嘗て至高だった父へ【OVERLOAD】   作:エーブリス

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すみません、滅茶苦茶遅れました。(またかお前)






第31話

 漸く分かった気がする――――これが、楽しかったってヤツなんだなって

 

 

十数年来の友の死さえ、心が動かなかった男はその言葉を噛み締めつつ、終わりを嘆いた。

 

下水の隅に産み落とされた事に始まる、己の悲劇達さえも「これが人生」と無感情に割り切り続けた、苦を知らぬ者――――苦が解からぬ者。

なのに“夢の続き”へと、思いを馳せてしまった。

 

総ては、己が娘達の為。

何よりの“愛”の為。

これだけが…彼の遺伝子(スクリプト)に書き込まれた、唯一の激情。

 

 

その為に、勿論外敵は排除した。

彼女らが暮らす…青く、そして正常な空気のため。

 

その為に、新たな出会いさえ黒く、塗りつぶした。

一度夢見た、眩い明日への希望と共に。

 

その為に…心の殻さえ、自ら崩して見せた。

黒く、黒く、どす黒いそれの隙間から――――突如として差し込んだ、光へと。

 

掴み始めた“つっかえ”と“熱”と共に、彼は「まだ生き残りたい」と叫ぶ…叫び続ける。

声の限り、声の限り、息の続く限り。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 ~いつかの記憶~

 

ガーネット

「先ずこれが【ヒトラーの電ノコ】」

 

モモンガ

「ふむふむ」

 

ガーネット

「そしてこっちが【スターリンのオルガン】」

 

ぶくぶく茶釜

「二つとも知ってるー。

ミリタリ系の作品やった時に覚えたー

 

モモンガ

「それで、本題は?」

 

ガーネット

「この際だから、ウチのギルドに【モモンガの○○】みたいなの、欲しくありませんか?っていう…」

 

モモンガ

「まあ…ちょっと欲しい」

 

ランドナ&るし★ふぁー

「「…」」起立

 

ガーネット

「あ、MM-nG1を指して【モモンガのチ○ポ】とする案は当然却下で」

 

ランドナ&るし★ふぁー

「「…」」着席

 

やまいこ

「え?本気でやる気だったの…?」

 

 

るし★ふぁー

「あ!でも【モモンガの男根】って言い換えれば、ちょっとギリシア神話風味が――――」

 

ガーネット

出ません、却下。

御着席願います」

 

 

ランドナ

「【モモンガの肖像】…あぁいや、なんかマルコフの肖像みたいで、武器の異名っぽくは無いな…却下」

 

モモンガ

「自己完結しちゃったよ、この人」

 

タブラ・スマラグディナ

「というかランドナさん、マルコフの肖像知ってたんですね」

ランドナ

「いや…引き取った子の一人が持ってて、それで最近…」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんか、古い物理演算って…ああいう挙動したりするよな。

アインズの現実逃避は、どうも“気の動転”として処理された様で…精神安定によって鎮静化された。

 

「うわー、古代ゲーの物理演算みたい」

 

そして(ちょうど傍にいた)カーキィは、彼の思った事を惜しげも無く口にした。

まあ…彼女からすれば、何を躊躇うのか?と言う話である。

 

「何はともあれ…あの、えぇと、アレ、うーん。

――――あの武器の配達、間に合ったみたいですね」

 

「そうだね…それと覚え辛いよね、【四番口径式放呪砲・双(フォーゲージ・カースドフォースⅡ)】」

 

…彼らが見上げる空で、ハインドDが物凄い縦スピンをして舞い上がっている。

スピンの遠心力でローターの羽は勿論、装甲等の細かなパーツまでもが剥がれ飛んで来る。

 

何を隠そう、あの霧の向こうで…盟友・ランドナが暴れまわっている証拠だ。

 

今まで、この世界で見て来た“別常識”とは180度ほど味付けの違うソレに、唖然とはする…だが、あれこそが今まで待ち望んだ、友の帰還――――その証なり。

 

 

しかし喜んでも居られない、だって…それ以外が()()()()()()()()()()

 

「アインズ様ッ…たった今、右方に展開したアンデッド軍が壊滅…との事…」

 

「何ッ…(早すぎるッ!デスナイトが3体も居た部隊だぞ。この世界に一体何があったって言うんだ!)」

 

魔導国建国以来、誰も想像していなかった事だ。

それは、まさかの人間――――それも王国軍相手の戦術的劣勢という事実。

 

 

デミウルゴスにコキュートスらの見立てでは、自軍と敵軍の規模は同程度であった。

 

やや小手調べ的な意味合いもあったリザードマン・インスマス連合の時とは、明らかに訳が違う…完膚なきまでに叩き潰すつもりで、この様なのだ。

 

 

やはり、近代兵器はそう生半可なモノでは無かったのか。

――――否、どちらかと言えば、弾丸をはじめとして宿る謎の力による作用か。

 

生半可なものでは、過去散々と現地を蹂躙した、ユグドラシル由来の全てが通用しない。

 

 

今や遠いあの世界。

魔法こそ無いが、度重なる戦争の中で“殺し”の合理性を何処までも追及し…そして得た“結果”のそれを。

 

その恐怖を、敵軍は遺憾なく発揮し、振りまいているのだ。

 

「ウチらは現実ナメんなファンタジーされてる、と…。

イヤね、せっかく力持てたのに…結局こんな目に遭うって」

 

「貴方に同感するのは癪ですが…全くです。

お父様も、速く私達に出撃を――――」

 

リリュームの握りこぶしから、溢れんばかりの魔力が漏れる。

魔力量だけで言えば、隣のアインズのそれでさえ赤子に等しい…そんなレベルだ。

 

「――――させると思ってんの?今のパパが」

 

「っ…」

 

素早く、そして鋭く返された言葉に、漏れた魔力さえ引っ込める他無かった。

感受性精神力場(サイコフォース)】を使うまでも無く…娘らは、父の“迷い”に気が付いている。

 

閉じておくべきだったのか(ギルティ)あるいは(オア)そうでなかったのか(ノットギルティ)。カナリアたちの籠を。

評決を下すのは、一体誰の天秤であると言うのか?

神はずっと前から、彼を見捨てたと言うのに。

 

 

この中で一番の他人であるアインズでさえ、42人目の深い闇…その孤独を何処か知っていた。

何時も躍起だったのだ…思えば、彼は自らの存在価値、その証明に。

 

 

 

 

…故に彼は、己が手で事態を好転させる事に、義務を感じさえする。

ランドナが持つ“完璧”への妄執を、今こそ打ち倒す為に…アインズ・ウール・ゴウンのギルドマスター、そしてアインズ・ウール・ゴウン魔導国魔導王として、モモンガは此処に居る。

 

「…デミウルゴス。

今“使える戦力”は?」

 

「はッ!

先ず――――」

 

この時、命を下された彼の素晴らしき頭脳は…素早く“最も使える戦力”をリストアップし始めた。

敵、味方、地形etc…それらを統合して、コンマ数秒以内に9割のそれを終えていた。

 

…そんな時に、彼は不意を突かれたのだ。

先程知ったばかりの、3人の影に。

 

「使い勝手のいい最高戦力3人でしょ?」

 

「――――え、なッ!?」

 

いの一番に飛び出したのは、カーキィである。

両手には、刃を展開していないビームサーベル二刀。

 

 

…正直な所、彼女達を行かせようとはデミウルゴスは思わなかった。

先ず彼女らにはランドナ直々に「待機を厳命されている」し、何より敬愛する至高たち…その娘達の手を汚させる事など言語道断。

 

…アインズも、全くもって同意見であった。

友の心を傷つける行為等、これ以上行いたくは無く…何よりもデルモんにはかなりの“負い目”がある。

 

 

――――でも、彼女らは自ら飛ぶことができる。

まだ幼く飛びたてなかった筈の4人は、いつの間にか…ランドナ(町田怜雄)が一枚一枚、丁寧に拵えた“羽”を十分に蓄えていた。

 

今やそれが彼女ら自身の手によって、大空を突っ切る翼と成ったのだ!

其れは決して“イカロスの翼”等では無い…!

 

「心配する事はありません。

ワイルドカードは、雑に使っても案外どうにかなりますから」

 

寧ろ、抱えて墜ちる方が無様です…と、その後に続く様、立ち上がったリリューム。

彼女は遂に、真の姿を現した。

下半身の肉汚泥は何処までも膨れ上がり、無数の腕と亡骸を生やしながら…自らの魔力を高めていく。

 

 

…この二人の前に、深海魚人たちの群れが並んだ。

先頭に立つのは無論、デルモんだ。

 

「私達はね…ずっと未熟なままだった、卵の殻さえ割れなかった。

だからとーさんに、あんな選択をさせちゃったんだ…!」

 

血の様に赤く、そして冷たく鋭い重刺剣がブゥウンと大気を切り震わせて、ズシリと盾が前に構えられる時…既に攻防一体のサルガッソーは完成している!

 

 

…そうだ、彼女達にもある。

彼の抱える“完璧”という幻を、倒す理由が。

 

 

 

 

 

 

 

 


 ~いつかの記憶~

 

ランドナ

「いや僕が弐番目の立ち位置なのは絶対可笑しいです。

どう考えても拾番目です」

 

るし★ふぁー

「いや拾番目が一番無理あるだろ、どんなに譲渡しても陸番目だって」

 

たっち・みー

「え、何の話…」

 

モモンガ

「遂にたっちさんでさえ理解し得ない話し出したよ。

――――所で、サルベージがどうこうって話どうなったんですか?」

 

るし★ふぁー

「…あ、そういえばそろそろヘロヘロさん終わってる頃だなー。

“データの墓場”も中々捨てたもんじゃない」

 

ランドナ

「そんな所から拾って来たんですか、あの謎ノベルゲー。

スクリプトの破損と改竄が酷すぎて完全修復は無理とかって聞いたんですけど」

 

るし★ふぁー

「まあ別に俺ら近代ネット史をやる訳じゃないんだし、それっぽくなれば良いべ」

 

 

ヘロヘロ

「その事なんですけど…何故か“最終盤の主人公のセリフ”だけ完全修復に成功しまして」

 

たっち・みー

「そんな、知った所でモヤモヤするだけ見たいな所を…」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

古来…とは言っても現状第一次世界大戦くらいか?どうあれ戦場にて、散弾銃(ショットガン)とは、近距離にて瞬時に高火力を叩きつけるべく運用されていた。

 

他にもドアブリーチング等、様々な戦術的運用はある。

しかし、敵を殺す…という一点に重きを置いた場合、そのハイインパクトこそがウリとなるのだ。

 

 

ソレを天文学的――――いや、最早神学的と言っても過言でない計算式によって、何処までも肥大化させたのが【四番口径式放呪砲(フォーゲージ・カースドフォースⅡ)】である。

 

現に無敵と思われた、件のハインドDを全滅させているのだ。

 

つまり、火力は十分過剰である。

火力だけなら。

 

 

…カースドフォースには、使用者の技量を底上げする力は無いし、防御力や耐久に至ってはむしろ下げられる…火力の代償だ。

 

けれども、使用者のランドナ――――もとい町田怜雄が、闇の住人達から【鎌獅子】と伊達に呼ばれている訳ではない。

彼が偶然といくら否定せども…やはり現実は“そう”なのだ。

 

 

この場の、どの銃火器よりも巨大なマズルフラッシュが迸る時、ナノマシン制御の一般兵3人程が一瞬で消える。

 

ソレに反応して、他の一般兵がコンマ数秒以下の速度で振り向けども、そこには誰も居ない。

逆に気を取られて…二つの分隊が、2発と1発の銃声の内に斃れた。

 

次々と仲間が消される現状に、ナノの力で恐怖しない事は…果たして幸福だろうか。

 

 

――――漸く、一人の兵士がランドナを捉えた。

そこから光の速度で情報が伝達…瞬く間に多数の銃口が、彼に向けられた。

 

尤も、ソレら全て「盾にされた一般兵1人を挟んで」いるのだが。

 

けれども斉射は容赦なく放たれる。

弾丸の嵐が、一人の不幸な兵士を襲う――――が、どれも兵士の身体を貫通する事は無い。

 

「…。(防弾を強くし過ぎたな…或いはこの弾丸そのものの貫通力が弱いんだか…)」

 

貫通せずともライフル弾の衝撃は、容易く人一人の全身骨格を砕き得る。

グニャグニャになった人体を――――そのまま盾としてランドナは突貫、その際に放つ2発は兵士4人ほどをミートソースに変換する。

 

 

「これが炎雷さんの言う“早めに返すぞ”…か」

 

死んだ兵士の、どうやら無事だった手榴弾3発…そのピンを全て引き抜いて、敵集団へと投擲。

同時にランドナは、手ごろな遮蔽物へと一瞬で飛び込む。

 

この時、鉢合わせた敵兵一人は拳銃フランツカフカで始末した…所要弾数、一発。

 

そして投げられた死体の下敷きになった、不幸な兵士その2とその3が仲間の重さにもがく数秒―――その中で手榴弾は、余裕でタイムリミットを迎えられる。

 

 

ばぼばっ…と、奇妙な連続的破裂音と共に、手榴弾が破片と肉片を撒き散らす。

それらは勢いよく兵士達と――いつの間にか設置されてた――【海獣の油脂(リヴァイアサズ・オイル)】に直撃。

 

元から地獄絵図みたいなものだと幾度となく語ったが、ある一角はよりホットな現場へと成り果てた。

 

 

誰も捉える事が出来ず、捉えたとしてもその手は届かず。

まるで四次元殺法とも言える、一連のキルムーブにユグドラシル要素はあまり介入していない。

 

殆どが“鎌獅子”としての(スキル)…いや、その先の“(アーツ)”なのだ。

 

半ばウォールハック染みた周囲の状況把握など呼吸が如くに行われ、それを元に敵の行動予測を事細かにシミュレート…こんなのも一呼吸する間に終わる。

 

 

…そしてユグドラシルの力は、このアーツをより洗練させる。

たった今定めた移動目標…ソコに辿り着くには、幾つかの工程を丁寧にかつ迅速に行わなければならない。

 

けれども、魔法の力は絶大だ…それら全てを、たった一瞬に縮めてくれるのだから。

 

「ッシ」

 

一瞬、ランドナの色素が薄れたかと思えば…とっくにその場から消え去っている。

何処に行った?と兵士たちが戸惑う内、気が付けば最後尾数名が、物言わぬ屍と化している。

 

二人ほどは頸動脈を割かれ、一人は背骨を折られ…もう二人はその背骨を折られた一人を思い切りぶつけられて全身粉砕骨折、と言った所だ。

 

 

――――彼ら一団に、一縷の影が走る。

一斉に上空を向いた時には、致命的に遅かった。

 

1発、2発、ついでに3発!

カースドフォースの散弾が地獄の大嵐(ヘルストーム)と成りて降り注ぎ、一気に殺戮の連鎖(キルストリーク)を繋ぐ!

 

 

…とは言え、散弾は散弾、まばらに撃たれるのは最早仕方がない。

数名残ってしまった兵士は、直ぐに反撃に移る。

 

空中を自由落下するランドナを既に照準に捉えているのは、兵士として優秀だと言えるだろう。

 

惜しむらくは、その更に数十倍…数百倍も優秀な極少数精鋭を相手にしていた事か。

――――残存兵士に、銃弾の雨がまた降り注ぐ。

 

…クリア!

 

弾丸の主はもう言わずもがな、シージである。

 

「次は今回のコンマ1秒ほど早く頼むよ」

 

やったな。

お褒め頂いたじゃないか

 

お前が褒められたんだ

 

お前だ絶対

 

「…(喧嘩?まぁ、手は動かしてるし、いっか。

にしてもその皮肉センス、誰から?俺じゃあるまいに…ガーネットさん?)」

 

今や会えぬ古き友。

それに僅か、思いを馳せる彼のその彼方…敵狙撃兵がゆっくりと、彼の脳天へと狙いを付ける。

 

 

後はゆっくりと息を吸い――――そして目の前にある刃に、喉を裂かれるだけ。

 

 

空しく残った廃墟の屋根に…鮮血が飛び散る。

…ソリュシャン・イプシロンは自らの仕事に一段落を見ると、そのまま次の地点へと急いだ。

 

 

本来ならば捕食を行い、もう少しこの孤独な狙撃兵で悦しむものだっただろう。

しかし今回は違う…ランドナの要望は丁寧な仕事とASAP(なるはや)だ、そんな暇はない。

 

何より、この人間たちは…不気味なほどに恐怖しない。

これでは最早、下等な人間以下。

 

それはもう傀儡だ、遊ぶ価値など無い。

 

 

人をそうする魔法のタネは、後にでも聞けばいいと…一先ず移動と共に報告を伝言(メッセージ)で飛ばす。

 

「…ランドナ様、狙撃兵の排除が完了しました。

後はその、数台の車両だけと――――」

 

道中、彼女は不可思議なモノを見かけた。

それは…やたら角ばった黒い猟犬、いや犬にしてはそれは2本の脚で立っている。

 

「…?、どうかしたか?ソリュシャン」

 

「いえ、ただ不審なモノを発見いたしました」

 

彼女はその後、見かけた猟犬もどきの特徴を事細かに伝えた。

するとランドナは「あぁ…」と、それはそれはもう面倒臭さが滲みだす反応を返す。

 

「ウォーカーの、ナックル社製アサルト、それもハウンドモデル…クソ、ブラックキングだな。ハウンドDで苦戦した後にアレかよ。いや、でもアレがあるなら、今の手持ちで…よし。

――――ソリュシャン、そいつには絶対手を出すなよ。タダでさえ硬い奴だ。しかも厄介な武装も積んでいる可能性もある」

 

至高の存在より返って来た言葉に、ソリュシャンは「そんな馬鹿な…」と漏らす。

まさか人間の作品が、そこまで42人の脅威として見なされるなど…普通あってはならないのだから。

 

「…そうだな。本当にすまない、無茶言うようだがそのクソワンコ、見張っててくれ。

200m以内に近づかない様に頼むぞ?くれぐれも」

 

「仰せのままに」

 

一先ず偵察命令が下されたので、言われた通りの距離からその猟犬擬き――――通称ハウンドウォーカーを見る。

 

ソリュシャンからすれば、唯の鉄人形にしか見えないが…あの至高の御方が最大限の警戒を促す代物だ、慢心していてはこちらが狩られる。

 

 

人間に狩られて死ぬなど、ナザリックじゃいくら自害したって足りない屈辱…それだけは避けたいだろう。

 

彼女は更に、他のハウンドウォーカーが存在しないかの確認も始めた。

見た所…先の一か所にいた6匹で全ての様で、他はトラックやら装甲車両やらだ。より遠くには、リベットがずらりと打ち付けられた、古式の戦車が立ち並んでいた。

 

ソリュシャンからすれば姉妹(シズ)の創造主…とどのつまりガーネットが残した軍事関連の文書に載っていた、程度の物だ。

正直な所“現実世界”では只の平社員だったアインズ以上に、それへの馴染は無い。

 

 

しかしそれらが、君主アインズが創造せし軍隊を屠ったのもまた事実。

それを己が眼で見た彼女に…侮りは宿っていなかったが、憎悪に近い悪感情は渦巻いている事だろう。

 

最後に、街の中心部を見る…そこには、モダン軍隊には似つかわしくない…ボロい西洋甲冑姿の巨人。

3mほどの巨躯には、未だうっすらと砂嵐を纏い、いつでもその暴風で全てを塵に帰さんと剣を構える。

 

あれがランドナ達の最終目標だ、兵隊を見るにアレを中心に動いているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 ~いつかの記憶~

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

「分かっているのか!?

目の前に居るのは悪魔なんか、ですらない…希望と偽って、お前らを地獄の底に誘った、ただのクズ野郎だ!

そんな言葉………言われる資格があるものかよ!」

【データ破損】

「やめろ、やめてくれ。

こんな結果が…こんな運命が、幸せであるものか!クソ…クッソォ…!

……結局、代えられねぇんだ、あいつ等…」

【データ破損】

「…。

分かってる、分かってるよ…でも赦しぁ出来ねぇんだ。

この際言うが…本当に、お前達4人の感謝が…何よりもグサグサ刺さるんだよ…!」

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

たっち・みー

「なんか、えらく壮絶な会話ですね…」

 

ヘロヘロ

「なんか雰囲気的に時空間を行ったり来たりする系のノベルゲーっぽい感じだなぁ。

たっちさんも言ったけど…前の展開と、それとヒロイン達の会話がすっぽ抜けてるだけに、色々気になってモヤモヤしますね」

 

ランドナ

「………―――――」

 

るし★ふぁー

「…?

ドナちゃん、どうした?そんな神妙な貌して」

 

ランドナ

「――――あ、いやぁ何か見た事あるんスよね。

何だったかな」

 

るし★ふぁー

「あー、それね。

多分これが【伝説の謎ギャルゲー】そのものって言う触れ込みで、墓場に置かれてた奴だからだと思う」

 

ヘロヘロ

「成程…やっぱそっかぁ。

確か百と数十年前でしたっけ?突如ネットに出回って、登場キャラクターが不可解な動きをしたっていう…」

 

タブラ・スマラグディナ

「うわぁー…3、4年前に何故かオカルト板でやたら話題になってたな、懐かし。

――――るし★ふぁーさん、よく拾ってこれましたね」

 

るし★ふぁー

「いやぁ、墓場も本当に捨てたもんじゃないね。

捨てられたデータの集まりだけど…w」

 

ランドナ

「………――――――」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

【データ破損】

「…。

終わらんぞ。

こんなんで終わるかよ、俺の戦いは…。

――――――――――――――――――――――――

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佇む巨躯の騎士…【竜】の片割れ、或いは破片。

呼び名を「砂埃の鎧」とするこの1体は、スリットの奥の視線で遠くを見つめていた。

 

猟犬。

ブラックキングと呼ばれる、名の通り(くろ)いソレらが、一人の兵を追い詰める。

 

――――否。

兵は決して、追い詰められてなど居ない。

 

 

袋小路に向かい、走る幾匹を…その先鋒の足を、最も不安定になったタイミングでショットガンで撃つ。

 

そうして、一時的に不安定になった姿勢制御は、ドーベルマン程の体躯を容易に転げさせた。

 

だが、これで群れの脚を止められるのなら何も苦労はしない。

後続達はヘマをした先陣を容易く踏み越え、何事も無いように走破を続ける。

 

カースドフォース(こいつ)で装甲が拉げる程度かよ…(いくらハインドDの倍以上の装甲性能あるブラックキングとは言え、どうなっているんだ?あのエネルギーよ…というか)

――――ッ!?もう発射体勢!

 

兵……ランドナが振り向けば、現在先頭のブラックキングが大口を開けていた。

 

そこから放たれるのは、文字通りの“火球”

しかも、ソレは彼目掛けて追尾している…!

 

「チッ…!」

 

誘導を十分に引き付けた直後、ランドナは大きく右斜め前に跳躍した。

間一髪、すり抜けた火球はそのまま瓦礫へと直撃し…その周囲を、爆発だか燃焼だか何だかで、滅茶苦茶に掻き乱した。

 

 

これが、2130年代において、ブラックキングが“最も恐ろしいウォーカー兵器”と言われる所以である。

 

巷では“プラズマ砲”などと呼ばれるが、実際は特定反応によって一瞬のうちに摂氏数千万から数億単位の超高熱を発するナノマシン等の塊である。

 

 

「時間の無駄ッ…!」

 

しびれを切らしたランドナは、次にプラズマ砲の発射体勢へと移行していた2匹目へと、その狙いを定める。

 

何か右手の掌で、ゴソゴソと物体を動かしながら。

 

「(急ごしらえで、しっかり反応するか分からんが…)シッ…!」

 

彼はガパリと開く口腔目掛け、スティック状の物体を投げつけた。

ソレは見事、ブラックキングの喉奥にすっぽりと入り込む。

 

この隙に、ランドナは触手によるワイヤーアクションを用い、目の前の建物を素早く跳び越していた。

 

 

直後――――カッ!と、ブラックキングの1匹より眩い光が放たれる。

そして轟音…気が付けば、王都のど真ん中より巨大なキノコ雲が生えていた。

 

これを元日本人であるランドナ一家及びアインズも見ていたが、残念なことに2130年代の日本人には核兵器に対する忌避感が、2020年代現在の若者程にも無い様だ。

 

 

 

「…(久しぶりにやったが、何とかなるんだな)」

 

あの瞬間、どうもイチかバチかの賭けで放ったそれは、モノだけで言えば…単なるスタンガンの類だ。

予め潜入用に作っておいたものを、今回の狙いの為に少々組み換えを行っただけに過ぎない。

 

 

本命は、その狙い――――ブラックキングに存在する、構造上の欠陥だ。

その口腔内部に一部、ナノ回路とやや隣接している部分があり、そこに一定の電流を流すと回路が誤作動を起こす…というモノである。

 

しかもこの回路、よりにもよって件の“プラズマ砲”のナノマシンをプラズマ化させる特定反応に関わる回路なのだ。

 

…で、この回路をもし、プラズマ砲発射直前に誤作動させてしまうと、どうなるか?

答えは単純、体内にストックされていたプラズマ放射ナノマシン全部に反応が行く。

 

 

最終的に如何なる化学反応が起こってか、ナノマシンが持つ筈のエネルギー以上の爆発をおこす。

この辺りのメカニズムは、未だ完璧には解明されていない。

 

 

結末が、あのキノコ雲である。

辛うじて残っていた…やや大きめの建物を挟み、尚且つ瓦礫に山に身を潜めていたランドナは、しかし警戒を解かない。

 

 

カースドフォースの一撃を生き延びたハウンド達だ、あの爆発すらも耐えうる可能性はある。

 

「鬼が出るか蛇が出るか…」

 

カースドフォース他、現在装備している銃火器は弾丸を再装填済み。

呼吸も整い、如何なるパターンの想定…対策も練り終わった。

 

ついでに持てるだけのバフ魔法も掛け終わった。

ベストコンディションとは、正にこの事。

 

 

 

 

 

――――なればこそ、と…その騎士は跳ぶ。

頃合いなのだ、いい加減にあの(ランドナ)を仕留めなければ。

 

舞い上がるサンドブラストと共に、上空から強襲をかける!

 

砂埃に紛れる、鋭利な切っ先は――――確実に、ランドナのバイタルを捉えていた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 ~いつかの記憶~

 

ランドナ

「!、今日は姉弟喧嘩?なんですね。

いつもこのタイミング、たっちさんとウルベルトさんなのに」

 

モモンガ

「そうなんですよね。

――――なんでも『女性骨格の男の娘』がどうとか…」

 

ランドナ

「(前に茶釜さんがどっちつかずで悶絶してたやつだ)あれ度々議論になってるって聞きますね。

まあ――――今時、女性骨格の男の娘って、存在可能なんですけどね」

 

ペロロンチーノ

「え?」

ぶくぶく茶釜

「そマ?」

 

モモンガ

「え?そうなんですか?」

 

ランドナ

「はい。

医療ナノマシンの進歩で、6歳までの男児なら女性的な身体に作り変える事が出来るんですよね。それもかなりの精度、しかも元の顔がどうであれ美形になる――――一般的では無いんですけれど【ナノの奇跡】と呼ばれています」

 

モモンガ

「へぇ~…かがくのちからってすげー」

 

ランドナ

「ただ、細胞やら何やらに相当な無理をするので…この施術を行った場合、長くても22か23までには死亡する、との事です。

獣の欲望が為、一人の子供の尊厳を未来ごと奪う…所謂“尊厳凌辱リョナ”?としては最高峰かもしれませんね」

 

モモンガ

「最底辺の間違いでは?」

 

ウルベルト

「ではエロゲーマスター、評価の程を」

 

ペロロンチーノ

「可哀想なのは抜けない」

 

ぶくぶく茶釜

「奇跡も魔法も無いよ、それじゃ…」


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前門の虎、後門の狼。

鬼やら蛇やらと言うより、こちらの方が現状にお似合いだ。

 

まあ…最悪である以上のものはないのだが。

 

「ッ…!」

 

突如として襲撃して来た、騎士の3メートルを超す巨体より放たれる剣戟が、余りにも精密且つ苛烈であった。

 

「くそッ…この!(ここまで詰められると、流石にカースドフォースは抜けない…一旦、コイツはいいか。先ずは)」

 

最早、騎士の息の根を止めるだけの隙が見当たらない、と――――ランドナは次の目標へと、視線を移す。

 

 

其の先で…ボロボロになったブラックキングが、顎を開けて飛び掛かる!

 

「今更…ッ!」

 

その急襲に合わせ、彼はその黒いボディを抱え込むようにキャッチ。

間髪入れず、コルヴォナイフで背中のメンテナンスハッチを開き…その中身を素手でほじくり返す。

 

幾ら強力とは言え、過去に散々オーバーホールしたハウンド兵器など、弱点は知り尽くしている。

 

 

ガッガッガッ…と、なんだかオイルが足りていない様な動きをする黒い獣の一体。

人間にしてみれば、脊椎から脳までを滅茶苦茶にされたに等しいのだ。

 

ソレは、やがて動きを止めた。

 

「あと2!」

 

振り返れば…また噛みつかんと飛び掛かるブラックキング。

今度はそれをローリングソバットで迎撃し、蹴り飛ばす。

 

その黒鉄の身体が飛んだ先は、あの騎士の元だ。

剣を振るい、発生したサンドブラストによって…黒く小さな悪魔を一瞬でかき消す。

 

「ありがとさん」

 

まさか手伝って貰えるとは…と、言った意味で呟く一言。

アレからすれば、単に降りかかる火の粉を払う以上は無いのだろうが。

 

「ともあれ、あと1!」

 

残るブラックキングは、あと1体。

しかし――――。

 

 

「至高の御方に、牙を剥くのね。

その愚かさの代償…己が身で知りなさい」

 

「アルベド…」

 

いつ来たのか、アルベドがハルバードで…12.7x99mmの集中砲火を30年間耐え続けると言われた、漆黒の装甲を解体していた。

 

流石のランドナも、ここまでの力技で処理されるブラックキングを見た事は無い。

思わず苦笑いを浮かべる(他人からは分からない程僅かだし、そもヘルメットで見えないが)。

 

 

――――背後で、動く気配を感じた。

あの騎士が、また仕掛けて来たか…と今度はカースドフォースを構え、照準を定める。

 

しかしそれは、どうも見当違いの所へ剣を振るい、サンドブラストを放っていた。

一体何が?そう思った矢先――――近くに“赤い塔”がそそり立っている事に気が付く。

 

 

ハジかく(死ぬ)んじゃないぞ、ニモエル」

 

またボソリと呟く、その直後に…騎士の首元で、刃物が一閃した。

 

「まかせて。

“今がその時”よ…!」

 

ランドナの目の前に着地したニモエル。

彼女が騎士を睨みつけ…またそれに向かって地を駆ける。

 

…騎士は相変わらず、周囲をやたらに攻撃している。

あれの視界には――実体の存在しない――無数のニモエルが映っているのだ。

 

 

その隙を縫い、ニモエルがブロードソードで膝関節を切り裂く。

所詮は後衛職の近接物理攻撃だ、大したダメージでは無い。

 

しかし、その真価は…攻撃を起点として付与されるデバフにある。

毒、幻覚、その他諸々。この騎士に感情などあるか分からないが、有れば少なくとも今…堪忍袋の緒が温まっている事だろう。

 

 

見るからに動きが鈍くなった騎士は、その手に“火”を宿す。

それを…なんと自分の体内へと突っ込んだ後――――一瞬でまた、動きのキレが戻った。

 

オマケに、ニモエルの実体をしっかりと捉えているようだ。

 

「ッ…!(状態異常治癒!?それも全部、あの一瞬で!?)」

 

ユグドラシルではあり得なかった――――想定外の事態に、多少狼狽える彼女。

その隙を逃すまいと、騎士は全力のサンドブラストを解き放つ!

 

いくら幻覚を見せられてもいい様、範囲も絶大だ。

 

「っ!?

…【忍法業却の術】!!」

 

素早く、複雑な印を組んだニモエルの口から――――山火事のような極大火炎が噴き出した!

その勢いはサンドブラストを容易く押し返し、やがて騎士をもその熱量が包み込んだ!

 

とは言え…先ほど火を自身の体内へ押し込んだ存在だ。

炎耐性が高い様で、どうも効いている気がしない。

 

 

しかし、それでいい。

これは元より…視界妨害がメインとなる忍術だからだ。

 

 

 

騎士の視界が、漸く晴れる。

そこに居たのは――――ニモエルでは無い、もう攻撃の発動寸前となった、ランドナだ。

 

しかも、如何なるスキルを使ったのか…明らかに尋常でないエフェクトを放っている!

 

「ッ…(コイツは、何時ぞやの露出女同様、やけに硬い…一撃必殺は狙えんだろう。なら、順序立てて奴の身体を破壊する、この技で)!!。

そぉ…ぁ!」

 

蹴り、渾身の…蹴り。

一撃は、騎士の巨躯を容易に打ち上げ…空中で仰向けとなった。

 

「一!」

 

そこにランドナが、素手の状態で飛び掛かる!

両手から発した触手で、それぞれ頭と片脚を掴んで密着…騎士の胴体めがけて膝蹴りを浴びせ、そのまま片膝立ちをする!

 

膝蹴りの勢いが加わった落下。

ズドン!と響く、その衝撃は…騎士の背中を突き抜け、全身へと電流が如く走る!

 

「二!」

 

彼の攻撃は、此処で終わらない!

仰向けに倒れる騎士の頭辺りへと素早く回り、そのまま腕を抱えてジャイアントスイングを敢行。

 

ぎゅるん、ぎゅるん…と、大気を裂く音が、辺りを震わせる。

体格差からくる無茶は、触手で補った。

 

「三!」

 

そしてスイングの勢いのまま、その巨躯を天高く掲げ…ビターン!と、持ち上げた方とは逆方向に落とす!

このスープレックスの衝撃で、騎士の両腕が破壊された。

 

騎士は辛うじて、立ち上がり…再びランドナを見据える。

しかし遅かった――――また、彼が目の前にいる!

 

「四!」

 

いつの間にか、両手にそれぞれファルカタとコルヴォナイフを持っていた彼は…そのまま身体を高速回転させて斬りかかる!

 

二つの刃が、まるでチェーンソーのように騎士の身体を斬り刻み…そして怯んだ隙に、今度は騎士の両膝を抱え、天高く持ち上げる!

 

無論、この時触手で掴みを補正していた。

 

「五!」

 

そのまま両膝を…同時に振り上げた彼の右膝に叩き付け、それをメキリ、と音を立てて破壊した!

もう騎士は、四肢が十全に動く事は無い。

 

 

よろめく騎士に、触手による拘束はそのまま…ランドナは正面に立つ!

 

「六!」

 

触手を束ね、それを思いっきり背負い投げる事で、ふわりと一瞬中に浮かせた後………勢いよく、頭からその巨体を落とす!

 

余りの破壊力に、騎士の頭が地面へとめり込んでしまった。

 

――――本来ここは、反り投げを用いる場面だった。

しかし、先ほどからしつこく言及している、180㎝強と3m越えの体格差ではそれも叶わなかった。

 

「父さん!これ!」

 

「おう!」

 

ニモエルから投げ渡される、2本の槍。

それを手に、ランドナは騎士――未だに頭がめり込んでいる――に飛び掛かる!

 

二つの穂先は、騎士の足を貫通し…そのまま地面へと突き立てられた。

ブリッジ状になったそのデカい身体めがけて、瓦礫を伝い、天高く舞ったランドナが…落下!

 

「七!」

 

仰向けに反られたどてっ腹に、勢い付いた頭突きが炸裂!

この一撃で、騎士が十全に動かせる身体は殆ど無い…強いて言うなら首だけだ。

 

 

せめてもの抵抗に…と、騎士は右手を伸ばす。

虚空にその手を伸ばして…何が出来る訳でもない、何が掴めるわけでもない。

 

それでも、このまま死を無抵抗で受け入れるわけには行かないのだ…!

 

 

だが…目の前に現れたランドナが、その小さな左手で…大きな右手を掴む。

倍近い体格差だというのに、今や力比べで全く勝てる気がしなかった。

 

「…八!」

 

彼の右手が妖しく光ったと思えば、その五指が…騎士の掌へと、深々と突き刺さる!

すると、どうだ?突然思考が掻き乱され、全身の感覚もまるで船酔いのようにグワングワンと揺れ始めた。

 

悪魔(ランドナ)は全身を破壊するには飽き足らず、神経や精神までもの自由を奪わねば、気が済まないようだ。

 

 

やがて彼は、先ほどの…2番目の攻撃の様に、両腕を抱え…同じくジャイアントスイングを行う。

 

徐々に、徐々にと回転のスピードが上がっていく。

それに伴い、騎士の意識が遠くなる…最早、亡者となっているのでは?と錯覚するほどに。

 

「ラスト………ワン!」

 

十分に加速が乗った、その刹那――――ランドナは、騎士を真上へと、放り投げた!

 

ソレに追従し、まだ高く聳える瓦礫から瓦礫へ…最後には、ニモエルが建てた“赤い塔”の天頂に立ち、今や遥か下方にて浮いている騎士へと、思い切り跳躍した!

 

 

さあ、神々に…反旗を翻せ!

 

ランドナはまた触手を…今度は先程より、ずっとずっと極太のそれを、地面目掛けて引き延ばす!

そして、突き出した片膝が狙うのは…騎士のそっ首、ただ一本!

 

上昇する騎士と、墜ちていくランドナ。

両者の、首と片膝が接触した瞬間――――触手に、あらん限りの力が籠る!

 

 

 

 

 

――――ギロチンが、落ちた。

 

雷鳴が如きそれで、戦場を支配した暴君…その首は、運命と共に吹き飛んだ。

斃れ伏す、首無しの死体の隣――――ランドナは、そこから立ち上がる。

 

 

その、静かな佇まいは――――まるで“死”そのもの。

見えも感じもしないが、それは確かに暗く…恐ろしく、そこに有る。

 

遠くから見ていたアルベドやシージ達、そしてソリュシャンは戦慄していた。

アインズとはまた違う、その…完璧(パーフェクト)なる、至高の絶対強者の在り方を。

 

 

――――力のみこそ、至高が故。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、どうも起点がこの騎士だったのか――――やがて霧が晴れた。

 

「アインズ様!霧ノ壁ガ!」

 

「っ!(やったか、ランドナさん…!)。

――――全軍突撃!味方を誰一人死なすな!そして…敵を、残らず殺せ

 

「いくよー!皆ー!」

 

「任務了解、てね…ッ!」

 

「いいんですか!いいんですね!行きますよ!イキますよ私!もう一番火力出るのブッパしますからね私!ちゃんと周り守って下さ――――」

 

 

 

 

再会まで、あと少し

 

 

 

 

 

 




本当は再開の所まで書こうとしたんですけど、最後の地獄のアレを書ききった所で「なんか、もうこれ以上はくどいな」ってなっちゃいました。

次はまあ…速めに書きます。多分
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