悪役貴族は死にたくないので四天王になるのをやめました〜リピート・ヴァイス〜   作:黒川陽継

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58# 情

 ローファスは、野鳥の件から魔力探知を常に超広範囲に放ち続けていた。

 

 しかし、それでも尚デスピアによる襲撃を許してしまっている。

 

 こうして目視出来る距離から存在を感じている今この瞬間ですら、魔力が感じられない。

 

「…探知妨害の気配は無い。まさか、魔力遮断か?」

 

「デスピアも魔力遮断を使えるよ。それに、不可視化の魔法も」

 

 ローファスの疑問に、リルカが答える。

 

「…何故知っている? 風神からの啓示か?」

 

「…? デスピアは前回も不可視化と魔力遮断を使ってたよ? 私の隠蔽魔法もデスピアが使う術式を参考にしたものだし」

 

「不可視化を扱えるのは知っているが、魔力遮断だと? そんな情報、夢には無かったぞ…」

 

 ローファスは苛立った様に吐き捨てる。

 

 ローファスが夢として見た物語の情報量は膨大。

 

 流石のローファスも、登場人物の台詞一つ一つや、細かな事は直ぐに思い出せない事もある。

 

 しかし物語に登場する主要人物や、対峙した敵に関する情報は鮮明に覚えている。

 

 物語一章のメインの敵——四魔獣もその例に漏れない。

 

 当然、戮翼デスピアに関する情報をローファスは知っている。

 

 常軌を逸する程に巨大なグリフォンであり、天空都市を住処にしている。

 

 風属性の上級魔法を行使出来、他にも鳥系統の魔物を操る力を持っている。

 

 ローファスが物語から得た情報は膨大だが、しかしそれは全てでは無い。

 

 ローファスは主人公アベルの視点から情報を得た。

 

 問題は、飽く迄も“アベルの視点”と言う事。

 

 アベルは剣と魔法を扱える万能型であったが、特別魔法が得意と言う訳では無かった。

 

 扱える魔法も、剣術と併用したものが多く、バトルスタイルは魔法剣士寄りであった。

 

 魔法技術がそこまで高い訳では無いアベルは、魔力探知を扱えず、それ故にデスピアが魔力遮断を使っていても認識出来ていなかった。

 

 アベルが認識していない事象が、ローファスに伝わる事はない。

 

 ローファスはそれに思い至らず、又、先程の脳内に響いた謎の囁きも気になる所。

 

 しかし現状、戮翼デスピアを前にした非常事態。

 

 ローファスはそれらの疑問を振り払う様に頭を振り、思考を切り替える。

 

 ローファスは大空に滞空するデスピアを見据えた。

 

「…色々と気になる事はあるが、まあ良い。しかしデスピア…こいつは既に四魔獣化済みか」

 

 以前魔の海域で遭遇した特大クラーケン——ストラーフは四魔獣化する前の状態だった。

 

 あれから約二年経過しており、物語の開始も近付いている為、既に四魔獣化していたとしてもおかしくはない。

 

「…いや、魔王は未来の知識を持つ可能性がある。その時点で今更だな。これは無駄な思考か」

 

 ローファスは頭の中で情報を整理しながら、手の中に暗黒鎌《ダークサイス》を生み出す。

 

「さてデスピア、強さはどうだ? 物語通りなら楽なのだがな」

 

 ローファスは自前の魔力で刃が肥大化した暗黒鎌《ダークサイス》を振り被り、デスピアに向けて一息に振るう。

 

 特大の黒い斬撃が放たれ、それに続く様に無数に展開された暗黒球《ダークボール》が一斉にデスピアを襲う。

 

 空を黒く染め上げる程の広範囲の暗黒の奔流。

 

 デスピアは逃げる事すら出来ず、暗黒魔法に飲まれた。

 

「うひゃー…容赦無いなー」

 

 リルカが呆れ気味に呟いた。

 

 これ程の数の魔法をその身に浴びれば、然しもの四魔獣と言えども一溜りも無いだろう。

 

 下手をすれば致命傷、それどころか命諸共消し飛ばしている可能性すらある。

 

 暗黒が晴れ、リルカは目を剥く。

 

「嘘…」

 

 そこには、半透明の膜に覆われ、傷一つ負わずに滞空するデスピアの姿があった。

 

 恐ろしく硬い魔法障壁。

 

 ローファスはそれに、既視感を覚える。

 

 そしてここで、ローファスは呪文詠唱を終えた(・・・・・・・・)

 

「——《命を刈り取る農夫の鎌》」

 

 ローファスの手に、深淵の如き漆黒の鎌が現れる。

 

 完全詠唱の古代魔法。

 

「障壁は魔鯨並。では再生力は?」

 

 ローファスは容赦無く鎌を振るい、直後デスピアの首が両断された。

 

 そして続け様に三度振るい、左右の翼と胴体を両断する。

 

 両断され、バラバラにされた筈のデスピアの身体は、斬撃の軌跡は残るもののしかし切り離される事は無い。

 

 翡翠の魔力が迸り、まるで時を巻き戻すかの様にデスピアの傷が癒えた。

 

「再生力も魔鯨並か。想定はしていたが、ふざけた話だ…」

 

「なに、どう言う事…何が起きてるの…?」

 

 ローファスがまたか、と深い溜息を吐き、リルカは目の前で起きた現状に理解が追い付かない。

 

 デスピアは怒りの形相でローファスを睨み付け、甲高い雄叫びを上げた。

 

 それに呼応する様に大気が荒れ狂い、無数の風の刃が飛空艇を襲う。

 

「《拗れ狂う大気(テンペスト)》か? 風の上級殲滅魔法。つくづく貴様の魔法と同種…いや、真似をしているのはリルカの方だったか」

 

 デスピアが無詠唱で発動したのは、以前リルカが血染帽《レッドキャップ》を相手に使用したものと同じ魔法。

 

 しかしその規模や破壊力は、リルカのものより数段上。

 

 飛空艇は高い機動力を持つが、無数の風の斬撃を全て躱わすのは至難の技。

 

 そしてローファスと同様に、魔法には出鱈目な魔力が込められている。

 

 風の刃が一発でも機体に当たれば一溜りも無い。

 

 迫り来る無数の風の刃を前に、ローファスは自身の影を甲板に広げた。

 

 甲板に広がる影より、海洋竜が四頭姿を表す。

 

「やれ」

 

 ローファスの言葉に応じる様に、四頭の海洋竜全てが、一斉に暗黒のブレスを放ち、一つの極太の暗黒閃に収束される。

 

 極太の暗黒閃がそのまま横薙ぎに放たれ、デスピアが展開していた《拗れ狂う大気(テンペスト)》を消し飛ばした。

 

 四重の暗黒閃を真正面から受け、しかしデスピアは依然として健在。

 

 高密度の魔力で構築された魔法障壁が全てを防いでおり、無傷。

 

 デスピアは持ち前の魔法が防がれた上、反撃まで受けた事に対し怒りの咆哮を上げた。

 

 そして雄々しく広げた両翼に、翡翠の魔力が込められていく。

 

 それはまるで、大業の前の溜めの動作。

 

 ローファスは魔鯨の白熱線を思い起こす。

 

「…小技が駄目なら次は大技、か。戦法が一辺倒、魔鯨と同じで所詮は獣か」

 

 デスピアが両翼を広げた構えから繰り出される技を、ローファスは知っている。

 

 しかしこの魔力密度に、肌で感じられる重圧。

 

 物語通りの技が来るとは考えられない。

 

 そして、もしも件の技が更に強化されており、これが仮に魔鯨の白熱線並の力があると過程するならば、最早飛空艇に逃げ場は無い。

 

「振り落とされたく無くば伏せろ」

 

「ちょ、何を…!?」

 

 ローファスは呆然とするリルカを引き寄せ、身を屈めて魔法を発動させる。

 

「——《光無き世界(ライトレス)》」

 

 飛空艇を中心に、大量の暗黒の霧が生み出される。

 

 それと同時にデスピアの翡翠の魔力が込められた両翼が振り下ろされた。

 

 圧縮された大気が、生み出された暗黒ごと広範囲に叩きつけられる。

 

 デスピアが振り下ろした先の周辺の山岳一帯が、更地と化した。

 

 

 “天蓋墜し”——圧縮した大気を地に叩き付ける広範囲攻撃技。

 

 デスピアの固有能力の一つ。

 

 物語では精々100m程度の範囲の地表を吹き飛ばす程度の威力だった。

 

 しかし今回のデスピアの“天蓋墜し”は比較にならない程に強力。

 

 目測数kmは先まで、山岳の地形を抉り取り更地に変える程の被害を出している。

 

 暗黒の霧は絶えず漂ってはいるが、飛空艇の姿は無かった。

 

 跡形も無く消し飛んだか、そう認識したデスピアは甲高い雄叫びを上げる。

 

 それは目障りな敵を仕留めた、勝利の咆哮。

 

 

 そんなデスピアの——死角。

 

 遥か上空に漂う雲の影。

 

 まるで赤子が産み落とされる様に、影の中より飛空艇が姿を表した。

 

 それはローファスによる影渡り(シャドウムーブ)

 

 影から影へ転移する短距離転移魔法。

 

 影渡り(シャドウムーブ)は個人用の転移魔法であり、本来ならば複数人を転移させる様な魔法ではない。

 

 にも関わらず、ローファスは複数人どころか全長100M弱の飛空艇を転移させた。

 

 膨大な魔力を持つローファスは、持ち前の魔力とその優れた操作能力により、大抵の無理難題をこなしてきた。

 

 しかしそんなローファスも人間である以上、限界点は存在する。

 

 今回の飛空艇の転移は、魔力消費が膨大であったが、それ以上に集中力、精神力をこれまでに無い程削られた。

 

 今回の転移は、正しく限界ギリギリであった。

 

 転移を終えた直後、ローファスはその場に崩れ落ち、両膝をついた。

 

 額からは玉の様な汗が吹き出し、酷く呼吸が乱れる。

 

「ろ、ロー君…!?」

 

 リルカが咄嗟にローファスを支える。

 

「まさか転移したの…? なんでそんな無茶を…」

 

 ふとリルカは顔を上げる。

 

 デスピアの一撃により更地へと変わり果てた山岳地帯がリルカの目に入った。

 

「…は?」

 

 それはリルカの常識から掛け離れた光景。

 

 こんな事が出来る敵は、前回を通して見ても五章にて復活した《闇の神》位なものだろうか。

 

 間違っても戮翼デスピアが放てるレベルの攻撃ではない。

 

 そもそも先程のローファスとの魔法の応酬にしてもおかしかった。

 

 異様な程に頑丈な魔法障壁に、体躯をバラバラに切断されても即座に再生する、不死身とも呼べる常軌を逸した治癒力。

 

 どう考えても、それはリルカの知るデスピアではない。

 

 いや、そもそもこんな敵にどう勝てば良いのか。

 

 少なくともリルカの魔法では、デスピアの魔法障壁を突破する事すらかなり厳しい。

 

「違う…あんなの、前回と全然違う」

 

 破壊力、攻撃範囲が共に規格外。

 

 ローファスの魔法弾幕を受けても傷一つ付かない魔法障壁。

 

 そして不死身とも言える回復力。

 

 ここまでの敵は、前回を通して見ても遭遇しなかった。

 

 或いはこのデスピアは、前回対峙した《闇の神》以上の強敵——少なくともリルカの目にはそう見えた。

 

「ロー君…一回退こう、無理だよあんなの…勝てる訳…」

 

 疲弊した様子のローファスに、リルカは縋る様に言う。

 

 リルカに最早戦意は無かった。

 

 そんなリルカの手を、ローファスは振り払う。

 

 そして左義手の格納から一本の気付けポーションを取り出し、一息に飲み干した。

 

 続いて左義手の魔力蓄積機能を解除し、内蔵魔石に蓄積された魔力を解放して魔力回復を図る。

 

 無理な転移で大量の魔力を消費したが、それでも膨大な魔力総量を誇るローファスからすれば大した問題ではない。

 

 それよりも、過剰とも言える魔力操作により、精神力が疲弊した事の方が問題であった。

 

 しかしそれも、気付けポーションにより最低限は回復し、魔力も多少は補給された。

 

 幾分か血色が良くなったローファスは、リルカを見る。

 

「今更退くなど、何を言っている。天空都市は目前だ。もしここで退けば、次がある保証は無い」

 

 天空都市は、《緋の風》が二年掛けて探しても辿り着けなかった。

 

 もしもここで退けば、次に辿り着ける保証は無い。

 

 デスピアが出張って来た以上、隠蔽魔法によりここまで接近した事も恐らく露見している。

 

 仮に聖女の《神託》に頼るとしても、今回の様にすんなりとは辿り着けないだろう。

 

 しかしリルカは首を横に振る。

 

「それでも…! ここで全滅するよりはマシでしょ。それにあの規模の攻撃、幾らロー君でもただじゃ済まないよ」

 

「あの程度の攻撃で俺が? 貴様、随分と俺の力を低く見積もっている様だな」

 

 心外だ、と肩を竦めて見せるローファスに、リルカは泣きそうな顔でローファスのコートの裾を掴む。

 

「私がロー君の力を侮る訳無いでしょ。ロー君の魔法の力が凄いのはよく知ってる。でも、あのデスピアは明らかにおかしいよ。無策で挑んで良い相手じゃない」

 

「ならば貴様等だけで逃げると良い。あれの相手は俺一人で十分だ」

 

「馬鹿言わないで、ロー君を一人残して置いていける訳ないでしょ…!」

 

 悲痛の面持ちで縋り付くリルカ。

 

 ローファスは目を細め、首を傾げた。

 

「何故、そうも俺の身を案じる? 本来ならば、俺達は元々敵同士の筈だろう…ああ、もしも俺が死ねば、イズの治療が出来なくなるな。確かにそれは、貴様にとって望まぬ展開か」

 

 ローファスの言葉を聞いたリルカは、静かに顔を俯かせた。

 

 縋る様に掴んでいたコートの裾からも手を離す。

 

 リルカは、静かに口を開いた。

 

「そうだよ、ロー君。私達は元は敵同士。前回、私は確かにロー君を殺した。この手で、ね」

 

 リルカは感情の無い目で自らの手の平を眺め、言葉を続ける。

 

「前回君を殺した事、後悔はしてないよ。殺しでもしないと、《影狼》のローファスは止まらなかった。君が生きている限り、君の使い魔——王国を覆い尽くしていた黒い魔物の軍勢は止まらなかったから」

 

「…」

 

 ローファスは無言で、言葉を紡ぐリルカを見据える。

 

「後悔はしてない、けど…」

 

 リルカは一呼吸置き、揺れる瞳でローファスを見る。

 

「前回の君はさ、すっごい恐い人だったんだよ。人を人とも思わない様な、目的の為には人を殺す事も厭わない様な…」

 

「…今の俺と何が違う? 俺も、目的に必要であれば殺人くらいする」

 

 ローファスの言葉に、リルカは少し笑う。

 

「そうだね。ロー君はきっと、そう言う事を必要だからと割り切って出来ちゃうタイプの人。でも…今回のロー君は、少しだけ優しかったんだ」

 

 リルカは「少しだけね」と強調する様に言った。

 

 まるで前回のローファスと比較する様な事を口にするリルカ。

 

 ローファスはその意図が読めず、眉を顰める。

 

「結局、何が言いたい」

 

「…私は前回ロー君を殺した、謂わばロー君の仇。それはこの先、ずっと消えない事実。だから…」

 

「だから?」

 

「協力を願い出た手前、こんな事を言うのは勝手かも知れないけど——仇である私なんかの為に、命を賭けないで。お願いだから」

 

 少しだけ切な気に、リルカは真っ直ぐな目でそう告げた。

 

「…本当に、勝手な話だ」

 

 それはローファスからすれば、正しく勝手な話。

 

 そもそもローファスは、これまでリルカ個人の為に動いていたのでは無く、飽く迄も自身の生存の為に行動していた。

 

 リルカを助けたのは、そうする事が未来のアベル達主人公勢力と敵対しない道に繋がると思ったから。

 

 だからこそ、リルカのその言葉は、ローファスの神経を逆撫でした。

 

 ローファスは苛立った様子でリルカを睨む。

 

「なんだそれは。今更、俺を殺した事に対し、罪悪感でも抱いたか? 少し行動を共にしただけで情が沸いたとでも? なあ、リルカ・スカイフィールド」

 

「そう、だね…そうなのかも」

 

 首肯し、目を逸らすリルカ。

 

 ローファスは、まるで逃さぬ様にその胸倉を掴み、リルカを引き寄せる。

 

「罪悪感を抱くのは勝手だが、それを俺に押し付けるな。迷惑この上無い。それに、言うに事欠いて命を賭けるなだと? 他でも無い俺の命だ、賭ける場面は俺自身が決める。貴様に指図される謂れは無いぞ」

 

 ローファスに凄まれ、対するリルカは今にも泣きそうな顔を見せる。

 

「でも、でも私…ロー君にも死んで欲しく無いんだよ…」

 

 それは、ふと出た感情の吐露。

 

 リルカの瞳に涙が浮かぶ。

 

 ローファスの行動は、確かに己が為のものであったが、それがリルカや《緋の風》を助ける形になっていたのは事実。

 

 ローファスから一方的に与えられた物は大きく、それに好感を抱くのは自然な事。

 

 リルカがローファスに対し、情に近い感情を抱いていたのも又事実。

 

 その感情が恋愛的なものであるかはさて置き、少なくとも死んで欲しく無いと思える程度には、リルカにとってローファスの存在は近しいものになっていた。

 

 ローファスはそっと胸倉から手を離し、リルカから離れた。

 

「…確かに、貴様とは多少なりとも親しくしていたが。意外だな、貴様はもっと計算高く淡白な奴だと思っていた。それとも、それも演技か?」

 

 リルカは鼻を啜りながら涙を拭い、半目でローファスを睨む。

 

「前も言ったけど…ロー君は私の何を知ってるの?」

 

 リルカの問いに、ローファスは少し笑う。

 

「そうだな。人の内面なぞ、結局の所そいつにしか分からん。だが今は一先ず、言葉通りに取っておこう。貴様は計算高い狡猾な女かと思ったが、意外と感情的で馬鹿な奴だったらしい」

 

「何その評価、ひっど」

 

 ローファスのあんまりな評価に、リルカは疲れた様に笑う。

 

 ローファスは甲板の手摺に手を掛け、デスピアを見る。

 

「お喋りはこの辺にしておこう。何度も言うが、勝算はある」

 

「…それ、本当なの? あんなのに、一体どうやって…」

 

「別に、あの手の魔物と戦うのは初めてでは無いからな」

 

「は? あの手の魔物って…あんなのが他にもいるの…!?」

 

「ああ、そう言えば、それに関する情報共有はしていなかったな」

 

「されてないよ!? 結構重要な話じゃないそれ!?」

 

「…別にこちらから情報を与えてやる謂れは無かったしな」

 

 ボソッと出たローファスの言葉に、リルカはわなわなと肩を震わせ、顔を引き攣らせる。

 

「え、私そんなに信用無かった?」

 

「当たり前だろう。元々敵同士だぞ。しかも貴様は、演技の上手い嘘吐きだ」

 

「それは…そうだけどさ…」

 

 露骨に肩を落とすリルカ。

 

 リルカは縋る様にローファスのコートの裾を引っ張った。

 

「…本当に倒せるの?」

 

飛空艇(足手纏い)が無ければ、な」

 

 暗に一人で行くと示唆するローファスに、リルカは諦めた様に息を吐く。

 

「後で色々話してね。フランちゃんの事も」

 

「ああ、後でな」

 

 ローファスは手をひらつかせ、その身を影の中の暗黒に沈めた。

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