結婚式から1年。エレノア様が子供を授かった。生まれるまで間もないとは聞く。アーウィン殿は目に見えて落ち着いていない。さっきから扉の前を行ったり来たりしている。ユグノア前王ロウ様は深く祈っている。それは当然、出産というのは体力を使う命がけの行為なのだ。マルティナの母、デルカダール王妃も死んでるし、俺の前の世界の母、メローピーも俺を産んで息絶えた。この世界の母サヤも生まれた時体力を随分消費していた。俺が魔法を使わなければ死んでいただろう。 ドアが開く。アーウィン殿が立ち止まり、ドアを見る。見て落胆した、マルティナだったからだ。
「!....マルティナか..」
「アーウィン様、エレノア様は大丈夫?」
「あぁ、マルティナもエレノアを信じなさい。」
マルティナはロウ様の対面の椅子に座る。俺が紅茶を淹れ、お菓子を魔法でだす。
「ありがとう、トム兄ちゃん」
「気にするな。アーウィン殿にも渡してきてくれ、少し落ち着いてもらおう。」
俺は再び壁に寄りかかり瞑目する。
「アーウィン様、お茶を飲んでください。」
「マルティナ、ありがとう。」
俺の言った通り、アーウィン殿にも紅茶を渡しに行ったマルティナは戻ってきてクッキーを食べている。
長い時間がたった。俺が瞑目している間にマルティナは眠り、アーウィン殿はドアの前を往復している。俺の母サヤはエレノア様の所にいる。
大きな産声が聞こえた。そして部屋に入って来るメイド。アーウィン殿が駆け寄り話を聞く
「どうだった!?エレノアは無事か!?赤子は無事か!?」
「無事です!赤子もエレノア様も無事です!」
途端に騒がしくなる部屋、アーウィン殿はメイドの手を掴み大喜びで跳ね、ロウ様は亡き王妃と神に泣きながら感謝を繰り返してる。目を覚ましたマルティナは状況を理解するとドレスを着ているのを忘れ飛び跳ねる。 俺も心のどこかで安堵している。まさかこの俺が、子供が産まれただけで喜ぶなんて思ってもみなかった。
「エレノアのところに案内してくれ!」
アーウィン殿の一言でエレノア様の元へ向かう。
「エレノア!ありがとう!本当にありがとう!」
アーウィン殿はベッドにいるエレノア様に感謝を告げ近寄る。
「アーウィン様、男の子ですよ。」
横に立っていた母がアーウィン殿に告げる。
「そうか、そうか!男の子か!」
ロウ様はエレノア様の手を握り何度も無事でよかったを繰り返している。
「さっそくだが、名前をつけないと、いけないな。」
アーウィン殿は名前をつけようと言う。
「トンヌラというのは、どうだろうか!?。」
どうやら、アーウィン殿に名づけのセンスは無かったようだ。
「まぁ 素敵な名前。勇ましくて、賢そうで。」
若干引き攣った顔でエレノア様がアーウィン殿の名前を否定し続ける。
「でもね、私も考えていたのです。 イレブンというのはどうかしら?」
「うーむ、イレブンか、パットしない名だな。」
この瞬間、お前が言うなと。視線で部屋の全員が抗議する。
「しかし、君が気に入っているなら、その名前にしよう!」
「命の大樹より授かった。我らが息子よ!、今日からお前の名はイレブンだ!」
『へ~クシュン』
ロウ様のクシャミによってパッとしない名づけは終った。
数か月後、イレブンのお披露目会兼四大国会議を開くことになり、その準備が始まった。更にこの場でバンデルフォン元王女の母がバンデルフォン復興の話もするようで、俺もその準備をしている。
「トム、会議の日は、貴方も出席してもらうわ。まだ、子供の貴方には酷な話かもしれないけど。貴方の意思発表があるのよ。」
「えぇ、わかりました。」
四大国会議当日俺は用意された来賓室で各国の王が来るのを待っていた。既にサマディー王、デルカダール王は到着しており、マルティナは早速エレノア様の元へ向かった。
「ロウ殿、アーウィン殿。お久しぶりじゃな。」
長いひげと大きな飾り杖が特徴のクレイモラン王が到着した。
「クレイモラン王も壮健そうで何より。」
アーウィン殿がクレイモラン王の相手をしている。
「そちらの少年は?」
「あぁ、彼がバンデルフォンの後継者です。」
「彼が、..そうか、少年。名前は何というのかね?」
「トムと申します。陛下。」
「そうか、トムというのじゃな。」
「クレイモラン王、後ほど会議で。」
かっかっかと妙な笑いを残し控室に向かうクレイモラン王を見送り。俺は会議のための準備をする。
会議が始まった。席順はロウ様を中心にアーウィン殿、クレイモラン王、デルカダール王、サマディー王、母、俺の順だ。最初はアーウィン殿に抱かれているイレブンの事で話になった。 イレブンはどうやら伝説の勇者、ローシュと同じ痣を持って生まれ、勇者の生まれ変わりとされている。 気に入らん。勇者か勇者ではないの問題ではない。 勇ましいものというものが嫌いなだけだ。グリフィンドール的、それだけで嫌いだ。
会議は進み、クレイモラン王が勇者は光のもので、表裏一体。闇のものがあると言う。 俺の事ではない、闇の帝王の俺でもまだ何もしていない。この世界にきてから一人も殺してないし、傷つけてもいない。
デルカダール王はそれに同意した。クレイモラン王は魔物が活発している点と、勇者の星が妙な兆候をだしたことを言い、勇者は必ずしも善き存在ではないと言っており。 アーウィン殿は勇者は必ずしも光の、命の大樹の申し子である勇者が邪神を生み出したわけだはないと言い切った。 この間サマディー王はオロオロしており。ロウ様は瞑想。母は鋭い目つきでクレイモラン王とデルカダール王を睨みつけている。
「よくぞ言った。アーウィンよ、もしもわしらの意見に賛同していたら。即刻、勇者を引き取るだっぞ。」
「ちと、いじわるが過ぎたかのう? おぬしの真の心が知りたかったんじゃ。許せアーウィン殿!かっかっかっか…!」
どうやらアーウィン殿の本心を聞くための演技だったようだ。サマディー王は納得したように首を縦に振り、母は睨みつけるのを止めた。
「我が国は勇者への支援を約束する。イレブンが16歳になった暁には、デルカダールで修練を積ませよう。」
デルカダール王は勇者への支援を宣言し、それにクレイモラン王は同調する。
「うん、うん!これにて一件落着ですな。まあ、私はこうなると思ってましたがね。」
サマディー王は一人で完結している。母は本当か?という目を向けている。
「さて次の議題じゃ、バンデルフォンのことじゃ。」
ロウ様が場を纒め、俺にとっての本題へとうつる。
「この場にいるサヤ王女の事じゃ。14年前バンデルフォンが滅んだ時、クレイモラン王国におり、生き延びたサヤ王女はクレイモランの魔法戦士とともに世界各地を回って、魔物の追手がいないのを確認した後、2年前に我が国ユグノアへやってきた。」
「左様。わしがサヤ王女の事を知ったのはワイトの手紙がおいてあったからじゃ。わしもバンデルフォンに魔物が攻め入った時に、サヤ王女が亡くなったと思っておったからのう。」
「みなさん。この場を借りて、宣言します。我が故郷バンデルフォンを私とトムで復興したいと思います。」
「サヤ王女、我がユグノアはその復興を支援しましょう。」
「我が国デルカダールも、バンデルフォン復興の支援をしよう。」
「我が国クレイモランは土地が遠い、知識を支援しようかのう。」
「あ~、え~我が国サマディーは、バンデルフォン復興のために人員の支援をします。」
「みなさん。ありがとうございます。私、トムは母と共にバンデルフォン復興の礎となり、必ずしもバンデルフォン復興を成し遂げてみせます。」
「これにて四大国会議を終了とす。」
ドアがバッと開き、傷ついた兵士が飛び込んでくる。
「み....皆様!お逃げください!魔物が我が城に… ぐふっ....!」
アーウィン殿が抱えた兵士は息絶えた。
「なんということだ!伝説の勇者を捕らえるために魔物どもめ、国ごと滅ぼすつもりか!?」
クレイモラン王の悲鳴ともとれる声とともにアーウィン殿とロウ様、デルカダール王は動き出す。
俺は母とともに杖を抱え部屋を飛び出す。
「くっ。数が多いな…。しかし悪しき異形の者どもに勇者を渡すわけにはゆかぬ」
デルカダール王は言葉と共に魔物を切り捨てた。
「サヤ王女!、トム君、君たちはクレイモラン王とサマディー王を守ってくれ!」
アーウィン殿はイレブンを両手に抱え俺が飛び出すのを止めた。
「ここは私とロウが引き受けた。そなたはイレブンを連れてエレノアと共に城の外に逃げろ!」
「そういうわけにはいきません。私はエレノアの護衛をします。」
母はアーウィン殿の意見に反論している。
「トム、この杖を使いなさい。私の杖よ。私はワイトの杖を使うわ。」
母は片手のステッキを俺に渡した。そして胸元から白く光る杖を取り出した。
「あなた。トムを、みんなを守って!」
母は杖を片手に飛び出していった。
「トム君、絶対にここを守ってくれ、クレイモラン王とサマディー王、それにわが国民も。」
アーウィン殿はそういうとイレブンを抱え去っていった。
「兵士長、この城にいるものは全員集まりました?」
俺は戦いの指揮をしている兵士長にユグノア城にいるすべての人を集めさせたのだ。
「はい。トム殿。デルカダール王、ロウ様、アーウィン様、エレノア様達を除くすべての人を集めました。
「ありがとうございます。兵士長もこの円卓の内側へ。」
「?トム殿?」
「
杖を振るい円卓の外側に青い炎の壁を展開した。
「こ..これは!」
「みなさん。この炎の壁がある限り、魔物は焼かれます。」
窓を破ってきた、羽が付いた魔物が炎の壁に触れたとたん身を焼かれ崩れていく。
数十分魔物が焼かれるのを見ていると、嫌な予感がした。妙な胸騒ぎが。母の杖が熱くなって。
「!? 母が危ない!」
「トムよ、どういうことかね?」
「クレイモラン王。嫌な予感がするんです。」
「クレイモラン王、サマディー王、今からこの部屋にいる皆さんを安全な場所へ避難させます。安全な場所に心辺りは?」
「グロッタの町じゃ、そこならば大きな城壁もあるし安全じゃろう。」
「ではグロッタの町を想像してください。....
机の上にあった燭台をポートキーにする
「みなさん、この燭台に捕まっててください。 10秒後にグロッタの町に移動します。」
俺がそういうと、部屋にいた人々は慌てたように燭台に触れ、定刻になると消えた。
「だれもいないな。」
俺は展開していた。炎の壁を解放し、ユグノア城の魔物だけを焼き尽くす。
そして、アーウィン殿の気配に向かって、この世界初めての姿くらましをする。バチンッ!という音とともに地下に移動した。そこには倒れているアーウィン殿が。
「アーウィン殿!」
「...と‥トム君..」
「なにがあったんですか!
「い..イレブンは悪魔の子ではない..で..デルカダール王は、間違って、操られて...ぐふっ」
治療の甲斐なくアーウィン殿は息絶えた。
「アーウィン殿。エレノア様を守るんじゃ、ないんですか。...俺の分も約束したじゃないですか..エレノア様!」
エレノア様の事に気づき、エレノア様の気配の元に姿くらましをする。バチンッという音とともに外に移動した。
「エレノア様!母さん!」
フードを被った三人組が駆けている。骨の馬に乗った骸骨集団がその三人に襲い掛かった。
その瞬間最後尾を走っていた母さんが振り返り爆発呪文を唱えた。
「イオナズン!」
大きな爆発で骸骨集団は粉々になり再び走り出す。
俺も近寄って来る魔物を焼き払い追いかける。
「
近づく敵がいなくなったと思い安心した束の間
空からドラゴンに乗った騎士のような魔物が母さんを切りつけた。
「母さん!お前!何をする!
「サヤ!ねぇサヤ!しっかり!」
魔物の攻撃を食らった母さんは倒れた。
母さんは俺に声にならない声でありがとうといった後死んだ。
「母さん!母さん!くそっ!」
衝撃呪文で吹き飛ばした魔物を見る、吹き飛んだ剣を回収しこちらに向かって来る。
「貴様!
緑の閃光が走り魔物に直撃する。魔物は消えていった。
「エレノア様ァ、早く逃げろぉ!!」
俺の声に我に返ったエレノア様はマルティナと手をつなぎイレブンを片手に抱き去っていった。
母さんの身体に触れると無数の光となって消えた。その後には小さな杖と皮の袋だけだ。光は俺を堤み消えた。俺は二つを懐にしまう。
「魔物ども!この先は絶対に通さん。お前らは俺様が消してやる。」
骸骨の魔物がやってくると悪霊の火で焼き払い、太ったヤギのような魔物や三つ目の悪魔のような魔物が現れると、磔の呪文で苦しめ焼き払った。そして人型の魔物が現れると死の呪文で殺していった。
母さんの加護があるのか魔力が溢れるように湧き出てくる。
現れる魔物を消していくと。不思議と力が湧いてくる。
『キャァァー』
マルティナの悲鳴が聞こえた、解放していた悪霊の火で残った魔物を焼き尽くすと、悲鳴の近くへ姿くらましをした。バチンっと音と共に姿が消える。
バチンっ!という姿現しの音とともに俺は気配を探る。
近くに、いるはずだ。 あれは!
「エレノア様! そこをどけ!
エレノア様に襲い掛かろうとしている骸骨の魔物を死の呪文で殺す。
しかし、エレノア様は既にボロボロだ。
「エレノア様!大丈夫ですか!
「と...トム。私‥は大丈夫よ....マルティナがイレブンを連れて..逃げてるの..私が囮になって...」
「エレノア様!静かに!
「トム...イレブンを頼んだわ...よ」
「
最大の盾の呪文をかけ、走り出す。
「マルティナ!どこだ!マルティナ!」
川に近づくとそこにはマルティナのドレスの切れ端は木に引っかかっていた。
「マルティナ!くそっ!」
引き返しエレノア様の場所へ向かう
そこにはドラゴンに乗った騎士のような魔物がエレノア様にかけた盾の呪文を破ろうと体当たりしている。
「貴様!どこまでも、俺様の目障りな事をしやがって!!
緑の閃光が走り魔物に直撃する、途端に消えた。
「エレノア様!マルティナは近くに居ないみたいです!」
「トム...私は...貴方と会えて、良かった...最初は...生意気な..子供....と思っていた...けど。サヤの...あなたのお母さんの..子供..だと思ったら...放って..置けなくて...初めのころは...トムが嫌々...私の誘いに乗ってくれてたの...わかってたのよ....チェスも...私がやったことがなかった....のに教えてくれて...毎回楽しかったわ.....トム...ありがとう....あなた...サヤ...私も逝くわ....」
「エレノア様!エレノア様ァ うぅっ。」
この俺が人が死んだことで泣くとは。
「魔物ども絶対に許さん!。貴様らの相手はこのヴォルデモート卿だ!!」
俺は朝になるまでエレノアの身体を守り続けた。
ヴォルデモートのドラクエ呪文使用について。
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