嘗て至高だった父へ【OVERLOAD】   作:エーブリス

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えええええええ!?シャースーリューの声、パッチザグッドラックの人ォ!?
深ェもんだな…声優って。





それと何となく察している人も居るかもしれないけど、本小説の幕間的な「いつかの記憶」は話数が5の倍数の時に何かしらフザけます。

ネタの出所は主に不死者のohです。


第15話

 

 

 


 ~なんか大分時空が捻じ曲がった記憶~

 

弐式炎雷

「じゃあ押し入れくらいは――――って、ランドナさんにガーネットさん!?何でロン毛のカツラと死に装束着用してるんですか?」

 

タブラ・スマラグディナ

「あー、二人はですね…予め【先生来て皆が寝静まったタイミングでヌッと出て来て高速ヘドバンとでんぐり返しをしながら生米を貪る謎の亡霊役】として呼んだんです」

 

弐式炎雷

「謎配役過ぎる」

 

ペロロンチーノ

「修学旅行って何だっけ?」

 

タブラ・スマラグディナ

「元ネタも旅館の話ですので」まくら投げもしてたし…

 

 

ランドナ、ガーネット

「「…」」

 

モモンガ

「…え、俺?」

 

ぶくぶく茶釜

「思いっきりモモンガさん指差してるね」

 

ランドナ、ガーネット

「ELECTRICAL」

「COMMUNICATION」

 

モモンガ

「………は?」

 

ランドナ、ガーネット

「「 だ れ に も じ ゃ ま さ せ な い 」」

 

 

弐式炎雷

「何だあの禍々しい壺ォ!?」

 

タブラ・スマラグディナ

「あ、それ悪霊を封じた壺です」

 

ペロロンチーノ

「なんてモン持ち込ませてんだ!」

 

モモンガ

「ヤバいヤバい!俺呪われる!」

 

武人建御雷

「閉じろ!いいから襖閉じろ!」

 

弐式炎雷

「え?

俺この上に隠れなきゃいけないの?」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ”

この言葉を私は某機動武闘伝が発祥であると数年間勘違いをしていたのだが、実際は江戸時代末期より存在する…5・7・7・7のリズムで読まれる、所謂「都々逸」の一つである様なのだ*1

 

というわけで死にはしなかったが、再び先の死に体に戻される程の怒りの鉄拳を喰らったゼンベルは、ゴロンゴロンと大地を転がった。

 

 

「っててててて。

あいつ等、いいモン持ってるってレベルじゃねぇぞ」

 

「わー、また吹っ飛ばされてるー」

 

「またとか言うんじゃねぇよ、お魚野郎。

最初にぶっ飛ばしたクセによぉ」

 

「あぁーー、そう言えばそうだったねー。

――――立てる?」

 

差し伸べられたデルモんの手を借りず「問題ねぇよ」と自力で立ち上がった彼は、そのまま身体のあちこちに付着した土埃を払う。

 

 

今やリザードマン連合はお祭り騒ぎ。

まだまだ警戒は解れぬものの、とりあえずの大勝利を記念して各々が祝い合っている。

 

「んでよ…その大勝利の立役者がこんな所に居ていいのかよ?」

 

「いやいや、私はただトドメだけ持って行っただけだよ~…立役者ってのはさ、やっぱり族長さん達皆じゃないかな?それとアンディ」

 

「それならザリュース一択だな…俺達ぁ、あの時点でヤバくなったらそのまま抜け出せたが、アイツは違ぇ。その傷ついた身体で、更に氷結爆散(アイシーバースト)を至近距離で撃たにゃならなかった」

 

「うぅん…」

 

先ほどから徐々に曇り始めていた彼女の表情に、より影が差した。

 

「フロストペインにゃ持ち主の冷気耐性を付与する効果があるらしいし、何なら念の為にザリュースの体力を優先的に温存してた…けどあの威力だ、アイツに掛かった負担は…そりゃあヤベェもんだろうよ」

 

「あはは、だよね…私が力を使いすぎちゃったから…」

 

確かにあの時のアイシーバーストは、彼女の加護により尋常ではない力を発揮した。

もうあのような力を出せる使い手は金輪際現れないだろう…そう考える程に。本来冷気に完全耐性を持つはずのエルダーリッチでさえほんの僅かには凍り付かせる程の冷気など、そうホイホイと出されては喰らう方はたまったものではない。

 

しかしソレは喰らわす方とて同じ…反動でザリュースへと襲い掛かる冷気ダメージもまた尋常では無く、本当に体力を温存していなければ危ない所だったのだ。

 

 

「謝らないと…ザリュースさんに」

 

「何で謝るんだ、馬鹿野郎が。

おめぇさんの力のお陰で、俺も他の奴らもここまで戦えたってんだよ」

 

…何も上がったのは攻撃力だけではないのだ。

ゼンベルがデルモんの方をポンと叩くその傍らで、いつの間にか近づいていた件のザリュースが「そうだ」と彼女に声を掛けた。

 

 

「おう、丁度いいトコに来たな。

お前からも言ってやってくれ」

 

「そうさせて貰おう――――ダゴン、ここで必要なのは、お前の謝罪ではない…俺達からの感謝だ。

ありがとう」

 

「あなたは只トドメだけを刺したんじゃないわ。

抑えたのよ、犠牲を…それも多くの」

 

此度の戦没者は少ないとは決して言えなかった。

しかし、あの場面でデルモんが出なければ、更に被害は拡大し…やがてはリザードマン全体が壊滅的被害を受け、その果てに勝てたとして…勝利を喜ぶこと等出来なかっただろう。

 

故に、終止符を打った者達の価値は大きい。

 

 

…とは言え、今の空気はとても辛気臭い。

 

「……しゃらくせぇなぁ。

こういう時こそ酒だ!酒でこの空気ごと腹ん中に押し流して、クソと一緒に出しゃいいって相場が決まってんだ!」

 

「あんた、ほんっとうにデリカシーの欠片でも持ったらどうなの?」

 

あまりにあんまりなゼンベルの言動に、クルシュは眉を顰める。

そしてデルモんも何か気まずそうに「あー…」と、両手の人差し指の先端同士をくっ付けながら口を開いた。

 

「私、お酒ダメなんだよね。

まだ18で、未成年だから…とーさんにも怒られちゃうし」

 

「気ィすんじゃねーよ、18なんざ確かに若ぇが十分イケる歳だろ?」

 

「どうなんだ、その誘い方。

――――しかし、魚神の父…か。父もインスマス達の指導者か何かだったのか?」

 

ザリュースの問いに、彼女は首を左右にブンブンと勢いよく振った。

 

「違うよ?とーさんはね…えっと、死体変異動体(ネクロミュータント)っていう…アンデッド種?」

 

「「「…え?」」」

 

流石にリザードマン達は驚いた…立役者の父親が、先ほど敵として立ちはだかったアンデッドの一族だというのだから。

その場にいる3人は聡明、或いは価値観及び世界が広い方なのであまり穿った捉え方はしなかったが。

 

「…お前には驚かされてばかりだ」

 

「あー、でもとーさん…何故か神聖魔法がほっとんど効かないんだよね。

特別な対策でもしてるってワケじゃないのに。あ!でも毒は割と効いちゃうっぽい」

 

「アンデッドなのに、高い神聖魔法耐性?

そんなの居るの?」

 

「いや…俺は旅人だったが、初めて聞いた」

 

「俺もだ。

つうか――――お前、また身内の事ペラペラと喋っちまってるが、大丈夫なのか?」

 

「あ…あー、でも昔「属性の得意不得意なら多少バレても問題ない」って言ってたし…大丈夫かな?」

 

「随分な自信家だな。

…いや、お前の父親、育ての親か?「うん、そうだよ」あぁ…それも当然という訳か」

 

「えっへへ~。

…あ!血のつながりは無いからね!?」

 

「有ったらこえーよ!」

 

属性相性とか関係無く、やられる時は直ぐやられちゃうからねー…と、デルモんは心の声を発したのだった。実際、ランドナの用いる限界ビルドはその極端な性質から、運用する自分自身も相対した敵も生死は一瞬である。

 

 

「…他にも、兄弟や姉妹はいるの?

あ、もちろん公開していい範囲よ、絶対」

 

「うん!私合わせて4姉妹なの、私ん家ーー。

一番上が天使族の変な奴で~…その次が私で~…私の次、って言っても同い年だけど、スライム種の変な奴で~…末っ子が自動人形の凄いヤツ!」

 

「変な奴ばっかだなー」

 

「…もしかして、皆希少種族とか?」

 

「そうかもねー。

お姉ちゃんのはそこそこ同種族が居たらしいけど、私やとーさんは同族を見た事ないってくらいだし」

 

「そうだろうな…神が2人も3人も居たら大変だ」

 

「えへへ~。

違ぇ無ぇ!って奴だね~~」

 

まるでゼンベルのような言動に、もしや良くない部分が移ったのでは?とクルシュとザリュースは容疑者に懐疑の目を向けた。このカップル、デルモんに対してちょっとした保護者気分である。

 

…最も彼女がやたらに危なっかしいというのまるのだが。

 

「な、何で俺を睨むんだよ!」

 

 

…ともあれ、空気は明るくなった。

こんな調子が何時までも続けばいい、そうは思うが…それはあり得ないとも頭が理解している――――心は別として。

 

沈み逝く太陽と共に、最後の夜を迎えようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 ~捻じ曲がり過ぎてしっちゃかめっちゃかになった記憶~

 

ランドナ

「皆、中身は?

僕…明太子っす」

ガーネット

「昆布です」

るし★ふぁー

「リヴァイアサンのソテー」

モモンガ

「あ!るし★ふぁーさんまぁたレアアイテムを勝手に!」

 

弐式炎雷

「あの…亡霊たちが俺の頭上でおにぎり食ってるんですけど?」

 

タブラ・スマラグディナ

「元ネタがこんな感じです」

 

たっち・みー

「元は確か生米でしたよね?」

 

タブラ・スマラグディナ

「無かったので調理済みを代替品として持ってきました」

 

 

るし★ふぁー

「全く、生米ぐらい実装しろよな運営」

 

ランドナ

「コシヒカリ仕様とかはえぬき仕様とか細かい事するぐらいですから――――ゲホッゲホッ!ハウスダストがッ!

 

ガーネット

誰だぁ!こんな狭い部屋ででんぐり返しなんかした奴ァ!

 

武人建御雷

お前らだよ!


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――降伏を…」

 

「つまらない事を言うな、シャースーリューとやら。

…少しぐらい戦おうではないか。勝利の美酒へと手を伸ばす権利くらい、誰にでもあるだろう?」

 

「……悪魔め

 

 

モモンガ――――――――つまり現アインズ・ウール・ゴウンには確信があった。

確かにコキュートスの指揮が完璧だったとは言えない…武人気質で堅物な彼にしては柔軟な戦術だったとは思われるが、指揮官としては素人目に見ても改善すべき点が多く見受けられた。

 

しかし彼の未熟さだけがリザードマン・インスマス連合に勝利を譲る結果を齎したとは、到底思えなかった…恐らくはコキュートスはおろか自分やデミウルゴス等、より知力面で優れた階層守護者でさえ気が付かなかった事実があったのかもしれない。

 

 

…いいや、あるのだ。

彼はデミウルゴスの呪言によって平伏させられたシャースーリューとザリュースから、報告にあった赤バンダナのインスマス・ロイヤルガード…アンディへと視線を移した。

 

彼女は呪いに抗い、真っ直ぐに立ち尽くしている…しかしそれも想定内だ、元よりインスマス・ロイヤルガードが70レベル以上あるのは承知である。

 

「(念の為、映像記録を残せるようにして良かった…いくら何でもインスマスが妙に強過ぎる。高い指揮官職スキルを持っているにしたって、あの海流操作能力の変質の説明にはならない。寧ろアレが可能となる条件はッ――――…やっぱり居るんだ、深海魚神(ダゴン)が…!)…。

さて……話は変わるが、アンディ…だったか?」

 

「私のような者に何か様か?アインズ王よ」

 

「ほう…私を王と呼ぶか…。

まあいい、本題に入ろう――――お前達の“神”は、何処に居る?」

 

「「!!」」

 

二人のリザードマンは思わず息を飲んだ。

この場合の神とは間違いなくダゴンを差すのは、火を見るよりも明らか…自分たちはかなり苦心して隠ぺい工作を行っていたが、やはり力を行使させた事実があると、こうもあっさり感づかれるとは。

 

…しかし彼らの焦りを他所に、アンディは飄々と質問に答えた。

 

 

「神の、存在…そんな物、聖典の中と我らの信仰心以外、何処にある」

 

「とぼけなくてもいい。

あの戦いで見せた数々の力…アレはダゴンが近くに居て初めて使えるものではないのか?」

 

「…アインズ王、神が如き貴公には実感が薄いのだろうが、多くの宗教において神格とは非実体であるのではないのか?

確かに救世主たる実在の人物を崇める宗教は数多く存在するが、それらの救世主も元はと言えば“神の声を聞いた”とされる、いわば代理人であり神は依然非実体だ。

つまり“我らが神”もまた現実に存在するわけではない。元より神とは意味の不在を否定するための――――」

 

ズドンッ!と…アンディの隣で巨大な水柱が立った。

妙な寛容さにかまけて言い過ぎたか?と彼女はここに来て初めて焦ったが…どうも違うようだ。

 

今の攻撃を放ったのは、アインズの隣に居たアルベドの様だ。

アインズも彼女の攻撃は想定外だった様で、どうにも開いた口が塞がらないらしい。

 

 

「口を開けばぬけぬけとッ…利口な蜥蜴と違って、魚は自分の立場も分かっていない様ね…!」

 

「確かに一言多かった気もするが、私が語っているのは事実だ。魔族の者よ」

 

「黙りなさッ――――「止さんかッ!アルベド!」ッ…!、申し訳ありません」

 

とにかくヒートアップし続ける彼女を制したアインズは、誰にも見られない部分で息をなで下ろしていた。

 

「(うわ~、何となく分かってたとは言え、あそこまで怒るなんて…しかし、あのインスマスの言い分も最もだな。大体俺達の世界じゃ結局神様なんて実在しなかったしなぁ…この世界がどうかは知らないけど、違うともまた言い切れないか)…すまなかった、私の部下が失礼をしたな。

そしてお前達インスマスの宗教観だが、言われてみれば確かにそうだ…宗教と神とは、そういうものだったな」

 

「ご理解感謝する、アインズ王」

 

事態はどうにか丸く収まったが、これ以上の問答で得られる情報は無いし伝えるべき事は伝えたとして、彼は偽ナザリックへの撤退を決意したのだ。

 

 

転移門(ゲート)を潜った後にアインズは空かさず部下達へと指示を飛ばした。

 

「…全員、集落へと偵察を飛ばせ。

私も監視を行う」

 

誰一人「何故?」とは聞かなかった。

決まっているのだ、あのインスマスの言葉を我らが主は信用していない…或いは確実に情報の裏を取りたい。

 

 

それにしても…と、彼はリモートビューを開始しながら記憶の引っかかりを探った。

確かにアインズ・ウール・ゴウンのメンバーにも魚人系…つまりインスマスを経由したプレイヤーはいた。しかし彼は最終的に魔法職適正の強い深海魔神(ラハブ)に派生させていた。

 

そもそもプレイヤー種族としてのダゴンはかなりの不人気だ。確かにタンク系としては強力だがそれはあくまで“使いこなせれば”の話、つまり理論値だけが強く実際に運用するとなるとAIの行動に多少運は絡むし他のタンクよりもタスクは多いしでとにかく使いづらく、また強力とは言ってもほんの少し性能を多少諦めるだけで運用が驚くほど簡単な他のタンク系種族が選べるという事実もあった。

 

トドメを差すように、難関種族という立ち位置も後の大型アップデートで“ダゴンよりも難易度は遥かに高いが、ダゴン以上の理論値を誇る2種族”が現れたせいで一種のトロフィーとしての価値も奪われたのだ。

 

逆にラハブは一部スキルによるPvP時のハメ性能が凶悪過ぎて対策も豊富に練られた程である。

 

 

そんな希少種族を選んだプレイヤーなど、そう簡単に忘れる筈もない。

だがアインズはどうにも思い出せないのだ…まさかギルドメンバーである筈がない、41人と1人もいるのがソレだけは忘れなかった。

 

ならば…と、今度はギルメンの知り合いを探った。

 

「うーむむむ…(えっと、先ずやまいこさんの妹さんは…いや、あの人エルフか。

じゃあえっと…ランドナさんの娘達は、よく俺ん所に尋ねて来たのはニモエルちゃんとリリュ…何だっけ?まあこの二人の印象が強くて、残り二人の記憶が殆ど無いな。

…あ!そう言えばランドナさんはリア友のプレイヤーも居るってペロロンチーノさんが!…あぁ、あの人は超長距離精密射撃ビルドだからダゴンにする意味無いだろ。

じゃあ誰だ?本当に)」

 

絞り込もうとすればするほど、迷宮のドツボに嵌っていく。

この無いモノを探すような感覚に陥っているのを自覚した時、同時に自身の偵察作業が一切進んでいない事にも気が付く。

 

 

一旦過去への探りを止め、現状を見る事へと意識を向けたアインズだった。

…誤魔化していた孤独の痛みが、ぶり返す前に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 ~かつての記憶~

 

武人建御雷

「ギルマスギルマス!

今なんかるし★ふぁーさんが素材抱えてスキップしてたが大丈夫か?」

 

モモンガ

「大丈夫じゃないですよ!止めて下さい!?」

 

ぷにっと萌え

「あ、それならランドナさんの付き添いがあるので大丈夫ですよ」

 

モモンガ

「あ、それなら大丈夫――――」

 

ぶくぶく茶釜

「――――じゃないっつーの!

あの人確かに真面目でちゃんとしてそうだけど、それ以上に変な所で感性がズレまくってんの!すーぐるし★ふぁーさんの暴走を助長させるんだから!」

 

やまいこ

「ボク、殴り飛ばしてでも止めて来る!」

 

モモンガ

「お願いしまぁァァァァァ!」

 

 

弐式炎雷

「困ったちゃんと、不思議ちゃん…か」

 

武人建御雷

「一緒にしたら化学反応を起こすタイプってか…」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

族長達は、ここぞという所で非情にはなり切れなかった。

デルモん及びにの実力は未知数な部分が多いのだが、アインズ・ウール・ゴウンとその配下たちの実力は彼女と同等の域…というより、それ以上のモノに感じた。敵は一人とは言え、共に前線へと引っ張れば死なせてしまうかもしれない。

 

そんな所へ、自分たちの大恩人――――だが部外者の、それもいたいけな少女を送り込む事など出来なかったのだ。

 

 

他にも様々な懸念が存在したが…多くはそう言った感情だった。

 

『すまない、皆…私から、一つ頼みがあるんだが…本当に、すまない。無理を承知で頼ませてほしい』

 

『大丈夫だアンディ殿…我々もそのつもりだ』

 

「ッ!?!?

わ、私はまだ何も――――』

 

『ダゴンちゃんだけでも逃がしてほしいんでしょう?それには私達も賛成よ。

仮に此処で勝てても優位なのは依然向こうの方、撤退の条件にあの子の身柄を要求されるかもしれないわ』

 

『ッ…だ、だが…魚神様の力があれば、あの悪魔たちを追い払える可能性が…』

 

『神である以上に幼子ですよ、あの子は…これからの戦いの責任を背負わすには、まだまだ小さすぎる』

 

『そうそう。

うちの わかいせんしも のこすから』

 

『キュクーの言う通りだ。

確かに我らはどんな外法も厭わない気だった…しかし同族の未来の為だと言って、他種族の若い命を踏みにじるのは看破できんよ』

 

『死ぬのは我々だけで十分だ…あの子を、恩人を死なすかもしれない可能性よりはずっといい』

 

『んじゃ、俺が逃がしてくらぁ。

族長つったって、ヤケクソの酔っ払いなんざァ奴らも見ちゃいねぇだろ』

 

『たのんだよ ゼンベル』

 

『ッ…すまない、皆』

 

『いいって事よ。

――――お、この酒貰うぜ』

 

それでゼンベルは、人気の少ない集落の中を歩いているのだった。

誰の飲みかけかは知らないが、とりあえずインスマスから少数だけ振る舞われていた缶ビールを喉の奥底へと流し込む。

 

「いーい酒じゃねぇか…これこそ特攻隊の晩餐って奴よ」

 

リザードマンの酒より数段質のいいソレを味わうと、彼は缶を握りつぶしてそこら辺に捨てた。

マナー違反がどうとかは兎も角として、これよりもう一つの大仕事を行う所だった。

 

 

…今デルモんは寝ているか、そうでなくても現状を理解していない筈だ。

 

「っ…ぃよーう、いるかー?お魚野郎?」

 

「ん…?

どうしたの~、ベルちーん」

 

相変わらずゼンベルを珍妙なあだ名で呼ぶ彼女は、眠たい眼を擦りながら出て来た。

…大丈夫だ、ちゃんと何も知らない。

 

「いやぁ、あのな?そのな…あぁ、作戦が決まったんだよ、次の」

 

「…それで?」

 

「えっと、なんだったかぁ。

――あー!思い出したぜー!ホラ、真後ろの方角よ」

 

彼の大きな右手で、敵の本拠地があるという場所とは真逆の方角を指差した。

デルモんは黙ってそちらを見る。

 

「どうやら敵の拠点はそっちにあるってんだ、お前とインスマス共ぁよ、そっちに真っ直ぐ進んで――――あぁ、敵の警備には気を付けろよ?とにかくそっちに真っ直ぐ行くんだよ」

 

本人でも分かるぐらい、杜撰な作戦…いいや、こんなものは作戦とすら呼べない。

ただ目の前の友人(ダチ)を逃がす為だけの、必死で拙い嘘をどうにかあの手この手で伝えようとしてる。

 

 

…それをただ、デルモんはやはり黙って見つめていた。

ずっと、ずっと…まるで心がどこにもないかの様に。

 

流石に不安を覚えた彼は「おい」とか「聞いてるか?」とか、大きな体を使って棒立ちする目の前の少女へと語りかけた。

 

 

 

 

――――ふと、無表情だった両口角が徐々に吊り上がる。

そして目も笑って…いいや、多少の悲しみさえ含む目元を、それさえ抑え込んで屈託のない笑顔を作った。

 

…笑顔の意味を一瞬分かりかねたゼンベルは、今度はこちらがフリーズしてしまう。

 

「……ありがとう」

 

この一言と、真意の理解はほぼ同時だった。

一気に集落の道を駆け抜けようとした彼女を、身を挺してゼンベルは止める。

 

力量の差は歴然だった…だが諦める訳にも行かない。

 

 

「待て待て待て待て!!

何処行くんだ!行き先はそっちじゃねえ!」

 

「大ッ…丈夫、だっ…て!

ちゃんと逃げるからッ…!安心してッ…」

 

「テメェ…!

そう言って逃げもせず、真っ先に突っ込もうって魂胆だろうが!流石に分かるぞ!」

 

ズリズリと、彼女はしがみ付く大柄なリザードマンを引きずって最前線へと向かう。

 

「だったらそのまま行かせてよ!

これ以上友達を見捨てたら、私…自分が分からなくなっちゃう!」

 

「ッ!クソ!

だからって、俺にダチに対して「死にに行け」って言わせるつもりかよ!俺だけじゃねぇ、皆テメェを放っとけねぇんだ!」

 

「ッ…!!!」

 

一度、デルモんは足を止めた…分かっている、皆自分を助けようとしているのは分かっている。

それでも…。

 

「じゃあ…」

 

「!…」

 

じゃあいっそ“死んで来い”って言ってよ!!

大丈夫だから、ね?私強いから!」

 

「大丈夫じゃねえんだよ!馬鹿野郎が!

おめえと同じくらいだぞあいつ等、もしかするとお前よりずっと強いかもしれないッ!」

 

「うん…そうだよ?私よりいっぱい強いプレイヤーはいたもん。

でも、私は絶対…――――!」

 

 

半ば泣きじゃくるように、意地でも前に進もうとする彼女の元へ――――一縷の流れ星が落ちて来た。

その所々から、青い炎を噴き出しているその流れ星の名前を、正体を…デルモんは良く知っている。

 

「な、何だ…?」

 

その“流れ星”は、姿を人型に帰るや否や、今も右脚に縋るゼンベルへと興奮気味に駆け寄った。

 

「カキちゃん…!」

 

「ねえ!私の姉に何か!?」

 

少女の脚に縋る大男など、種族がどうあれ見た目は変態のソレだ。

まるで自分の姉から悪い虫を払うかのような態度で流れ星――――もといカーキィは彼へと怒鳴った。

 

 

余りの急展開に、彼はやや置いてけぼりを喰らう。

 

「はぁ?――――姉だぁ!?…あぁ、そうか。

お前が末っ子の…すげぇ奴ってのか」

 

しかし状況が状況なのか、飲み込みも大分早かった。

するとゼンベルは「なら話が早ぇ」と、デルモんの足から手を離して立ち上がる。

 

「いいか?おめぇのねーちゃんを…あっちだ、あっちの方向にとにかく遠くへ連れて行け。

ここはもう危ねぇんだ」

 

 

この一言で、カーキィは自分の姉が今どんな状況に置かれ、どんな行動を取ろうとしていたのかを…全て、一を聞いて十を知ったのだ。

もう何年も一緒に暮らした姉妹同士だ、言葉が無くても伝わる物がある。

 

「ッ…あんたまたパパに言われた事忘れたの?

それと――――ありがと、蜥蜴の人。それとごめんなさい」

 

「あぁ…とにかく遠くへ連れてけ、いいか?とにかく遠くだ」

 

「分かったわ」

 

カーキィはとっととデルモんの脇を抱えて、バーニアを全力で吹かした。

二人の足はあっという間に上空数十mの所まで持ち上がり、ゼンベルの大きなシルエットさえ瞬く間に小さく見えてしまった。

 

 

…思った以上にあっけなく逃がせたが、これで良かったのだが。

身体が軽くなったと、彼はそのまま戦地へと赴く為に来た道を戻ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「離して!離してよカキちゃん!

今行かないと…行かないとベルちんが、ザリュースさんが、クルシュおねーさんが…皆が!皆死んじゃうよ!」

 

「うっさい!喋るな!

軌道がブレるっての…それともうアタシら見られてっから、ホンットに動かないで!」

 

「じゃあ降ろして!狙いは私!」

 

「そしたらアンタまた危ない所に突っ込むじゃないの!それを黙って見てろって――――出来ると思ってるの!?」

 

一方、上空を猛スピードで飛ぶ二人は、そこで墜落の危険など顧みずにもみくちゃに取っ組み合っていた。

種族的ステータス的に掴み合いで勝る姉を、カーキィは空中制御の利を生かしてそのままデルモんを抑え込み、より速度の出る巡行形態へと移る。

 

「戦わなきゃ…戦わなきゃいけないだよ!私!」

 

「ああもう!それで怪我したらパパに何て言うワケ!?

パパに戦争させるつもり!?誰と戦ってたか知らないけど!」

 

「っ…!」

 

流石に父親を引き合いに出されてはこれ以上抵抗する事は出来ず、悔いても悔い切れない悔しさを噛み締めたまま…リザードマンの集落から遠く遠く離れていった。湿地など目を細めなければ見る事は叶わず、周囲の湖も掌に収まってしまいそうだった。

 

それが余りにも寂しくて、悲しくて…感情が制御できずどうしようもない。

 

 

『あーいてるとですぅ、カーキはんどーぞー』

 

「こちらゼータプラス、どーぞー」

 

どうにも久々に思える――少なくともデルモんにとってはそうだろう――アストロノーツ山田の声が、カーキィの無線越しに響き渡る。

 

『取り敢えずあんたらを見張ってたっぽい奴らの気は引いておきましたわ。

リモートビューとその他諸々で思いっきり睨んでやったら、奴ら豆鉄砲喰らったみてぇにギョッとしてやんの』

 

「やっぱシンメツジュウシンに暗黒騎士とフジュツシの組み合わせは最強ね。

――――で?どんな奴だった?」

 

『姿までは見れへんでしたわ。

なんせ鏡確認するので精一杯で』

 

「まあ、アンタにしちゃ上出来。

…追手も全部撒けたみたいだから、そのまま屋敷に戻るわ。それじゃ」

 

『ぬわーい』

 

気の抜けた返事を最後に、ガチャリと通信の切れる音が空を切る轟音に混ざり――――それからカーキィもデルモんも喋らなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

…選べなかった、選ばなかった、その道の先はどんな景色だったのか?

泣きじゃくっても、叫んでも晴れる事のない懺悔がそんな妄想をかき立てる。

 

怒りをぶつける先は何処にもない…その事実に、只涙が滝の様に流れ落ちる。

 

 

頭から、出て行け…こんな感情――――そう表情を歪ませる幼い瞳は、曇天の空を睨んだ。

 

 

 

 



例えば俺が俺じゃないとして、

お前はお前だと言いきれるのか?

砂の器を壊して、こぼれた

心を拾って集められるか?

 

誰かの呼ぶ声が耳鳴りに変わった。

時が止まったみたいだ。さあ、目を覚ませ。



 

 

「さよう、なら…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



深い闇を俺は抜け出した。

疾風(はやて)みたいに逃げ出した。

生きた屍みたいだった俺達は…



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、随分帰りが早かったなゼンベル。

本当にちゃんと送ったのか?」

 

「お迎えが来たんだよ…アイツの妹だ」

 

「あぁ…スライム種か、自動人形の…」

 

「多分自動人形の方だ。

空飛んで帰ってったぜ」

 

「そうか。

ソレは良かった…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



壁の外へ。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後に、落ち込むデルモんの元へとメッセージが届いた。

 

『デルモ様、聞こえますか…?

突然の伝言で申し訳ありません…少し、余裕のない状況なので、こちらからの一方的な通話と…なります。

既に感じられていますでしょうが…インスマスは私以外消滅しました……ですが、リザードマン達は、問題ありません。彼らには………まあ、決して未来は暗くはないでしょう。

族長達も、結果的には無事となるかもしれません…

――――それと、ゼンベル殿から…言葉を預かっております』

 



また会おうぜ、地図にない場所で。



 

そして私も…あなたが神様で本当によかった。

アンディはそれだけを言い残し、ブツリと通信を切った。

 

間もなくして、彼女の消滅が確認された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奴のは、犀じゃないな。

俺は、蛇か牛か…」

 

 

 

*1
pixiv大百科調べ




るし★ふぁーさん、絶対修学旅行先で仏像の指ポキッってやる。多分デザインの研究の為とか言って柵乗り越えてベタベタ触る。そういう強めの幻覚が見えそう…。


それと第1章はまだまだ続きます…撒いておきたい種はまだあるんじゃ。

設定集、12話後書きみたいな形でどうかな?

  • アリだと思われ
  • 普通に後書きに書いて
  • 貼る必要も書く必要もない、他で勝手に
  • どむどむばーがー(無効票)
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