今回はフラン視点の話になります。回し蹴りが得意な子
ーー神竜様たちが尊すぎてつらい。
どうも皆さん初めまして。私の名前はフラン、リトスの地で神竜様の守り人を双子の兄のクランと一緒にやっています。邪竜ソンブルが倒れて平和になって数ヶ月。守り人たちもリトスの民たちも神竜王城の復興などを目指して頑張ったり4つの国との同盟関係を進めたりしています。
そんな忙しくも楽しい毎日ですがフランはその中でも楽しみな時間があります。それは・・・
「それではお昼にしましょうか。フラン、クラン」
「聞いてくださいフラン、クラン!この前兄さんが頭を撫でてくれたんです。それにギュッと抱きしめてもくれました」
リュール様がご自身のお兄さんことラインハルト様のことを楽しく話すこの時間がフランとそしてクランの1番の楽しみの時間なのです。少し前まではソンブルとの戦争とかで大忙しだったのが信じられないくらい平和でこうしてリュール様と一緒にご飯が食べられるだけでも幸せなのに・・・
「今日も自信作って兄さんが言ってましたよ。さぁ、みんなで食べましょう」
お弁当を作ってるのがもう1人の神竜様だから。本来なら従者、紋章士の指輪を集めてた時には仲間たちが分担して担当していたけど世界が平和になってからはリュール様やヴェイル王女の料理を作ること。ラインハルト様がその役を買って出た。元々料理が得意らしいと話には聞いていたけどその腕はお城のコックと大差ない腕で基本的になんでもできるハイスペックぶり。
ラインハルト様がリュール様だけでなく私やクランの分まで用意してくれた時には申し訳なく思ったけどでもラインハルト様は・・・
『気にすんなよ。1人分作るのも複数人分作るのも手間はかからないし。それにこうやってみんなと料理を食べることをきっとあの人も望んでいたから・・・』
そう言ってラインハルト様は優しい笑顔で空を見渡していた。そうっ、ルミエル様はリュール様が目を覚ましたらずっといろんなことがしたかった。親子として過ごしたくてラインハルト様と同じ過ちは繰り返したくない。そう言っていた。もっともそのラインハルト様は実は死んではいなかったけど・・・
「今日も美味しそうなおにぎりとおかずですね」
「ふふっ・・・兄さん、今日も気合を入れて作ってますね」
「今日のおにぎりの具の中身は何かな?」
ラインハルト様は色んな国の料理を知っている。おにぎりというのはソルム王国の秘境、白の砂漠というところの料理の一つらしい。イルシオンのアイビー王女の従者にカゲツさんっていう人がいるけどなんでもその人の故郷とか。お米に塩をふって海苔で巻くというシンプルな料理だけどその中には何かしらの具材が入っている。
人を選ぶ味はあるけど私は昆布やしゃけ入りが好きでクランは梅干しとかが好きとか。
「今日のおにぎりも美味しいです。リュール様ありがとうございます」
「お礼なら兄さんに言ってください。兄さんもたまにはクランやフランと話をしたいと言ってましたよ」
「そ、そそそそんな恐れ多いです。僕がラインハルト様と・・・」
クランはラインハルト様に大きな憧れを抱いている。強さもその一つだけどラインハルト様はとにかく知識が豊富だ。とても千年間眠りについていたブランクがあるとは思えないくらいには。
「それより僕は神竜様の話を聞きたいです。最近ラインハルト様とはどんな感じですか?」
「そうですね。聞いてくださいフラン、クラン!この前兄さんが頭を撫でてくれたんです。それにギュッと抱きしめてもくれました」
「おおっ!それでそれで」
「兄さんからとても優しい匂いがしました。包まれるような安心感、あの感じは母さんと似ています。血が繋がった親子なので当たり前かもしれませんが・・・」
「それからそれから!」
「それから後は・・・ふふっ、内緒です」
「ええっ、そんなー。何が、何があったんですか!リュール様。気になりますよ!」
そう言って駄々をこねるようにクランはリュール様に問い詰めるけど満面の笑みで「絶対に教えません、私と兄さんの2人だけの秘密です」と言った。
尊すぎて口から吐血しそうになるのをなんとか抑える。そうっ、私は・・・私だけは知っている。あの日、何があったのか。私はソラネルに用事があって出向いていた帰りだった。神竜様がたまたまお休みしている日でラインハルト様と過ごすと聞いてるので様子を見に行ったら・・・・
「えへへ」
そうっ、神竜様たちが熱い口付けをしていたのです!フランの心臓も思わず高鳴りそうなくらいにそれは尊いものでした。キス待ちのリュール様にそっと口付けするラインハルト様。思い出すだけで・・・
「もぐもぐ・・・」
「ふふっ、フランはいつも以上に美味しそうに食べますね。けどおかずには手が伸びてませんが大丈夫ですか?おにぎりばかりで」
「問題ないです、だってラインハルト様がリュール様に・・・」
「フラン・・・」
「・・・ひゃいっ」
思わずポロッと漏れそうになりリュール様が笑顔で圧をかけてくる。話すな話すなと表情がそう訴えていてフランは大人しくお口チャックした。
「・・・フラン、もしかして何か知ってるのですか」
「・・・ナ、ナンノコトカナ?フランハナニモシラナイデス」
そう言うとクランはじーっと私の方を見る。私は嘘をつくのが下手だ。けどリュール様が秘密にしてることを勝手にフランが話して怒らせる方がもっと怖い。ヴェイル王女ほどでないにしろリュール様も大概嫉妬深いところはある。おそらく本人には自覚は無いと思うけど。
「まあいいです。神竜様が話したくないなら詮索はしません」
「ありがとうございますクラン、それでクラン、あとフランも・・・」
「なんですか?リュール様」
そう言ってもじもじするリュール様。その姿がすごく尊くてそれはまるで恋する乙女!みたいな感じだ。リュール様がこんな表情をする時はだいたいラインハルト様絡みくらいしかない。
「相談したいことがありまして・・・」
「任せてくださいリュール様。神竜様ファンクラブ会長として全力でサポートします。だよねフラン」
「もちろんだよクラン。神竜様ファンクラブ名誉会長としてリュール様のこと全力でサポートさせていただきます」
「ありがとうございます2人とも。というわけで次のステップに進むつもりですが・・・」
こうなることを予想していてあらかじめ私はクランと相談して次どうするかを考えていた。そうっ、名付けて「神竜様のイチャラブ大作戦」である。
リュール様は基本的にすごくしっかりしていて謙虚な人だけどああ見えてすごく甘えん坊だ。ルミエル様の話によると昔も回数こそ少なかったけどリュール様はルミエル様に甘えてたらしい。最もルミエル様の話によると甘えるのがめちゃくちゃ下手だとか。
今思えばリュール様は世間の常識というものに疎い。それは記憶を失ったからとずっとそう思ってたけどそうじゃなかった。ラインハルト様曰くリュール様は元からそんな感じだったらしい。
千年前のリュール様は感情というものを持っていなかった。楽しいこと悲しいこと嬉しいこと色んな感情が欠落していてリュール様の感情は無だったらしい。ラインハルト様が関わるようになってからそんなリュール様も少しずつ変わっていって今はリュール様はよく笑うようになった。
ラインハルト様がそれが嬉しくて嬉しくてたまらなかったらしい。そんなリュール様が初めて私たちに相談してくれた。守り人としてリュール様の悩みを解決したくて聞いたときにリュール様は言った。
『ラインハルトに・・・兄さんに甘えたいんですが甘えるって具体的にはどうしたらいいんですか?』
その時、フランとクランは神竜様の言葉に胸を撃ち抜かれた気分でした。尊すぎて感情がどうにかなりそうで・・・あの凛々しくもかっこよくてたまに見せる笑顔が素敵なリュール様が誰かに甘えたいと言っていた。あまりにも変な表情してたのを見たリュール様は
『あのっ・・・やっぱり変ですかね?今言ったことは忘れて・・・』
『変じゃないです神竜様!いいじゃないですか!リュール様に甘えられる家族にラインハルト様がいるんですから』
『兄に甘えたいなんて妹なら誰も持ってる感情です!妹代表のフランが言うんですから』
とさりげなく自分のことを思いっきり棚を上げたフランだけど神竜様がラインハルト様に甘える姿。それは是非ともこの目で見てみたかった。私は双子だからってのもあるからクランに甘えるようなことはないけど基本妹なんてそんなものだろうとフランは考える。
自分たちが双子の兄妹だったことをこれほど感謝する日があっただろうか。いやっ、ない。そう断言できるくらい私たちはにやける。
ここで有る事無い事をリュール様に吹き込んでしまえばリュール様は実行するだろう。けどいきなりあまり
流石にこれくらいのことならラインハルト様もリュール様にお願いされたら拒まないだろう。リュール様以上にラインハルト様の方が良識を持っている。ラインハルト様が拒否しない程度で少しずつリュール様が甘えられるようにしなければ。
『とりあえず上目遣いで捨てられた子犬のような瞳をしてください。これでだいたいの人は落とせます』
『えーっと・・・こ、こんな感じですか?』
『!?!?!?!?!?!』
リュール様が私に言われた通りに実行した。それを私に対して・・・
やばいやばいやばい、推しが・・・神竜様が抱きついてきた。ど、どうしよう心臓バクバクしすぎて死にそう。神竜様、嬉しいんですけどやる相手が間違ってます。にしてもこれほどの効果とは・・・
こんなことされたら間違いなくラインハルト様も拒めないはず。
「ど、どうですか?フラン」
「・・・b」
私は親指を立ててそのまま倒れる。
「フラン、しっかりしてください。だれか!モンクは!モンクはいませんか!」
「リトスにモンクはフランしかいませんが・・・」
「そうだったあああああああ!フランしっかりしてください!フラン!フラン!」
私はあまりの尊さに生き絶えてしまった。推しのスキンシップは心臓に悪い。油断しないようにしないと命がいくつあっても足りない。グフっ・・・
「リュール様。フランが・・・尊死しました」
リュール様曰くこれで本当にいいのだろうかと私のせいで不安を覚えていた。あと尊死ってなんですか?とキョトンとした顔で聞いてくるリュール様もまた可愛いかった。そう言うところですよリュール様。
そうして数日経った後リュール様は満面な笑みを浮かべていて私はヴェイル王女に問い詰められて酷い目にあった。魔法で拷問された後の怒涛の激辛地獄。思い出すだけで胃が・・・
まあけど、色々あったけどリュール様がラインハルト様に甘えることに成功し、効果はなんでかは知らないけど想像以上だった。というよりリュール様にキスしろって吹き込んだの誰?おかげでいいもの見られたけどね。そんなわけで例の「神竜様イチャラブ大作戦」その2のプランを実行する時が来たようである。
「次はお風呂上がりですリュール様」
「お風呂あがり・・・ですか?」
「神竜様に髪を乾かしてもらってください!」
「髪を・・・ですか」
次のステップはこんな感じだ。湯上がりのリュール様の魅力で誘惑してラインハルト様に櫛を渡して髪を乾かしてもらうことだ。この時大事なのはラインハルト様の膝の上に乗ることだ。
クランにそれは攻めすぎなのではと聞かれたけど大丈夫。私はこ前の一件で確信した。ラインハルト様は思ってた以上にちょろいことが。キスすることよりずっと難易度が低いからラインハルト様が拒むことはないはず。むしろラインハルト様は押しに弱い傾向がまだあるから有無言わさずにそのまま座ってもいいまである。
「分かりました。今日もありがとうございますフラン、クラン。さっそく実行してみようと思います」
「できればヴェイル王女がいない時にお願いしますね」
「???わかりました」
キョトンとしながらもリュール様は頷いてくれた。さてとリュール様からどんなことが聞けるか。想像しただけでよだれが・・・じゃなくてワクワクが止まらない。
私は神竜様ファンクラブ名誉会長としてリュール様を幸せにしてみせます。フランは二度と同じ過ちをしないことを誓いながら。前回の想定外があったとすればカゲツさんが用事でリトスに来ていてリュール様に会ってたことくらいだ。今回は何もないといいけどそこだけがフランはとっても心配になるのでした。
フラン
神竜様ファンクラブ名誉会長。「神竜様イチャラブ大作戦」と称して甘える方法をリュールに教えた元凶。最近は尊いイベント起きすぎて血が足りていない。マスターモンク(リトスの貴重な杖の使える人物)のくせにすぐ尊死する。
クラン
神竜様ファンクラブ会長。本作ではあまり出番がないかもしれない。最近の議題でリトスのモンクを増やそうと考えている。
カゲツ
ソルムの白の砂漠出身、イルシオンの王城兵。手紙を渡す仕事でその日にリトスに訪れておりリュールに余計なことを吹き込んだ元凶。もちろん本人は冗談のつもりで言った。(ブシュロンとの支援会話のノリのレベルくらいで)