嘗て至高だった父へ【OVERLOAD】   作:エーブリス

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なんとか続きました。


第2話

 

ランドナが、魚を釣り上げた。

 

「…とりあえず一匹だ。

随分デカいな。今から食べれば、これで何とか持つだろ…腹」

 

「え…。

川魚を生って、自殺行為では?」

 

「鮫か狼かが、何言ってんだ。

焼いたら逆に食えないだろうに

 

「いやぁ、ワイこれでも都会育ちなんで」

 

「都会は劇物塗れじゃないか。

――――仮にそう、デリケートだとしてだよ?アンデッド属性はどうしたんだ」

 

「…あ。

忘れとったわ

 

果たしてこのNPCはアホなのだろうか。

或いはゾンビ化している影響でまともに脳が機能していないのか。

 

…そもそも真後ろの怪物(キメラ)は果たして、クラン【浜辺に打ち上げられたイカ(シーサイド・スクイッド)】のNPCアストロノーツ山田なのだろうか?

 

クラン長である彼の疑念は、底なしの沼と成りつつある。

 

 

「…。(いや、怪物ってのは…俺も同じか、今や)」

 

ランドナは自らの左腕から生える“触手”を眺めた。

目の前の湖中目掛けて今も伸ばしているソレは、しかし見覚えのある物でもある。

 

…彼のユグドラシルにおける種族【死体変異動体(ネクロミュータント)】の種族レベルを上げる事で解放されるスキルによるものだ、この触手は。

 

スキルそのものは別に、元々隠し効果が主な目当てではあったが。

 

 

もし以前、触手機能を使うとすればダンジョン探索時の移動に少し便利な程度。

或いは…PvPにおける白兵戦で使うぐらいの代物だった。

 

決して、おもむろに水中へと突っ込み、その先端から感じ取れる電波的な何かを頼りに釣り竿の代用とする…といった大変便利な真似は出来なかったハズである。

 

そもそもユグドラシルが終わりを迎えてからというもの、何もかもが可笑しい。

サービス終了したMMOがまだ続いている事に始まり、先の触手や体調、さらには拠点周りの景色や植生までガラリと変化してしまっている。

 

 

最早仮説…それも極めて事実に近いものとして考えられるのは、ゲームでのアバター及びステータスを持ったまま、古典に記されるところの「異世界転生」を行ってしまった、というモノだ。

 

「ハァ…(こんな、二週回って結局また廃れたコンテンツみたいな転生を…ねぇ)」

 

ランドナは、かなり大きめのため息をついた。

元々の“リアル”を鑑みて、今この状況を喜ぶべきなのか?

 

 

 

 

「…つか、ウチの周りってこんなもんでしたっけ?」

 

「僕も今それを考えてた所だよ。

なんだこの…(妙に刺激臭のする植物だな、薬効あるのか?)」

 

おもむろに引き千切った謎の植物を、彼は直接その臭いを嗅いだ。

…彼のリアルでの経験から、成分は非常に大まか且つ不確かながらも予想は出来る。しかし安易に薬へと転用しようとするのは非常に危険だろう。

 

それに回復系統の備品はそもそもランドナのビルド構成上あまり必要としない。

限定的な自動回復があるのもそうだが、必要になる時には既に死んでいるからだ。

 

トドメに作成したとして、恐らく手持ちの低位ポーションにすら及ばない。

風邪薬程にも気休めにならん応急品だろう。

 

 

「全く、なぁ…(こんな事になるなら、限界ビルドなんてしなければ…。

――――いいや、今までのリアルと変わらない、と思えば…やりやすい方だ)」

 

通算6匹目の魚を釣り上げた時、彼は独り言ちるのと同時に頬杖をついた。

 

 

因みに“限界ビルド”とは、HP減少によって得られるバフスキルやアイテム・武器防具等をこれでもかと詰め込んだうえで、その各々の効果を最大限まで引き出すために敢えて自らHPを削り、それを【不治の呪い】なる状態異常でギリギリの状態を保つビルド――――その総称である。

 

あらゆる面でリスクが大きい為に数多のプレイヤーから敬遠され、また知名度も低いビルドだった。

 

しかし見返りは大きい。

これとその他効果…プレイスキルによっては、通常攻撃でも高火力スキル級のダメージを叩き出せるまでに至ったのだ。

 

「けど…(単発火力はどうにも建御雷さんには届かなかったなぁ…でもDPSとかTTKの総合火力では勝てた…かな)」

 

MMOというゲームジャンルでTTK(Time to Kill:初撃開始からキルまでの時間)の概念を持ち込むのは彼ぐらいでは無いだろうか…。

 

普通はDPSと表現する筈なのだが。

 

「…旦那はん。

もうそい戻った方がええですな、日が暮れそうや」

 

「だね。

山田、道は覚えてるか?」

 

「覚えて無くとも臭いは辿れますわ」

 

「成程。

サメの嗅覚か」

 

「数キロ単位でいけまっせ」

 

ちょっとした鰹ほどのサイズが5匹だ。

一部、食事が出来るかどうか不明な者もいるが…持って帰るに越した事はないだろう。

 

 

 

 


 ~いつかの記憶~

 

ガーネット

「へえ、ランドナさんもCZ社製品のファンなんですね」

 

ランドナ

「はい…特にCz75、あれは素晴らしい銃ですよ。

技術的な話は勿論、強度以外これと言った欠点も無い…流石、嘗ては東欧屈指の工業国だった国の製品だ。初期型に限った話ですけどね」

 

ガーネット

「え、もしかして本物、撃ったことあるんですか!?」

 

ランドナ

「仕事の都合でね、ちょっと機会に恵まれました」

 

ガーネット

「いいなぁ。

こっちは別のシミュレーター系ゲームでしか撃った事無くって…」

 

ランドナ

「普通そんな物ですよ。

もうCz2075に取って代わられる形で販売停止してますし…再販も望めませんから」


 

 

 

 

「…?、アレ、カーキィ…だよな」

 

「そのようで」

 

夕暮れ時に差し掛かった頃。拠点に帰った。

 

すると…上空で巡行形態のカーキィが自由自在に飛び回っていた。

今まではシステムの都合上、低空を滑るような移動しかできなかったのに…。

 

故に、ただ飛んでいるだけでも嬉しい・楽しいのだろう。

 

…遅れて父親の帰還に気が付いた彼女は、上空で人型に戻り「パパ―ッ!」と、手を振りながら落下して来た。

 

「お、おい!危なッ――――」

 

地上3m地点で身体中のスラスターが青い炎を噴き、落下の勢いを相殺。

そのままストンと落ちては「にっひひぃ」とはにかんで見せた。

 

「どお?

凄いでしょ、カーキィ・エアライド…なんちて」

 

「あぁ…。

ちょっと羨ましいよ」

 

彼も“あるスキル”を完全開放すれば現状飛べる可能性はある。

だが…少々リスキーな気がするので実験は見送りである。

 

「所でパパと山田は何か分かった?」

 

「あのぉ、いきなりですまへんけど、山田って苗字じゃなくて名前の方で――――」

「何もわからない…って事が収穫だな、どうしてこんな場所に居るのか。

本当に強いて言うなら、俺達は今ユグドラシルでの身体で…こんな綺麗な環境の所に生きているって事だ」

 

「私もそんな感じ。

――――なんか、国語の教科書の…近代古典にあるような異世界転生みたい」

「アッこれ俺しばらく山田のヤツやん、ヤンチャすぎるやろ」

 

「お前もそう思ってるのか…。

皆は?」

 

「何も変わらないわ…私とパパと、全くおンなじ様な考え。

…少なくとも、それを一番喜んでたのはデルモん。夢だったからね、自然の中で暮らして…薬品臭くないキレイな水で泳ぐの」

 

本物の太陽も見れた、なんて…カーキィはそう呟いた。

 

「あぁ…。

泳ぐなら…釣りをした湖が丁度良かったな、今度は皆で行こう」

 

「いいわね!

…山田と、そこのスコタコも?」

 

「…連れて行けるならな」

 

ランドナは微妙な苦笑いをした。

山田が今や意思を持っているのが嘘かの様に、あの○コープドッグ(元ダンバ○ン)は同じ道を巡回している。

 

 

…単に、後ろのスットコドッコイと違って真面目なだけかもしれないが。

 

「…それで、お前は今どう思ってるんだ?

その、転生?した現状を」

 

「もちろん…最高よ。

空は青いし、それに…明日の心配もしなくていいから」

 

そう語る彼女の表情は何処までも晴れやかで、年相応のあるべき姿とも言えるものだった。

――――対して、ランドナはまだ何処か陰りが見える。

 

 

「…それは、まだ分からないかもな。

ここが、どんな場所か…俺達は知らなすぎる」

 

「そうね…。

でも今のアタシ達、けっこう最強に近いわよね!?だったら、どんなクソッタレな男だってズッタンズタンにッ…!!」

 

「カーキィ」

 

先ほどの表情が嘘の様に、怒りで満ちていくカーキィを彼は制止する。

アニメロボットのようなアバターでも分かるぐらい、それは怒気に満ちていた。

 

 

…徐々に徐々にと、表情が沈んでいく彼女を見て、ランドナは自分のコミュニケーション上の失敗を悔いた。

余りにも自分が無遠慮過ぎたのではないか?彼女の気質と過去は知っていた筈。

 

「――――ごめんなさい。

でも、前よりずっとずっと、楽しく生きられる…わよね?そう言って」

 

「…そうだね。

きっとそう」

 

彼は、我が子の無機質な頭を撫でた。

 

 

「――――あ…そういえばパパ、呪いとかって大丈夫なの」

 

「ん?

…あぁ、不治の呪いか、特に疲労感は無いかな。死体変異動体(ネクロミュータント)だからか?」

 

彼の思う通りだった…死体に苦痛もあるものか。

 

 

しかしそれは大きな不安要素でもあった。

HUDが存在しない今、自らの体力を直感で認知する手段すらないのは、あまりに危険過ぎた。

 

自らの抱えるダメージが把握し辛い、それが原因で死に繋がる可能性がある。

 

 

一応左腕には、アインズ・ウール・ゴウン時代に余興で付けたアクセサリはある。

これは装備者のHPに応じて状態が変わるネタアクセサリで、今は若干有用性が生まれたものの、そこまで細かに体力を知る事は出来ない仕様である。

 

「(これがある意味頼みの綱、か…)左腕、見る癖付けないとな…」

 

「そういえばあったわね、そんな微妙アクセサリ。

付けたの、確かモモンガさんよね?」

 

「ああ…何で付けられたんだっけ。

何であれ、感謝しないとな」

 

 

ふとしたことで話題がモモンガの事に移った為、二人は「あっ…」と、一つの仮説へとたどり着く。

 

「ねえ、パパ。

もしかしたらモモンガさん…」

 

「あぁ…それで、ナザリックごと来ているんだったら結構心強いぞ。

NPCも結構いるし、アイテムの貯蓄もある筈だ…この世界がどんな程度かにもよるが、もしもの時の駆け込み寺にはなる…ハズだ」

 

「でもあそこ、カルマ値ヤバいNPC多くなかった?」

 

また二人は黙ってしまう…来たとして、あの強いし悪いNPC達が意思を持って動いているのだとしたら…何されるか分かったモノではない。

 

それにランドナはアインズ・ウール・ゴウンを抜けた身である…裏切り者と認定されても可笑しくはないのだ。

 

 

そこへ、アストロノーツ山田がすかさず「まぁ慌てなさんな」と割り込んで来た。

 

「カルマ値なら問題ありまへんでぇ。

俺ぁもうカルマ結構マイナス行っとりますが、ほらもう見ての通りこぉーんな旦那はんとその娘はん達に忠実でかわいいワンコは――――」

 

「悪い、余計に不安になった」

「私も」

 

「なんでぇ!?」

 

それはもう、アストロノーツ山田なんて怪しい名前(自分たちで考えた設定)のヤツが、見るからに怪しい見た目で(自分たちで考えた略)、いかにも怪しいセールスを行う(自分たちで以下省略)ものだから、当たり前である。

 

 

「さあ、カーキィ…一度、家族会議だ」

 

「うん。

わかった」

 

「あ、私、誠心誠意をなんたらで書記なんかもうバリやらさせて頂きますわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 ~いつかの記憶~ 

 

モモンガ

「今回のダンジョン…明らかに人間種PKが追撃してくる可能性がありますね」

 

ウルベルト

「三日ぶりのPvP、ですか。

腕が鳴るなぁ…クックク」

 

死獣天朱雀

「フフフ…」

 

ランドナ

「あ、それじゃ今回この課金地雷使ってみますね」

 

モモンガ

「(…あれ、なんか反応薄いぞ)?。

ランドナさん、もしかしてPKそんなに好きじゃ無い感じですか?」

 

ランドナ

「えぇまぁ、ちょっと今まで言い出せませんでしたが、別に好きでも嫌いでも無いですね」

 

ギルメン数人

「「「「「えぇええええええええ!?」」」」」

 

ウルベルト

「ひ、単独でアクション映画ばりにPK集団10枚抜きした人なのに!?」

 

ランドナ

「あれはぁ…本当に地形が有利だっただけですよ。

ナム戦系シューティングの経験が生きたというか」

 

モモンガ

「好きと得意は違う云々、ってことか…」


 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁそうだ、パンドラズアクターよ。

ついでにコレも 丁重に、保管しておいてくれ」

 

「ン?これは…」

 

所変わって、ナザリック地下大墳墓の宝物殿。

主たるモモンガ――――改め、アインズ・ウール・ゴウンはそこを訪れたついでに、領域守護者のパンドラズアクターにもう一つの仕事を頼んだ。

 

「…覚えているか?嘗てナザリックの超必殺仕事人と呼ばれた――――」

 

ルァアア~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!ドゥ、ナ様ですねぇ!

そしてこれは、そう!あの御方の代名詞であるSchwarz…doppel…wie blitz Feuer*1。物陰より迫る抹ッッッッッッ!、殺の6連撃*2!!!それで撃ち抜くのは正にFeuerrotes Zi…――――」

 

「あぁ、そう、だ!!【四番口径式放呪砲・双(フォーゲージ・カースドフォースⅡ)】だ。「あ、ドドン」

改めて言うが、傷一つ付けるんじゃないぞ。いいな?(まあ当のランドナさん、これを棍棒代わりにとかしてたけど)」

 

「え、あの――――この神話級アイテム、名前は確か【主砲ッ!ッア、ヴェ~~~~イクド、モ、チョーチョ!固有名詞で呼ぶなッ!】では?」

 

「えっ…(あぁぁぁ、ダメだ。守護者によって完全に呼び方が違ってる…!デミウルゴスは兎も角、コキュートスは【獄砲富岳】だったし、シャルティアに至っては【滑らかに鮮やかに挿し、そしてこの上なく過激に破裂ヴァギナイートキルオール】とかいう、もう…ああもう!そもそもランドナさんコレ何て呼んでたんだ?たしかあの人、シュールギャグと…それと和製苗字と英語名の組み合わせが好きだったハズだから…えっと、なんだ?あああもういい!!)。

あ、あぁ…とにかく、頼むぞ。 た の む ぞ !」

 

「あ、ハイ…」

 

こうして滅聖の魔砲は、宝物殿の奥深くに仕舞われる事となったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

*1
ここは勿論読み方は「ファイエル」で

*2
これを「角待ちSG」と表現すると一気に卑屈感が極まる




【オリジナルの小ネタ解説】

 ・ガーネットのCz社製品ファン設定
シズデルタの本名から思いついたオリジナル設定

 ・Cz2075
Cz75の100周年モデル且つ、21世紀最後の名銃…という設定
そう言えばパイナップルARMYでジェドがCz75の事べた褒めしてたね。

 ・浜辺に打ち上げられたイカ(シーサイド・スクイッド)
ランドナら町田一家のみで構成されたクラン。
アインズ・ウール・ゴウンの前身である「九人の自殺点(ナインズ・オウン・ゴール)」をオマージュして「自殺部隊(スーサイド・スクワッド)」とするハズだったが、齷齪あってこんな悲惨な名前になった。

 ・死体変異動体(ネクロミュータント)
バイオハザードのB.O.Wと、デッドスペースのネクロモーフを悪魔合体して、falloutのFEV溶液でしゃぶしゃぶしたような感じの種族。
普通に運用するとそんなに強くない。

 ・ナム戦系シューティング
フルダイブでベトコンFPSとか正直やってみたい。
ボイチャでミッキーマウスマーチ(英語版)とローリングストーンズのペイントイットブラック歌いたい。
ヘルメットにマガジンコンコンしたい

 ・十枚抜き伝説の補足
地形有利もうそうだけど、敵がやる気無い上にガバにガバッた結果。
虹六の単独全抜きとかCoDのジャガーノート達成とか、大体そんなもん(偏見)

 ・限界ビルド
別の惑星で言う所の「血塗れ」とか「不屈」とか「モーリオン」とか言う感じのオワタ式ビルド。
死ぬたびに切腹とか放射能浴とかしなきゃいけない、ちょっと面倒くさいタイプ。そういえばこの前ね、俺、血塗れチェーンソーの完成品ドロップしたんよ。

 ・なんかヤバいショットガンの名称
個人的にベイクドモチョチョは思いつくの簡単だったけど、Vイートキルオールは当て字考えるの大変だった。ソフトアンドウェットみたいになったね。



 【本日のオリキャラ解説:ニモエル】
 ・プレイヤーネームは本名を弄っただけ
 ・状態異常振りまいて脳喰いするエーブリエタース(か、母ちゃん…!)
 ・長女


はい、次回もお楽しみ!
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