神竜娘と邪竜娘の妹たちに愛されすぎてる件   作:りんご(仮)

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※この作品は基本ギャグ作品となっております。後前回のラストの部分少しだけ変えた。


嫉妬深い邪竜娘

ーー今日も今日とて妹に抱きしめられていた。始めに言っておくが今俺を抱きしめてるのは神竜娘のリュールではない。

 

 

「・・・・」

 

 

地面につきそうなくらい長い髪、紫と黒が交互に入り組んでいて人を惹きつけるようなあどけない顔。その妹は現在、不機嫌な顔をしながら俺に抱きついて離れようともしてくれない。俺が何話してもプイッとそっぽをむく。ちなみに今日起きてからずっとなんだよなこれ。俺のもう1人の妹ことヴェイルは朝からひっついたまま離れてくれない。

 

 

正直言うわ、可愛すぎて辛い。さっきから頬を膨らませて「私、怒ってます」とアピールしてるのだがその姿が例えるなら食べ物を口に詰めたリスみたいだ。思わずそのほっぺたを指先でつつきたくなるくらいには。そんなことをしたら火に油を注ぎかねないので絶対にやらないが。

 

 

「なぁ・・・ヴェイル。そろそろ教えてくれてもいいだろ?なんでそんなに怒っているんだ?」

 

「・・・つーん」

 

 

これである。何回聞いてもシカトされてしまう。こうなってくると原因を解決するまで一生離れないつもりだろう。さっきから頭を撫でてやってるが一向に機嫌が良くなる気配がない。仕方ない別の方法を考えるかと手を止めて思考を巡らせようとしたら・・・

 

 

「・・・じーっ」

 

 

余計に不機嫌になった。「なんでやめるの?」と目が訴えかけてくる。依然不機嫌なことに変わりはないがどうやら頭を撫でられるのはやっぱり嫌ではないらしい。俺は再びヴェイルの頭を撫でながら考える。

 

 

「なあヴェイルはなんで怒っているんだ?」

 

「・・・ぷいっ」

 

 

自分で考えるしかないのか。2人の妹、リュールとヴェイルはそれぞれ特徴がある。リュールは基本的にしっかりしているけど俺と2人の時はすごく甘えん坊になる。千年前は母さんに対してですら甘えることが下手だったあの頃が懐かしい。

 

そしてもう1人の妹、ヴェイル。リュールが甘えん坊ならヴェイルは嫉妬深いが適当な表現だろう。一緒に旅をしていたときは全然そんなことなかったのだが家族という関係になったことでヴェイルの家族愛に対する欲が溢れかえってしまった。それがヴェイルの持つ嫉妬という感情なのだろう。

 

 

普段は大丈夫なのだがこの前、街に一緒に出かけた時に雑貨屋さんのお姉さんに可愛いという話をしてたらすごく不機嫌になった。あの時はヴェイルの機嫌直すの大変で出店の食べ物を買って「あーん」して食べさせたりして甘やかしてやったら機嫌は直ってくれた。ちなみに可愛いって言ったのはお姉さんではなくお姉さんの作ったアクセサリーでヴェイルが身につけたら可愛いんじゃないかという話をして2人で盛り上がってたのだが曲解されたらしい。とりあえずアクセサリーはヴェイルに買ってやった。やっぱりヴェイルによく似合っていて可愛い。

 

 

 

閑話休題

 

 

つまり今回も何かが原因でヴェイルは怒っている。さてと最近は街に出ていないので女性とは会っていない。ソラネルで動物の面倒見たりとかソラと散歩したりとかして過ごしていたくらいだ。たまに守り人たちと会うがほとんどがヴァンドレで最近フランとクランとはあまり会っていない。と言ってもこの前例の件を神竜様ファンクラブに流そうとしてたから全力で止めたけど・・・

 

 

・・・・・

 

 

まさかヴェイルお前・・・

 

 

俺は一つの可能性にたどり着いた。もしかして例の件がヴェイルにバレてしまった?いやしかしリュールは口はすごく固いし内緒にしてくれ恥ずかしいからと言ったら満面の笑みで「このことは私と兄さんだけの秘密です」と言ってくれた。だからリュールが例の件を話すなんてことはありえない。となると・・・

 

 

 

「ヴェイル、お前フランに何をしたんだ」

 

 

例の件について知ってるのはリュールとフランのみだ。まあフランが誰にも言ってないのが前提条件になるが・・・リュールは絶対に秘密は守るしヴェイルもリュールのことは大好きだから実の姉相手に酷いことはできない。となる考えられるのは一つしかない。

 

 

「別に何も酷いことはしてないよ」

 

 

そう言って満面の笑みを浮かべる。やっとまともにヴェイルが喋ってくれた。というより酷いことはしていないらしい。とりあえずフランの命は助かったみた・・・

 

 

「ちょーっと魔法で拘束して激辛料理を「あーん」して食べさせたらすぐにお姉ちゃんの機嫌のいい理由を吐いて・・・話してくれたよ」

 

 

さらばフラン、安らかに眠れと俺は心の中で合唱する。リトスでは唯一杖を使える人間だったが・・・うんっ、惜しいやつを無くした。仕方ない今度クランに頼んでジョブチェンジしてもらおう。と軽く現実逃避とかしたところで現実は、この状況は何も変わらないけど。

 

 

「フランがね、泣きながらお兄ちゃんがお姉ちゃんにキスしてたって教えてくれたの。ねぇお兄ちゃん、どうしてお姉ちゃんとキスしたの?私だってお兄ちゃんからキスしてもらったことないのに」

 

 

でしょうね、普通兄妹でいくら仲が良くてもキスなんてしないからな。と言ってはいそうですかで納得してくれる妹ではない。分かりやすくドス黒い邪竜らしいオーラが滲み出ていた。だからこそ分かる、次に出てくる言葉。妹はきっとこう言う。

 

 

 

「お姉ちゃんにキスしたなら私にキスしてくれてもいいよね。おかしくないもんね、兄妹なんだから」

 

 

こうなるからリュールとのキスも避けたかったしそもそもキスしなかったらこんなことになっていなかった。おまけにフランの叫び声でキスするところほんのちょっとずれるし。

 

しかし嘆いたところで俺のやったことは取り消すことはできない。キスしなかったら余計にヴェイルの機嫌を損ねるのは目に見えている。覚悟を決めるしかないか・・・

 

 

「分かった・・・ヴェイル、キスしてやる。目を瞑れ」

 

「うんっ。いつでもいいよ、お兄ちゃん」

 

 

そう言ってヴェイルは目を瞑る。改めて思うがキスをするのは恥ずかしい。いやっいずれ好きな人ができたらそう言うのをするんだろうけどさ。家族相手に普通は口と口のキスはしないのよ。と言ってもそんなところを言ったところでヴェイルは納得しないしここで変にほっぺにしたら「お兄ちゃんのヘタレ、意気地なし」とか言われるんだろうな。どうすりゃいいんだこれ。

 

 

 

「・・・・・お兄ちゃん、まだ?」

「・・・わかってる」

 

 

リュールの時は事故だったがヴェイルは違う。自分の意志でヴェイルの口にキスをしないといけない。すごく恥ずかしいしやっぱり家族・・・妹に対してキスなんて気が引けるが・・・俺は誓ったんだ。絶対にヴェイルもリュールも見捨てたりしない。1人にしない。どっちも助けると。

 

 

 

だから俺は家族への愛情としてそっとヴェイルに口付けした。

 

 

 

きっとこれでヴェイルも許してくれる・・・そう思ってヴェイルの顔を見ると想像以上に顔が真っ赤になっていた。いやっ俺の顔も赤くなっているかもしれないがヴェイルの顔はその日比ではない。まるで不意打ちを食らったかのような顔をしてた。口をパクパクさせながらヴェイルは・・・

 

 

「・・・して」

 

 

「えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

「どど、どどどどうして!どうして唇にキスしたのーーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言ってヴェイルは顔を真っ赤にして涙目になりながら怒った。おかしい今回に関しては選択肢(・・・)は間違ってないはず。ちゃんとヴェイルに言われた通りキスもした。でも当の本人は怒っている。その真っ赤な顔は羞恥からかそれとも怒りからなのか。とにかくトマトみたいに真っ赤だ。こんなに顔を真っ赤にするヴェイルは初めて見る。

 

 

「普通ら家族とのキスってほっぺにそっとキスでしょ!なんで唇にキスしたの!」

 

「えっ・・・・いやっ、えっ・・・・えっ?」

 

「信じられない!お兄ちゃんの・・・えっと・・・お兄ちゃんのえっち!変態!」

 

 

 

そう言ってヴェイルはそのまま顔を真っ赤にして走っていってしまった。ヴェイルにそう言われた瞬間俺の心が砕ける音が聞こえたのは確かだった。胃の中で濁流をおこして口から血を思いっきりはいた。俺はヴェイルの言葉を脳内の中で復唱する。

 

 

「お兄ちゃんのえっち」

 

 

「お兄ちゃんのえっち」

 

 

「お兄ちゃんのえっち」

 

 

 

俺はその言葉が永遠に脳内で再生され続けてその場で倒れた。ああ・・・これが死ぬ感覚なのか。千年前、ソンブルとの戦いでも感じたことがあるがこれはその比じゃない。妹に嫌われて死にたくはなかったな。ははは・・・・

 

 

待っててね母さん。すぐに会いに行くから。あっ、でもこんな早くに母さんのところに行こうとしたら怒られるんだろうなと俺は永遠の眠りにつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後?

 

 

邪竜ノ娘ことヴェイルは混乱していた。確かにキスしてと頼んだのは他でもない自分自身だったがまさか唇にキスされるとは思っていなかった。ヴェイルはフランからラインハルトがリュールにキスをしてたことを聞いた。けどキスしたとしか聞いてなくてどこにキスをしたかまでは聞いてなかった。それ故に・・・

 

 

 

『お姉ちゃん(のほっぺ)にキスしたなら私(のほっぺ)にキスしてくれてもいいよね。おかしくないもんね、兄妹なんだから』

 

 

『分かった・・・ヴェイル、(リュールと同じ条件で)キスしてやる。目を瞑れ』

 

 

とお互いがキスで勘違いしてしまう状況が起きてしまった。ヴェイルがあのときキスについての詳細をちゃんとフランから聞いていたら、あるいはラインハルトがヘタレてほっぺにキスしてればそれでよかったことなのに・・・

 

 

「ほっぺにされると思ってたのに私の唇に・・・あれじゃあまるでお兄ちゃんと私が・・・こ、ここここいっ」

 

 

思い出しただけでヴェイルはまた顔を真っ赤にしてベッドの上で枕に自分の顔をうずめながら足をパタパタさせる。予想外の事態にヴェイルは混乱したものの嫌かと言われたら全然そんなことなかった。けど冷静になったところでヴェイルは理解した。

 

 

つまりリュールはラインハルトと恋人同士がするようなキスをしたのだと。どうしてこんなことになってしまったのかは結局聞けずじまいではあったがキスしてもらったことを思い出すたびにヴェイルの胸は高鳴りを覚える。

 

 

「やっぱり私、お兄ちゃんのことが好きなんだ。お兄ちゃん・・・えへへ大好き」

 

 

そしてここ数日ヴェイルの機嫌もすごく良くなりその様子を見たフランはホッとして胸を撫で下ろした。そして激辛料理を食べさせられてからその辛さのあまり気絶して目を覚ました後、どう言う状況になってるのか気になったフランはソラネルに向かい、ラインハルトの様子を見に行ったら魂が抜けたようにげっそりとしていて居た堪れない気持ちになった。フランは泣きながら「神竜様ごめんなさいごめんなさい」と言いながらマスターモンクとして・・・神竜の守り人としてリカバーの杖を振りまくっていたらしい。




キャラ紹介

ラインハルト
神竜族の生き残りにしてルミエルの実の息子。力や技、防御などのステータスが高く基本ダメージを受けなかったり相手を一撃で倒したりできるが妹に対してのメンタル面は低い。こいつも大概シスコンである。

※ゲーム本編のルミエルはそもそも子どもはいない。


ヴェイル
もう1人の妹こと邪竜ノ娘。嫉妬深いが記憶は人格が入れ替わる時以外とんでないおかげである程度の良識はある。リュール同様ラインハルトに甘えるのが好きだが予想外の不意打ちやカウンターに弱い。たまにもう一つのの人格が残ってるのではないかと疑われることがある。


フラン
本作ではかなり不憫な立ち位置の子。神竜様ファンクラブの名誉会長で神竜様たちがイチャイチャするだけでそれをおかずにご飯三杯食べられると言うやべー思考の持ち主。守り人としての能力は無駄に高い。



本作は基本的にリュールとヴェイルメインで行きますが普通に他のキャラ出す予定です(今のところは)

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