嘗て至高だった父へ【OVERLOAD】   作:エーブリス

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かなりの難産でしたよ、特にナザリック側パート。


第19話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 ~いつかの記憶~

 

ランドナ

「あれが…元びっくりボックス」

 

モモンガ

「本当にその名前は勘弁してください。

…所で、どうしたんですか?いきなりパンドラズ・アクターを見たいだなんて」

 

ランドナ

「いやぁ…ちょっとした興味なんですけどね?あのNPCの後ろにさ、シュタールヘルムを装備した甲冑兵を二人立たせたら…凄い映えると思うんですがね」

 

モモンガ

「………あぁ、確かに。

ちょっとやってみましょう――――って言っても、今からデザインを?」

 

ランドナ

「もう用意しております」

 

モモンガ

「早ッ…」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

呪いとは、去り行く者が残る者へと残す、深い擦り傷である…とは言えないだろうか?

それは意図したものでは無かったかもしれない、寧ろ祈りや願いですらあったのだろう。だが…呪いを受けたモノにとってはソレが元々何であるかに関係なく、ただ“呪い”であるだけなのだ。

 

なればこそ呪いとはかけた者にしか…或いはかけた者に纏わる其れらにしか解けないのも頷ける。

だが、時に「呪い」と「祈り・願い」の区別さえつかぬ時がある…そうした時に、残る者は一体何を悩むと言うのか…或いは悩まず、ただそれを呪いとして受け取り続けるのか?

 

 

運命は変わらない…いずれにせよ呪いを“かけた者”と“かけられた者”は必然的にまた巡り合う。

その瞬間になって初めて分かるだろう、解呪か否か――――或いは呪いの正体(祈り・願い)に気付くか。

 

 

 

 

 

ま、それはそれとして(某マーン風)。

堅苦しい話はさておき、今はちょっとした…やや下らないような(或いはその逆でもあるような)出来事に付き合ってもらう。

 

 

『あー、所でアインズ様』

 

『?、どうしたのだパンドラズ・アクター』

 

『ランドナ様と言えば、現在宝物殿にて巡回警備を行っている“翁達”に顔を見せてはどうでしょう?

優秀な兵士達ではありますが、何時ボケが始まるのか分かったものではありませんので』

 

『翁…あぁ、そうか。

今は少々時間が無い、また今度やるとしよう』

 

これはモモンガが“一足早く”宝物殿に訪れた時…正確に言えば、そこにランドナより預かった【四番口径式放呪砲・双(フォーゲージ・カースドフォースⅡ)】を収納しに行った時の…少し後の話だ。

 

 

結局あれから少なくない日数が経ってしまった。

単に忙しかったのもある、自分の黒歴史たるパンドラズ・アクターをそうまじまじと眺めたくもないのも理由の一つだ。だがそれ以上に…その“老人達”の製作者がランドナだという事もあるのだ。

 

「………ハァ(あのシージ達だけで割と散々だったのに、今度はどんな設定残したんだ)」

 

普段何を主食として生きているのか…嘗てのアインズ(鈴木悟)と同じように不味い加工食品を食していたかすら(もっと酷い何かを食べていたのではないかと)も怪しく思える。

そんなランドナ独自の世界観、言うなればランドナイズムへと命が吹き込まれ、実際に動き出した今この瞬間…彼は只々その世界観が持つシュールさの非合理的というかなんというか、兎も角途方もない扱い辛さを感じたのだ。

 

まるで創造主本人が時折見せた、“遊び”という感覚を欠落した様な様子…それに対する“感情の反逆”であるかのように、今も各領域でそのべらぼうなでたらめが静かに暴れ狂っているのだ。

 

 

 

 

「あ、あ”あ”あ”ッ!?

あ…足腰がァ」

 

さて、たった今アインズの目の前で腰を痛めているNPCが、正しくその一例なのだが…それをシュタールヘルムや赤い眼のガスマスク等といった、所謂ドイツ第三帝国的なデザインが目を引く真っ黒い甲冑を身に纏った、重装甲の兵士がやっているのだから可笑しさが止まる事を知らない。

 

「あ、あぁ…(えっと、足腰を痛めてるから…名前は確か)グルッペンよ、大丈夫か?」

 

「!?、も、モモンガさ――――おっと、今はアインズ総督閣下でしたな。

話は大佐殿より聞いておりますぞぉ――――ッづぁ!だだだだだだだだ、今度は節々の痛みがぁ…」

 

「む、無理はするなよ!?

休むといい…というか休め」

 

この今にも崩れ落ちそうな程に年老いた人狼(ワーウルフ)こそ、ナザリックの宝物殿にて巡回警備を行う特殊部隊…その名も老人(ROH-JIN)が一人、尖穿角のグルッペンである。

 

直立した敬礼姿を一切崩すことなく、しかし加齢からくる足腰――――いいやそれだけに留まらない全身の痛みに耐える姿に、腕どころでは済まされない強烈な痛ましさを感じ、休息を命令する。

 

しかしグルッペンはそれを「有難き心遣いではありますがのう…」と、やんわりと――――しかし強靭な、確固たる意志を持って命令を拒否した。

 

「ワシらは最早老い先が長くない…此処で地に伏せば生への気力が削がれ、忽ち死が迎えに来る事でしょうな。

警備の使命を帯びる身として、アインズ様に仕える“犬”として…それは許されんですわい」

 

「むむむ…(確かに、下手に寝かせたらそのまま昇天しそうだよなぁ…死なせる訳にも行かない、けどさ…どうしよ、これ)。

――――わかった。であれば、引き続き警備を頼む。だが同時に己の身体を労わるのも、お前の大事な任務だ。よいな?」

 

「仰せの通りに――――あだぁあッ!は、歯茎がぁ!」

 

「(歯茎…?)う、うむ。

所でグルッペンよ…他の老人(ROH-JIN)部隊の者の所在は分かるか?」

 

「む…あやつらにも顔を見せて頂けるとは。

恐らくアインゾッツはこの道を真っ直ぐ進んだ先に…そしてフューラー孤寝島は、どこでしょうな?あやつの足取りだけはどうにも掴めませんわい」

 

しゃがれた声で彼は「何せ…」と話しを続ける。

 

「ワシは寄る年波が身体に来た様ですが…他二人は、どうにも頭が老いとるんです。

至高の方々に、とんだ失礼が無ければよいのじゃが…」

 

「そうか。

ありがとう」

 

「とんでもございません…それでは」

 

少し憂うようなグルッペンを尻目に、アインズは次の者へと会いに行った。

 

 

 

教えられた行き先をそのまま辿る内…奥から明らかにどたどたとした騒がしい音が響いていた。

オマケに明らかに怒号と思われる音声さえ響く、そしてその声はしゃがれていた。

 

「ええい!何処だ!侵入者め!

このような面妖な小細工等仕掛けおってからにッ…!」

 

「ど、どうしたのだ?」

 

雷属性が付与された鋸刃の剣を構える老人(ROH-JIN)の二人目…剛右腕のアインゾッツは、明らかに穏やかな様子ではない。

 

「ッ!?あ、アインズ総督閣下!?

お下がりくだされ!侵入者であります、それも幻術系の!」

 

「げ、幻術?(いや…そんな様子は無いけど)」

 

一応、一介の100レべプレイヤーとして幻術を見破る術や軽いスキル等は持ち合わせているアインズだが、そんな彼でもソレらしき痕跡は見つけられなかった。このレベルの幻術使いともなれば数が限られる…それこそ星海使(スターゲイザー)の様な別口且つ凶悪な(幻術とはまた別系統の)スキルを使われた可能性もあるのだ。

 

しかし今回の真実は、また別の所にある様だった。

 

「(あー、確か“認知症により非現実・非論理的な思い込みをしょっちゅう患っ”ているのがアインゾッツだったな…話は聞いてみるか)アインゾッツ、一体どのような幻術なのだ?」

 

「はっ!

私めがこの回廊を、ここから左に3度曲がりました所、何度行っても此処に戻って来てしまうのであります!」

 

「…?、????(え、何?俺が可笑しいの?そりゃ回廊を三回同じ方向に曲がったら戻って来るよね?)」

 

一瞬、アインズは想定していたスターゲイザーの現実改変スキルを喰らったのかと思っていたが…どうも認知症設定という線が濃厚になって来た。

 

「(ここは一度、言ってみるか…)なぁ、回廊を三度曲がれば戻って来るのは…幻術でも何でもない、当たり前の事ではないか?」

 

「なんとッ!?」

 

アインズの話を聞いた一人の老人(ROH-JIN)は、正しく「あり得ない」と言った表情をして見せた。

だが次の瞬間には、しかし…と自問自答へと陥る。

 

「総督閣下が嘘や勘違いなどをするハズが…ま、まさか!閣下自身、敵の幻術に囚われて――――いいやありえん!それこそありえんのじゃ!至高なる御方に通じる幻術使いなど、同じく至高の御方のみ!アインズ様以外の御方がおらぬ今そのような事が、いやそもそも至高の御方同士で化かし合う理由など――――」

 

「う、うん。

と…とりあえず、引き続き警備の方を頼むぞ、アインゾッツ」

 

老人介護の経験がない彼はこれ以上アインゾッツをどうする事も出来ず、最後の老人部隊の元へと向かう事にしたのだ。

 

 

 

さて、ここで一つ問題が発生する。

最後の一人であるフューラー孤寝島の所在地がどうしても掴めないのだ。

 

「たしかフューラーは…(確認した設定によれば“かなり痴呆気味で、一度放浪させてしまうと何処へ行くか一切分からない。発見は奇跡に頼るのみ”だったっけ…老人部隊全員、ランドナさん特有の「発想のトンチキ」とはまた違う気もするけど、結局厄介だし…いや、シージ達はシメる時はちゃんとシメてたんだ、肝心な時にはきっと――――)…。

でも、おじいさん達なんだよなぁ…」

 

一体どうしたものかと悩むアインズの脚に、何かがぶつかる。

黒づくめのゴツゴツとした物体は、蹲ってはいるものの…彼にとって非常に見覚えのあるモノだ。

 

「(まさか…)フューラー…?、フューラー孤寝島か?」

 

他の隊員と同じ、シュタールヘルムと赤い眼鏡のガスマスクが特徴的な黒甲冑を装備した最後の老人(ROH-JIN)・柔左脚のフューラー孤寝島は、一心不乱に手元を動かしている。

 

何をしているかと思えば、どうやら立体パズルに夢中のようだ。

更には何かうわ言まで垂れ流している。

 

「ぁ…ぅあ…」

 

「おーい、フューラー?

聞こえてるのかー、孤寝島ー?おーい、おじいちゃーん大丈夫ー?――――っと(いけない、誰かが見てたら不味かった…)」

 

思わず支配者キャラを忘れ、素の性格が飛び出てしまったアインズは咄嗟に気を引き戻し、今一度フューラーへと問いかけようとした――――その時だった。

 

 

「…けよ」

 

「ん?今何か…」

 

「…を、つけよ」

 

「む?何をつけると――――」

 

何度目だか、妙なうわ言を聞き返したその瞬間…ぐるりとフューラーの首が回り、主の顔をその赤い眼鏡で見つめる。

 

「ッ…」

 

気を付けよ…。

翡翠が如きの子は、恐らくは獅子身中の虫…

 

「!?…一体」

 

寄り添うようで…大切な全てを奪わんとする。

確かではなかろう、だが…用心せよ

 

突然舞い降りた…番犬の警告。

それは嗅覚に優れた犬達だからこそ気付ける…身近な奥底の狂気か。

 

瞼も眼球も無い眼をぱちくりとさせる事しか出来なかったアインズは、最後にその老人(ROH-JIN)の名を呟いた。

 

 

「フューラー…?」

 

「――――ハッ!?

わ、ワシは、一体何を…ぬぉおッ!?総督閣下!」

 

我に返ったフューラー孤寝島は、すぐさま立ち上がり敬礼をしてみせた。

其れそのものは機敏であり、一件すれば只優秀な一兵卒であるかのように見えるのだ。

 

…同時に、死の支配者の疑問も爆発する。

 

「あ、あぁ…。

所で総督閣下という呼び方は一体?」

 

先ほどから老人(ROH-JIN)達のアインズの呼び方がどうにもむずがゆくて、いよいよ一体何事ぞと聞かずには居られなくなったのだ。それに対してフューラーは不思議そうな仕草をして見せる。

 

「む?大佐……パンドラズ・アクター殿より「アインズ様は今後そう呼ぶように」と命令されとったのですが――――」

 

パンドラズ・アクター!!!!

 

そんな事だと思った。

正直、()()()と言えば()()()呼び方ではあるが、色々間違っているし正直別の何かになりそうなので辞めて欲しい。

そんな思いを叫びに乗せたアインズだった。

 

 

 

 

 

さて、その後もランドナ製NPCによる悶着はあったのだが…それはまた別のお話。

 

「これで本日分の書類は――――あら、申請書類?氷結牢獄から。

もしや…いや、違うわね。【ベンリー塚本(旧名:ポクテ宗一郎)】?…!、あぁ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 ~かつての記憶~

 

るし★ふぁー

「…ねえ、思ったんですけど。

弐式炎雷さんとランドナさんのビルドの違いって、何?」

 

ペロロンチーノ、ウルベルト、モモンガ

「「「あ…そういえば」」」

 

ランドナ

「そうですね。

確かにどっちも脆い隠密高火力タイプだ…って言っても、僕と炎雷さんの違いって結構明白だと思うんすよ。先ずステータス構成が違う」

 

弐式炎雷

「うんうん、俺は装甲と体力をおざなりにして火力と速度に振ってるけど…ドナさん、元々桁違いに高い体力を15%?ぐらいまで削られた状態を維持、その対価としてすべてのステータスと直接攻撃力を大幅に上げてる――――でしたっけ?」

 

ランドナ

「そうそう、防御と魔防は意味ないので上昇率低めですが。

言うなれば炎雷さんが【紙装甲高機動高火力型】、それで僕が【ボロ装甲高火力万能型】って所…かな?」

 

弐式炎雷

「全くそんな感じですね…後俺の火力は条件付きだけど、そっちは実質常時高火力だし…しかもバフなんで攻撃速度に副作用が無いから、DPSとかTTKとかは間違いなくドナさんに軍配が上がってます…一撃で倒せない相手だったら、間違いなくそっちの方が速く倒せますね。

それと外見的な違いですね。俺が忍者で、ドナさんは特殊部隊って感じで」

 

ランドナ

「割と似た者同士ですけどね、その二つ。

其れに僕は正直ぐちゃぐちゃしたキメラビルドですけど」

 

 

ウルベルト

「万能型…あぁ、ランドナさん強めの支援魔法も使うからな。

広域デバフとか、無効化とか」

モモンガ

「そういう意味だとベルリバーさんともそっくりですね」

ペロロンチーノ

「あとフラットフットさん。

そこら辺を足して2か3で割った感じかな…割ってる?」

 

ランドナ

「でなきゃ特殊役務まらんでしょ。

流石にベルさん程(魔法を)多くは持てないんで、厳選は常日頃行ってますね。例の召喚魔法とか」

 

モモンガ

「あれ、かぁ…もりもりドブネズミと、文字通りの肉壁」ドンビキー

 

ペロロンチーノ

「Qソとシナジーあって、足止めとして強いのは知ってるけど………見た目がなぁ」ドンドコドンビキー 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浜辺に打ち上げられたイカ(シーサイド・スクイッド)】におけるNPCの朝も、やはり早い。

現在、プレイヤー達が出払う事の多い屋敷型の拠点――――名を【(イェ)ール】とするそこの家事を担当してるのは、自称有能使用人のアストロノーツ山田である。

 

問題はない、何せ設定だけならこのシンメツジュウシン…何とIQは600を誇り、オマケに投球速度は秒速1500㎞である。

そんな様子が時折見受けられなくなるのは、設定に“以下の設定の内、どれかがランダムで死に設定と化す”というものがあるのが要因だ。

 

 

何であれ、彼には一つ悩みがあった。

 

「ったく――――うぉーい!このスコタコ野郎!

ちったぁ手伝えや!」

 

自分の相方である、もう一人のNPCが頑なに仕事をしないのだ。

最早本名が忘れられたこのスコープドッグは、転移してからずっと同じところを飽きもせず巡回している。

 

 

――――あぁ、所で最早一般常識なので*1説明の必要が無いとは思うが、スコープドッグとはかのアストラギウス銀河にてギルがメスとバララントの二大陣営間で勃発した百年戦争、その末期に作られた全長が大体4m前後の【鉄の棺桶】と言われる程に壊れやすい人型機動兵器アーマードトルーパー(略称:AT)…その一種かつ、その工業製品としての優秀さとコストの安さからアーマードトルーパー内でも代表的な機種である。因みに本小説で用いられる「スコタコ」の呼び名は、外見的(主に頭部)がタコに似ている事から、ボトムズファンの間で「スコープドッグ+タコ」でスコタコと非公式的に呼ばれているのだ。

それと、これらAT及びその乗り手(パイロット)を差すボトムズとは、両陣営での軍の公式見解では【Vertical One-man Tank for Offence & Maneuver-S(訳:攻撃と機動のための直立一人乗り戦車)】のそれぞれの単語の頭文字を繋げ合わせたモノ…との事だが、実際はアーマードトルーパーの人命軽視の設計と任務環境の劣悪さ、更にはパイロット達の素行の悪さからくる【最低野郎(ボトムズ)】を意味ずるスラングである…という説が支配的である。

 

 

まあそんな事はさておき、そのスコープドッグ(のガワを被った謎のNPC)は山田の怒号などお構い無しにのらりくらりと庭先を巡回――――いや、最早警備の名目で…謎の機械音を響かせながらサボっているだけである。

 

「うっせぇぞタコォ!ぐだぐだ言い訳並べてる暇があったら花壇の水やり手伝えぇやドアホゥ!」

 

再び怒られて尚も、しかし悪びれる様子もなくピピィー…という消滅するような音の後、ぴぴぴぴぴぴぴ!という某機動戦士の警告音のような音声を煩わしく響かせた。

 

「なァにが無駄無駄無駄無駄無駄ァ!や。

勝手に水やるなー旦那はんが言うとるんは、そこのお一人様ビニールハウスだけやろがい!かーっ、こいつやっぱ話聞いとらんわ」

 

これだから昆虫種はえぐいて…と偏見マシマシな発言をしつつ、彼の言う“お一人様ビニールハウス”を眺めた。

その様子から、結局反省の欠片も無いスコープドッグは、不思議なものをみつけたような発音をする。

 

「ん?いやな、コレ…なんや旦那が言うには、実験しとるらしいわ」

 

実験とは一体…まさにそう言いたげな様子を、濃いグリーンの機体は今度はジェスチャーで表現する。

 

「んやー、ワイ何も聞いとらんねん。

半透明で中身もよぉ見えんし、実はアサガオでも育てとんとちゃう?」

 

山田の適当な発言に呼応するビィー…という音は、彼の不満さを表していた。

 

「冗談や冗談。

ほんとでっかいのは4mもある図体だけ――――あっだぁあッ!?やんのかゴラァ!」

 

何気ない軽い悪口に対し、彼はまるで核爆発級の地雷を踏まれたかのような渾身の右ストレート(アームパンチ)を叩きつける。

 

それによる激しい鈍痛に一瞬頭を抱えた山田は、すぐさま反撃耐性を取り、刃と柄の比率が1:1の大きな関刀(グアンダオ)を右手に…そして束ねられた数多の呪符を左手に持って構えた。

 

対するスコープドッグも排莢口から空薬莢を出し、次のアームパンチに備えており、あわや一触即発の雰囲気。

 

「ブチ殺すぞテメェ」

 

アストロノーツ山田は自らの鮫の顎で歯ぎしりを鳴らすその目の前で、体格で勝る彼もまたメインカメラのターレットを頻繁に回している。

 

 

――――そんな張り詰めた空気に割って入る様に、半透明の小さなビニールハウスが()()()と動いた。

これには互いを敵視し合っていた両者もギョッとして、注意をそちらに向ける。

 

ピ、ピピ…という歯切れの悪い機械音に対し、山田も「せ、せやな…」と動揺を隠さぬ返答を出す。

 

「絶対動いた、今絶対動いたって。

ウチ植物系モンスター誰かいたっけ?」

 

スコープドッグはターレットを、今度は左右にブンブンと振る。

 

「んじゃアレなん?旦那はん何か持って帰ったんとちゃいまっか?

もう訳分からんわ。いっその事ここで軽ぅく封印施して――――」

 

 

「どうした?

随分仲がよろしいようで」

 

「――――ッ!

だ、旦那はん!?」

 

いつの間にか二人(一体と一機?)の後ろに居たランドナが、半透明のじょうろを手にしながら話しかけた。

じょうろの中身は、どうやら茶色の混じった薄紅色の液体のようだが…。

 

「旦那はん、このお一人様ビニールハウス何なんスか?

気味ィ悪くてかなわんわマジ」

 

「ん、あぁ…まあ、映画やゲームとかのヤバいマッドサイエンティスト――――の真似事かな。

新種生み出してんだ…ここにはカルタヘナも無いからね」「予想のど真ん中突き抜け過ぎて逆に予想外の奴やん」

 

山田が主人の異様な実験に慄くのを他所に、捲ったビニールハウスの隙間から液体を流し込む。

それが半透明なので詳しくは分からないが…間違いなく中身の“それ”は与えられた栄養分に喜び悶えているのが、視覚情報的に理解できた――――いいや、できてしまったというべきか。

 

ともあれNPC二人は「えぐいて…」と、見てはいけないモノを見てしまったノリでそのまま遠ざかった。

 

 

「なあスコタコ、お前…俺らの後輩さ、エグい化け(モン)やったらどうすん?」

 

キューン…と、まるで悲しむ子犬のような声を出すスコープドッグだが、どうにも言葉の内容は相変わらず毒を吐いてるようだ。

 

「あーはいはい、お互い様やそれは。

ワイも顎がサメやけど…お前の中身も相当えぐいで、どうして飛蝗モチーフでああなるねん…ホンマ」

 

その発言を嘲笑うかのような、キュッキュッキュッ…という切れのある効果音。

 

「うっさいわ、お前よか働いてんねん俺。

そうそう暴言吐いた程度で切り捨てられんわ…どっかのサボり魔とはちがいます~」

 

そして再び上がる両者間のデフコン。

先ほどよりも更にえげつない効果のある呪符を構える山田の眼前で、オリーブドラブの装甲騎兵がローラーダッシュを唸らせ今にもアームパンチを打ち出さんと構える。

 

 

――――二人の間の地面が、突然連続的に激しく破裂した。

それが何によるものか…僅かな思考を挟む間もない程に明らかだった。互いに、遠くにいる我らが主を見る。

 

「…喧嘩なら遠方の平野でやれ。

お前らのレベル考えろ」

 

愛用する凶銃フランツカフカを片手で構えるランドナ。

その声は淡々として、そして視線は熱源が無い様に冷ややかだった。

 

彼は自身が死ぬときは一瞬だが、相対する敵もソレは同じ…刹那の内に蒸発する。そんな攻撃力を向けられては叶わないと、山田もスコープドッグもそそくさと持ち場に戻った。

尤も、後者はサボりに戻ったという方が正しいが。

 

 

「…やっぱえぐいて、旦那はん。

いくらHPをほぼ死にかけまで削ったって、ああなるん?まああのアイテムか…」

 

――――今日も仕事や、仕事。

そう言って山田は放置していた芝刈りの業務へと取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 ~いつかの記憶~

 

ランドナ

「人と、自分との違い…か。

確かに、今まで皆さん有難い事に寛容でしたが…子供にそれを求めるのは酷、ですね」

 

やまいこ

「そうそう…ランドナさん、ちょっと特殊な所があるからね。

それはそれで才能として良いんだけれど、他の皆が持ってるものじゃないからねー…前提が間違ってると教えるのは難しいかな」

 

ランドナ

「自分以外の個人の、特質…考えているようで、今までのそれはとても無機質だった…。

本業の話を聞けて良かったです、やまいこさん。お陰であの子らの…いや、少し不安だな」

 

やまいこ

「そこはランドナさんなら大丈夫だと思うよ。

話を聞く限り、ちょっとスレてるけど絶対いい子達だもん…いつかきっと分かり合えるって」

 

ランドナ

「そう言って貰えると、本当に助かります」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
ボトムズは一般常識、いいね?




主人公のビルドはイメージとしては【ベルリバー等魔法剣士系の規模縮小ハイリスクハイリターン版】といった感じ…になるんですかね。僕はMMOの経験がなんちゃってMMOのfallout76ぐらいしかないので、どの加減にしたらいいのか、よく分からんす。

…なんか特殊部隊というか、ダンウォールの王室護衛官というか――――十把一絡げにして、ベゼスダのFPS超能力ステルス(も出来る)ゲームのプレイアブルキャラみたいじゃないかな。

何であれ「こいつだけ別ゲーやってる感」はあるんですよね、短編集Zとかでそこら辺の考察を深堀りできたらいいなーって。




と言う訳で本日の設定集でござんす
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