いつから悪夢を見なくなったのだろう。お姉ちゃんと出会ったときから?ううんきっともっと前。ハルト・・・お兄ちゃんに出会ったときからだった。私が悪夢にうなされることがなくなったのは。
私はよく悪い夢を見ていた。私の中に巣食うもう一つの私。その私がみんなを・・・お姉ちゃんや仲間達を殺してしまう夢。エレオス大陸が崩壊してそれを喜んでいる私。それが夢だと分かっててもつらくて怖くてその度に私が保てなくなりそうで・・・・
「寝れないのか?ヴェイル」
「ハルト・・・・」
私は黒髪の青年、ハルトと旅をしていた。ハルトは
「うんっ・・・ちょっと怖い夢見ちゃって・・・ハルトこそ寝ないの?」
「あんまり寝なくても問題ないというか・・・正直不眠でも活動できるけど」
とそんなことを言っていた。数日寝なくても活動できるって本当に人間なのと疑ってしまう。まあ本当に人間じゃなかったんだけど。
「寝れないなら一緒にいるか?ほらっ見てみろ。エレオス大陸の空は今日も綺麗だな」
「・・・そうだね」
ハルトは不思議な人だった。初めて会うはずなのにどこか懐かしい匂いがして・・・とても他人とは思えない。1人では寝れない夜もハルトと一緒なら寝ることができた。ハルトが私を悪夢から・・・もう1人の自分から守ってくれるから。ハルトと一緒にいるときはもう一人の私が出てこないから。
「ごめんねハルト。今日もその・・・」
「いいよ。おいでヴェイル」
今日も・・・私はハルトと一緒のお布団に入る。一応異性だということでハルトも始めは抵抗していたけど今はもう諦めたのか受け入れてくれるようになった。
「ハルトはあったかいね」
「そうか?まあ体温は高いかもしれないけど」
そういう意味じゃないんだけどなと私は頬を膨らます。ハルトはとても鈍感だ。人を助けたりして好意を振りまくハルト。感謝としての好意は感じとれるけどハルトに向けられる異性としての好意には全く気が付かない。
興味がないのかそういうのが苦手だったり経験がないのか分からないけどハルトは無関心なことにはとことん無関心だった。だからこそ気になってしまう。
「ハルトはそのっ・・・好きな人とかいないの?」
「好きな人?」
「そうっ、好きな人。この人が気になるとかそんな感じの意味で・・・」
「・・・別にいないけど。あっでも・・・」
「でも?」
「大切な人はいたなぁ」
「大切な人?」
「ああっ・・・感情を出すことが苦手である意味世間を知らなかった奴だけど・・・一緒にいて楽しかったよ」
「・・・今はその人とあったりしないの?」
「・・・・・・・」
それを聞いてハルトは黙ってしまう。そして少ししてから話してくれた。会うべきなのか会わないべきなのか分からないとそう言っていた。今も一応生きてはいるらしいけどあることがきっかけでもうずっと会ってないらしい。ケンカしたわけではないけどそんなことを言いながらハルトは気まずそうにしていた。
それがハルトにとって好きな人なのかはわからないけどきっとハルトの中では特別なのは見ていてすぐ分かった。その人が羨ましく思ってしまう。
「ヴェイルこそ大切な人はいるのか?いやっ、好きな人だっけ?まあなんでもいいけどヴェイルの話も興味があるな」
「私には家族がいるの。パパがいて大切な人がたくさんいるけど・・・」
「けど?」
「パパはすごく悪い人なの。パパのことが嫌いとかそういうんじゃないけどでもパパのやってることが良いこととはとても思えなくて・・・」
パパは・・・邪竜ソンブルはこの世界を壊そうとしている。千年前にリトスの地にいる神竜と住んでいる人たちもろとも消そうとしたことがあった。でもそれはたった一人の竜が命を挺して阻止した。
その名前が神竜「ラインハルト」
私の憧れで世界を救う竜だった存在。私はそんなラインハルトと呼ばれる竜に一度だけ会ったことがある。グラロドンで異形兵に襲われてた私を助けてくれた。敵対関係にあるはずの私を・・・
「困ってる人を見たら助ける。たとえ邪竜だろうとな」
それはあまりにも眩しすぎた。当時ラインハルトはかなり有名な存在でエレオス大陸の各地で起こってる問題をたった一人で解決しているらしい。その力はおそらくパパをも越えていて邪竜信徒やセピア、他のみんなが恐れるほどの強さを持ってたらしい。
けどそのラインハルトは命を落とした。パパの攻撃から街を守るために体全部張って防ぎ切った。その命と引き換えに・・・・
英雄の神竜、ラインハルトは千年経った今でも有名な話だ。そういえばハルトの名前もラインハルトって入ってるけどやっぱり神竜の名前を由来にしてるのかな?
「そういえば話は変わるけどハルトの名前の由来って神竜様から来てるの?」
「・・・まあそんなところかな?」
と言って困ったようにハルトは答えた。よく聞かれるらしくハルトはこんな感じで答えてるらしい。けどハルトも人助けが大好きでその姿はあの日出会ったラインハルトと重なって見えてしまう。
「それにしても君の父は悪い人なのか。じゃあいつかヴェイルの父親に会うことがあったらビシッと言ってやるよ。それでも聞かなかったら一発ぶん殴ってやる」
「む、無理だよそんなの!絶対に。ハルト殺されちゃうよ!?」
確かにハルトは強い。人間の中でも規格外の強さを持っている。こんなに強い人間に私は今まで出会ったことない。
けどもしパパが復活して力を取り戻したらきっとラインハルトくらいの強さを持つ者じゃないと止められない。ハルトが強いと分かっていても無謀だと思ってしまうくらい。
「そうか?やってみなきゃ分からないと思うけどな。それでも強さには自信あるけどな」
うんっ、私のパパが普通なら絶対負けないだろうけどでも私のパパは破滅を導く邪竜だからきっとハルトでは止めることができない。ハルトにはできればパパにあって欲しくない。だから私の正体も知らないままでいてほしい。知ってしまったらハルトはきっと離れてしまうから。だから不安になってしまう。いつかまたひとりぼっちになるのでは?千年間孤独で過ごすことになってしまうようになるのか。怖くて怖くて・・・
「ハルト・・・ハルトはいきなり私の前からいなくならないよね?」
「うーんっ・・・いきなりいなくなることはないと思うけど・・・そうだな。もしはぐれたとしてもすぐに見つけてやる。ちゃんとお前の手を握ってやる。これでどうだ?」
「うんっ!約束っ、ハルト。わたしのお姉ちゃんが見つかるまでよろしくね」
「ああっ、必ずヴェイルのお姉ちゃんに会わせてやるからな」
ハルトと出会って私の日常は大きく変わったと言っても過言ではなかった。ハルトは変に知識が疎いというより流行とか最近の出来事とかに詳しくない傾向があるかわりに昔のことに関してはすごく詳しかったりと本当に不思議だった。
けど今なら全て納得してしまう。異質な強さに千年以上のほとんどの人が知らないようなことを知ってたり、ハルトの名前由来を聞いて苦笑いしたり・・・それは全部ハルトがラインハルトだったから・・・・
〜☆〜
懐かしい夢を見た。ハルトと出会って旅をしてた頃の夢。お姉ちゃんに会わせてあげる約束をしたりパパを一発ぶん殴ると冗談混じりに言ってたけど結果的に本当に殴ったのも事実でお姉ちゃんに会わせるというのも叶えてくれて・・・
「そりゃパパと長い因縁あったから当たり前だよね」
パパが唯一恐れた神竜。それが一緒に旅していてこんなに近くにいる人だなんて思わなかったから。どうして正体隠していたの?って聞いたときにはラインハルトが死んでることになってるってのはある意味好都合だったらしい。
お兄ちゃんは紋章士の指輪は持ってなかったけどそのかわりそれに匹敵するくらいの不思議な指輪を持っていた。名前は変幻の指輪と言って竜族が付けることによって髪や目の色を変えて竜族としてのオーラとか力を隠すことに使える効果があるらしい。
そのかわり力がセーブされるという欠点とか制約とか色々いるらしいけど・・・
「まだ夜が明けていない・・・」
夜明け前に目が覚めるなんていつぶりだろう。お兄ちゃんと出会ってからはよく寝られるようになったのに。まだお兄ちゃんは寝ているのかな?私は布団から出て枕を持ってからお兄ちゃんの部屋を訪ねる。
ノックしてもお兄ちゃんから返事はないから勝手に開けて部屋に入る。ベッドの上でお兄ちゃんは静かに寝息を立てていた。あんなに長く一緒に旅していて・・・家族になったのに思えばお兄ちゃんの寝顔を見るのは初めてだ。旅をしていた頃のお兄ちゃんは私が寝付けるまで起きててくれたり私が起きたときにはすでに目を覚ましてた。
いやっ、そもそもお兄ちゃんは数日寝なくても動けるって言ってたから寝てないのかもしれないけど・・・・お兄ちゃんの寝ているところを見られるのはある意味レアなのかもしれない。平和になった今でも誰よりも寝るのが遅くてそして誰よりも起きるのが早い。
あまりのショートスリープだったからお姉ちゃんが心配してたけど体に問題はないらしい。お姉ちゃんは逆だもんね。寝ることがすごく好きだから・・・
「お兄ちゃんの寝顔・・・かわいいな」
サラサラの髪を撫でる。お兄ちゃんも・・・ハルトって名乗ってたころのお兄ちゃんもこうやって私が寝られるように撫でてくれていた。
お姉ちゃんがお兄ちゃんに頭をなでなでされるのが好きって言ってたけどその気持ちはものすごくよく分かる。私から頭を撫でてってほとんどお願いしたことないけどお兄ちゃんはよく私の頭を撫でてくれる。
今の私はかなり素直じゃないから口に出しては言わないけどそれでもお兄ちゃんは察してくれて頭を撫でてくれる。面倒な妹でごめんねって毎回思うけどそんな優しく気を遣ってくれるお兄ちゃんが大好き。
「お兄ちゃん・・・・」
私はお兄ちゃんの寝ているベッドにお邪魔する。旅をしてたときはこうして一緒の布団で寝てたっけ?あの時のお兄ちゃんは何かと理由をつけては断ろうとしてたなって。
私ね、嫉妬深いからこの前みたいに例えお姉ちゃんでも一緒にお風呂に入ったりしたら怒っちゃうからね。私はそんなの恥ずかしくてとても頼めないから一緒のお布団で今回のことは水に流してあげる。
私はギュッとお兄ちゃんの背中を抱きしめて温もりを感じる。体温が高いからじゃない、こうやってお兄ちゃんを感じられるのが好き。お兄ちゃん、大好きだよお兄ちゃん。
私はお兄ちゃんの温もりと匂いに包まれてそのまま眠りについた。
ラインハルト
変幻の指輪をつけることによって髪の色と目の色が黒に変わる。ちなみに元の色はルミエルと同じ。ゲーム本編ではヴェイルと共に行動する。
あるものを探して旅をしていた
ヴェイル
一人っきりだった頃は悪夢にうなされていたけどラインハルトと出会ってからはそれがなくなりラインハルトといるときは表の人格で保てることが多かった。嫉妬深い自覚はある。
変幻の指輪
ラインハルトの持ってる伝説のアイテム。本作同じで竜族のオーラや一部の力を封印するかわりに髪と目の色を変えることができる。これにより正体を隠して行動しており秘密裏に動くことができた。
あとがき。
アンケートありがとうございます。この感じだと一騎討ちって感じですね。次回投稿は1週間後くらいになります。今日はたまたま投稿早かった。
リュール、ヴェイル以外で主人公との絡みが見たいキャラ
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フラン
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セリーヌ
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アイビー
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オルテンシア
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ミスティラ
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マデリーン(四翼)