嘗て至高だった父へ【OVERLOAD】   作:エーブリス

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今回で日常会話編ラストです。
次はカーキィの話で話数稼ぐか…或いはこのままブラックサイスの話を続けるか…。


第20話

 

ゲヘナ終了より暫く後のナザリック。

ある技法で現像された一枚の写真、そこに移る仮面の男を渦中とし、物々しい雰囲気が張り詰めていた。

 

「…シャルティア様、この人間で間違いありませんね?」

 

「ええ。そうでありんす…!

あんのクソ虫が、この私をコケにしやがってぇ…!」

 

ソリュシャンより提示されたそれを見て、わなわなと沸き上がる怒りに震えるシャルティア。

それを他所に、僅かではあるが面識のあるアインズは感情を昂らせるでも沈めるでもなく、ただ平然とした態度と様子で写真を見つめていた。

 

 

最も、アンデッドの特性で感情は抑制されるのだが。

 

「…そうか。

ソリュシャンの話や私の第一印象ではそれほどという所だったが、シャルティアの話を聞くに【時間支配抑制均衡装置(カウンターステイシス)】を用いているようだな(自身の時間操作魔法を封じる代わりに相手の時間魔法の影響を一切シャットアウトする…取得条件は覚えてないけど、相当なレベルが要るスキルだ)」

 

「どうやら只腕の立つ冒険者と言うだけでは無い様ね。

――――アインズ様、この者をどうします?もし計画の邪魔になる様なら刺客を」

 

「いや、いい…相手は未知数だ、下手を打つ訳にもいかん。

だからこそ何か“テスト”をしたい」

 

何か良い方法は…と悩む彼に、デミウルゴスが「それならば…」と提案を持ち掛けた。

 

 

「デミウルゴスよ、何か妙案があるのか?」

 

「はい、アインズ様。

丁度別件にて試したい事がございまして…そちらと並行させて頂ければ幸いです」

 

「分かった、此度の件はお前に一任する…吉報を待っているぞ」

 

「はっ。

仰せの通りに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 ~なんだかんだでありそうだけど普通に色々崩壊してる記憶~

謝罪会見編

 

ランドナ

「氷結牢獄のネクロモーフ、延べ1984回も名前と設定を変えて申し訳ございません」パシャパシャパシャパシャ

 

タブラ・スマラグディナ

「変えすぎや!」

 

モモンガ

「設定魔のタブラさんが突っ込むレベルの試行錯誤って何…?」

 

ランドナ

「いや、なんかその日の気分で色々」

 

ペロロンチーノ

「NPCに自我が出来たらキレそうだなぁ…」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある時の夜。

死せる神の黒鎌(ブラックサイス)は、ある寂れた酒場の一角で集まり談笑していた。

 

「それでマーナ…――――あいや、獣人(ビーストマン)のソイツさ、カミさんの誕生日祝いをしたいってんで俺も手伝う事になったんだ。あっ因みにそのカミさんって人間の王国の第一王女ネ

 

「何やったんだ副リーダー」

 

「いやぁ、完成品自体は飯系なんだがよ。

あのバカ犬とち狂いやがってな、何故か肉焼くための窯を一から作る事になったんだ」

 

「訳が分かんねぇや!

窯くらいそこらの奴使えってんだよな」

 

「アイツ馬鹿だったからな…変な所に拘りたかったのかもしらん。

――――まてよ?そもそもブタか牛の丸焼きだったな、専用の窯が必要になったとかだっけ………まあいい」

 

昔話を展開するイナミは「ともかく…」と、当時誤って足を突っ込んでしまった面倒への苦い思いを表情に現す…が、鳥型の仮面に隠れたそれが他者に見える事は無い。

 

「やった事もねぇレンガだか粘土だかを使った作業でイラついたんでさ。

ソイツがその窯で豚、いや牛?まあそれを丸々焼いた2日後に…それ使って俺が陶器製のディ●ド作ったワケ」

 

「うん、副リーダーだよ。いつもの」

 

「おいダズそりゃどーいう意味だ?」

 

「イカレポンチって意味だよ。

第一お前ナターシャがいる前で何言ってんだ馬鹿野郎」

 

「大丈夫ですよ…私、そういう話は好k――――ごほん、全く平気なので」

 

「(今絶対“好き”って言おうとしたよな…)そ、そうか。

とりあえず副リーダー、そこまでにしとけって」

 

「何でよ、その●ィルドめっちゃ拘りがあるんよ?俺のモツより一回り小さく――――うぁらばッ!?」

 

ダズの制止振り切り猥談を続けるイナミに、オスカーの裏拳がクリーンヒットした。

恐らく仮面が割れたのであろう破片が飛び散り、石造りの床へと頭をぶつけた彼は「ナイスデー…」という本当に訳の分からないうわ言を呻きながら気絶した。

 

…ナターシャが何か残念そうな顔をしていたのをライハルトは見逃さなかった。

 

 

ソレは兎も角、ここで野暮用を終えたジョナサンが一団の中へと戻って来る。

 

「戻りましたー。

…?何で副リーダーが倒れているんだ?ダズ」

 

「おう、ジョン。

いやな…この馬鹿、自分の死んだ妻の自慢話でのぼせてな」

 

「は、はぁ…。

そう言えば前々日、イナミさんが妻の形見とやらの話をしてたな…何でもお気に入りのブックカバーに、奥さんの手形を写してあるとか」

 

ジョナサンが切り出した話の、より詳しい部分…というより真実を知るオスカーがここで「あぁ」と訂正に乗り出す。

 

「それだが、実は手形と言うのは全く正しくは無い。

実は――――」

 

「ぬぉい、馬鹿…言うんじゃねぇ」

 

辛うじて意識を取り戻したイナミが膝にかじりついて暴露を止めようとするが、いともたやすく払われる。

 

「ブックカバーって…。

本を読むんですね、あの人」

 

「あぁ、ジャンルはガキ臭いが。

…それで写してあるのは決してコイツの妻の手形じゃない、妻の古傷だ」

 

「ふ、古傷…?」

 

「あぁ…古傷フェチでな。

より正確に言えば右太腿から鼠径部にかけての古傷だ」

 

「切り取り部分が絶妙にキモすぎる…」

 

「因みに本人は「戦闘の傷より拷問痕の方が股間に来て大変いい」とか抜かしてたぞ」

 

「んなもん因むなよ」

 

「人の趣味趣向には口出しをしないつもりだったが…こう、実物を目にするとやはり…うん」

 

従来からのメンバーでさえ初耳だった酷い事実に対し、総スカンを喰らうイナミ。

忽ち割れた仮面から覗く右目は涙ぐみ、やがてオスカーへと掴みかかった。

 

 

「テメェ人の事言えんのかよ!

いい歳こいて女子学園に編入したクセによぉ!ああ”ぁん?」

 

「編入したんじゃない、させられたんだアレは。

半ば国家命令だ仕方ねぇだろ」

 

「うるッせぇ黙れ!このラッキースケベクソ野郎!」

 

「ラッキースケベは俺の分野じゃない」

 

「ウソこけや!

おめーの周りにゃ常に2人、たまーに3人!そしてあれやこれやを合わせれば合計8人の女が引っ付いてた筈だ!」

 

「5人はあの若造持ちだ!

それに一人はただの知り合いで、残る二人も訳アリだが義兄妹だ…年も天と地ほどに離れている、浮いた話もクソも無い。そもそもこの話を後何回させる気だ」

 

「そういう奴ほどなぁ!知らず知らずのうちに引き寄せてんだよォ!」「過去の話とは言え、妻帯者が僻んでらぁ」

 

突如始まった謎の言い合いに、他のメンバーが肩を竦め合う。

一方でジョナサンはたっち・みーとウルベルト(嘗ての盟友)の“じゃれ合い”を思い出して懐かしみ、そしてナターシャは自分とそりの合わない末っ子との喧嘩があんな風に見えていたのかと多少の反省を見せた。

 

「…アレでも、一応副リーダーとして成り立っているのは本当に何故なのでしょう…?」

 

「まあな、確かにウチの副リーダーは酷い…かなり酷い。

けど…俺達ぁ、あの人にちょっとした勇気を貰ったって側面がある」

 

「勇気…?

人前で醜態をさらしても気にしないメンタルとかかな」

 

「いやぁ、流石にそれは見習いたくねぇな。

そうじゃない…教えてくれたんだよ。“運命を組み伏す方法”って奴を…」

 

何かしんみりとし出したダズが、安酒をあおりながら語り続ける。

 

「あの時の眼だけはマジだった…「お前の背中には何がある?それは些細な道徳心なんかへの生贄にしていいものか?」ってよ」

 

彼の言葉を聞いたジョナサンは、ふとアルコール分で伸びかけているヴェルレーヌを見た。

きっと“背中にあるもの”とは彼女の事だったのだろう…目の前の男と、醜い争いを繰り広げる鴉貌の男にどんな過去があるのかは知らないが、きっと壮絶のその先にあるような地獄が記憶としてこびりついているのは間違いない。

 

…同時に、ジョナサン自身も過去の記憶がフラッシュバックした。

 

 

「…っと、悪いな。

せっかくの酒を湿っぽくしちまった」

 

「いやぁ、気にしないよ…悪趣味かもしれないけど、人の話を聞くのは嫌いじゃない」

 

「そうかい。

――――んじゃ、クーラン。なんか場を戻すために面白い事言え」

 

「おいおいいきなりかよダズ。

それじゃあアレだ…なんか、前にもあぁいう事無かったか?ジョン…ほら、あの二人の喧嘩」

 

「えぇと…僕らが初めて皆と出会った時のアレかい?クーラン」

 

因みにジョナサンの敬語は、メンバーとの付き合いがそれなりには長くなった事に伴い、イナミとオスカーのみにとどめている。

 

「うーん…あ、そん時ぁいなかったかジョンは」

 

「前の『孫の顔を見たか見て無いかでのマウント』はジョンとナターシャが来る3日前だっただろう」

 

ドニーの指摘に、チュ=パが頭を上下に揺らし肯定する。

 

「ありゃ?そんな最近だったか?」

 

「ほんとバカなんだからアンタね。

アンタは何も考えずに盾振ってればいいのよ」

 

「なんだと?ヴェルレーヌ。

俺はな…兄弟の中でもいちばん可愛がられてたんだぞ!?つまり俺が一番優秀だったって事だ」

 

「じゃあ何で追い出されてんだよ実家」

 

「そりゃ…可愛い子には何とやらって奴だ。

家業は、ほら、長男が継ぐって相場が決まってるだろ?」

 

「どーせクーランなんて、余りにもバカすぎてバカにされてる事にも気が付かなかっただけだろ。

アホなんだから」

 

「ほんっと可愛げねえなぁライハルト。

…ほらっナターシャ、やっちまえ」

 

クーランにGOサインを出され、舌なめずりをしながら身体をくねらせて外見だけなら自分より幼い男へと近づくナターシャ…だが、寸での所でジョナサンのチョップで制止された。

 

 

「クーラン、あまり娘に不埒な真似をさせるのは控えて欲しいかな」

 

「わ、わりぃ…ジョン」

 

「あーあ。

クーランのバカやーちゃったー」

 

「何処までガキなんだよお前…。

――――そういえばよ、長男次男で思い出したが、何とかって貴族との話はどうなったんだ?長男坊がどうとか言ってたが」

 

いつの間にか争い終えていた自分らのリーダーへと問いかけるダズ。

それに対してイナミが「聞かれてんぞ」と声をかけ、そしてオスカーが「あぁ、そうだな」と答える。

 

 

「貴族?…!、あぁ、ヤルダバオトの件の直前の…。

何か弾力がありそうな名前をした…ええと」

 

「名前なんか覚えなくていいよナターシャ、この国バカみたいに貴族だらけなんだから」

 

「まあな、どうせ今後関わる事もない田舎貴族だ…別の事に頭の容量を使うと言い。

話した内容もなんてことはない、先代がちょっとした個人的なお得意さんだったんでな…それで跡継ぎに挨拶行ったってのがオチだ」

 

「んだ、でけえ仕事引っかけた訳じゃねえのか」

 

「ところがどっこい。

どうやら持ち掛けられたらしいぞ?デカい仕事…蹴ったみてぇだが」

 

せっかくの仕事を蹴ったという事実に、メンバー一同が固まる…が、次の瞬間には何かに思い至ったようで、やや呆れた表情さえ見せていた。

 

 

「…拙い依頼でも出されたんですね、オスカーさん」

 

「ジョンの言う通りだ。

あの家の三男坊が報酬も内容も世間知らずな依頼を押し付けて来たんでな…組合通せと言っておいた」

 

「組合も弾くだろうよ…そんなもん」

 

「全くだ、何が悲しくてカッツェ平原なんざ彷徨わなきゃならんのだ。

ただでさえ最近はやたら強いアンデッドに加え、謎の飛行物体の目撃例まであるってのに…飛行物体は落ちて消し飛んだらしいが」

 

このオスカーの言葉に、ジョナサンとナターシャが視線を鋭くして互いを見る。

 

お父様、アンデッドと飛行物体って…まさか

 

あぁ、前者は恐らくリザードマンの…後者はカーキィだろうな

 

「?、どうしたんだ二人共」

 

「ッ!、ああいや…最近物騒なんで、何か便利な武器でも手に入ればなぁなんて戯言を言ってただけさ」

 

「便利な、武器…ねぇ。

俺ぁ簡単にモンスターやらアンデッドやらの大群を薙ぎ払うような武器――――つーか、ちょっとした装置みたいなもんが欲しいっての」

 

ジョナサンの発言につられたダズの発言に、ヴェルレーヌが「でも」と反対意見を出す。

 

「そんな物出てきちゃ、あたしら商売あがったりじゃない?」

 

「…いや、そうとも限らないさ。

ソレが誰でも使える物じゃなかったら、僕らが技術的専売特許を手に入れればいい」

 

「そんな都合の良い事ある訳ないじゃん」

 

「それを言ったら、元々そんな強い兵器が都合よくいきなり出て来るのもありえないよ、ライハルト。

こういう“あったらいいな”の話は、出来る限り夢で語った方が気も紛れて楽しいのさ」

 

「にしては妙に現実主義な夢だな」

 

「だがまぁ、酒のアテにゃ丁度いいや。

どうせなら突き詰めよう…理想の対モンスター兵器についてでも語ろうじゃねえか」

 

矢鱈と酒を飲み込み、酔っぱらったのか…イナミが突然始めた理想大喜利は、皆何だかんだで興が乗っていたのか次々に意見を出し合いヒートアップしていった。

 

 

「先ず、貴族が乗る様などデカい馬車があるだろ?

アレに分厚い装甲を付けようぜ…それに弩でも付ければ最強じゃねえか?」

 

と、ダズの案。

 

「馬車は動力が比較的デリケートな状態で露出してるのが先ず不安だ。

人力…いや、魔法的な動力源を内側に仕込もう…ソレが何かと言われると、まぁこの際深い技術考証はナシで」

 

と、ジョナサンの案。

この時色々と科学的な動力や高等魔法を口走りそうになったので、とっさに茶を濁した。

 

「そもそも弩じゃ威力が足らねーだろ…なんかこう、あったろ?誰でも火球(ファイアーボール)が撃てるって魔法の杖…あれを2本か3本纏めて付けようぜ」

 

と、クーランの案。

ちなみにそんな都合の良い魔法の杖など有りはしない、彼の記憶違いか想像の産物だが…まあ、この話自体“都合のよさ”を追い求める話なので誰も気にしない。

 

「やっぱ速度欲しいよなぁ…何かが噴き出す反動でモノ進めたりできねえか?風の魔法とかよ」

 

と、イナミの案。

 

「速度を求めるならば空に飛ばすのはどうでしょう?

地上を走る物体の速度なんて、たかが知れていますので」

 

と、ナターシャの案。

…それに対してオスカーが何か思い当たるフシを見せた。

 

「そう言えば浮遊効果を持つマジックアイテムがあったな。

持続力は知らんが…それで王族ご用達馬車でも浮かす事ができるかもしれんな」

 

「ソレに推進力と、クーランの言うあるかどうかわからん魔法の杖を組み合わせれば…。

――――すっげえな、まるでドラゴンだ!空中を爆速で進みながら地上を爆炎で薙ぎ払い続けるってんだ…こいつはいい」

 

まあ発想としては攻撃機や戦闘ヘリのソレに近い物なのだが…まあそれはそれとして話は続くのだ。

 

「やたらと気に召したようだな、副リーダー。

しかしそんな物が実現しては――ヴェルレーヌも言っていたが――我らの出る幕を奪う悪夢でしかない」

 

そう言うドニーに指し示すように、チュ=パがジョナサンを指差す。

 

「…成程、技術的専売特許とか言ったか」

 

「まあね、ドニー。

単純な話…操作系統を無駄に複雑なものにしてしまえばいいんじゃないかな?開発に自分たちが関わるという条件付きだけれど」

 

「後、んなもんが実現したとしても絶対何かしらの致命的な欠点があるだろうな。

コストも高くて量産もできまい…軍用には遠く向かんだろう。仮にそれらを克服しても魔法の塊だ、王国は使いたがる筈がない」

 

「それじゃ、魔法に頼らない感じでそれを実現できたら…ま!そんときゃ世の中変わり過ぎて冒険者がどうとかって時代じゃ無くなりそうだけどなー」

 

「珍しく頭いい事言うじゃないクーラン。

お酒のせい?」

 

「俺ぁいつでも冴えてるっての!」

 

「――――なあ、所でなんだけどよ。

ここまで話させておいてアレだが、話に出たのと似た様なの…【朱の雫】のアズスが持ってなかったか?」

 

イナミによる突然の重要情報のカミングアウトに、ジョナサンが仮面の下の目を見開いた。

 

「…!?(朱の雫、って…アダマンタイト級冒険者だよな?)

あの、副リーダー…一体それは」

 

「ん?いやぁ、なんかそんな感じの持ってたなーって…赤い全身鎧だけど、なんかアズスの身長より普通にデカくて…それで上空からバババババーってよ…」

 

「お前それで伝わると思ってるのか。

…ともかく、人がそのまんますっぽり入るゴーレム…といった感じのものだ」

 

「は、はぁ…(なんだそりゃ?ユグドラシルのアイテムで思い当たると言えば、あれだ…パワードスーツ。内にも最高級で色々つぎ込んだのと、中途半端になったのがあるが。まあこちらの世界に伝達している可能性は大いにあるな)」

 

興味深い情報ではあるものの、それ以上どうするかという事も思い浮かばないため一先ずこの情報は頭の片隅にだけとどめて置くことにするのだった。

 

「それじゃー専売特許もクソもねーな。

なんか楽して強くならんかねぇ」

 

「それこそあり得ねぇ、どんな種族にしたって地道に身体と技術を作る他ねえのさ」

 

「…金貨20枚で血吸ってやるよ、クーラン」

 

「おめえの中途半端なヴァンパイア能力は帰って弱くなっちまいそうだよライハルト」

 

「うざ」

 

気の短いライハルトもまた、感情に任せて安酒を喉の奥に押し込んだ。

…最早彼に「ガキが酒飲むな」等と言う者は何処にもいない、片っ端から殴ってしまった。

 

 

 

そして気が付けば夜も更けてかなり経つ。

あまり酒場に長居するべきではないと、彼は一度ナターシャと共に家に戻る事にした。

 

「それでは時間もそろそろなので、一度私達は家に戻りますね」

 

「あぁ、分かった。

気を付けて帰れよ――――!、そうだ。また後日詳しく話すが、明後日に仕事が入っている事は覚えておいてくれ」

 

「了解です。

また何か“変わり種”ですか?」

 

「実を言うとそんな所だ。

なんでも――――そうだな、一言で済ますなら“怪物屋敷”が見つかったとの事らしい」

 

「(…――)そうですか。

一先ず今は重要な話が出来そうにないので、日を改めて。では――――ナターシャ、帰ろう」「はい、お父様」

 

二人は夜のエ・ランテルへと消えた。

その薄れゆくシルエットを見つめるイナミの眼は、一体どんな感情を宿していたのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 ~かつての記憶~

 

ある男

「いいか?リトルレオン、良く聞くんだ。

今のお前からは想像もつかないだろうが――――いつかその時が来る」

 

怜雄

「その時…?」

 

ある男

「あぁ、何のことかサッパリだろうけど…来たら分かる程のものさ。

その時は全てが敵だ、運命さえも…お前を弄び、お前の宝を汚し、奪いに来る」

 

怜雄

「宝…?」

 

ある男

「何であれ、宝だ…いいな。

その時が来たら…戦い続けろ、敵と――――運命と、因果と、因果律と…。そうするしかないんだ、すまない…」

 

怜雄

「どうして謝るの…?」

 

ある男

「お前を…………こんな地獄に、産み落として………」

 

怜雄

「じごく、ってなに?」

 

ある男

「すまない…すまない……ごめん…ゆるして、くれ………」


 

 

 

狼を育てようとしたことがある。

けれど狼は鷹となり、そして同じく鴉となった。

 

そして今度は馬を育てようとした。

しかし今や狼となっている…そう育てる他無かったのだ。

 

 

日が上り、心地よい風が吹く大地に立ちながら…舞い降りた羽を手に、大地に残された足跡を辿る。

 

 

…お前達を助けなければ良かったのかもしれない。

そうだ、俺は首輪を外された野犬で…お前達は安全な鳥籠の中のカナリアで居る筈だった。

 

哀しみの臭いを嗅ぎ付け、引き寄せられた俺の罪だ。

その翼で空を飛びたくて仕方ない、屑鉄の街の鳥を哀れに思ったばかりに。

 

酷い場所に卵を落としてしまった。

そして永い輪廻の戦いに巻き込んだのも…すべて罪だったんだ。

 

 

 

勝ち続けろ、さもなくば死か…。

 

 

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