悪役貴族は死にたくないので四天王になるのをやめました〜リピート・ヴァイス〜   作:黒川陽継

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190# 啓示

 闘技場(コロッセオ)貴賓席。

 

 闘技の舞台で刃を手に舞う剣闘士達を、タチアナは退屈そうに頬杖を突いて見ていた。

 

「ふむ。あまり見所のない試合じゃのう。異国から来た戦士もパッとせん輩ばかりじゃ。先程の面の女は中々良かったが…そうは思わんか、ローファスよ」

 

「…仰せの通りです。姫巫女殿下」

 

 突然話を振られ、テーブルを挟んで座るローファスは、死んだ目で答えた。

 

 その後ろには、エイダが気まずそうに立っている。

 

「なんじゃ、随分と堅いではないかローファス。タナトスであった時は随分と砕けた口調だったろう」

 

「あれは…素性を隠しておりましたので」

 

 ニヤニヤと笑うタチアナに、ローファスは居心地悪そうに目を逸らす。

 

 ふと、そんなローファスにエイダが耳打ちする。

 

「あの、ローファス様? これはどういう状況です? いつ姫巫女様に正体をお明かしに?」

 

「白々しいぞ。なんで俺の方からバラすんだ。奴に俺の正体を言ったのは貴様だろうが」

 

「そんなまさか…誓って、私ではありません」

 

「なら何故バレている? 以前の会食時、タナトスが俺に繋がる情報は話していない。ボレアスの馬鹿が色々と漏らしていたらしいが、有力な情報は俺がコーヒー好きという程度だった」

 

「それはつまり…コーヒーでバレたという事でしょうか」

 

「そんな馬鹿な話があってたまるか」

 

 コソコソと言い合うローファスとエイダ。

 

 小声とはいえ、その会話が全て聞こえてしまっているタチアナは肩を竦めた。

 

 それなりに広いテーブルを挟んでいるとはいえ、この程度の距離であればタチアナの優れた聴力の前では筒抜けである。

 

「…お主ら、随分と親し気じゃのう? この妾を抜きに仲良くお喋りとは」

 

 にっこりと笑いながら見られ、エイダは姿勢を正す。

 

 タチアナはわざとらしく溜息を吐いた。

 

「悲しいぞ、エイダ。妾と其方(そち)の間で隠し事とは。タナトスの正体がまさかローファスだったとはなあ。妾が幾ら尋ねても知らぬ存ぜぬであったが、あれは嘘だった訳か」

 

 その言葉は責めているようでいて、実に芝居がかったもの。

 

 それはまるで、ローファスのエイダに対する疑いを解く為の言葉。

 

 エイダは苦笑しつつも「商人は信用が第一ですので…」と頭を下げる。

 

 タチアナが庇ったようにも見えるが、エイダが嘘を吐いている様子はない。

 

 何よりこの期に及んで嘘を吐く意味がない。

 

 ローファスは眉を顰めた。

 

「ならばなぜ、俺の正体が…」

 

 タチアナの論を信じるなら、ローファスの正体を漏らしたのはエイダではなかった。

 

 ではなぜ正体がバレていたのか。

 

「姫巫女殿下、参考までにお聞きしたい。なぜ新人剣闘士タナトスの正体が私であると分かったのか」

 

(なんとなく)

 

「…左様で」

 

 なんでもないかのように答えたタチアナに、ローファスはこの女相手に常識的に考えるだけ無駄かと諦めたように息を吐く。

 

 そんなローファスに、タチアナはつまらなそうに首を横に振る。

 

「謙って話すな。お主のそれは妙に芝居がかっているように感じて話し難い。タナトスの時のように話せ。あの口調は自然だった。素に近いものだったのだろう」

 

 嘘を見抜ける程に優れた観察力。

 

 その一端か、タチアナは口調一つからも色々と感じ取れるものがあるらしい。

 

 しかしローファスからすれば、あれは敢えて無礼に振る舞う事でタチアナを怒らせ、タナトスへの興味を薄れさせようとしていたもの。

 

 素性が知れた今、一国の姫を相手に対等な口調で話す訳にはいかない。

 

 礼節は王国貴族としての責務である。

 

「…お戯れを。あれは身分を隠していたが故の芝居。私は姫巫女殿下に対して気安い物言いができる程の立場にありません」

 

(かった)いのう! 以前のように側近(邪魔者)もおらんし、正式な場でもない。少しは肩の力を抜け、妾が許す」

 

「これは貴族としての儀礼です。誰の許しを得ようと、私が振る舞いを変える事はありません」

 

「…融通の利かん男じゃのう、お主」

 

 頑なに貴族としての姿勢を崩さないローファスに、タチアナはつまらなそうに頬杖を突く。

 

 ステリアが襲撃を受けた報復として帝国の首都である中央都市に単騎で攻め入り、襲撃の首謀者である科学者を見事討ち取ったという王国の魔術師。

 

 何とも型破りな奴かと思えば、度を越して真面目な面もある。

 

 本当に妙な男だなと思いつつ、ふとタチアナは首を傾げた。

 

「…そういえばお主、なぜ聖竜国におる? 例の会談後、帝国に色々とやらかした罪で謹慎になったと聞いたが」

 

 ピシリと固まるローファス。

 

 正しくその通り。

 

 ローファスは王命により現在自領にて謹慎中の身。

 

 だからこそ身分を隠す必要があった。

 

「…謹慎は、先日終えまして」

 

「嘘じゃな」

 

 こんなその場しのぎの嘘など、当然秒で看破される。

 

「実は父と喧嘩して、家出を…」

 

「それも嘘じゃ。というかその言い訳は流石に無理があろう。ガキでもあるまいし」

 

「…」

 

 下手な嘘は無意味。

 

 黙ってしまったローファスに、エイダが「ローファス様…今のは流石に無理があるかと…」と追い打ちを掛けるように耳打ちする。

 

 ローファスは無言でエイダを押し退け、タチアナに頭を下げる。

 

「…ここで私と会った事は、どうか内密に願いたく」

 

「えぇー。どうしようかのう」

 

「何卒」

 

「ふむ…そこまで言うなら聞いてやらんでもない。が、一つ条件がある」

 

 頭を下げ続けるローファスに、タチアナは神妙な顔で人差し指を立てる。

 

 どんな条件だと眉を顰めるローファスに、タチアナはニヤリと笑う。

 

「その口調と態度を改めよ。タナトスであった時のように、な」

 

「…巫山戯ておいでか?」

 

「失礼な。ふざけてなどおらん。別に嫌なら良いぞ。今すぐにでも王国に連絡して——」

 

 言いながら椅子から立ち上がろうとするタチアナ。

 

 ローファスはわざとらしく音を立てて蹴りあげるように片足を上げ——タチアナの目の前で足を組む。

 

 そして頬杖を突き、姿勢を崩した。

 

 その態度は、一国の姫君を前にしているとは思えない程に傲岸不遜。

 

 貴族としての姿勢から一瞬で傲慢スタイルに切り替えたローファスは、じろりとタチアナを睨むように見る。

 

「…これで良いか。貴様の注文通りにしてやったぞ、タチアナ・アヴァロカンド」

 

 流石にそれは無礼が過ぎるのでは、とあわあわと焦るエイダ。

 

 対するタチアナは、満足そうに頷いた。

 

「それで良い。お主の無礼は弱者の囀りではない。強者の威風じゃ。妾はずっと、その顔のお主と話したいと思っていた」

 

 タチアナは笑いながらワインの入ったグラスを掲げ、ローファスに向けて虚空に乾杯した。

 

 

 姫巫女の任についた者は短命。

 

 早ければ30代、遅くとも40代には寿命を迎える。

 

 歴代の姫巫女で、50まで生きた者はいない。

 

 短命なのは、同じ家系でも姫巫女の任についた者だけ。

 

 聖竜国ではこの現象を、《霊峰》に眠る《邪竜》の呪いと噂されている。

 

「——とまあ、この話は有名であるし知っておるとは思うが…そんな訳で、妾も例に漏れず早死にする。妾は今二十歳じゃから、後十から二十年の命という事じゃ」

 

 己の死に対し、恐れるでも悲観するでもなく達観した様子で語るタチアナは、だから——と続けた。

 

「お主の子種を寄越せ、ローファス」

 

「なぜそうなる」

 

 何がだからなのか。

 

 話の前後に直接的な繋がりがないだろうがとローファスは眉を顰めた。

 

「言うたであろう。妾には姫巫女として、死ぬまでにより強い子を残す義務がある。お主ほどの男とであれば、歴代最強の子を孕めるだろう」

 

「そちらの事情は分からんでもないが、だからといっていきなり子種を寄越せはないだろう。野鳥の方がもっとまともな求愛をするぞ」

 

「そういった駆け引きは苦手でな。別に夫となって生涯を共にしろとまでは言わん。ちょっと子種を分けてくれるだけで良い」

 

 少しだけ、と何かを摘むような仕草をしてみせるタチアナに、ローファスは顔を引き攣らせる。

 

「物みたいに言うな。それに…生憎と俺には婚約者がいる。なんなら、嫉妬深い愛人もな」

 

「別に気にせんぞ。妾は子を成す義務と愛は別と考えておる」

 

「それは貴様の価値観だ。俺に押し付けるな」

 

 ぐいぐい言い寄るタチアナに、それを一切受け入れずに突っぱねるローファス。

 

 ローファスが素の口調になったからか、お互いに遠慮がなくなり話も弾んでいる。

 

 そんな二人の後ろで、エイダはまあまあと微笑ましそうにコーヒーを淹れ始めた。

 

 エイダの二人を見る目は、娘とその彼氏を見るそれである。

 

「大体、強者なら聖竜国にも山程居るだろう。ボレアスなど良いのではないか? 言い寄られていたのだろう」

 

「ボレアスは駄目じゃ。顔が好かん」

 

「容姿くらい我慢しろ。愛は別なんだろう。子を残すのが貴様の義務、そう貴様は言った筈だ。強さという観点で言えば、奴はまあ…実力は確かだろう」

 

「実力が確か? 冗談を言うな。アレは論外じゃ。戦法も馬鹿げた耐久力を持つ肉体でただゴリ押すだけ、優美さの欠片もない。実につまらん。まあ多少は鍛錬を積んでおるようじゃが所詮は我流、粗も多い。戦士として評価できたものではない」

 

「人の素質など千差万別、才能も含めてそいつの実力だ。ボレアスは剣闘士として最強だった。その結果が全てだろう。それに奴の顔にしても、多少はごついが別にそこまで悪くは——」

 

 言いながらもローファスは、ボレアスの顔が中々頭に浮かばない。

 

 とここで、今更ながらにボレアスの素顔を碌に知らない事に気づく。

 

 よくよく考えればボレアスは、普段鬼を模した兜を被っていて顔の殆どが隠れていた。

 

「…まあ顔は別にどうでも良いだろう。どれだけ醜かろうが兜で隠れているのだし」

 

「いや…顔が好かんと言うたが、よく考えれば妾も彼奴の顔をよく知らなんだな…」

 

 彼奴はいつも兜を被っておるからのう、とタチアナは肩を竦める。

 

「…顔が関係ないなら結局何が嫌なんだ。まさか戦法が好みではないという理由だけで嫌っているのか?」

 

「待て待て、彼奴には他にも色々と問題がある。力に溺れ、驕り高ぶり巷で略奪を繰り返しておった。暴漢そのものじゃ。それに…まあこれは正直、妾の好みの問題なんじゃろうが…ボレアスを見ていると、理由は分からんが無性に虫唾が走る」

 

「…要するに生理的に無理だと?」

 

「うむ、正にそうじゃな。生理的に受け付けん。この身の全てがボレアスを拒絶しておる」

 

 今気付いたとばかりにそういう事かと手を叩くタチアナ。

 

 ローファスは後ろからさっと現れたエイダからコーヒーを受け取り、一啜りすると溜息を吐く。

 

「仮にも自分を慕ってきた相手にその言い草か。流石にボレアスが気の毒だ」

 

「それ、ローファス様が言います?」

 

 少し前まで自らを慕ってくるボレアスを折檻と称して殺害を試みていたローファスに、エイダはドン引きしたようにツッコミを入れる。

 

 ふむ、とタチアナはぼんやりと口を開く。

 

「…我が祖、《大地の竜王》にもボレアスは絶対に駄目だと言われたのでな。そもそも妾と彼奴は合わんのだろう。一緒になっても良い事にはならん」

 

「は…? 待て、今なんと? 言われた(・・・・)?? 《大地の竜王》に…?」

 

 《大地の竜王》はローファスが聖竜国に来るきっかけとなった存在であり、六神の地神に該当する上位神格。

 

 聖竜国の建国者であり、タチアナの先祖。

 

 そしてタチアナは今、その先祖と会話したかのような事を口走った。

 

「貴様、先祖と対話ができるのか…?」

 

「まあな。詳細は言えんが、王宮には歴代の姫巫女が眠る《霊堂》があってのう。そこに居ると、《大地の竜王》が語り掛けてくる事がある。“声”が聞こえるのは姫巫女だけじゃがな」

 

 眉唾であろう、とタチアナは笑う。

 

 姫巫女が先祖と対話できるという事は、別に隠している事でもない。

 

 ただこの話を聞いた殆どの者はこれを話半分に聞き流す——が、それは物語では語られなかった事であり、ローファスにとって聞き流せない情報である。

 

 歴代の先祖が眠る場所。

 

 ライトレス家にもそれと似た場所が存在する。

 

 名を《初代の墳墓》。

 

 最下層には祭壇、そして壇下には棺があり、そのプレートにはライトレスの歴代当主の名が刻まれている。

 

 因みに、祭壇にはライトレスの血縁者が祈りを捧げると、暗黒の精霊を使い魔として与えられるという原理不明のギミックがある。

 

 眉唾ながら、祈りの最中に《初代》より啓示を受ける事があるらしいと父ルーデンスより聞いた事がある。

 

 ローファス自身は聞いた事がないが、少し前、祖父ライナスが《初代》より啓示を受けてステリアに行き、帝国の襲撃を防いだという事もあった。

 

 歴代の先祖が眠り、血縁にのみ聞こえる祖先の声。

 

 似ているなと、ローファスは思う。

 

「…《大地の竜王》が、ボレアスは駄目だと言ったのか?」

 

「む? 信じるのか? 皆、この話をすると冗談と受け取って笑うのだが」

 

「質問に答えろ。ボレアスがなぜ駄目なのか、理由は言っていなかったのか?」

 

 詰め寄る程の勢いで聞かれ、タチアナは驚いたように目をぱちくりとさせながら考えるように己のダークブロンドの髪をくるくると弄る。

 

「理由、理由か。何かごちゃごちゃと言っていたような気もするが…なんと言っておったか…」

 

「ごちゃごちゃって…先祖の言葉だろうが」

 

「うーむ、確か…《闇の神》がどうの、インシ(・・・)がどうのと訳の分からぬ事を言っておったが…」

 

「《闇の神》に、因子…」

 

 やはり、とローファスは目を鋭く細める。

 

 やはりというべきか、レイモンドがそうであったように、物語のボレアスも《闇の神》の干渉を受けておかしくなっていたという事。

 

 レイモンドの召喚魔法は《闇の神》に連なる力。

 

 そしてボレアスの場合は恐らく、その不死身ともいえる頑丈さが該当するのだろう。

 

 こうした《闇の神》に連なる力——因子を持つ者に、《闇の神》は乗っ取りにも近い精神干渉をする事ができる。

 

 ここまではローファスの推察通り、説の裏付けとなる情報だった。

 

 ではやはり、ボレアスを押さえてさえいれば《竜王祭》の邪魔は入らないのか?

 

 否——話はそう簡単ではない。

 

 聖竜国に《闇の神》の因子を持つ者がボレアス以外に居ないとは言い切れない。

 

 そもそもボレアスが押さえられている事は《闇の神》には筒抜けの筈。

 

 ならばボレアス以外に《竜王祭》を邪魔する存在を代役として立ててくると考えるのが自然。

 

 他に候補は——と考えた所で、ローファスはふと思う。

 

 そもそも地神——《大地の竜王》に聞けば良いのではと。

 

「タチアナ殿下」

 

「殿下はよせ。敬称も不要じゃ」

 

「…ではタチアナ。俺をその《霊堂》に連れて行け。少し気になる事がある」

 

「なんじゃ。お主オカルト好きか? 意外じゃのう」

 

「違う」

 

 しかしなあ、とタチアナ首を横に振る。

 

「《霊堂》には姫巫女の家系の者しか入れてはならんのじゃ。そういうしきたりでな」

 

「まあそうだろうな。《初代の墳墓(うちの墓)》も似たようなものだし理解もできる。だが、そこを何とかして貰いたい。重要な事だ。俺が聖竜国に来た理由とも関わってくる」

 

「ほう、それは興味深い」

 

 真剣に言うローファスに、タチアナはふむ、と顎に手を当てて考え、何かを思いついた様に顔を上げた。

 

「…《霊堂》に入れてやっても良い。その代わり、一つ条件がある」

 

「条件…?」

 

 ふと、タチアナの顔が不死身の《魔王》を滅ぼせなどというふざけた要求をしてきた地神の顔と重なり、ローファスは嫌な汗を流す。

 

 タチアナはにっと口角を上げ、その条件を口にする。

 

「妾の夫となれ。然すれば家を同じくする身内として、《霊堂》へ入る事を特別に許可しよう」

 

「…結局そうなるのか」

 

 先祖も先祖なら子孫も子孫かとローファスは歯噛みする。

 

 ローファスは地神とのやりとりを思い出しながら、しかし今回は迷わず答える。

 

「お断りだ」

 

「ふむ。フラれたか。なら《霊堂》は無しじゃな」

 

「だから、そこを何とかと言っているだろう」

 

「お主は頼む側じゃろう? なんでそんなに偉そうなんじゃ」

 

 二人でそんなやりとりをしていると、貴賓席の扉がノックされた。

 

 それにエイダが扉に赴き、対応する。

 

「あー…そのですね…」

 

 エイダが気まずそうにローファスとタチアナを見た。

 

「聖竜国軍《千人長(キリアルケース)》マーズ様がお越しです。その、観客席で姫巫女様を目撃したとの情報を聞いて来たそうでして…」

 

 千人長(キリアルケース)——聖竜国の全ての兵士を統べる者。

 

 即ち聖竜国軍のトップ。

 

 姫巫女お抱えの大商人であるエイダといえども追い返せない相手。

 

 どうしましょうと困り顔のエイダ。

 

「あー…遂に見つかったか」

 

 面倒そうに溜息を吐くタチアナ。

 

 タチアナは現在、側近らを撒いてお忍びでこの場にいる。

 

 当然、側近らは必死こいて姫巫女を探していた事だろう。

 

 そして軍の方に応援を要請していたとしても不思議ではない。

 

 相手が相手であり、タチアナからすれば負い目もある。

 

 追い返す訳にもいかず、タチアナは気まずそうに「…入れてやれ」とだけ返した。

 

 因みにローファスは、大急ぎで暗黒に身を包んで山羊の頭骨を被り、タナトススタイルに変身していた。

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