ったり引っかいたりしてるのは、アメを襲ったやつでアタシじゃない。怒ったって仕方ないでしょ」
「偉い」
穏やかに、イナはそう言った。
「さっきのやり取りをみてて思ったけど、アメはあなたのことをとっても信頼してるんだよ、ぐら。彼女を悪夢から救い出せるのは、たぶん現状ではあなた一人なの」
執務卓の向こうから、イナはアタシを力強く見つめながら続けた。
「彼女を支えてあげて。立ち直るには時間が――ひょっとしたらかなり長い時間が――かかると思う。でもあなたがいなかったら、きっと彼女は道に迷ってしまう」
「言われるまでもないよ」
この街はお金とチャンスに溢れている。そして、それと同じくらいの謀略と裏切りにも。そんなニューヨークで、アタシが心の底から信じられるのはアメだけだ。そのアメから信頼を寄せられてるなら、アタシはそれに全力で応える。何に代えてでも。
Dec. 2nd, 1943, Gura's Apartment, Upper East Side, NYC
結局、尿検査は翌朝までかかるとのことで、アタシとアメは一旦家に帰った。検査結果が出なくて不安だったのか、その夜もアメは悪夢を見て、ひどく取り乱して目を覚ました。ベッドの中でアメをなだめている間にサイドボードの電話が鳴り、アタシは受話器を取った。
「もしもし?」
"おはよう、ぐら"
「おはよう、イナ。検査の結果が出たの?」
"うん。対面で結果を聞きたい? それとも、電話越しでもいい?"
「今聞かせて。待った、ワトソンがいるんだ、替わるよ」
受話器をアメに渡すと、アタシも受話口の裏側に耳を押し当てた。
「おはよう、イナ」
"おはよう、アメ。検査結果が出たけど、電話越しでいいんだね?"
「ええ。早く知りたいの」
"わかった。妊娠検査の結果は陰性でした。つまり、あなたは妊娠してないよ、アメ"
アメはそのままベッドの上で固まっていたけれど、肩から力が抜けたのがわかった。アタシはアメの頭を撫でながら言った。
「ほら、ワトソン、お礼」
「あ......ありがとう、イナ」
"どういたしまして。よかったね、アメ。じゃあ、ぐらに替わってくれる?"
受話器を受け取り、お支払いに関するちょっぴり頭が痛い話を交わしてから、電話を切った。
「......これで、悪夢もマシになるかしら」
「そうなるといいね」
ぽつりとそう言ったアメを抱きしめて、ゆっくりと背中をさする。
「ゆっくりでいいんだよ、ワトソン。自分のペースで。アタシはとことん付き合うからさ」
「......ありがとう」
アメの指が背中に食い込むのを感じながら、アタシはしばらくアメの背中を撫で続けていた。