嘗て至高だった父へ【OVERLOAD】   作:エーブリス

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この話を書くに当たって「あれ?アインズ陛下、リザードマンの一件以外に2章後半のアレもやらかしでは?」と思ったけど…いや、大丈夫だったわ。関わったのはデミウルゴスだし、彼にしたって触る程度しか関われてない。


にしても、アレやね…オバロ世界でこう、でっかく隠し事とかするとなると、本当にパワーのいるキャラクターが必要となるし、そのパワーに説得力も必要となる。

ぶっちゃけ、その説得力が主犯のふたり…オスカーとイナミにあるかと言うと…多分出せる情報だけじゃ無理だし、無理に説得力増そうとすると、今度は本作のオバロ二次としての体験を大きく損なわせる。

いや、もう今更な所あるけど…とにかくダメだ、あの二人の素性を事細かに書く訳には行かない。




やべえ、変な話で前書き埋めちゃった。
何か話題変えないと。

――――皆、この作品をどんな脳内キャストで読んでる?
よし、われながら、かんぺきに、わだいを、すりかえた


本当、前書きって何書けばいいんだろうね。
もうかれこれ適当に6年か7年ほど執筆してますけど、前書きの模範例が見えてこないのなんの。








第28話

 

この世界で“神話の領域”とされる、あの激闘の熱気は何処へやら。

シャルティア・ブラッドフォールンと、アストロノーツ山田…この二人?二体?は、浜辺に打ち上げられたイカ(シーサイド・スクイッド)の拠点周辺の片付けに駆り出され、せっせと作業を進めていた。

 

地味で、映えない…そんな作業を。

 

 

「はぁ~…何でありんしょう。

こんなの(山田)でも、私達と同じ…至高の41人がお創りになられた存在という事実は。些か腑に落ちないでありんす」

 

「そこなんよ、そこ。

何やねん旦那はんの肩書…【至高の41人、その内の42番】て。頭狂うで」

 

「当たり前でありんす…私達程度に、至高の御方がお考えになられる事の何が分かるでありんすか?」

 

「正直、アンタらのヨイショヨイショもよっぽどやと思うけどなぁ。

アインズはん、苦労させてへんの?無駄にハードル上げられて、参っとるんとちゃう?」

 

「なッ!?

アインズ様に対して何たる…ッ!」

 

不敬極まる山田の発言に、憤りを覚え、声を荒げるシャルティア。

そんな彼女に対して、山田は「まあ聞けや」と宥め、珍しく頭の良さそうな事を言い始めた。

 

 

「先ず、アインズはんも、うちの旦那はん…つまり、ランドナはんも、とりあえずはその“至高の御方”っちゅう存在やろ?」

 

「え、ええ…」

 

「んで、あれや。

その二人は…まあ、同格なんやろ?存在として」

 

「そ、それは…まあ、正直ペロロンチーノ様が一番とは思うでありんすが…とにかく同格に素晴らしい存在でありんす!」

 

(今本音が…まあええわ)まあその上で話たるわ。

確かに旦那はん、ワイにとっちゃ、まごう事なく“親”や。そりゃデカい…けど、そんな天上人やと言うと、そんな冷たそうなモンやない。もっと…身近で、ありふれた。そんな人なんや」

 

この山田の話を聞いた時シャルティアは…どうもフリーズしていた。

無理もない、彼の話と自分の固定概念の二つを合わせれば、ランドナは“至高”と“平凡”の相反する両方を併せ持つ事になるのだ。

 

“至高の御方”が絶対者であるアインズ・ウール・ゴウンのNPC、その中でも…決して頭が良いとは言えない彼女には、かなり難しい話だった。

 

 

これを察し…そして“向こうのNPC”の在り方を、漸く悟った…これまた頭の弱い山田。

あかん。と、静かに呟きながら、どうにか(ほぼ保身の為の)フォローに走る。

 

余計な事を言って、何か余計な事態に陥る前に…その責任を負う前に。

 

「え、あぁ…まあ、何や?

きっと旦那はん、その在り方を変えてたんやろ…ワイらの前と、アンタらの前で。そう言う人や」

 

「???、そう…で、ありんすか?」

 

「せやろ。

“神話の神様”にも色んな解釈があるんや…ウチやそっちの“親”に、どんな解釈があっても可笑しかあらへん」

 

話の着地点は、かなり可笑しな事にはなっているが。

ともあれ、要らぬ()()()を残さずに済んだ…と考えている山田は、仕事の一区切りもあって、一息ついて腰かけた。

 

 

…そういえば、この期に及んで、いつものスコープドッグはやはり仕事をしていない。

まあ最低野郎(ボトムズ)に何を期待するかと言えば…何も期待できないのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 


 ~いつかの記憶~

ホワイトブリム

「という訳で手伝って頂けますか!?

コンバットメイド作成!」

 

ランドナ

「その“コンバットメイド”って言葉の認識、多分ブリムさんと僕とで相違が無さそうなの、ちょっと怖いですよ。

――――それで、タクティカルな戦闘を行う通常メイドさん、って事でいいんですよね?」

 

ホワイトブリム

「その通り!」

 

ランドナ

「ま、いいですけど…結構うるさく言いますよ?護身目的とは言え、ガッチリ学んだ手前」

 

ホワイトブリム

「是非とも、よろしくお願いします!」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「粗茶ですが、どうぞ…」

 

「あ、どうも」

 

アインズは、リリュームより差し出されたティーカップを受け取った。

今の彼は“アインズ”というより“モモンガ及び鈴木悟”に近い状態である…つまり、非常に羽を伸ばせているのだ。

 

ナザリックのNPCたちが煩わしかったとは思わない。

けれども…自身と真逆な“絶対的支配者”を演じる内に、いつしか…今みたいな状況を望む、所謂“疲れ”に似た感覚を抱いていたのだろう。

 

 

 

それはいいのだが…彼は死の支配者(オーバーロード)、つまり“骨”だ。飲食を行う事は物理的に不可能。

 

とは言え…だ。「お客さんにお茶を出すなんて初めてです…!」なんて言いながら、ルンルン気分でそれを用意してくれた彼女に悪いと思って、何も言い出す事が出来なかった。

 

本当に、どう対処するべきか…。

 

 

「ねえ、リリュ。

スケルトンに飲食物って、ぶっちゃけどうなのよ?食べ物虚空に消えたりするの?この世界」

 

「…あっ///」

 

思わぬ所から、助け船が出された。

 

「まあ、その…お気持ち、だけ?貰っておくよ」

 

「す、すみません…モモンガさん。

直ぐ牛乳と差し替えますッ…!」

 

「待って、待って!?

リリュちゃん、それじゃ本末転倒だよー!?」

 

「むしろ事態悪化しない?骨の隙間から牛乳漏れるんだし」

 

「確かに酷いな…(リリュームちゃん、テンパりやすさは相変わらずかぁ)」

 

一応、今居る“娘達”の中では唯一、ちゃんとした面識のある不完全蕩泥(ハーフスライム)の少女、その追憶を辿っていた。

あの時も、そう…確かに彼女は人一倍知識に貪欲で、これを元にあらゆる戦術やビルド運用思想を構築していた。

 

その中には、ベテランのユグドラシルプレイヤーだったアインズ(当時モモンガ)ですら、思わず舌を巻く程完成された理論も数多くあった。

 

けれども彼女、すこし…というか、かなりアドリブに弱いタチだったのだ。

事前の準備が恐ろしく良い分、その準備で全く想定していない事態にはほぼほぼ無力であった。

 

実際、彼女とのダンジョンアタックで、自信満々だった所を急遽(バグで)ヘイトが集中し、彼女一人がてんやわんやの大惨事と陥った。

 

 

結局は経験豊富なアインズが、コンベア作業のような手際で事を収めた。

しかし彼女のプライドはかなり傷つけられてしまった。

 

両膝を付き、顔を覆い、「恥ずか死ぬ…恥ずか死んでしまいます…」と。

すすり泣く声のまま、攻略完了までリリュームが立ち直る事は無かった。

 

…正直、アインズとは似たり寄ったりな子ではあったと考えている。

もう少し極端ではあったが。

 

 

――――因みにだが、彼女がランドナを「お父様」と呼ぶ理由を聞いたことがある。

曰く「そちらの方がフェチズムがありますよね?」との事。アインズは聞かなかった事にした。

 

…他人の家庭事情だからと、これ以上詮索する事は無かった。

というか知りたくも無い。

今思えば、どこにでも(アインズ・ウール・ゴウンの)アルベドみたいな子がいるのだな、くらいである。

 

 

「…まぁ、アタシは見たかったけどね。

モモンガさんが今の姿で紅茶を優雅に飲んで、全部隙間からダバーッするトコ」

 

「いやいや、そんなはしたない真似はできないって」

 

「ほらほら、そう言いながら…その手はウケを求めて、その手はティーカップへ」

 

「え、何?

俺、芸人か何かだと思われてる!?」

 

「骸骨だから【不死を追い求めし者】ならぬ【ウケを追い求めし者】って、なるくない?」

 

「ならないよ!?

相当無理あるでしょそのギャグ!というか【不死を追い求めし者のローブ】懐かしいな――――はっ!?」

 

あんまりにも激しいツッコミを行ったせいか、アインズに精神安定が発動した。

それに対して、何か思い当たったカーキィが「ねえ」と、彼に質問を続ける。

 

 

「それ、もしかして…精神安定?」

 

「うん。

カーキィ…ちゃんも発動するの?」

 

「そりゃ種族として能力持ってるから、発動はするけど…そんなスンッとはならないわ。

もっと緩やかな感じよ――――デルモんは持ってないから兎も角、リリュは…あれ?発動してたっけ?」

 

「あぁ…私はその、【魔術師喰い】の重ね掛けバグが引き継がれているのか…精神攻撃の無効化が消えてまして」

 

「へぇ、バグもかぁ」

 

アインズにとって、この情報はかなり有用だった。

何せナザリックの人材は、何だかんだでスキル・ステータス構成にバグの生じていた者がおらず、ユグドラシルのバグと今の世界との関連性が、研究としてあまり進んでいなかったのだ。

 

それに因んで、彼は隣で笑う…シンギュラノイドの少女を見た。

 

 

思えばシンギュラノイドという種族は、バグ一歩手前の仕様の塊だった。

余りにも自由度が飛び抜けたスキルの数々は――――ソレに関する運営の問い合わせが、ほぼ全て「仕様です」の返答で埋まった逸話が生まれた程である。

 

故にプレイヤー達の手に余り、殆どのスキルが「お遊び用」の烙印が押されていた。

しかし、例外は存在する…それを使いこなす、天性の才能が。

 

 

ほとんどが他のギルメンからの又聞き、或いはログの確認程度で、直接の面識はほどんど無かった。

誰もが3つ程しか使い道を見出さなかったソレに、彼女は9つもの使い道を見出し…何故そんな物を思いついたのかと問えば「うーん、直感」と返ってくる。

 

当時は皆で「若い子の発想力って凄いなぁ」と感心したものだが…恐らくこれは彼女だけの才能だ。

 

 

「バグと言えば…アタシの【ブロック干渉超振動ミサイル】も無事だったわ」

 

「え、カキちゃん何ソレ」

 

「アレよ、組んだパーツ同士のハヴォック神*1を荒ぶらせて、無茶苦茶な多段ヒットを広範囲にばら撒くヤツ」

 

どうやら物理演算のご乱心は、22世紀に入っても健在である様だ。

 

「――――そんなの何処に撃ったんだい?カーキィちゃん。

絶対碌な事にならなそうだけれど…」

 

「あッ…。

え、ぇっと…そ、その…」

 

「…そういえば前に、やたら大きな岩雪崩が起き「あーあーあーあー!ナニモキコエナーーーイ!」…」

 

嘘、下手かッ…!

アインズの顎骨格はガビーン!と大きく開き、そのまま塞がらない。

 

もっとこう、上手く誤魔化せないものか…あまりの唖然に、眼孔の赤い光さえ消え失せた。

 

 

すかさず、デルモんが「ちょっとカキちゃん!」と説教モードに入り、室内が一層喧しくなった。

 

「そうゆーのは先ず、とーさんの許可取ってからって言ったでしょ!」

 

「何!?場所は考えましたけど!?ちゃんと!

というか、初っ端謹慎喰らったアンタにだけは言われたくない!あの時アタシが助けなかったら――――」

 

この時、アインズの心に…何か鋭いものが付き立てられた。

(周りがハイレベル過ぎて)話について行けない事が多々ある彼も、今目の前の二人が話している内容に…己自身深く関わっている事は流石に理解した。

 

 

他でもない、蜥蜴人(リザードマン)の集落における一件だ。

寧ろ、これにデルモんが関わっていなかったら、今の奇跡は無かったのかもしれない。

 

――――でも、そんなものは最初から無い方が良かったのでは?

他でもない自分の手で、美しかった思い出の残滓を汚すのならば。

 

 

自分達(ナザリック勢)の知らぬ、事のあらましは全てゼンベルから聞いた。

…正直、己が許されている理由…いや、果たして彼女に…特にデルモんから許されているのか?アインズの疑念は晴れなかった。

 

本当に自分は此処に居ていいのか?

漸く掴む事の出来た“一番高い林檎”に、後ろめたさが生まれる。

 

 

寧ろ、激しい憎悪を向けてくれた方が…気が楽だったのかもしれない。

頭上の、この天井の先で、燦々と輝いている空の様に無邪気な貌が、今のアインズにとって何よりも恐ろしかった。

 

厚顔無恥を晒す自分にさえ、嫌悪感が募る。

どの面を下げて此処に居る?不幸な事故だったと言い訳をするつもりか…そして、この自罰でさえ、あらゆる重責から逃げる為の免罪符でしか無いのだろう?

 

 

彼の中で渦巻く、負の感情――――それはやはり、精神安定が全て洗い流してしまった。

そして立ち直りを待つまでも無く、リリュームが「モモンガさん」と、無線機を手に話しかけて来た。

 

「ん?リリュームちゃん、どうかした?

というかそれは…」

 

実はナザリックにも、この黒い無線機セットのマイナーチェンジ版があったりする。

 

「姉から連絡がありまして。

何でも「話がしたい」とか…」

 

「姉…あぁ、ニモエルちゃんか」

 

消去法的に、今ここに居ない長女(或いはランドナ自身)しか無線機を使う理由など無いので、彼女の言う“姉”の特定は簡単だった。

 

 

一先ずアインズは、手渡された、黒い鉱石のようなソレを手に…電波の先に居るニモエルと言葉を交わす。

 

「はい、すずk――――モモンガです」

 

思わずサラリーマン時代の癖が出てしまったが、どうもそんな些細な事を気にしていられないらしい。

 

どうもニモエルの吐息が荒い。

彼女が焦るなど相当だ…何にも動じないような胆力を持つ彼女が焦るなど。

 

『モモンガさん?お久しぶりです…って、そんな昔話をする余裕も無いみたい』

 

「あ、あぁ…久しぶり。

何かあったの?」

 

「ええ、かなりマズイ事が。

――――リ・エスティーゼでクーデターが起きて、それでモモンガさんの所の、アルベドってNPCが狙われてるの…!

それと、その人の部下が!」

 

何だとッ――――!?

 

ニモエルから告げられた、余りにも突然の報告。

思わず無線機を握る手が力み、それを握りつぶしてしまう所だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 ~いつかの記憶~

連絡帳にて

 

ゴツゴツのアハンゲーム!   ※ペロロンチーノ

>アツアツのココア      ※↑に同じく

>コツコツのアアア!     ※タブラ・スマラグディナ

>アツアツ唐揚げ       ※↑に同じく

>あらあらカツアゲ!     ※モモンガ

>どんぐりガム        ※↑に同じく

>がんぐりドム!       ※建御雷

>パラパラのチャーハン    ※↑に同じく

>チャラチャラのパーハン!  ※弐式炎雷

>くだものやさい       ※↑に同じく

>くさい!やだもの!     ※るし★ふぁー

>チキチキバンバン      ※↑に同じ

>バキバキチンチン!     ※ランドナ

>まてや           ※ウルベルト

>無垢な子になんてことを…  ※やまいこ

>ドナさんBANされてない?   ※ぶくぶく茶釜

>元気にPKしてました     ※死獣天朱雀

>開けろ!デトロイト市警だ! ※ランドナ


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ランドナの視線は、その“傷口”へと深く深くフォーカスしていた。

致命傷になり得るような部位ではないが、人間の傷口である以上は慎重にならざるを得ない。

 

オマケに患者の体調自体かなり悪い…どういう訳だか、まともな栄養を取った形跡が見当たらない。

トドメとして、これが麻酔無しの外科手術と言う点だ。

 

一応患者には、丸めたタオルを噛ませてある。

だが死なないかどうかは…結構運任せだった。

 

「…お父さん。

一先ずモモ――――アインズさんへの連絡は出来たわ、どうも【伝言(メッセージ)】だけ阻害されているみたい」

 

「分かった。

こっちも大詰めだ…アルベド、外の状況は?」

 

「はっ…今の所、気付かれた様子はございません。

しかし、いずれ…」

 

「そうだろうな…連中、妙に連携がいい。

気付くのに最速で3分…あの量を持ちこたえるのは(確かアルベドはタンク型だったな?だがメッセージ阻害をやって来た相手も居るとすると)…どんなに粘っても1時間。

十分だといいが」

 

患者――――ヒルマ・シュグネウスの外科手術と、その後の作戦立案。

この二つを同時並行し始めた頃――――ランドナは“弾丸”の摘出を終えた。

 

 

「ッ…ニモエル、ポーションを」

 

「はい」

 

手早くニモエルが低級のライフポーションを手渡し、彼はそれをヒルマに飲ませた。

…彼女は一先ず、一命をとりとめた。

 

休む間もなく、ランドナは次に“兵士の死体”へと手を伸ばした。

死体の装備は…この世界に似つかわしくない、非常にモダンな一式であった。

 

「っ…(ヘルメットは形状だけならドイツ帝国、防弾ベストは…恐らく2020年代に使われたものか。迷彩は色彩だけは合わせてあるが…パターンが滅茶苦茶だ)」

 

この世界の何処に、こんな装備が最低でも一個師団分貯蔵されていたと言うのか?

次に、兵士が手に持っていたライフルを調べた。

 

奇妙な形だったが…よく見ればそれは、2130年代では駄菓子よりも安いと評判の、古銃AK-47。

そのブルパップ改造モデルだった。

 

「妙に状態が良いな…(手入れされた形跡もある…銃火器の優位性だけ、って軍隊じゃないか。それでハンドガンは―――)」

 

その流れで、ホルスター内の拳銃を調べた時…彼は絶句した。

確かにやや大型だと思ったが。

 

「…ニモエル。

こいつ等の拳銃、7.62×39㎜弾…ライフル用の弾丸を撃てるぞ」

 

「え?

正気?」

 

「弾薬インフラを考慮したんだろうが…モーゼルベースか、何発撃てるのやら」

 

いくらライフル弾と拳銃弾を二つ揃える手間があるとは言え、ケチもここまで来ると狂気的だ。

何なら創りも酷い、その呪われた銃(カースドガン)を置くと、彼は愛銃フランツカフカを握った。

 

 

そして急ごしらえの隠れ家…その僅かな覗き窓から、周囲を確認する。

 

「(とは言え、所詮は人間の兵士…今の俺達と、それとアルベドなら突破“だけ”なら可能。だが人間の病み上がり一名を連れてじゃあな)…割と難しいな、今回」

 

「あの防壁を破れるかどうかも怪しいわ。

“霧の様”だったけれど…」

 

「全く。

デモンズソウルかよ」「随分古いゲーム」

 

「…ランドナ様。

やはり我々だけで此処を突破しては?」

 

「それも手だったろうね。

この人が重要参考人の可能性が無くて、その上で仕事も有能じゃ――――待て」

 

一瞬、ランドナは足音を聞き取った。

間違いなくこちらに向かってきている…入り口の真正面へと。

 

 

有り物合わせで封鎖した上、罠も仕掛けてあるが…敵に此処がバレた時点で事態の悪化は避けられない。

それに相手の兵装によっては、壁を爆弾で吹き飛ばしてくる可能性もある。

 

彼は、念の為に天井を見た。

屋根裏に皆で隠れられるか?いや、現状それを一切の無音で行うのは難しい。

 

それに隠れられたとして、恐らく痕跡は残る。

思いのほか優秀な兵士達は、それを目聡く見つけて来るだろう。

 

 

――――最悪、本当に最悪だが、正面衝突も手だ。

防御はアルベド、火力はランドナ、そしてその他補助はニモエルで、十分な戦力はある。

 

だとしても…正面衝突(それ)だけは避けていきたい理由が、彼にあった。

先程ヒルマから摘出したばかりの、潰れて変形した弾丸を見る。

 

 

 

その内に、足音は結局ドアの前で止まった。

やはり腹を括るしかないようだ…ランドナはフランツカフカを構え、衝撃に備える。

 

――――聞こえるのは3回、2回、1回のドアノック。

 

 

 

 

 

 

 

ドアは、何事も無く開いた。

 

 

 

*1
「物理演算」の意






すいません、また設定集のネタ見失ったので、次回に持ち越しです。



どうやらユグドラシル、バキバキチンチン程度じゃ警告すら出さなかった模様。
きっとユグドラシルの暴言感知AIが、前後の文脈からゴツゴツのアハンゲームの事理解してくれたんだろうね。

…傭兵NPCのプログラムはアレの様だが。
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